16 / 25
第二章
月食
しおりを挟む
「それでは次のパートナーも前回と同様に登録します。では3日後に部屋の移動を行います。それまでに荷物をまとめておいてくださいね。」
次の日、侑輝と近衛乙月は受付時間が始まった途端に次のパートナーの受付を行った。当然のことであるが、近衛乙月のお願いあっての事であった。侑輝はすぐ隣の近衛乙月が満足そうに微笑んでいることに自らも少し満足した。
「10位内を目標にしてたのに、うっかり1位になったね」
「うっかりではありません。私は分かってましたよ。侑輝さんは努力家ですから」
「そう…かな」
確かに今回、入院生活で遅れた学習分を補うために、また近衛乙月の足を引っ張らないために通常時よりは勉強した気がする。しかし、努力家と言われると若干、違和感がある。テストの総合点数は好感度の占める割合が相当高いため、学力だけならば2位の組に負けている可能性もある。勿論それは近衛乙月を除外してではあるが…
まあ…好感度も重要視されている点数には変わりない
1位という実感が未だ感じることができなかった侑輝は違和感を払拭するように開き直ることにした。
「3日後からは、特別部屋か…」
正直、普通の部屋だけでも十分な設備がある。わざわざ特別部屋を用意する必要があまり感じられない。
「キッチンがあるみたいですよ」
嬉しそうに言う近衛乙月を横目に侑輝は思った。キッチンも無いよりはあるほうがいいかもしれないが、あまりメリットもない。おそらく、すでに特別部屋を使用している人でさえキッチンを使用している人はほとんどいない。普通部屋でもコーヒーくらいならポットで充分であるだろうし、電子レンジもあるからである。キッチンがあるからと言っても料理をする人はいないだろう。学食を使えば支給されている小遣いを消費することはないが、料理をする場合、食材はその小遣いをわざわざ消費する必要がある。
「まあ、気分転換に料理するくらいならいいかもしれないな」
「私は、3日後から毎日しますよ」
「え…?」
…あ。侑輝は以前に食堂で近衛乙月が言ったことを思い出した。確か料理を作ってくれると言っていた。侑輝は半分冗談だと思っていた。近衛乙月であっても料理をすることが、ただの時間とお金の無駄であることは分かっているはずだ。
「それって、もしかして俺の分も?」
「はい」
近衛乙月は当然のように返事をした。
「いや、近衛さん。食材はお小遣いから負担なんだよ?それに勉強時間もなくなるわけだし、流石に毎日は…」
「…。もしかして私の料理、嫌ですか?」
近衛乙月は、少し考えたあと不安そうな顔をして尋ねる。
「いやいや、そういうわけではなく。お小遣いが増えると言えども食費は負担になるわけで…。食堂だったらタダだから、別の場所にお金が使えるわけで…。近衛さんの料理は食べてはみたいよ」
「それなら良かったです。大丈夫ですよ。私はそんなに欲しいものがあるわけではないので侑輝さんに毎日食べてもらえるのであれば、寧ろ私にとっては一番合理的で幸せな使い方なんです。」
「そう…なんだ。ちなみに朝、昼、晩のどこで作るの?」
「勿論、全部ですよ?」
「え?」
侑輝は高校生になるまでに料理をしていなかったので、食費がどれくらいかかるかは分からなかったが、もし一日一人1000円必要だとすると、1か月で2人で6万円くらいになる。また昼食も料理するとなると弁当ということだろうか。昼休みは約1時間しかないので必然的にそうなるだろう。
「近衛さん、流石に3食共は必要ないんじゃないかな。食費も足りるかわからないし」
侑輝は近衛乙月の願望を理解したわけではないが、趣味の一つとして認識することにしたが、それでも3食となると抵抗せざる終えなかった。
「そんなことないですよ。5万円なら十分足ります。」
近衛乙月は十分な自信があることが、侑輝には見て取れた。また食費も近衛乙月自身のお小遣いから全て出すことが窺えた。
「やっぱり1食くらいでいいと思うよ」
「いえ、私が作りたいので気にする必要はありません」
…そうでない。近衛乙月からしてみるとしたいからするのであるから、侑輝は気にしなくていいということであったが、侑輝からすると料理を作ってもらうのみならず食費を出してもらうわけで罪悪感というか依存し過ぎのように感じるのであった。侑輝も料理できれば、まだよかったのであるが、片腕ではマシな料理はできないし、手伝うことも難しいだろう。しかし、あまりにも抵抗すると近衛乙月を悲しませることになる。
まあ簡単に言うと侑輝は、できるだけ近衛乙月に負担を掛けさせたくはなかった。
「近衛さん」
「はい」
「間をとって2食にしよう」
「いえ、気にする…」
「俺は、近衛さんの料理を食べたい気持ちもあるけど、一緒に勉強する時間も大切だから」
侑輝は「一緒に」という言葉を極力協調していった。
「…」
近衛乙月は少し驚いた顔をした後、腕を組みながら顎に手を当てて斜め下を見ながら少しの間固まった後、納得してれたのか顔をほころばせた。
「わかりました、確かに一緒に勉強できる時間は少し減るかもしれませんし…できれば3食作りたかったですが…そうですね」
「ありがとう」
侑輝は安心しながらお礼を言うと、まだ完全に納得していない様子だった近衛乙月は、嬉しそうに微笑んだ後、すっきりしたように「はい」と答えた。
侑輝は流れに乗るように追加して言った。
「勿論、俺も半分は食費は払うよ」
「いえ、私がつくりたいので」
…やはりか。近衛乙月は侑輝の予想通りに答えた。
結局、何度かの押し問答があった後、女性は美容にお金がかかり、侑輝は綺麗な人のほうが良いというようなことをやんわりと伝えることでなんとか納得してもらった。近衛乙月によると、自身は化粧水やクリームは安いものでも構わないと言っていた。また侑輝が綺麗な人のほうがいいと言った時、近衛乙月が普段化粧しないことに狼狽ため、侑輝も焦ったが、化粧なしでも綺麗であるということを強く言うと近衛乙月は満足したのか、その後の侑輝のお願いは大体通ったのであった。
次の日、侑輝と近衛乙月は受付時間が始まった途端に次のパートナーの受付を行った。当然のことであるが、近衛乙月のお願いあっての事であった。侑輝はすぐ隣の近衛乙月が満足そうに微笑んでいることに自らも少し満足した。
「10位内を目標にしてたのに、うっかり1位になったね」
「うっかりではありません。私は分かってましたよ。侑輝さんは努力家ですから」
「そう…かな」
確かに今回、入院生活で遅れた学習分を補うために、また近衛乙月の足を引っ張らないために通常時よりは勉強した気がする。しかし、努力家と言われると若干、違和感がある。テストの総合点数は好感度の占める割合が相当高いため、学力だけならば2位の組に負けている可能性もある。勿論それは近衛乙月を除外してではあるが…
まあ…好感度も重要視されている点数には変わりない
1位という実感が未だ感じることができなかった侑輝は違和感を払拭するように開き直ることにした。
「3日後からは、特別部屋か…」
正直、普通の部屋だけでも十分な設備がある。わざわざ特別部屋を用意する必要があまり感じられない。
「キッチンがあるみたいですよ」
嬉しそうに言う近衛乙月を横目に侑輝は思った。キッチンも無いよりはあるほうがいいかもしれないが、あまりメリットもない。おそらく、すでに特別部屋を使用している人でさえキッチンを使用している人はほとんどいない。普通部屋でもコーヒーくらいならポットで充分であるだろうし、電子レンジもあるからである。キッチンがあるからと言っても料理をする人はいないだろう。学食を使えば支給されている小遣いを消費することはないが、料理をする場合、食材はその小遣いをわざわざ消費する必要がある。
「まあ、気分転換に料理するくらいならいいかもしれないな」
「私は、3日後から毎日しますよ」
「え…?」
…あ。侑輝は以前に食堂で近衛乙月が言ったことを思い出した。確か料理を作ってくれると言っていた。侑輝は半分冗談だと思っていた。近衛乙月であっても料理をすることが、ただの時間とお金の無駄であることは分かっているはずだ。
「それって、もしかして俺の分も?」
「はい」
近衛乙月は当然のように返事をした。
「いや、近衛さん。食材はお小遣いから負担なんだよ?それに勉強時間もなくなるわけだし、流石に毎日は…」
「…。もしかして私の料理、嫌ですか?」
近衛乙月は、少し考えたあと不安そうな顔をして尋ねる。
「いやいや、そういうわけではなく。お小遣いが増えると言えども食費は負担になるわけで…。食堂だったらタダだから、別の場所にお金が使えるわけで…。近衛さんの料理は食べてはみたいよ」
「それなら良かったです。大丈夫ですよ。私はそんなに欲しいものがあるわけではないので侑輝さんに毎日食べてもらえるのであれば、寧ろ私にとっては一番合理的で幸せな使い方なんです。」
「そう…なんだ。ちなみに朝、昼、晩のどこで作るの?」
「勿論、全部ですよ?」
「え?」
侑輝は高校生になるまでに料理をしていなかったので、食費がどれくらいかかるかは分からなかったが、もし一日一人1000円必要だとすると、1か月で2人で6万円くらいになる。また昼食も料理するとなると弁当ということだろうか。昼休みは約1時間しかないので必然的にそうなるだろう。
「近衛さん、流石に3食共は必要ないんじゃないかな。食費も足りるかわからないし」
侑輝は近衛乙月の願望を理解したわけではないが、趣味の一つとして認識することにしたが、それでも3食となると抵抗せざる終えなかった。
「そんなことないですよ。5万円なら十分足ります。」
近衛乙月は十分な自信があることが、侑輝には見て取れた。また食費も近衛乙月自身のお小遣いから全て出すことが窺えた。
「やっぱり1食くらいでいいと思うよ」
「いえ、私が作りたいので気にする必要はありません」
…そうでない。近衛乙月からしてみるとしたいからするのであるから、侑輝は気にしなくていいということであったが、侑輝からすると料理を作ってもらうのみならず食費を出してもらうわけで罪悪感というか依存し過ぎのように感じるのであった。侑輝も料理できれば、まだよかったのであるが、片腕ではマシな料理はできないし、手伝うことも難しいだろう。しかし、あまりにも抵抗すると近衛乙月を悲しませることになる。
まあ簡単に言うと侑輝は、できるだけ近衛乙月に負担を掛けさせたくはなかった。
「近衛さん」
「はい」
「間をとって2食にしよう」
「いえ、気にする…」
「俺は、近衛さんの料理を食べたい気持ちもあるけど、一緒に勉強する時間も大切だから」
侑輝は「一緒に」という言葉を極力協調していった。
「…」
近衛乙月は少し驚いた顔をした後、腕を組みながら顎に手を当てて斜め下を見ながら少しの間固まった後、納得してれたのか顔をほころばせた。
「わかりました、確かに一緒に勉強できる時間は少し減るかもしれませんし…できれば3食作りたかったですが…そうですね」
「ありがとう」
侑輝は安心しながらお礼を言うと、まだ完全に納得していない様子だった近衛乙月は、嬉しそうに微笑んだ後、すっきりしたように「はい」と答えた。
侑輝は流れに乗るように追加して言った。
「勿論、俺も半分は食費は払うよ」
「いえ、私がつくりたいので」
…やはりか。近衛乙月は侑輝の予想通りに答えた。
結局、何度かの押し問答があった後、女性は美容にお金がかかり、侑輝は綺麗な人のほうが良いというようなことをやんわりと伝えることでなんとか納得してもらった。近衛乙月によると、自身は化粧水やクリームは安いものでも構わないと言っていた。また侑輝が綺麗な人のほうがいいと言った時、近衛乙月が普段化粧しないことに狼狽ため、侑輝も焦ったが、化粧なしでも綺麗であるということを強く言うと近衛乙月は満足したのか、その後の侑輝のお願いは大体通ったのであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
田舎の幼馴染に囲い込まれた
兎角
恋愛
25.10/21 殴り書きの続き更新
都会に飛び出した田舎娘が渋々帰郷した田舎のムチムチ幼馴染に囲い込まれてズブズブになる予定 ※殴り書きなので改行などない状態です…そのうち直します。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる