21 / 111
遡った時間
20:悪い女の魅力を知る皇女
しおりを挟む
セールビエンスを半ば無理矢理に頷かせてから3ヶ月程経つと、『私に任せろ』と言ったアルテムの言葉に嘘はなかったと認めざる得ない。
顔にひしめき合うように出来ていたニキビは綺麗に治まり、バサバサであった髪の毛は天使の輪が二重・三重に現れる艶やかな黒髪になって、彼女の事を縁取っている。体型にも大きな変化が見え始めており、大分スッキリして来たではないか。
側でみていた私でも会うたびに驚かされているのだから、他の人達が会っても目の前に居る彼女がセールビエンス・パウペリス・エッセ侯爵令嬢とは気がつかないだろう。
「ルサルカ様、貴方は私にペルラの魔法をかけたのでしょうか?」
自分でも信じられないとセールビエンスはそう言ったけど、頑張った彼女自身の努力なのだ。
「いいえ。なにもしておりません。セールビエンス様の努力の賜物ですわ。でもーー」
「ええ、アルテムも言っておりました。初めは劇的に変わりますが、ここからですわよね!!私頑張りますわ。ーー母と同じとは決して申し上げませんが、どことなく面影を自分でも感じるように思えるようになったのです」
そう言ってセールビエンスは感動したように私に抱きついた。
近寄って来た彼女からは、過去に感じた悪臭はなく、心地好い花の香りがしている。
「失礼をお許しくださいね。でも、本当に嬉しかったのです。私の家柄を好んで居るのでもなく、権力を利用するでもなく、私を心配して下さる方が出来たとことに嬉しくて言葉にできないのです」
「セールビエンス様…」
感謝と感動を震えながら告げるセールビエンスは更に私に巻き付ける腕の力を強めていく。
抱きしめられる力が強くなるほどに罪悪感が沸々と湧き出てくる。
今でこそ私はセールビエンスの人となりを知って、彼女を友人として好ましく感じている。けれども、初めは確かにエッセ侯爵家という家柄と、エッセ侯爵との繋がりが欲しくて始めた事なのだ。
彼女の言った『家柄、権力目当て』でしかない。
復讐のためとはいえ、セールビエンスにそれは関係ない。こんなにも純粋に感謝を伝えてくる彼女にそれを黙っているのは、人の皮を被った悪魔でしかないじゃないか。
目的を完遂するためとしても、ここで不誠実をしてしまえば私の中でシコりとなるだろう。
短い間だったけど正直に言うしかない。
お礼を言ってくれるセールビエンスをはがし、ひと呼吸つくと、セールビエンスは不思議そうに私の顔を見つめていた。この国で始めて出来た、過去の私にはいなかったお友達。けれどそれもおしまい。
ここで真実を告白する事で、私は過去と同じようにセールビエンスとエッセ侯爵に不興を買うのだ。
「ごめんなさい。セールビエンス様…。私も同じなのです」
「え?」
「他の方と違いはないのです。初めにセールビエンス様のところへお伺いしたのは…この国で何の後ろ盾がもない私がエッセ侯爵家と…お近づきになれればと思っての…ことだったのです。だからーー権力に目がくらんだ……他の方と同じなのです。でっ、ですが、今はセールビエンス様とお友達になりたいと思っているのは嘘ではないですよ!!本当です!!誓って、ペルラの神々に誓ってもーー」
言い訳を並べて始める私の口にセールビエンスが右手の人差し指をくっ付け、口を閉ざさせた。それから、満面の笑みを浮かべてみせるとゆっくりと口を開き始める。
「ルサルカ様、それは私も同じです。『美しい』と評判であったペルラの皇女にお近づきになれば、こんな私でも変われるのではないかと思って、サラ様からの招待を受けたのです。サラ様はーー恐らく私を引き立て役かなにかにしたかったのでしょうが…。でも実際に貴方にお会いしまして、こうして何度もご一緒にお話をさせていただいたことで、本当にお友達になれたと思っていますの。……ルサルカ様は、違いますか?」
目を伏せてそう言った彼女の妖婉さと言ったら素晴らしいとしか表現が出来ない。
過去でのセールビエンスはずっと最初のままで、浮いた話一つない方だった。しかしこれはどうだろう。自分で言うのもなんだけど、容姿が非常に良い私でもドキドキしてしまうほどではないか。
こんな素養を持っている方だったの。人は分からない物だ。
「私も同じです。セールビエンス・パウペリス・エッセ侯爵令嬢様、是非、ペルラ皇女、ルサルカ・トリトーネとこの国で始めてのお友達になって下さいな」
「光栄なお申し出、喜んでお受けさせていただきます
」
セールビエンスは優雅なカーテシーをすると、再び私に体を寄せ、耳打ちをした。
「私、実は悪巧みが大好きなんですの。ーー勿論お父様も。今日はルサルカ様が気にされている牢獄に関するお話を致しましょう」
アガタとコラーロ、そしてシドン達以外にした事がなかったフルクトスの件を指摘されて、目を見開いてしまうと、セールビエンスは驚いている私に今度は少し悪そうな笑みを見せてだめ押しをする。
「自慢ではございませんが、私悪巧みは得意なのです。それこそ、お父様にも褒められるほど。そして今日はお父様も夕刻には戻って参りますから、そのお話を致しましょう?」
顔にひしめき合うように出来ていたニキビは綺麗に治まり、バサバサであった髪の毛は天使の輪が二重・三重に現れる艶やかな黒髪になって、彼女の事を縁取っている。体型にも大きな変化が見え始めており、大分スッキリして来たではないか。
側でみていた私でも会うたびに驚かされているのだから、他の人達が会っても目の前に居る彼女がセールビエンス・パウペリス・エッセ侯爵令嬢とは気がつかないだろう。
「ルサルカ様、貴方は私にペルラの魔法をかけたのでしょうか?」
自分でも信じられないとセールビエンスはそう言ったけど、頑張った彼女自身の努力なのだ。
「いいえ。なにもしておりません。セールビエンス様の努力の賜物ですわ。でもーー」
「ええ、アルテムも言っておりました。初めは劇的に変わりますが、ここからですわよね!!私頑張りますわ。ーー母と同じとは決して申し上げませんが、どことなく面影を自分でも感じるように思えるようになったのです」
そう言ってセールビエンスは感動したように私に抱きついた。
近寄って来た彼女からは、過去に感じた悪臭はなく、心地好い花の香りがしている。
「失礼をお許しくださいね。でも、本当に嬉しかったのです。私の家柄を好んで居るのでもなく、権力を利用するでもなく、私を心配して下さる方が出来たとことに嬉しくて言葉にできないのです」
「セールビエンス様…」
感謝と感動を震えながら告げるセールビエンスは更に私に巻き付ける腕の力を強めていく。
抱きしめられる力が強くなるほどに罪悪感が沸々と湧き出てくる。
今でこそ私はセールビエンスの人となりを知って、彼女を友人として好ましく感じている。けれども、初めは確かにエッセ侯爵家という家柄と、エッセ侯爵との繋がりが欲しくて始めた事なのだ。
彼女の言った『家柄、権力目当て』でしかない。
復讐のためとはいえ、セールビエンスにそれは関係ない。こんなにも純粋に感謝を伝えてくる彼女にそれを黙っているのは、人の皮を被った悪魔でしかないじゃないか。
目的を完遂するためとしても、ここで不誠実をしてしまえば私の中でシコりとなるだろう。
短い間だったけど正直に言うしかない。
お礼を言ってくれるセールビエンスをはがし、ひと呼吸つくと、セールビエンスは不思議そうに私の顔を見つめていた。この国で始めて出来た、過去の私にはいなかったお友達。けれどそれもおしまい。
ここで真実を告白する事で、私は過去と同じようにセールビエンスとエッセ侯爵に不興を買うのだ。
「ごめんなさい。セールビエンス様…。私も同じなのです」
「え?」
「他の方と違いはないのです。初めにセールビエンス様のところへお伺いしたのは…この国で何の後ろ盾がもない私がエッセ侯爵家と…お近づきになれればと思っての…ことだったのです。だからーー権力に目がくらんだ……他の方と同じなのです。でっ、ですが、今はセールビエンス様とお友達になりたいと思っているのは嘘ではないですよ!!本当です!!誓って、ペルラの神々に誓ってもーー」
言い訳を並べて始める私の口にセールビエンスが右手の人差し指をくっ付け、口を閉ざさせた。それから、満面の笑みを浮かべてみせるとゆっくりと口を開き始める。
「ルサルカ様、それは私も同じです。『美しい』と評判であったペルラの皇女にお近づきになれば、こんな私でも変われるのではないかと思って、サラ様からの招待を受けたのです。サラ様はーー恐らく私を引き立て役かなにかにしたかったのでしょうが…。でも実際に貴方にお会いしまして、こうして何度もご一緒にお話をさせていただいたことで、本当にお友達になれたと思っていますの。……ルサルカ様は、違いますか?」
目を伏せてそう言った彼女の妖婉さと言ったら素晴らしいとしか表現が出来ない。
過去でのセールビエンスはずっと最初のままで、浮いた話一つない方だった。しかしこれはどうだろう。自分で言うのもなんだけど、容姿が非常に良い私でもドキドキしてしまうほどではないか。
こんな素養を持っている方だったの。人は分からない物だ。
「私も同じです。セールビエンス・パウペリス・エッセ侯爵令嬢様、是非、ペルラ皇女、ルサルカ・トリトーネとこの国で始めてのお友達になって下さいな」
「光栄なお申し出、喜んでお受けさせていただきます
」
セールビエンスは優雅なカーテシーをすると、再び私に体を寄せ、耳打ちをした。
「私、実は悪巧みが大好きなんですの。ーー勿論お父様も。今日はルサルカ様が気にされている牢獄に関するお話を致しましょう」
アガタとコラーロ、そしてシドン達以外にした事がなかったフルクトスの件を指摘されて、目を見開いてしまうと、セールビエンスは驚いている私に今度は少し悪そうな笑みを見せてだめ押しをする。
「自慢ではございませんが、私悪巧みは得意なのです。それこそ、お父様にも褒められるほど。そして今日はお父様も夕刻には戻って参りますから、そのお話を致しましょう?」
15
あなたにおすすめの小説
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
その事実だけを抱えて、離縁をつきつけ家を出た。
そこで待っていたのは、
最悪の出来事――
けれど同時に、人生の転機だった。
夫は、愛人と好きに生きればいい。
けれど、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
彼女が選び直す人生と、
辿り着く本当の幸せの行方とは。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました
iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
転生皇女セラフィナ
秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。
目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。
赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。
皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。
前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。
しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。
一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。
「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」
そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。
言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。
それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。
転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。
※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる