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邂逅
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しおりを挟む寮に帰った聖月は、バスルームにいた。するするとやや大きめな制服を脱ぎ、そのままバシャバシャと洗面台で顔を洗う。やや大きめな制服と中に着込んだカーディガンは、萌え袖だ、と嘯きつつも極力指先以外を露出しない事で肌の白さを誤魔化す為の物。長めの黒髪で顔をさり気なく覆って隠しつつも、頬に少し紅を差すことで血色がよいように見せかけて、これまた肌の白さを誤魔化している。
「そうでもしなければ、一周回って体調が滅茶苦茶悪い人だからなぁ」
面倒だ、と思いつつ、その黒髪を引っ張ってするりと頭の上から取り除く。パサリと音を立てて落ちてきたのは、艶やかな白い髪。ついでに黒のカラコンも外すと碧眼が現れる。色素の欠落した容姿。アルビノの典型的な特徴を、聖月も勿論の事、持ち合わせていた。
「これで太陽の下歩けなかったら完璧にアルビノだよなぁ。まぁ、そこは特殊体質だったことに感謝してるけど」
邪魔そうに背中へと髪を流して浴室に移動する。きゅっと音を出して暖かなお湯を頭から被る。体力のない体に纏わりついていた微かな疲労感が洗い流される様で、聖月はほっと息をついた。そのまま湯の雨を浴びつつ、昼間の会話を思い出していた。
「ああ、そう言えば聖月。気を付けた方が良いかもしれない」
急に真面目な顔で忠告してきたのは、自称情報通の蓮。唐突な警告に聖月は目を白黒させた。
「えーっと、何処がどうつながればその警告になるの?」
「感情的に言えば、下手な厄介ごとを教えれば首突っ込みそうで恐いから嫌なんだけど」
面白い事が起きるのか、と既に目を輝かせている聖月をげんなりした顔で見やり、手を振る蓮。真面目な話だから、と聖月の額を軽く小突いて意識を変えるように促す。
「鬼ごっこの時に聖月が遭遇した不届き者いただろ?」
「ああ。いたねぇ。スマホ迄無くしてしまった可哀想な人がいるグループ」
「それは完全にお前の所為だからね?ちょっとは罪悪感ある顔しようか」
やはり茶化さずにはいられないようだ。諦めて強引に話を続けることにする。
「校内で噂になってたんだけど、どうも、Fクラスに関係する奴らだったらしい」
「Fクラス?」
「分かりやすく言えば、ヤクザにつながるような不良達の総本山」
彼らの所属する第九学園。この学園は闇をつかさどるといわれるだけあって、ヤクザに関係する子息や名家の落ちこぼれ、素行不良者が多数在籍する。その為、と言うべきか、第九にはSからFの7クラスあり、Sは実力重視、AからFが一般だが、Fになるにつれてヤクザ色が強くなる。Fは完全にヤクザの巣窟で、各学年にトップがいるのだ。つまり、Fクラスと言われた瞬間に、ヤクザや不良とは縁遠い生徒たちからは恐れられ、忌避されるのである。
「でも、不良がたむろしてるだけでしょ?」
「それが、当代に関しては話が別なんだよね」
「というと」
「数十年に一度、古宮家の人間が第九学園に進学してくる。そして、3年Fクラスのトップを張っているのが、その古宮家の後継者。名前は古宮巽」
「古宮か。それは確かにマズいかも」
流石に茶化している場合ではないと理解した聖月が険しい顔になる。それ程の威力がある名前なのだ。古宮と言うのは。
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