悪役令嬢の妹(=モブのはず)なのでメインキャラクターとは関わりたくありません! 〜快適な読書時間を満喫するため、モブに徹しようと思います〜

詩月結蒼

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第一部

59.少なくとも、第一印象はいいよね

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「ルア。行くよ」

 私は【変色】で髪と瞳の色を変える。

―――ピンク系色ありキャラクターの種類は主に四つ。

①素直で純粋で健気な生粋の主人公タイプ
②愛され系の元気っ子
③自分を見せるのが上手い小悪魔系
(↑裏切りも多い)
④演技が上手い腹黒な野心家

 とまあ、こんな感じだろう。
 大抵、最高にいい子か最高に悪い子かのどちらかだ。

―――少なくとも、第一印象はいいよね。

 裏切られるかはまた別として、少なくとも周りとの関わりはうまい。
 敵になられると厄介なやつである。

「すみません」
「? どちらさまですか?」
―――おお~、これが主人公ヒロイン

 艶のある美しい桃色の髪は幼げが残るツインテールに。
 海のような深い青い色の瞳はとても綺麗だ。
 そしてこの首を少し傾けた時の顔!
 めっちゃ可愛い!!
 確信した。
 この子は絶対的な主人公ヒロインだ。

「わたくしたち旅の者でして、少し泊めていただきたいのです。この近くに町や村はありませんか?」
「ああ! なら、私の村を案内しますね。うしろの方も?」
「ええ。この子はルゥ。私と一緒に旅をしているの。あっ、言い忘れてたわね。私はユリ。あなたは……?」
「ユリさんとルゥさんね。私は……」

 その時のことは、鮮明に覚えている。

『どうしてお姉ちゃんは生きるの?』
『……どういう意味?』
『そのままの意味だよ。どうしてお姉ちゃんは生きるのかなぁって思ったから聞いてみただけ』
『どうして?』
『? うーん……だってお姉ちゃん、必要?』

 私が一層本にのめり込んだ原因。
 それは、妹の無邪気な言葉だった。
 私の存在が否定されたようで苦しかった。
 私は、これまでに経験したことのない衝撃を受けた。
 優しくて、素直で、優しい妹。
 だけどそれがだったのだと知った時、私の精神はすでにぼろぼろに壊れかけていた。
 この世界に転生して、もうきっと聞くことのない言葉だと、そう、思っていた。
 そんな、妹の名前は―――

「カレンよ。カレン・ミラー。よろしくね。ユリさん、ルゥさん」

 牧野まきの花蓮かれん
 美しく咲く、蓮の花の名前だ。

―――なんで、なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで……っ!

 カレン、が意味するのは、私の危険人物トラウマだ。

「案内しますね。どうぞこちらへ」
「すまない、ありがとう。……ほら、行くぞ。なんで止まってんだよ」
―――息が、できない。

 何度も、何度も、記憶が蘇る。

『お姉ちゃん、本なんか読んでてつまらなくないの?』
『一緒に外で遊ぼうよ! ……え、お姉ちゃんとは遊べないの? 体が弱いから? ひどい! 今日は花蓮の誕生日なのに!!』
『ひとりぼっちだなんて、惨めだね』
『お母さんもお父さんも、もうお姉ちゃんのこと好きじゃないんだって。可哀想なお姉ちゃん』
『なんで死なないの? 私だったら孤独に耐えられなくて死んじゃうのに』
『早く死んでよ。家族に迷惑しかかけないお姉ちゃん』

 わかってた。
 年々会う回数が少なくなってたこと。
 回復する見込みがない私をこと。
 花蓮だけを溺愛するようになったこと。
 本をあげるから、愛を求めるのを諦めるよう遠回しに言ってたこと。

 すべて―――私がいらない子だったから。

「! おい!」

 ルアの声が聞こえた。
 だけど私は返事ができなかった。


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