悪役令嬢の妹(=モブのはず)なのでメインキャラクターとは関わりたくありません! 〜快適な読書時間を満喫するため、モブに徹しようと思います〜

詩月結蒼

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第二部

131.〈天蓋の魔術師〉

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「ウィリアム様。なぜ、ここに⋯⋯」
「リアナと同じ理由だよ」
「!」
―――殿下の護衛⋯⋯!

 なるほど。
 異学年交流魔法戦は、学校関係者以外も出入りできる、暗殺するにはピッタリの機会。
 護衛を増やすのは当然か。

「まさか、ウィリアム様とお会いできるとは⋯⋯」
―――ウィリアム様と会えた⋯⋯! もう最高っ! 幸せ!!

 私はウィリアム様のことをとってもとってもお慕いしている。
 この人は前世で言う推し⋯⋯いや、推しなんて枠には収まらない。
 別世界に生きる神様みたいな存在なのだ。
 大袈裟に言えば、ウィリアム様が「死ね」って言ったら死ぬし、「殺せ」って言ったら殺すのだ。
 もちろんウィリアム様はそんなこと言わないけれど。

「大きくなったね、リアナ。また身長伸びたんじゃない?」
「っ! 本当ですか!?」
「あぁ。0.5センチくらい」
「0.5センチ⋯⋯!」

 これはでかい。
 低身長の私からしたら大きな数字だ。

「さっきの魔法戦、見てたよ。古代魔術も使えたんだね。知らなかった」
「あっ、あれはライゼ様に教えてもらったからです。私の力では⋯⋯」
「使ったのはリアナだ。結局は、自分の力だよ。すごいね」
「~~っ」
―――褒めてもらえた⋯⋯ウィリアム様に褒めてもらえた⋯⋯っ!

 ウィリアム様の使う魔法は静謐で美しく、見惚れてしまう。
 任務でウィリアム様の魔法を見たとき、思ったのだ。
 私もあんな魔法を使えるようになりたい、ウィリアム様のような魔法使いになりたい⋯⋯と。

「あと、一緒に戦ってた⋯⋯先輩? 彼女も強かったね」
「はい。ノエル先輩はとっても強いです」
「特殊な武器を使っていたようだけど⋯⋯あれは?」
「ちょっと知り合いに頼んで作ってもらったんです。ノエル先輩、魔法の使用禁止っていう条件付きで魔法戦に参加しているんです」
「魔法の使用禁止? ⋯⋯ということは、あれは魔力を込めると魔法が発動する魔道具か」
―――少し話しただけなのに全部理解してる⋯⋯ウィリアム様、すごい!!

 かっこよすぎる。
 一から十を学ぶ男⋯⋯かっこよすぎでは?

「ちょっと怖いな⋯⋯。魔法戦用に新しく張った結界が壊れてしまうかもしれない」
「ウィリアム様が結界を張ったのですか?」
「あぁ。古くなっていたし、なにより、今年はリアナが出場するんだ。新しくしなきゃだめだろう?」
「てっきり、リュカ様が行うものだと⋯⋯」
「リュカの方がたしかに結界の精度は高い。だけど、彼女は忙しいからね。学校エトワールの防御結界ほど重要ってわけでもないから、私に任されたんだ」

 ウィリアム様はリュカ様に次ぐ高レベルな結界を作ることができる人だ。
 本人は謙遜しているが、間違いなく一級魔術師の中でも防御に強い。
 けど、二つ名の〈天蓋の魔術師〉はウィリアム様の使う攻撃魔法が由来だし、決してどちらかに偏っているわけではない。
 つまりなんて言うのかな⋯⋯弱点が少ないのだ!
 苦手な分野ってものがあまりないから、どんな敵とでも戦える、超万能なお方なのである!

「そろそろフォーレインの令嬢の魔法戦が始まるね」
「! レティシア様の⋯⋯!」
「行っておいで。⋯⋯あぁ、そうそう。これを渡そうと思っていたんだ」
「?」

 ウィリアム様は瑠璃色の缶を手渡した。
 なんだろう⋯⋯。

「開けてごらん」
「⋯⋯っ、これ⋯⋯」

 缶の中には星形のクッキーとカラフルな金平糖が入っていた。

「リアナ、甘いもの好きだったでしょ? 前に見つけて、リアナが喜びそうだと思って買ってきたんだ」
「っ! ありがとうございますっ!」

 綺麗だ。
 まるで、宝石のように輝いている。

―――しかもこれ、『星の神子リル』シリーズに出てきたものにそっくり!

 リルが従者のユヅルと初めて出会ったとき、ユヅルからもらったものが星形のクッキーと金平糖だ。
 瑠璃色の箱は、リルの瞳の色。
 クッキーと金平糖はリルが司る星に似た形。

―――これをもらって、リルはユヅルに心を開くんだよね。

 神子としてやっていけるかどうか不安だったリルに、まるでお伽噺に出てくる王子様みたいなユヅルが現れて、一目惚れする⋯⋯。

―――『星の神子リル』シリーズが好きなこと、ウィリアム様に伝えたのは1、2回くらいのはずなのに⋯⋯覚えていたんだ。

 嬉しさで胸がぎゅっとなる。

「魔法戦、頑張って」
「~~はいっ! 頑張ります」

 ウィリアム様に「頑張って」と言われた⋯⋯これはもう、やるしかない!
 頑張ろ!!



――――――――――――
著者から/
 ユリアーナが最も尊敬する人、ウィリアムの登場回でした。⋯⋯にも関わらず、あまりウィリアムのことを紹介できませんでした。すみません。
 近いうちにウィリアムのことを詳しく載せます。
 次回はレティシアの魔法戦です。紫蘭の姫騎士に乞うご期待ください。


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