悪役令嬢の妹(=モブのはず)なのでメインキャラクターとは関わりたくありません! 〜快適な読書時間を満喫するため、モブに徹しようと思います〜

詩月結蒼

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第二部

124.反省会

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「はい、では反省会をしますよ」
「えぇ~? 勝ったからいいじゃん~」
「だめです」

 良く悪いことを振り返ることだと思われがちだが、反省っていうのは、良いことも悪いことも考えることだ。
 日々反省を繰り返すことで人は成長できる!
 ⋯⋯なんてカッコつけてみたいけど、私自身も反省は嫌いである。

「今回の魔法戦は魔法銃《クロト》ではなく私が即興でつくった槍を使用しました。使い心地はいかがでしたか?」
「問題なし! ⋯⋯と言いたいところだけど、ちゃんと握ってるわけじゃないから、やっぱり違和感はあったな。動きもちょっと鈍かった」

 普通の人なら遠慮して「大丈夫」と言うところをノエル先輩は問題点を指摘してくれる。
 それはとてもありがたいことだ。
 ⋯⋯たまに「ダメだったかぁ」と傷心することもあるけれど、一晩寝れば回復するので平気だ。

「分かりました。改良を加えてみます。この戦法は魔法銃クロトが使用禁止になった場合の保険と考えてください」
「りょーかいです」

 ピシッと敬礼のポーズをとるノエル先輩。
 素直でよろしい。

「次に移りますね。⋯⋯魔法戦の前、ノエル先輩が攻撃役、私が補佐役と言ったのを覚えていますか?」
「うん。でもあれ、意味なかったね。相手がハイネとルルンだったっていうのも大きく影響してると思うけど、敵はあたしたち2人をどっちも警戒してるから、どっちにも攻撃してくるんだよね」
「はい。2対1の方が有利に思えますが、そうなると、私かノエル先輩が補佐に回るってことになるので、怖いんでしょうね」
「あたしだってヤだよ。ユリユリを放っておくといつの間にか巨大な魔法陣展開して味方もろとも殺されるかもしれないじゃん」
「味方もろともって⋯⋯そんなことしませんよ、私」

 そんなことしたら大問題だ。
 一級魔術師の資格を剥奪されるだけでなく、処刑または国外追放される。
 読書できなくなっちゃう!

―――最近はセフェルカルツィ図書館に入り浸って読書三昧してるんだよね。ふふふ⋯⋯思い出すだけで顔がニヤけちゃう⋯⋯むふふ⋯⋯。
「ユリユリ、なんか変だよ?」
「⋯⋯としょかん⋯⋯わたしのとしょかん⋯⋯ふふっ」
「おーい、現実に帰ってきて~」

 ノエル先輩の言葉にハッとして意識が現実に戻る。
 いけないいけない、顔に出ちゃうところだった。

「そ、そういうことなので、役割はもう考えずにやるべきかと思いました! 基本は攻撃役と補佐役のつもりですが、難しかったら考えずにやりましょう!」
「あたしもそれがいいと思う。臨機応変にやるほうが大事だよ、きっと」

 そう言ってもらえてよかった。
 少し安心する。

「そうそう。あたし魔法戦しながら考えてたんだけどさ、手札を増やしたほうがいいと思うんだよね。攻撃のパターンとか」
「攻撃のパターン⋯⋯?」
「一応ペアの魔法戦なわけじゃん? なのにあたしたち好きなように暴れてたからさ⋯⋯それじゃあペアって名前の単独行動してるやつらだよね」
「!!」

 たしかにそうだ。
 今回の魔法戦、私はルコラ様と、ノエル先輩はハイネ先輩と1対1で戦っていた。
 ほぼ個人戦である。
 ペアの意味がないのだ。

―――でも、ペアでの行動ってなに?

 ふたりで攻撃⋯⋯は隙がありすぎる。
 それに、敵が分散したら自然と個人戦になるのでは?

「⋯⋯あえて隙を見せて、それを利用して攻撃しようとする敵をペアに倒してもらう⋯⋯というのはどうでしょう」
「囮作戦か」
「はい」

 ちゃんと相手の動きを見ているってアピールになるし、ペアの絆を見せつけられる。
 忘れがちだが魔法戦―――異学年交流魔法戦はエトワールのである。
 個々の実力、ペアでの協力の仕方は成績に影響する。

「けど、囮になる方は成績下がらない? 隙を見せて相方にやってもらうって、弱者のやり方じゃない? 強者なら隙をわざと見せて敵を討つんだよ?」
「うーん⋯⋯」

 難しい。
 非常に難しいぞ、これ。

「⋯⋯どうしましょう」
「もう考えるの放棄するってのもありじゃね?」
「ありですかね?」
「ありでしょ。だってこの問題はハイネとルルンのふたりにも言える問題だよ? ハイネはどうか分からないけど、ルルンは首席なんだから、ほぼ個人戦同じ方法で戦ってるってことは、成績に影響しないってことじゃないかな?」
「⋯⋯たしかに。ノエル先輩、頭いいですね」
「ふふーん。こう見えてあたし、去年は全試験学年一位(魔法戦を除く)だからね!」
「ええっ!? そうなんですか!?」
「そだよ~。これ言うとみんな驚くよね~」

 ノエル先輩、学年一位だったんだ⋯⋯。
 なのに―――

「なんで留年したのか、って?」
「っ⋯⋯」
「いいよ。教えるって約束だったもんね」

 ノエル先輩は立ち上がると、手招きした。
 どうやら寮の屋上に行くらしい。
 今は放課後。
 特別寮の生徒はそれぞれ別の場所で活動しているから、屋上は話し場所にぴったりだと、前に教えてもらった。

―――結構景色いいな⋯⋯。

 男子寮と女子寮、エトワールの校舎に、活気な街が一望できた。
 ノエル先輩はよく、屋上へ来るのだろうか。

「あたしの話、どこから聞きたい?」

 どこから、と言われても、私には選択肢が分からないし、どこまで踏み込んでいいのかも分からない。

「じゃあ最初からにするか」
「最初から、とは⋯⋯?」
「小さな里に生まれた弱い弱い女の子が生まれたところから、だよ」

 ノエル先輩は「ふぅ⋯⋯」と息を吐くと、話し始めた。

「これは、あたしが嫌われて、救われるまでのお話」



――――――――――――
著者から/
 この124話だけ文字数少ないのは、次の話の内容を考えるとキリが悪かったからです。短くてすみません。魔法戦後のルコラについては裏話でお伝えします。
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