悪役令嬢の妹(=モブのはず)なのでメインキャラクターとは関わりたくありません! 〜快適な読書時間を満喫するため、モブに徹しようと思います〜

詩月結蒼

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第一部

14.王宮図書館へレッツゴー!

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 パーティから数日後、名前のない手紙が私宛てに届いた。
 3日後の午前に王宮で待っているとのことで、私は今日のために複製体を作る練習をしていた。

「【複製コピー】」

 淡い光とともに私そっくりの人物が現れる。
 複製体の魔力を増やし、逆に私は魔力を抑えていく。
 そうしなければサーシャたちに私が複製体を創ったことを気づかれてしまうのだ。

―――よし、できた。

 複製体の完成だ。
 白髪碧眼の無口な私そっくりのお人形が出来上がる。

―――うん。完璧。

 この複製体を作るのには少し時間がかかった。
 制作するにあたって問題となったのは主に2つ。
 1つは話すことだ。
 無口な方だと思っているが、話しかけられればちゃんと答える。
 サーシャにはよく声をかけられるのでその対策をしていた。
 もう1つは魔力を帯びさせることだ。
 人間を含む動物のほとんどは微量でも魔力を帯びている。
 そのため魔力を帯びていないとすぐに怪しまれるし、魔力によって位置を特定することもあるのですぐに異変に気づかれてしまうのだ。
 これが一番大変で、複製体を作る時は誤魔化すのが面倒だった。
 同じ2つの魔力を感じさせてしまうので、時と場所に気をつけて実験していた。
 今日のためと思えばそこまで苦に感じることなかったので良かった。
 では王宮へ向かうとしよう。

「ユリ。私が帰ってくるまであなたは私、ユリアーナとして過ごしてね」

 ちなみに複製体の名前はユリにした。

「わかった」

 ユリは声もそっくりである。
 まぁ一応私だしね。

「何かあったら知らせて」
「わかった」
「じゃあ行ってくるから。よろしくね」
「わかった。いってらっしゃい」
「いってきます」
―――よーし! 王宮図書館へレッツゴー!

 ユリは命令に忠実だ。
 安心して任せられる。
 私は心の中で詠唱を始めた。

―――【透明】【隠蔽】【変色】【飛翔】

 髪の色を変え、姿を消し、窓から飛び降り空へと飛んだ。
 とても気持ちがいい。
 空は青く、緑の草原が広がる。
 陽光は暖かく、風は爽やか。
 今日は飛翔日和である。
 私は本を読むことが一番好きだが、この世界に転生し魔法を使えるようになって、風の一部となる感じが好きになった。
 魔法が使えるからこそ楽しめる娯楽。
 前世で飛ぶことはもちろん、虚弱な体の私は走ることすらできなかったので転生して良かったと思える。
 とても楽しい。
 生きててよかったと思える。

―――でもこの速度だと遅れるかも。

 リンドール公爵家から王宮までは馬車で二時間ほどかかる。
 【飛翔】は遮るものがないのでそのまま一直線で進むことができるが私の力ではまだ速度が遅い。
 もう少し練習しなければ、と思いながら他の魔法も展開させた。

―――【速度向上】【疾風】【同化】

 速度を上げ、風を作り、風と同化する想像イメージを構築する。
 七個同時の魔法の発動は少し辛い。
 だが王宮図書館には変えられない。

―――はいではここでクイズです。

 前世では無詠唱で同時展開の魔法を使える人は基本的に最強ルートです。
 それを当然知っている私は最強ルートを避けていました。
 ですが現在、最強ルートに足を完全に突っ込んでると思う人は心の中で手挙げてー。
 ……そうです。
 地味にというか完全に最強ルート系統に足をザバザバ突っ込んでいます。

―――そんなつもりはなかったんだけどね。

 なんとこの世界には数冊、一定の魔力を流し込まないと読むことができない本があるらしいのです。
 しかもその本があるのは王宮図書館!
 これは今まで以上に鍛えなければと思った私は日中も夜間も魔力圧縮の繰り返しと魔法の同時展開を練習し、気づけば最強ルートに浸かっていたというわけです。
 まぁ、強くて悪いことはないしいつか入る……正確には入らされるであろう学校の実技テスト対策だと思えば許せる範囲だ。
 補修を受けないためと思えば、うん……。
 という感じで最強ルート(?)に入ってしまった(と思いたくないけど多分そうだと思われる)のである。

―――けど、隠せてるし大丈夫大丈夫。

 魔力圧縮をしているおかげで周りには全くバレていない。
 普通の少女を演じられていると思う。
 命を狙われる危機に直面したら力を出すだろうが、それまでは大人しく脇役《モブ》でいこう。
 ……主要人物メインキャラクターではないと信じて。

―――あ、見えてきた。

 ちょうど約束の時間となる。
 私の視界に白く大きい王宮が映った。


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