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第一部
10.⋯⋯やっぱ、逃げられないよね
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お手洗いついでに、ふと、外の空気を吸いたくなって大きな庭に出た。
色とりどりの花が咲き乱れている。
いい庭師を雇っているんだろうな、と思いながら眺めていると、花々の中に一人、見知った人がいた。
―――ノーブル王子……どうしてここに?
よく見れば、花を愛でている。
疑問を抱くも、主要人物に自ら関わりに行くのはよくない。
気づかないふりをしてそのまま後にしようと思ったのだが―――
「おい、」
―――……やっぱ、逃げられないよね。
「誰か助けて!」と思えば誰かが助けにくるのは主要人物のみ。
主要人物で確定してしまった私が逃れられるはずもない。
脇役の道は遠い。
「先程はありがとうございました、ノーブル様」
「何事もなかったかのように話し始めるな、お前は……」
声色から怒っているようには聞こえない。
私はそこに少し安心する。
「いい、気にするな。あいつのしたことは弟の責任。止めて当然だ」
「弟なのにですか?」
「弟と自分で言っているが、生まれる順番が違っただけで同い年に変わりはない。俺が先に生まれ、兄になる可能性もあった。ただ、それだけの話だ」
さすが(推定)氷の貴公子。
責任感のあるしっかりした人である。
正真正銘の青系キャラクターだ。
―――金色系キャラクターよりも青系キャラクターの方が楽で助かる。
もちろん金色系キャラクターとはあの人のことである。
名前は伏せるが。
「立ち話もなんだし、向こうで少し話さないか?」
―――もうすでに話していますけど?
だなんて思いは心の中に留める。
「ここではダメなのですか?」
「パーティを抜け出して来たやつに見られると厄介だ」
―――あ、たしかに。
噂になるのは困る。
「初めてのパーティで早々に第一王子と第二王子と手中に収めた女狐と言われたくなければここでもいいが……」
「場所を変えましょう」
「決断が早くて助かる」
そりゃそうだろう。
そんな噂が出回っては困る。
私の読書タイムに影響が出かねない。
奥の方に移動し、2人掛けの椅子に座った。
わざわざ座ったのはノーブル王子が「パーティではずっと立っているしな。少し休みたい。付き合え」と言ったからである。
「7歳にしてはすごかったな、ブライトへの対抗ぶり。滅多に見られない珍現象だった」
―――珍現象……。
だがノーブル王子の言葉は正しい。
第一王子に口で遠回しに王宮への勧誘を断る私の方があの場ではおかしいのだから。
だが“珍現象”と言われると私=珍獣的な発言に聞こえてしまう(実際そうなんだろうけど)。
どうやら私には主要人物と会話をすることになった場合の対処法を学ぶ必要があるらしい。
「パーティは嫌いか?」
「……急にどうしたのですか?」
前の話題とは話しが逸れている。
「ブライトとの時が一番すごかったが、目に気力がない。早く帰りたいオーラがすごかったぞ」
「えっ!? あっ、すみません……」
驚きで大声を出してしまった。
申し訳ない。
「アレで演技してるつもりだったか? 死んでると言っても過言ではなかったぞ。まあ、即察せるレベルのやつだったのに気づかないふりをして話し続けていたブライトが悪いんだが」
―――……ん? ちょっと待って。
「気づかないふり……?」
ノーブル王子の言葉に引っ掛かりを覚える。
「そのままの意味だ。あいつはとにかくしつこくてな。一度決めたことは粘り強くやるんだよ」
―――まさか……!
「王族の名を使って私が嫌でも王宮に入るように圧をかけてたってことですか!?」
「そういうことだ」
「嘘でしょ……」
「残念ながら本当だ」
ということは、そんなピンチを救ったノーブル王子は―――
―――神じゃん。
ということである。
(※脳内イメージです)
色とりどりの花が咲き乱れている。
いい庭師を雇っているんだろうな、と思いながら眺めていると、花々の中に一人、見知った人がいた。
―――ノーブル王子……どうしてここに?
よく見れば、花を愛でている。
疑問を抱くも、主要人物に自ら関わりに行くのはよくない。
気づかないふりをしてそのまま後にしようと思ったのだが―――
「おい、」
―――……やっぱ、逃げられないよね。
「誰か助けて!」と思えば誰かが助けにくるのは主要人物のみ。
主要人物で確定してしまった私が逃れられるはずもない。
脇役の道は遠い。
「先程はありがとうございました、ノーブル様」
「何事もなかったかのように話し始めるな、お前は……」
声色から怒っているようには聞こえない。
私はそこに少し安心する。
「いい、気にするな。あいつのしたことは弟の責任。止めて当然だ」
「弟なのにですか?」
「弟と自分で言っているが、生まれる順番が違っただけで同い年に変わりはない。俺が先に生まれ、兄になる可能性もあった。ただ、それだけの話だ」
さすが(推定)氷の貴公子。
責任感のあるしっかりした人である。
正真正銘の青系キャラクターだ。
―――金色系キャラクターよりも青系キャラクターの方が楽で助かる。
もちろん金色系キャラクターとはあの人のことである。
名前は伏せるが。
「立ち話もなんだし、向こうで少し話さないか?」
―――もうすでに話していますけど?
だなんて思いは心の中に留める。
「ここではダメなのですか?」
「パーティを抜け出して来たやつに見られると厄介だ」
―――あ、たしかに。
噂になるのは困る。
「初めてのパーティで早々に第一王子と第二王子と手中に収めた女狐と言われたくなければここでもいいが……」
「場所を変えましょう」
「決断が早くて助かる」
そりゃそうだろう。
そんな噂が出回っては困る。
私の読書タイムに影響が出かねない。
奥の方に移動し、2人掛けの椅子に座った。
わざわざ座ったのはノーブル王子が「パーティではずっと立っているしな。少し休みたい。付き合え」と言ったからである。
「7歳にしてはすごかったな、ブライトへの対抗ぶり。滅多に見られない珍現象だった」
―――珍現象……。
だがノーブル王子の言葉は正しい。
第一王子に口で遠回しに王宮への勧誘を断る私の方があの場ではおかしいのだから。
だが“珍現象”と言われると私=珍獣的な発言に聞こえてしまう(実際そうなんだろうけど)。
どうやら私には主要人物と会話をすることになった場合の対処法を学ぶ必要があるらしい。
「パーティは嫌いか?」
「……急にどうしたのですか?」
前の話題とは話しが逸れている。
「ブライトとの時が一番すごかったが、目に気力がない。早く帰りたいオーラがすごかったぞ」
「えっ!? あっ、すみません……」
驚きで大声を出してしまった。
申し訳ない。
「アレで演技してるつもりだったか? 死んでると言っても過言ではなかったぞ。まあ、即察せるレベルのやつだったのに気づかないふりをして話し続けていたブライトが悪いんだが」
―――……ん? ちょっと待って。
「気づかないふり……?」
ノーブル王子の言葉に引っ掛かりを覚える。
「そのままの意味だ。あいつはとにかくしつこくてな。一度決めたことは粘り強くやるんだよ」
―――まさか……!
「王族の名を使って私が嫌でも王宮に入るように圧をかけてたってことですか!?」
「そういうことだ」
「嘘でしょ……」
「残念ながら本当だ」
ということは、そんなピンチを救ったノーブル王子は―――
―――神じゃん。
ということである。
(※脳内イメージです)
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