60 / 158
第一部
59.少なくとも、第一印象はいいよね
しおりを挟む「ルア。行くよ」
私は【変色】で髪と瞳の色を変える。
―――ピンク系色ありキャラクターの種類は主に四つ。
①素直で純粋で健気な生粋の主人公タイプ
②愛され系の元気っ子
③自分を見せるのが上手い小悪魔系
(↑裏切りも多い)
④演技が上手い腹黒な野心家
とまあ、こんな感じだろう。
大抵、最高にいい子か最高に悪い子かのどちらかだ。
―――少なくとも、第一印象はいいよね。
裏切られるかはまた別として、少なくとも周りとの関わりはうまい。
敵になられると厄介なやつである。
「すみません」
「? どちらさまですか?」
―――おお~、これが主人公。
艶のある美しい桃色の髪は幼げが残るツインテールに。
海のような深い青い色の瞳はとても綺麗だ。
そしてこの首を少し傾けた時の顔!
めっちゃ可愛い!!
確信した。
この子は絶対的な主人公だ。
「わたくしたち旅の者でして、少し泊めていただきたいのです。この近くに町や村はありませんか?」
「ああ! なら、私の村を案内しますね。うしろの方も?」
「ええ。この子はルゥ。私と一緒に旅をしているの。あっ、言い忘れてたわね。私はユリ。あなたは……?」
「ユリさんとルゥさんね。私は……」
その時のことは、鮮明に覚えている。
『どうしてお姉ちゃんは生きるの?』
『……どういう意味?』
『そのままの意味だよ。どうしてお姉ちゃんは生きるのかなぁって思ったから聞いてみただけ』
『どうして?』
『? うーん……だってお姉ちゃん、必要?』
私が一層本にのめり込んだ原因。
それは、妹の無邪気な言葉だった。
私の存在が否定されたようで苦しかった。
私は、これまでに経験したことのない衝撃を受けた。
優しくて、素直で、優しい妹。
だけどそれが計算済みの演技だったのだと知った時、私の精神はすでにぼろぼろに壊れかけていた。
この世界に転生して、もうきっと聞くことのない言葉だと、そう、思っていた。
そんな、妹の名前は―――
「カレンよ。カレン・ミラー。よろしくね。ユリさん、ルゥさん」
牧野花蓮。
美しく咲く、蓮の花の名前だ。
―――なんで、なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで……っ!
カレン、が意味するのは、私の危険人物だ。
「案内しますね。どうぞこちらへ」
「すまない、ありがとう。……ほら、行くぞ。なんで止まってんだよ」
―――息が、できない。
何度も、何度も、記憶が蘇る。
『お姉ちゃん、本なんか読んでてつまらなくないの?』
『一緒に外で遊ぼうよ! ……え、お姉ちゃんとは遊べないの? 体が弱いから? ひどい! 今日は花蓮の誕生日なのに!!』
『ひとりぼっちだなんて、惨めだね』
『お母さんもお父さんも、もうお姉ちゃんのこと好きじゃないんだって。可哀想なお姉ちゃん』
『なんで死なないの? 私だったら孤独に耐えられなくて死んじゃうのに』
『早く死んでよ。家族に迷惑しかかけないお姉ちゃん』
わかってた。
年々会う回数が少なくなってたこと。
回復する見込みがない私を最初からいなかったように振る舞い始めたこと。
花蓮だけを溺愛するようになったこと。
本をあげるから、愛を求めるのを諦めるよう遠回しに言ってたこと。
すべて―――私がいらない子だったから。
「! おい!」
ルアの声が聞こえた。
だけど私は返事ができなかった。
94
あなたにおすすめの小説
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
モブ転生とはこんなもの
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。
乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。
今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。
いったいどうしたらいいのかしら……。
現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。
どうぞよろしくお願いいたします。
他サイトでも公開しています。
【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした
犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。
思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。
何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…
プロローグでケリをつけた乙女ゲームに、悪役令嬢は必要ない(と思いたい)
犬野きらり
恋愛
私、ミルフィーナ・ダルンは侯爵令嬢で二年前にこの世界が乙女ゲームと気づき本当にヒロインがいるか確認して、私は覚悟を決めた。
『ヒロインをゲーム本編に出さない。プロローグでケリをつける』
ヒロインは、お父様の再婚相手の連れ子な義妹、特に何もされていないが、今後が大変そうだからひとまず、ごめんなさい。プロローグは肩慣らし程度の攻略対象者の義兄。わかっていれば対応はできます。
まず乙女ゲームって一人の女の子が何人も男性を攻略出来ること自体、あり得ないのよ。ヒロインは天然だから気づかない、嘘、嘘。わかってて敢えてやってるからね、男落とし、それで成り上がってますから。
みんなに現実見せて、納得してもらう。揚げ足、ご都合に変換発言なんて上等!ヒロインと一緒の生活は、少しの発言でも悪役令嬢発言多々ありらしく、私も危ない。ごめんね、ヒロインさん、そんな理由で強制退去です。
でもこのゲーム退屈で途中でやめたから、その続き知りません。
悪役令嬢の心変わり
ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。
7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。
そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス!
カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく
犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。
「絶対駄目ーー」
と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。
何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。
募集 婿入り希望者
対象外は、嫡男、後継者、王族
目指せハッピーエンド(?)!!
全23話で完結です。
この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる