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やり直す時間
95:最後に部屋に来た人
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謁見の間の扉が開くと、既に来ていたエッセ侯爵とシドンが私の事をみて驚きで目を丸くしていた。
「ごきげんよう。私が一番乗りだと思ったのですが、お待たせしてしまったようですね。申し訳ございません」
「お久しぶりです皇女様。しかし、侍従が呼びに出られてこれほどすぐにいらっしゃるとは、シュケレシュでも無理ですよ」
シドンはそう言って屈託のない笑みを見せている。その様子から、今日の問答は完全に準備が出来ているのだと分かって、私も微笑み返した。そしてシドンが居るのならきっとアケロンもいるだろう、と左右を見ていると見透かされてしまう。
「大賢者様はここにはきませんよ。国王に会いたくないらしいです」
「おや、アケロン様は我が国の陛下と面識があるのか」
「宰相殿もご存じない情報なんですね。昔、国王がまだ若い頃に3回だけ授業をしたそうですよ」
「3回…まぁ、あの頃の陛下はご多忙でしたからな…」
シドンからの話に対するエッセ侯爵の反応を見るに、極秘での教育だったのだろう。私も初めて聞いた。とすれば、過去でアケロンがカエオレウムに呼ばれたのは国王繋がりということか。そんなことを考えていると、ようやく次の人がやってきたようで扉を大きくノックする音が鳴り響いた。
「ドゥ伯爵夫人が到着されました」
侍従のその声で、私たち3人は一気に緊張した雰囲気に変わった。
ドゥ伯爵夫人は本来であれば朗らかな人柄である。しかし今は反対勢力ーーもとい、サラ側の人物なのだ。彼女の言葉で状況が変わってしまう可能性もあるのだと思うと、これまでのように接するべきかわからなくなる。
そんな私の考えをよそに、中に入ってきたドゥ伯爵は私たちへ形ばかりのあいさつをするとひどく疲れ果てている様子で中央に歩いているではないか。その姿は彼女の方が毒を飲んだと言ってもだれも疑わないくらいには息も絶え絶えという風貌だった。
よろよろと進んで行く中で、とうとうドゥ伯爵夫人は絨毯に足を取られて、ヨロりと倒れこみそうになった。するとその瞬間、シドンが驚きの速さで彼女を抱きとめていた。
「し、失礼いたしました」
「こちらこそ伯爵夫人に許可なく触れてしまい失礼いたしました」
シドンが営業じみた笑みを浮かべるとドゥ伯爵夫人は追従笑いを浮かべすぐさま離れようとしたところで、また、侍従が今度はテンペスタス子爵がやってきたと言うので、私とエッセ侯爵はほとんど同時にため息をついてしまった。
偉そうにふんぞり返ったテンペスタス子爵は1人部屋に入ってくると、私たちをみてさげすんだように鼻を鳴らしていた。その表情を見てももはやいら立ちもしない。
それよりも私が気になったのは子爵が1人で謁見の間に来たことだった。
普通に考えればサラも一緒に来るはずだろうに、そばには見当たらない。はて、国王は私は呼んでサラは呼ばなかったんだろうか。そんな風に不思議に思っているところで、テンペスタス子爵は私を見て勝ち誇ったように上機嫌に笑った。
「テンペスタス子爵、そなたの娘は来ないのか?」
私の疑問を代弁するようにエッセ侯爵がそういった。するとテンペスタス子爵はわざとらしく困ったように眉を垂らして、嫌な感じににやける口元を隠している。
「いえ、後から参りますよ。ーーまだあまり体調がよくないのでねぇ、心配してくださる方も多いのです」
「ほう。相分かった。しかし、皇女様を待たせるのはあまりよくないな。殿下もまだ来ていないのか」
「娘が来る頃には殿下も来ているでしょう」
「なんと、まだそろっていないのか」
「陛下!!」
テンペスタス子爵がそう言ったところで、国王は玉座へ着くとホールを見回しため息をついた。
「侍従にはきっかりと時間をつもりだったが…」
「陛下の侍従は仕事をまっとうしております。宰相である私に対しても『決して遅れぬように』と厳重に告げておりました。決して職務怠慢はしていない」
「フェルムが言うならそうかのぅ…しかしオケアノスーー」
「オケアノス殿下とテンペスタス子爵令嬢が到着されました」
侍従のその言葉が部屋に響くや、扉の向こうから腕を組んだオケアノスとサラがこの部屋に向かって歩いてくる姿が、この場にいる全員の目に映ったである。
「おや、皆早いな」
「本当ですわね。まぁぁ、ルサルカ様も本日はお早いのですねぇ」
部屋の中の雰囲気にも気が付かず、遅刻してきた二人はのんきにそんなことを言うと、国王がいることに対して謝罪することもなくそのまま始めさせようと2人は一番の上座に進んで行った。
「ごきげんよう。私が一番乗りだと思ったのですが、お待たせしてしまったようですね。申し訳ございません」
「お久しぶりです皇女様。しかし、侍従が呼びに出られてこれほどすぐにいらっしゃるとは、シュケレシュでも無理ですよ」
シドンはそう言って屈託のない笑みを見せている。その様子から、今日の問答は完全に準備が出来ているのだと分かって、私も微笑み返した。そしてシドンが居るのならきっとアケロンもいるだろう、と左右を見ていると見透かされてしまう。
「大賢者様はここにはきませんよ。国王に会いたくないらしいです」
「おや、アケロン様は我が国の陛下と面識があるのか」
「宰相殿もご存じない情報なんですね。昔、国王がまだ若い頃に3回だけ授業をしたそうですよ」
「3回…まぁ、あの頃の陛下はご多忙でしたからな…」
シドンからの話に対するエッセ侯爵の反応を見るに、極秘での教育だったのだろう。私も初めて聞いた。とすれば、過去でアケロンがカエオレウムに呼ばれたのは国王繋がりということか。そんなことを考えていると、ようやく次の人がやってきたようで扉を大きくノックする音が鳴り響いた。
「ドゥ伯爵夫人が到着されました」
侍従のその声で、私たち3人は一気に緊張した雰囲気に変わった。
ドゥ伯爵夫人は本来であれば朗らかな人柄である。しかし今は反対勢力ーーもとい、サラ側の人物なのだ。彼女の言葉で状況が変わってしまう可能性もあるのだと思うと、これまでのように接するべきかわからなくなる。
そんな私の考えをよそに、中に入ってきたドゥ伯爵は私たちへ形ばかりのあいさつをするとひどく疲れ果てている様子で中央に歩いているではないか。その姿は彼女の方が毒を飲んだと言ってもだれも疑わないくらいには息も絶え絶えという風貌だった。
よろよろと進んで行く中で、とうとうドゥ伯爵夫人は絨毯に足を取られて、ヨロりと倒れこみそうになった。するとその瞬間、シドンが驚きの速さで彼女を抱きとめていた。
「し、失礼いたしました」
「こちらこそ伯爵夫人に許可なく触れてしまい失礼いたしました」
シドンが営業じみた笑みを浮かべるとドゥ伯爵夫人は追従笑いを浮かべすぐさま離れようとしたところで、また、侍従が今度はテンペスタス子爵がやってきたと言うので、私とエッセ侯爵はほとんど同時にため息をついてしまった。
偉そうにふんぞり返ったテンペスタス子爵は1人部屋に入ってくると、私たちをみてさげすんだように鼻を鳴らしていた。その表情を見てももはやいら立ちもしない。
それよりも私が気になったのは子爵が1人で謁見の間に来たことだった。
普通に考えればサラも一緒に来るはずだろうに、そばには見当たらない。はて、国王は私は呼んでサラは呼ばなかったんだろうか。そんな風に不思議に思っているところで、テンペスタス子爵は私を見て勝ち誇ったように上機嫌に笑った。
「テンペスタス子爵、そなたの娘は来ないのか?」
私の疑問を代弁するようにエッセ侯爵がそういった。するとテンペスタス子爵はわざとらしく困ったように眉を垂らして、嫌な感じににやける口元を隠している。
「いえ、後から参りますよ。ーーまだあまり体調がよくないのでねぇ、心配してくださる方も多いのです」
「ほう。相分かった。しかし、皇女様を待たせるのはあまりよくないな。殿下もまだ来ていないのか」
「娘が来る頃には殿下も来ているでしょう」
「なんと、まだそろっていないのか」
「陛下!!」
テンペスタス子爵がそう言ったところで、国王は玉座へ着くとホールを見回しため息をついた。
「侍従にはきっかりと時間をつもりだったが…」
「陛下の侍従は仕事をまっとうしております。宰相である私に対しても『決して遅れぬように』と厳重に告げておりました。決して職務怠慢はしていない」
「フェルムが言うならそうかのぅ…しかしオケアノスーー」
「オケアノス殿下とテンペスタス子爵令嬢が到着されました」
侍従のその言葉が部屋に響くや、扉の向こうから腕を組んだオケアノスとサラがこの部屋に向かって歩いてくる姿が、この場にいる全員の目に映ったである。
「おや、皆早いな」
「本当ですわね。まぁぁ、ルサルカ様も本日はお早いのですねぇ」
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