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第二章
満月
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侑輝はシャープペンシルをもう一度強く握って集中する。今朝の優しい匂いと柔らかい感触が身体に残っている気がする。それでも今はテストに集中しなければいけない。
3日間に及ぶテストをようやく終えた後、4日目には好感度装置による好感度測定が行われた。好感度測定ではお互い対面している2つの椅子型の装置に座り、ただ相手を見る。頭には電子量とホルモン量、加え神経伝達物質の量などが測定できるヘルメット型の装置が互いに取り付けられる。約5分間の後、測定は終える。
そして更に3日後…テスト結果が張り出された。
「侑輝さん、見に行きましょう。」
「近衛さんもいるし10位くらいにはなれたかもしれないな」
「きっと10位以内入ってます。」
掲示板の前にはすでに沢山の生徒で溢れていた。歓喜の声や悲嘆の声が聞こえてくる。掲示板の前に来ると周りの目が集まり、ざわつき始めた。
少し空気が変だと侑輝は身構えた。
片腕の男と完璧な女の子との風景はそのころには学校の生徒は気にしていない様子だった。しかし、以前と同じように生徒の沢山の目が気になる。しかしすぐにその理由は理解した。
掲示板を見ると…
「えっと…1位…星乃侑輝・近衛乙月 1022点……1位!?1022点!?」
1022点!?学力テストでも最高点は600点のはず。つまりは400点以上が好感度点数分に加算されている。4で割って100。授業で習ったことによると100以上は結婚相手と同じレベル。侑輝は全身が熱くなるのを感じた。すぐ後ろの近衛乙月を見るとドヤ顔をしてこちらを見ていた。まるで「ほらね」と言わんばかりである。近衛乙月はこの点数がどういう意味をもっているのかわかっているんだろうか。しかし、当然と言わんばかりの顔である。
「久しぶり星乃君」
突然聞いたことがあるような男の声が聞こえる。
「え、あ倉田君」
「どうなってるんだ1022点て…」
「いや俺も、よく、わからない…」
倉田君は心底驚いた顔をしていたが、目の前の本人はもっと驚いていた。倉田君は分からないというように首を傾けると急に冷静になって近衛乙月を見た。
「…星乃君、少し丸くなったな」
「そう?」
「ああ、なんか前の淡泊さがなくなったっていうか…。なんか肩の力を抜いている感じというべきか。」
「それって良くなってるのか?」
「勿論」
「はあ」
侑輝にとっては寧ろ今の状態より肩の力が入っていた。というか、ここ最近は近衛乙月の御陰でずっとそうであった。肩の力を抜いているというよりは近衛乙月が甲斐甲斐しく自身の世話をしているために丸くならざる終えないと言ったところである。
「…きっとパートナーとの相性がいいんだな」
倉田君は俺を見た後、近衛さんを見て、再度俺を見た後に笑った。
『星乃侑輝さん、近衛乙月さんは至急第1研究準備室に来てください。』
と突然の放送…
…その後、衝撃の事実が知らされることになった…
「失礼します。」
近衛乙月と一緒に第一研究準備室へと行くと白衣を着た中年の男性がパソコンのモニターを見ていた。研究室にはコーヒーの匂いが立ち込めている。男の手元にはコーヒーカップと乱雑に大量の資料が置かれている。今時、紙を使うなんて珍しい。2人が入ってきたことに気が付くと「よっこいしょ」という言葉と共に立ち上がった。身長は180センチメートルはあるだろうか、顔は間抜けずらと言う言葉がぴったりだった。髪の毛は寝ぐせのように跳ねた跡が数か所あり、髭もあまり剃っていないようだった。
「おお、来たか…」
「用件はなんでしょうか。」
「その前に、来てもらって悪いが近衛さんは自室へ戻ってくれるかな」
わざわざ呼び出しておいて、また帰すというのも骨折り損であるが間抜けずらの男はその顔とは似合わず真剣さが漂っていた。近衛乙月へと目をやると少し残念そうにしていたが、仕方ないという顔をすると「侑輝さん、では待ってますね。」と言って部屋を後にした。
近衛さんが部屋を出て少しした後、男は口を開けた。
「悪い悪い、まずは自己紹介かな。僕の名前は村木恵介と言うものだよ」
「村木…恵介…って…」
その名前は何度か聞いたことがある。好感度の数値化を研究し成功させた主導者…。
「お察しの通り、僕が好感度の数値化を行った張本人だ。偶々この学園に用事があったとこでみんなの好感度のデータを暇つぶしに見ていたんだけど…星乃侑輝君であっているね?」
「は、はい」
「まあ、座ってくれ。コーヒー飲めるかな?」
「え、ええ…」
研究室にある無機質なデザインのソファに座ると、すぐにインスタントコーヒーが出てきた。
「今回、星乃君を呼び出したことについて何か思い当たることはあるか?」
「え…と…一位になったことですかね?」
「ふむ…まあ間違いではないんだ。1位というより点数の話だ」
「…1022点」
「そう、1022点!」
村木恵介は元気よく斜め45度を見上げながら声を響かせる。まるで新しいおもちゃを発見した子供がそのまま大人になってしまったようだ。村木恵介は何度か1022点とつぶやくと自身の机にあった二枚の紙を差し出した。
「とりあえず、まずはこれを見てくれ。」
紙には「学力テストの詳細な結果・星乃侑輝 近衛乙月」と書いてある。村木恵介を見ると目で二枚目を見てくれと言うように目配せした。
紙には星乃侑輝と近衛乙月の今回のテスト結果が出ている。
近衛乙月は6科目中3教科で100点を取っている。しかも残りの3教科は95点以上。侑輝は改めて近衛乙月の天才さを思い知った。
「えー自分のは…」
80点から85点の間の点数が5教科に並び数学だけ93点取れている。侑輝は心の中で大きくガッツポーズした。侑輝にとっては十分に納得のいく点数だ。
近衛乙月へ心の中で感謝しながら今回の6教科の合計平均点数を見ると546点と書いてあった。近衛さんの教えの結果か、それとも努力のお陰だろうか、自分の中では満足のいく結果だった。
好感度のほうは…
星乃侑輝から近衛乙月に対する好感度…52点
近衛乙月から星乃侑輝に対する好感度…186点
換算好感度点数…476点
「ひゃく…はちじゅう…ろく…?」
「そうだ、近衛さんから君に対する好感度は186…これは…異常だ!」
村木恵介はそういうと目をゆっくりと閉じて何か考えるように顎に手を当てた。
それから白衣の男はつらつらと好感度についての研究を話し始めた。
3日間に及ぶテストをようやく終えた後、4日目には好感度装置による好感度測定が行われた。好感度測定ではお互い対面している2つの椅子型の装置に座り、ただ相手を見る。頭には電子量とホルモン量、加え神経伝達物質の量などが測定できるヘルメット型の装置が互いに取り付けられる。約5分間の後、測定は終える。
そして更に3日後…テスト結果が張り出された。
「侑輝さん、見に行きましょう。」
「近衛さんもいるし10位くらいにはなれたかもしれないな」
「きっと10位以内入ってます。」
掲示板の前にはすでに沢山の生徒で溢れていた。歓喜の声や悲嘆の声が聞こえてくる。掲示板の前に来ると周りの目が集まり、ざわつき始めた。
少し空気が変だと侑輝は身構えた。
片腕の男と完璧な女の子との風景はそのころには学校の生徒は気にしていない様子だった。しかし、以前と同じように生徒の沢山の目が気になる。しかしすぐにその理由は理解した。
掲示板を見ると…
「えっと…1位…星乃侑輝・近衛乙月 1022点……1位!?1022点!?」
1022点!?学力テストでも最高点は600点のはず。つまりは400点以上が好感度点数分に加算されている。4で割って100。授業で習ったことによると100以上は結婚相手と同じレベル。侑輝は全身が熱くなるのを感じた。すぐ後ろの近衛乙月を見るとドヤ顔をしてこちらを見ていた。まるで「ほらね」と言わんばかりである。近衛乙月はこの点数がどういう意味をもっているのかわかっているんだろうか。しかし、当然と言わんばかりの顔である。
「久しぶり星乃君」
突然聞いたことがあるような男の声が聞こえる。
「え、あ倉田君」
「どうなってるんだ1022点て…」
「いや俺も、よく、わからない…」
倉田君は心底驚いた顔をしていたが、目の前の本人はもっと驚いていた。倉田君は分からないというように首を傾けると急に冷静になって近衛乙月を見た。
「…星乃君、少し丸くなったな」
「そう?」
「ああ、なんか前の淡泊さがなくなったっていうか…。なんか肩の力を抜いている感じというべきか。」
「それって良くなってるのか?」
「勿論」
「はあ」
侑輝にとっては寧ろ今の状態より肩の力が入っていた。というか、ここ最近は近衛乙月の御陰でずっとそうであった。肩の力を抜いているというよりは近衛乙月が甲斐甲斐しく自身の世話をしているために丸くならざる終えないと言ったところである。
「…きっとパートナーとの相性がいいんだな」
倉田君は俺を見た後、近衛さんを見て、再度俺を見た後に笑った。
『星乃侑輝さん、近衛乙月さんは至急第1研究準備室に来てください。』
と突然の放送…
…その後、衝撃の事実が知らされることになった…
「失礼します。」
近衛乙月と一緒に第一研究準備室へと行くと白衣を着た中年の男性がパソコンのモニターを見ていた。研究室にはコーヒーの匂いが立ち込めている。男の手元にはコーヒーカップと乱雑に大量の資料が置かれている。今時、紙を使うなんて珍しい。2人が入ってきたことに気が付くと「よっこいしょ」という言葉と共に立ち上がった。身長は180センチメートルはあるだろうか、顔は間抜けずらと言う言葉がぴったりだった。髪の毛は寝ぐせのように跳ねた跡が数か所あり、髭もあまり剃っていないようだった。
「おお、来たか…」
「用件はなんでしょうか。」
「その前に、来てもらって悪いが近衛さんは自室へ戻ってくれるかな」
わざわざ呼び出しておいて、また帰すというのも骨折り損であるが間抜けずらの男はその顔とは似合わず真剣さが漂っていた。近衛乙月へと目をやると少し残念そうにしていたが、仕方ないという顔をすると「侑輝さん、では待ってますね。」と言って部屋を後にした。
近衛さんが部屋を出て少しした後、男は口を開けた。
「悪い悪い、まずは自己紹介かな。僕の名前は村木恵介と言うものだよ」
「村木…恵介…って…」
その名前は何度か聞いたことがある。好感度の数値化を研究し成功させた主導者…。
「お察しの通り、僕が好感度の数値化を行った張本人だ。偶々この学園に用事があったとこでみんなの好感度のデータを暇つぶしに見ていたんだけど…星乃侑輝君であっているね?」
「は、はい」
「まあ、座ってくれ。コーヒー飲めるかな?」
「え、ええ…」
研究室にある無機質なデザインのソファに座ると、すぐにインスタントコーヒーが出てきた。
「今回、星乃君を呼び出したことについて何か思い当たることはあるか?」
「え…と…一位になったことですかね?」
「ふむ…まあ間違いではないんだ。1位というより点数の話だ」
「…1022点」
「そう、1022点!」
村木恵介は元気よく斜め45度を見上げながら声を響かせる。まるで新しいおもちゃを発見した子供がそのまま大人になってしまったようだ。村木恵介は何度か1022点とつぶやくと自身の机にあった二枚の紙を差し出した。
「とりあえず、まずはこれを見てくれ。」
紙には「学力テストの詳細な結果・星乃侑輝 近衛乙月」と書いてある。村木恵介を見ると目で二枚目を見てくれと言うように目配せした。
紙には星乃侑輝と近衛乙月の今回のテスト結果が出ている。
近衛乙月は6科目中3教科で100点を取っている。しかも残りの3教科は95点以上。侑輝は改めて近衛乙月の天才さを思い知った。
「えー自分のは…」
80点から85点の間の点数が5教科に並び数学だけ93点取れている。侑輝は心の中で大きくガッツポーズした。侑輝にとっては十分に納得のいく点数だ。
近衛乙月へ心の中で感謝しながら今回の6教科の合計平均点数を見ると546点と書いてあった。近衛さんの教えの結果か、それとも努力のお陰だろうか、自分の中では満足のいく結果だった。
好感度のほうは…
星乃侑輝から近衛乙月に対する好感度…52点
近衛乙月から星乃侑輝に対する好感度…186点
換算好感度点数…476点
「ひゃく…はちじゅう…ろく…?」
「そうだ、近衛さんから君に対する好感度は186…これは…異常だ!」
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