8 / 169
第一部
7.これ、まずいよね
しおりを挟む「最近の流行を取り入れたドレスですの」
「このケーキうまいな」
「その髪飾り、どこの商会のですか?」
「そこ、俺も行ったことある!」
5歳から10歳ほどの男女が何十人も集まり、グループらしきものを作って話している。
服装からして貴族に間違いはない。
周りにはケーキやクッキー、チョコレートなどのお菓子が並んでおり、どれも美味しそうだ。
壁は雪のように真っ白で、天井も高い。
―――すご……。
そんなところに私、ユリアーナはエリアーナと一緒に来ていた。
こうなったのは一週間前、王家からの招待状が来たところから始まる。
ブライト第一王子と、その双子の弟のノーブル第二王子が10歳の誕生日を迎えたため、その祝賀パーティーを行うらしい。
だがそれは建前で、このパーティは2人の婚約者を決めるために開催される。
当然王族の婚約者となれば玉の輿。
狙わない貴族などいない。
もちろん私はそんなパーティなど断りたかったが、招待状の送り主は王族。
公爵家とは言えど、断れるはずもない。
―――今頃私の読書時間なのに……。
至福の時間を邪魔されたことに少なからず怒りは抱いているが、王族を敵に回してまで読書するほど、私も馬鹿ではない。
すると―――
「きゃあぁーっ!」
少し奥から桃色の悲鳴がいくつか上がる。
どうやらこのパーティ主役が登場したようだ。
―――あれが……。
太陽を連想させる金糸。
宝石のように輝く碧眼。
甘い笑顔を浮かべ、幾人もの人に視線を向けている。
―――あれがブライト第一王子……。
そしてブライト王子の隣に、もう一人。
夜空を連想させるネイビーの髪。
一番星の輝きを持つシルバーグレーの瞳。
氷のような冷えた眼差し。
―――そしてあれが、ノーブル第二王子ね。
王子にはいくつかパターンがある。
1、熱血脳筋バカ。
2、王道の完璧王子。
3、ツンデレ氷人。
4、不思議ちゃん。
5、ほんわかなムードメーカー。
だいたいこんなところだ。
また、性格は色素に現れる。
基本的に上から順に赤、金、青、紫、緑。
そして、性格は生まれた順番も影響する。
第一王子は1か2か3のどれか。
第二王子は2か3か4。
第三王子には5が多い。
第一王子と第二王子の関係は深い。
第一王子が完璧なら第二王子は自身の才能の無さに嘆き、ヤンデレとなる(※逆の場合もある)。
第一王子が熱血バカで、第二王子が第一王子を抑える完璧王子という設定もあり得る……が、色素を見る限りそれはないだろう。
白の王族衣装に、緻密な刺繍が施された綬《じゅ》。
この2人が双子の王子と見て間違いなさそうだ。
「ブライト様……」
―――あ、まずい。
エリアーナの目が恋する少女となる。
完全に見惚れている。
どちらもたしかに目の保養に良い素晴らしい容姿を持っているが、全く興味のない私に効果は無い。
ここは空気となってパーティが終わるのを待つことにしようと思う。
そう、思っていたのだが―――
「っ!」
―――目が、合ってしまった。
しかも相手は第一王子!
―――やばいかもしれない……。
こちらから目を逸らすのは危険だ。
王族の反逆などと言われたら即、死。
それでは私の読書時間がなくなる。
なので目を逸らすことはできない。
―――だけど、どうすれば……。
「っ……!」
すると突然、ブライト王子はニコッと微笑んだ。
周囲から悲鳴が上がる。
そして私の方へと足を進めた。
―――これ、まずいよね。
勘違いだと思いたい。
だが私は公爵令嬢。
これが私に向けたものでなくても、いずれどこかで会うことは確定だ。
けどそれが今日なのは本当にまずい。
言葉を交わしてしまえば婚約者候補にはなってしまう。
だって私は公爵令嬢だから。
権力ほど恐ろしいものはない。
私は読書ができればそれでいい。
ただ、それだけなのに……!
ブライト王子は私の目の前で足を止めた。
そして―――
「初めまして。ブライト・コルトレッド・アンリィリルです」
「…………」
丁寧に挨拶をした。
嫌な予感が当たってしまった。
269
あなたにおすすめの小説
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした
犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。
思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。
何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…
死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について
えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。
しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。
その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。
死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。
戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
私は彼に選ばれなかった令嬢。なら、自分の思う通りに生きますわ
みゅー
恋愛
私の名前はアレクサンドラ・デュカス。
婚約者の座は得たのに、愛されたのは別の令嬢。社交界の噂に翻弄され、命の危険にさらされ絶望の淵で私は前世の記憶を思い出した。
これは、誰かに決められた物語。ならば私は、自分の手で運命を変える。
愛も権力も裏切りも、すべて巻き込み、私は私の道を生きてみせる。
毎日20時30分に投稿
前世と今世の幸せ
夕香里
恋愛
【商業化予定のため、時期未定ですが引き下げ予定があります。詳しくは近況ボードをご確認ください】
幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。
しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。
皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。
そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。
この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。
「今世は幸せになりたい」と
※小説家になろう様にも投稿しています
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
プロローグでケリをつけた乙女ゲームに、悪役令嬢は必要ない(と思いたい)
犬野きらり
恋愛
私、ミルフィーナ・ダルンは侯爵令嬢で二年前にこの世界が乙女ゲームと気づき本当にヒロインがいるか確認して、私は覚悟を決めた。
『ヒロインをゲーム本編に出さない。プロローグでケリをつける』
ヒロインは、お父様の再婚相手の連れ子な義妹、特に何もされていないが、今後が大変そうだからひとまず、ごめんなさい。プロローグは肩慣らし程度の攻略対象者の義兄。わかっていれば対応はできます。
まず乙女ゲームって一人の女の子が何人も男性を攻略出来ること自体、あり得ないのよ。ヒロインは天然だから気づかない、嘘、嘘。わかってて敢えてやってるからね、男落とし、それで成り上がってますから。
みんなに現実見せて、納得してもらう。揚げ足、ご都合に変換発言なんて上等!ヒロインと一緒の生活は、少しの発言でも悪役令嬢発言多々ありらしく、私も危ない。ごめんね、ヒロインさん、そんな理由で強制退去です。
でもこのゲーム退屈で途中でやめたから、その続き知りません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる