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第一部
13.前言撤回ッ!
しおりを挟む―――王 宮 図 書 館。
今、王宮図書館と言いました!?
―――前言撤回ッ!!
王宮図書館がお礼なら話は別だ。
「おっ、王宮、図書、館……っ」
「あぁ。その名の通り、王宮にある図書館のことだ。蔵書数はもちろん、規模も国一番を誇るところだ。お前なら興味あるかと思ったんだが……」
「ありますあります! すごく興味あります!!」
私は身を乗り出してノーブル王子に興奮度を伝える。
「もしかしたらあるのかなと思っていたのですが、本当に実在したのですね! 一度は行ってみたいと、入ってみたいと思っていたのです! 全身で本の偉大さと歴史、匂い……すべてを体感してみたいとずっと……っ!」
「わかった。わかったから落ち着け」
「あっ……すみません」
これを逃したら一度も行かないと思ってしまい、つい熱意が溢れて饒舌になってしまった。
だが、王宮図書館という響きだけでうっとりしてしまう。
どのような場所なのだろうか。
行きたい!
いや、絶対に行く!
「くっ、くくっ」
「……どうかしましたか?」
「いや、なんでもない……」
確実に何かあるが、まあいいだろう。
「あっ……」
するとノーブル王子は何かを思い出したかのような反応をした。
「何かありましたか? 王宮図書館のお礼はやっぱり無理、とかはダメですよ?」
「いや、それじゃない。俺が言い出したのに今さらなしはない」
「では、なにが……」
「ブライトだ。あいつ、お前に執着してるっぽいから王宮で姿を見かけたら『やはり筆頭魔術師に興味が!』とか言って勘違いするかもしれないと思って。そうなると面倒だろ? お前」
―――たしかに……。
王宮で私の存在をブライト王子が目にしたら確定で筆頭魔術師にさせることだろう。
私の平穏な読書時間が脅かされることになるのでそれは大変だ。
なんとかしなければならない。
「……あ、ならこうすればどうでしょうか? 【変色】」
「!」
私は魔法で髪の色を白髪からローズレッドに変える。
これなら私だと思わないだろう。
髪の色が違うだけでも全然違う人に見える。
「……すごいな」
「でしょう? これならなんとかなると思います」
【変色】を【解除】し、白髪に戻す。
「そうだな。招待状を送る。当日はお前だとバレないように来てくれ」
「わかりました。では私はそろそろお暇しますね。素敵な時間をありがとうございました」
「待て」
去ろうとした私をノーブル王子は呼び止める。
何の用だろうか。
「……お前、普段は何と呼ばれている」
「? ユリアーナ様、とかですね」
「そうじゃない」
―――いや、そうですけど。
ノーブル王子の求めている回答とは違ったようだ。
「愛称は何かと聞いているんだ」
「愛称ですか……」
なるほど、そっちでしたか。
「ユリィ、と呼ばれています」
「ユリィ……悪くないな」
愛称に良いも悪いもあるのだろうか。
よくわからない。
「なら、俺もユリィと呼ぼう」
「あの……できればやめてほしいです」
「何故だ」
「婚約者などではないですし、そう呼ばれるとおそらく他の女性から嫉妬や敵視を向けられると思うのです」
読書時間のためにも敵は少ない方がいい。
「そうか。それはよくないな。……では二人きりの時なら許してもらえるか?」
「……そうですね。二人きりの時なら」
こうして祝賀パーティは幕を閉じた。
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