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第一部
1.私って、主人公なの!?
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―――なんか、眩しい。
初めに思ったのは、視界から入る光の量の多さだった。
ぼやけてよく見えないし、音もよく聞き取れない。
我慢していると、次第と明瞭になってきたので少し安心する。
―――てか、ここどこ?
安堵も束の間、誰もがそう思うことだろう。
「あら? 目覚めたのね、ユリィ」
―――ユリィ?
雪のような真っ白な髪に、燃えるような赤い瞳の女性は、たしかに私をそう呼んだ。
「フェーリ、俺にもユリィを見せてくれ」
亜麻色の髪に、空色の瞳をした男性がやって来た。
足取りから嬉しそうな様子が伝わってくる。
「ふふっ、そんなに焦らなくても、ユリィを独り占めしたりなんてしないわよディール」
―――フェーリ、ディール……。
どうやら女性がフェーリ、男性がディールらしい。
この人たちはいったい誰なんだろうか。
それに、この体の周りを漂うモヤモヤとした白いものはいったい何なんだろうか。
「お母さま、お父さま~! エリィの妹、どこ~?」
すると、幼子の声がして、一人の女の子が入って来た。
三歳ぐらいと言ったところだろうか。
亜麻色の髪に、赤い瞳の女の子だった。
「ここよ、エリィ」
「わっ! かわいい~! ぷにぷに!」
―――おもちゃ扱い……。
「名前は? 名前は何?」
「ユリアーナ。ユリアーナ・リンドール」
どうやら私はユリアーナという名らしい。
ユリィは愛称なのだろう。
だとしたら、エリィというのはエリアーナの愛称だと考えられる。
「ユリィ……ユリィかぁ……」
エリアーナはふっと顔を綻ばせた。
「お母さまの白髪に、お父さまの空色の瞳……エリィとは反対だけど、ユリィはエリィの妹!」
「ええそうよ。エリィはユリィのお姉さんね」
「お姉さん! エリィ、ユリィのお姉さん!」
声色や表情から、エリアーナがユリアーナの誕生に喜んでいることがわかる。
フェーリやディールもそうだ。
嬉しそうに笑っている。
そんな三人を見ていると、私は不思議と温かい気持ちになるのだった。
―――あれ? ちょっと待って。
さっきのエリアーナの言葉を思い出す。
『お母さまの白髪に、お父さまの空色の瞳……エリィとは反対だけど、ユリィはエリィの妹!』
三人がユリアーナの家族なのは何となくわかってた。
問題は、私の見た目に関するセリフ。
―――白髪に、碧眼……?
小さな体を懸命に動かして周りを見渡す。
クラシックメイドドレスを着た、黒髪黒目の侍女たちが、同じようにユリアーナの誕生に感極まっている。
―――この部屋にいる人の中で黒髪黒目じゃないのは、四人だけ。ということは……
物語にはお決まりの事柄がある。
その一つに、主要人物は髪や瞳の色のほとんどが、黒ではないということだ。
その反対で脇役は必ずと言っていいほど黒髪黒目だ。
つまり―――
―――白髪に碧眼の私って、主要人物なの!?
これだけははっきり言える。
私はどうやら主要人物として転生したらしい。
となれば、確実に面倒ごとに巻き込まれるに違いない。
―――嫌だ、絶対に嫌だ……っ!
もちらんそれに伴い死期が早まることもある。
そうなれば、そうなってしまえば……
―――読書できないじゃない……っ!!
転生したらやりたいこと。
それは、前世よりももっとたくさんの本を読むことだ。
だが、主要人物には読書時間など与えられない。
こうなったら、やることは一つだ。
―――絶対に脇役として生き延びて、たくさんの本を読んでみせる!
まさかの主要人物の転生後、最初に決意したのは脇役に徹することと読書時間を確保することだった。
初めに思ったのは、視界から入る光の量の多さだった。
ぼやけてよく見えないし、音もよく聞き取れない。
我慢していると、次第と明瞭になってきたので少し安心する。
―――てか、ここどこ?
安堵も束の間、誰もがそう思うことだろう。
「あら? 目覚めたのね、ユリィ」
―――ユリィ?
雪のような真っ白な髪に、燃えるような赤い瞳の女性は、たしかに私をそう呼んだ。
「フェーリ、俺にもユリィを見せてくれ」
亜麻色の髪に、空色の瞳をした男性がやって来た。
足取りから嬉しそうな様子が伝わってくる。
「ふふっ、そんなに焦らなくても、ユリィを独り占めしたりなんてしないわよディール」
―――フェーリ、ディール……。
どうやら女性がフェーリ、男性がディールらしい。
この人たちはいったい誰なんだろうか。
それに、この体の周りを漂うモヤモヤとした白いものはいったい何なんだろうか。
「お母さま、お父さま~! エリィの妹、どこ~?」
すると、幼子の声がして、一人の女の子が入って来た。
三歳ぐらいと言ったところだろうか。
亜麻色の髪に、赤い瞳の女の子だった。
「ここよ、エリィ」
「わっ! かわいい~! ぷにぷに!」
―――おもちゃ扱い……。
「名前は? 名前は何?」
「ユリアーナ。ユリアーナ・リンドール」
どうやら私はユリアーナという名らしい。
ユリィは愛称なのだろう。
だとしたら、エリィというのはエリアーナの愛称だと考えられる。
「ユリィ……ユリィかぁ……」
エリアーナはふっと顔を綻ばせた。
「お母さまの白髪に、お父さまの空色の瞳……エリィとは反対だけど、ユリィはエリィの妹!」
「ええそうよ。エリィはユリィのお姉さんね」
「お姉さん! エリィ、ユリィのお姉さん!」
声色や表情から、エリアーナがユリアーナの誕生に喜んでいることがわかる。
フェーリやディールもそうだ。
嬉しそうに笑っている。
そんな三人を見ていると、私は不思議と温かい気持ちになるのだった。
―――あれ? ちょっと待って。
さっきのエリアーナの言葉を思い出す。
『お母さまの白髪に、お父さまの空色の瞳……エリィとは反対だけど、ユリィはエリィの妹!』
三人がユリアーナの家族なのは何となくわかってた。
問題は、私の見た目に関するセリフ。
―――白髪に、碧眼……?
小さな体を懸命に動かして周りを見渡す。
クラシックメイドドレスを着た、黒髪黒目の侍女たちが、同じようにユリアーナの誕生に感極まっている。
―――この部屋にいる人の中で黒髪黒目じゃないのは、四人だけ。ということは……
物語にはお決まりの事柄がある。
その一つに、主要人物は髪や瞳の色のほとんどが、黒ではないということだ。
その反対で脇役は必ずと言っていいほど黒髪黒目だ。
つまり―――
―――白髪に碧眼の私って、主要人物なの!?
これだけははっきり言える。
私はどうやら主要人物として転生したらしい。
となれば、確実に面倒ごとに巻き込まれるに違いない。
―――嫌だ、絶対に嫌だ……っ!
もちらんそれに伴い死期が早まることもある。
そうなれば、そうなってしまえば……
―――読書できないじゃない……っ!!
転生したらやりたいこと。
それは、前世よりももっとたくさんの本を読むことだ。
だが、主要人物には読書時間など与えられない。
こうなったら、やることは一つだ。
―――絶対に脇役として生き延びて、たくさんの本を読んでみせる!
まさかの主要人物の転生後、最初に決意したのは脇役に徹することと読書時間を確保することだった。
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