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第一部
48.ねえ教えて
しおりを挟む「私とクロウの関係ですが、異母兄弟なことに間違いはありません。これはユリアーナ様もご存じなのでは?」
「ええ知ってるわ」
「ならどうしてことことを取引する情報に選んだのですか?」
「確かめたいことがあったのよ」
このことを私が知ったのは拘束された少年に話を聞いたからだ。
コイン変換の際にも聞いたが、ここでは何人も取引をしている。
いくらエヴァでも全員の会話を聞き取るのは難しい。
なのにエヴァは私が二人が異母兄弟であることを知っているとわかっていた。
だとすれば、考えられるのは一つだけ。
「あなた、私があの子を買うまでの間、何をしていたのか知ってるでしょ」
「ここをどこだとお思いですか? 私の領域内にネズミが侵入したぐらいわかるに決まってるでしょう。でなければ、ここはとっくに国に潰されてます」
―――そうだよね。
ここにはエヴァの結界やらなんやらが緻密に張り巡らされている。
侵入や逃走をすぐに見つけるためだろう。
私が最初にここに来た時は侵入者だ。
今は客だから何も言わないが、もし私が少年を買えなかったら、今頃殺されていたに違いない。
ここは金持ちが権力を持つ世界だ。
「ねえエヴァ」
「なんでしょう」
「異母兄弟、ってだけじゃないわよね?」
「……どういう意味です?」
とぼけるのなら、深入りするだけだ。
私は多分、少年の“秘密”を知っている。
「エヴァ、教えて? どうしてあの子の力を抑えているの?」
「!」
エヴァの表情が大きく変わった。
―――当たりね。
私が知りたいのはエヴァと少年の関係。
正妻の愛人の息子の異母兄弟。
それにより結ばれた主従契約。
しかし、おそらくそれだけではない。
「魔力に戦闘能力……あの子の力はもっと高いはずよ。なのに抑えている。暴走を懸念して? ううん、それだけじゃないわ」
私は他者に自分の魔力を流すことによって、その人がどのくらいの魔力を持っているのか知ることができる。
魔力の底を探るのだ。
しかし少年の魔力の底はわからなかった。
おそらく、少年の奥底には私よりも多い巨大な魔力が眠っている。
しかしそれだけではない。
実際に触れてわかった。
「ねえエヴァ。あの子の『記憶』を封じているのはなぜ?」
「!!」
「もっと言うのなら、本当のあの子は、はるか昔に絶えたと言われているある一族の末裔なんじゃないの?」
夜空のような黒髪に、黒曜石の瞳を持ち、類い稀なる桁外れな戦闘能力と、そこ知れぬ魔力を持つ……。
そんな一族が昔いたと文献にあった。
少年は(推定)悪役側の主要人物《メインキャラクター》だ。
最強系でもおかしくはない。
「あの子を私の暗殺のために送り込んだのは、私があの子の“秘密”を知っているからなの? ねえエヴァ。私はあなたの目にどう映っているの?」
エヴァ何も話さない。
だが、私には少年の主人として、少年のことを知る権利がある。
「ねえ教えて、エヴァ。あなたは何故隠しているの?」
そのことを知るのは、エヴァしかいない。
――――――――――――
報告/
あくモブのPVがついに1万を超えました。
読者の皆様への感謝と、そのお礼として短編を近況ノートで公開中です。時間がある方はぜひ。
↓↓↓
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