やり直し皇女は母国に帰りたい

どこどこ

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知らない時間

67:手袋は自分で叩き付けたい

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どう説明したものかしらね。誰に問いかけるでもなく、後ろを歩くアガタに意識を向ける。
もうすぐ私の部屋に辿り着くし、言い出し方でも考えておくべき?なんて諦めながら自室の扉を開けてもらった。
そして中へ入り、しっかりと外に繋がる扉を閉めてもらったのを確認してから内扉を開く。中には私の秘密の侍女があとふたりいるから。

「「皇女様おかえりなさいませ」」

コラーロとトゥットが声を揃えて出迎えてくれる。
この2人は本当に姉弟のように気が合うらしく、2人で楽しそうに私のアクセサリーの手入れをしてくれていた。

「ただいま」
「あら?アガタ、随分とご機嫌が悪いみたいじゃない?」
「ほんとだ。またサラ様にでも会ったのか?」
私の後ろで難しい表情をしているアガタに気がついた2人は不思議そうに私とアガタを見比べている。
「いいえ、少し私が勝手をしすぎたのよ…コラーロお茶を入れてくれる?4人分」
「かしこまりました」
ペルラにいた時も私がアガタに注意を受けたことが何度かあったので、コラーロはあえて私たちの状況にこれ以上深入りしようとせず、言われるままにお茶の用意をする為に奥へ入っていく。その後ろ姿に続くようにトゥットも気まずさから逃げて行った。
残された私とアガタは無言でテーブルまで向かっていく。
先ほどまで耳にしていた町中の喧騒とは打って変わって静かな風が木々を揺らす音しか聞こえないこの部屋の中で、アガタは私が話し出すのを待っているのだろう。

「アガタもおかけなさい」
「かしこまりました」

カラカラとワゴンを押してくる音が聞こえ、さて2人にも座ってもらおうと音の方を振返ったところで意表をついた物が目についた。

「コラーロ、トゥット、そのワゴンの上に乗っている物は?」
「こちらは皇女様が頼まれたものなのではないのですか?」
「僕もそう思ってたんですが…違うのですか?先日僕にリビュアのについてご質問されたので、てっきり皇女様が手配されたのだと思っていたのですが」
「手配?」
「はい。皇女様が外出された後どなたかがこの部屋の前に置いていかれたようなのですが、このようなメモがついておりましたので…」
そう言ったコラーロはメモを見せてくれる。

『ご所望のお茶がご用意出来ました』
「ふふふ」
「「「ーー皇女様?」」」

ご所望、と言われて用意されていたのは目下アケロン達が調べている緑の壷以外の何物でもない。
呆れて笑うしかない。毒と分かっていて、皆が私から引き離そうとしているのに、毒の方から私に近寄って来たってことか。
置いたのはサラか、マリか、それとも別の誰かなのか。むき出しの敵意にあえて真っ向から立ち向かいたくなる。

「…3人は私の気に言っている白い磁器に入った紅茶を飲みなさい。緑の壷これは私だけに向けられた物だから」
「ーーかしこまり、ました」
「私は自分で入れるから。だからコラーロもトゥットも気にしないでね」
そんな風に何でもないように皆に良いながら蓋を開けると、以前嗅いだ匂いがする。たしかにこれは私がサラに上げたのと同じだわ。だからこれを飲めばあの時のサラが何を飲んだのか分かるでしょう。
アケロンもさっき「一杯飲んだくらいじゃ死なない」と言っていたし、どうせなら送り主の期待に沿いましょう。

「どういう意味ですか?」
「・・・多分これを飲んだら私は倒れるわ」
「「「えっ?!まさか、皇女様これはっ」」」
「毒だと思う」
「お止めください、わざわざ飲む必要がどこにあるのです?先ほどの私の話をもう忘れてしまわれたんですか?!」
アガタが焦りながら私がポットに茶葉を入れるのを撥ね除けようとするので、ワザと威圧的にそれを止める。
「だから飲むのよ。飲んだらきっと誰が敵なのか分かるでしょ?」
「では私が飲みます!!」
「いいえ、アガタが飲んじゃダメ。王宮に本来いないはずの私が飲みます!」
「コラーロもダメだよ!2人とも魔法使いなんだから!!僕なら何かあっても替えがきくから、僕が飲むよ!!」

3人は代わる代わる私が注ぐお茶を取ろうとするけれど、私はそのままカップを手に持って全員に動かないように掌を見せた。
「だめよ。これは私が貰った決闘よ?ーーアガタ、ごめんなさいね。意識が戻ったら話をすることにさせて。それと私が倒れた後で誰かが見舞いや様子を確認に来たら覚えておいて。トゥット、アケロンに会うことがあったら当分来るなと言っておいて。シドンにもね。コラーロは1週間経っても私が起きなかったら頬を叩いて起こして。起きなかったら姉樣方に連絡をとって」

止める3人を無視して指示を出している内に、茶葉はどす黒くなる程に色を出している。
これは中々に濃い味がしそう。さて、一気にいきましょうか。
味も感じないようにマナー悪く一気に飲み干しながら、これで死んだらまた過去に戻ったりするのかしら?なんて暢気に考える。
せめてもの作法としてソーサーにカップを戻した所で目の前が真っ白になっていった。
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