やり直し皇女は母国に帰りたい

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遡った時間

20:悪い女の魅力を知る皇女

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セールビエンスを半ば無理矢理に頷かせてから3ヶ月程経つと、『私に任せろ』と言ったアルテムの言葉に嘘はなかったと認めざる得ない。
顔にひしめき合うように出来ていたニキビは綺麗に治まり、バサバサであった髪の毛は天使の輪が二重・三重に現れる艶やかな黒髪になって、彼女の事を縁取っている。体型にも大きな変化が見え始めており、大分スッキリして来たではないか。
側でみていた私でも会うたびに驚かされているのだから、他の人達が会っても目の前に居る彼女がセールビエンス・パウペリス・エッセ侯爵令嬢とは気がつかないだろう。

「ルサルカ様、貴方は私にペルラの魔法をかけたのでしょうか?」
自分でも信じられないとセールビエンスはそう言ったけど、頑張った彼女自身の努力なのだ。
「いいえ。なにもしておりません。セールビエンス様の努力の賜物ですわ。でもーー」
「ええ、アルテムも言っておりました。初めは劇的に変わりますが、ここからですわよね!!私頑張りますわ。ーー母と同じとは決して申し上げませんが、どことなく面影を自分でも感じるように思えるようになったのです」
そう言ってセールビエンスは感動したように私に抱きついた。
近寄って来た彼女からは、過去に感じた悪臭はなく、心地好い花の香りがしている。
「失礼をお許しくださいね。でも、本当に嬉しかったのです。私の家柄を好んで居るのでもなく、権力を利用するでもなく、私を心配して下さる方が出来たとことに嬉しくて言葉にできないのです」
「セールビエンス様…」
感謝と感動を震えながら告げるセールビエンスは更に私に巻き付ける腕の力を強めていく。
抱きしめられる力が強くなるほどに罪悪感が沸々と湧き出てくる。

今でこそ私はセールビエンスの人となりを知って、彼女を友人として好ましく感じている。けれども、初めは確かにエッセ侯爵家という家柄と、エッセ侯爵との繋がりが欲しくて始めた事なのだ。
彼女の言った『家柄、権力目当て』でしかない。
復讐のためとはいえ、セールビエンスにそれは関係ない。こんなにも純粋に感謝を伝えてくる彼女にそれを黙っているのは、人の皮を被った悪魔でしかないじゃないか。
目的を完遂するためとしても、ここで不誠実をしてしまえば私の中でシコりとなるだろう。
短い間だったけど正直に言うしかない。


お礼を言ってくれるセールビエンスをはがし、ひと呼吸つくと、セールビエンスは不思議そうに私の顔を見つめていた。この国で始めて出来た、過去の私にはいなかったお友達。けれどそれもおしまい。
ここで真実を告白する事で、私は過去と同じようにセールビエンスとエッセ侯爵に不興を買うのだ。

「ごめんなさい。セールビエンス様…。私も同じなのです」
「え?」
「他の方と違いはないのです。初めにセールビエンス様のところへお伺いしたのは…この国で何の後ろ盾がもない私がエッセ侯爵家と…お近づきになれればと思っての…ことだったのです。だからーー権力に目がくらんだ……他の方と同じなのです。でっ、ですが、今はセールビエンス様とお友達になりたいと思っているのは嘘ではないですよ!!本当です!!誓って、ペルラの神々に誓ってもーー」

言い訳を並べて始める私の口にセールビエンスが右手の人差し指をくっ付け、口を閉ざさせた。それから、満面の笑みを浮かべてみせるとゆっくりと口を開き始める。

「ルサルカ様、それは私も同じです。『美しい』と評判であったペルラの皇女にお近づきになれば、こんな私でも変われるのではないかと思って、サラ様からの招待を受けたのです。サラ様はーー恐らく私を引き立て役かなにかにしたかったのでしょうが…。でも実際に貴方にお会いしまして、こうして何度もご一緒にお話をさせていただいたことで、本当にお友達になれたと思っていますの。……ルサルカ様は、違いますか?」

目を伏せてそう言った彼女の妖婉さと言ったら素晴らしいとしか表現が出来ない。
過去でのセールビエンスはずっとで、浮いた話一つない方だった。しかしこれはどうだろう。自分で言うのもなんだけど、容姿が非常に良い私でもドキドキしてしまうほどではないか。
こんな素養を持っている方だったの。人は分からない物だ。

「私も同じです。セールビエンス・パウペリス・エッセ侯爵令嬢様、是非、ペルラ皇女、ルサルカ・トリトーネとこの国で始めてのお友達になって下さいな」
「光栄なお申し出、喜んでお受けさせていただきます

セールビエンスは優雅なカーテシーをすると、再び私に体を寄せ、耳打ちをした。

わたくし、実は悪巧みが大好きなんですの。ーー勿論お父様も。今日はルサルカ様が気にされている牢獄に関するお話を致しましょう」
アガタとコラーロ、そしてシドン達以外にした事がなかったフルクトスの件を指摘されて、目を見開いてしまうと、セールビエンスは驚いている私に今度は少し悪そうな笑みを見せてだめ押しをする。

「自慢ではございませんが、わたくし悪巧みは得意なのです。それこそ、お父様にも褒められるほど。そして今日はお父様も夕刻には戻って参りますから、そのお話を致しましょう?」
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