悪役令嬢の妹(=モブのはず)なのでメインキャラクターとは関わりたくありません! 〜快適な読書時間を満喫するため、モブに徹しようと思います〜

詩月結蒼

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第一部

19.はいそうですよねわかってました!

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「っ……離しなさいユリアーナ嬢! これは王族への反逆だ! 君は罪を犯している!」

 罪?
 逆に言わせていただくと、罪を犯したのはブライト王子の方だろう。
 王族の権力を使って魔術師に引き込もうとした癖になにを言う。
 しかもさっき、私に迫ってたよね?
 正当防衛だ。
 ストレス発散と私情も入った、ね。

「拘束を解いてほしければ今から私が提示する条件を飲んでください」
「条件だと……?」

 本当はたくさん痛めつけてから無条件で受け入れてほしいんだけど……一応こんなブライト王子でも王族だ。
 傷つけたら反逆者として捕えられ、読書できなくなる可能性がある。
 私の優先順位はいつどんな時でも読書が一番だ。
 これは永遠に変わらない。

「一つ目、私に関わるのをやめてください。詳しく言うならば、魔術師にしようとするのをやめていただきたい。私は魔術師になる気などありませんから」

 魔術師は面倒そうだ。
 ブライト王子の推薦付き、みたいなことになれば女性の魔術師から恨み、妬みの類の視線を一身に受けそうだからである。

「二つ目、私の読書時間を邪魔しないでください」

 読書時間を奪われることは私の一番嫌いなことだ。
 ものすごく切実にやめていただきたい。

「三つ目、私の王宮図書館の出入りを公認してください。今日は別のお方から許可をいただいています。先程言ったように私は私の読書時間を邪魔されたくありません。私を見かけても話しかけること、接触することをしないでください。以上です」

 一つ目と二つ目を合わせたことだ。
 これはかなり重要なことで、これを守っていただかなくては困る。
 まあ、実質要求は二つなのだが、理解力の低そうな第一王子に配慮して三つにしておいた。
 えらいぞ私。
 心の中でそっと盛大な拍手をする。

「君のことはよくわかったよユリアーナ嬢」
―――本当だといいけどなぁ。

 悪役の「わかった」は基本的に嘘だ。
 少なくとも前世の小説ではそうだった。
 信用できない。
 さて、その「わかった」の結果は―――

「条件など飲まない。無条件での解放を命じる」
―――はいそうですよねわかってました!

 ということでブライト王子はご自身の大切な機会をドブにお捨てになりました!
 私からの攻撃を逃れるには条件を飲むしかなかったのにねぇ。
「一つだけなら条件を飲んでやる!」ぐらい言うと思ったんだけど……ま、仕方ない。
 条件を飲んでくれた方が五、六割嬉しかったけどこれで私は思う存分報復ができる。

「ではまず、その本を返してくださいね」
「!」

 植物を動かし、ブライト王子の手にあった私の大切な大切な読みたい本を取り返した。
 第一戦、勝利!
 人質に取られてる物は取り返した。
 あとは読書時間だけど……ブライト王子倒せばすぐに終わるか。

「おい、ユリアーナ嬢、やめっ……!」
―――やーだよ。やめるわけないじゃん。

 どこまでも馬鹿王子である。
 私は魔法陣を展開させ、発動する。
 無詠唱でもいいのだが、怖がらせ、怯えさせるには詠唱して嫌な妄想をさせたほうがいい。

「【火焔】【氷結】【疾風】」

 三大魔法を詠唱し、一つの魔法にする。
 本当は五大魔法にしようかと思ったのだが、面倒になったのでやめた。
 ちなみに全部で七大魔法まである。
 火、水、風、地、空、光、闇。
 これが主な属性だ。
 これ以外の属性もあるが、あまり使い手はいない。
 私はあれこれ未来の読書時間確保のため足を突っ込んだことがあるので何個かは違う属性を持っているが……。
 三大魔法はまあまあ難しいが攻撃特化の魔法で、私の使える魔法の中でかなりの威力を持つ。
 最強技……ではないが、ブライト王子は私のできる最強を使うほどの人間ではない。

「やっ、やめっ……!」

 いい気味だ。
 恐怖よりも拒絶に近い心境だったが、どちらにしろ私に今後関わろうとしないようにすればいいのだ。

―――じゃ、一回ぐらいは地獄に行ってくださいね。ブ・ラ・イ・ト・さ・ま?
「ひっ……!」

 私は黒い笑みでにっこりと微笑む。
 【火焔】【氷結】【疾風】を混ぜて作った攻撃特化の魔法を詠唱する。
 けど、詠唱は途中で途切れた。
 私の口を誰かが手で塞いだのだ。

「っ!?」
―――周りからはユラとブライト王子が話しているようにしか見えないはず。なのにどうして……っ、まさか!
「ユリィ、そこまでだ」

 聞き覚えのある声がした。
 私をユリィと呼ぶのは家族ぐらいだ。
 しかしここは王宮図書館。
 家族がいるはずもない。
 だがユリィと呼ぶのは家族以外にもいる。
 その人は私の口元から手を離した。
 私は「はっ」と息を吸いその名を言った。

「っ、ノーブル様!」

 三大魔法の合体魔法の詠唱を止めたのは、ここにはいないはずのノーブル様だった。


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