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prologue
しおりを挟む昔、この国にはとっても怖い王様がいました。王様はライオンの獣人で、とても贅沢な生活をしていました。女の獣人を一杯そばに連れて来たり、美味しいものを沢山食べては無駄にしたり、黄金に輝くアクセサリーや宝石を集めたりしていたのです。
ある獣人は王様に言いました。このままでは国中の食べ物がなくなってしまいます、と。王様はその獣人を処刑してしまいました。別の獣人が泣きながら言いました。可愛い娘を返してください、と。王様は冷たくなって動かなくなった娘を返しました。また別の獣人が王様の前で叫びました。このままでは、国のお金が無くなってしまいます、と。王様は税金をあげればいいだろうと、税金を上げてしまいました。
国民たちの生活は苦しくなっていきました。お腹がすいたよ、と子供の獣人がお母さんに言いました。お母さんは泣きながら、もうご飯が買えないのと子供に謝りました。お腹を空かせたお兄さんたちは、屋台に並ぶ果物を盗もうとして店のおじさんに痛いことをされました。その店のおじさんは、自分がお腹がすいて売り物の果物を食べてしまいました。そこに王様の使いがやって来て、税金を払いなさい、と言ってきました。でも、誰も払う事が出来ず、寒くて何もない牢屋に閉じ込められてしまいました。
獣人たちは思いました。王様がいなければ、こんなに苦しい思いをしなくていいのではないかと。お腹がすく事も、寒い場所で震える事も無いのではないかと思い、王様を恨みました。皆が王様なんて嫌いだ、とひそひそ話をしていたその時でした。英雄が現れたのです!黒くて立派な狼の耳に、力強い尻尾、真っ黒な瞳は強い意志に煌いていました。狼獣人の青年は、皆で一緒に闘って悪い王様をやっつけよう!と言いました。一人、また一人と一緒に闘いたい獣人たちが集まっていきました。
王様との闘いは、とてもつらいものでした。毎日仲間が傷ついていくのを見た英雄は、誰もいない所で泣いていました。強い心をもった英雄も、仲間の傷つく姿に心を痛めていたのです。そんな英雄はある日、愛する人を見つけました。とても美しい猫の獣人でした。猫の獣人は英雄に寄り添って甘い声で英雄を褒め称えました。英雄は、愛する猫獣人の為にもっと頑張るようになりました。
長い長い闘いが、ようやく終わりを迎えました。革命の日が来たのです。英雄は悪い王様の城に攻撃し、王様の所に辿り着きました。悪い王様は言いました。私を誰だと思っている、王様だから偉いのだ、こんな事をして許されると思っているのか、と。英雄は言いました。皆を苦しめる王様なんて、王様じゃない、と。そして、王様を守る騎士たちを倒した英雄たちは、王様を捕まえました。
誰もがこれで平和に暮らせる、と喜んだその時でした。悪い王様に仕える悪い大臣が叫んだのです。お前の恋人は儂の子でスパイだ、儂を捕まえるならソイツも捕まえろ、と。英雄は驚きました。そんなはずはない、と英雄は叫ぶと恋人の猫獣人を呼んだのです。やってきた猫獣人に英雄は言いました。悪い大臣が変な事を言っている、お前も何か言ってやれ、と。そのとき、猫獣人の姿がみるみる内に変わっていったのです!そこに現れたのは、狐の獣人でした。
ビックリする英雄とその仲間達に、狐の獣人は嗤って言いました。漸く気付いたか、ここまで気づかないなんて馬鹿なんじゃないのか、と。なんと、その狐の獣人は姿を変える特別な才能を持っており、その才能を利用して父親に命じられるままにスパイをしていたのです。
嘘だ、と叫ぶ英雄に狐のスパイは言いました。お前なんか嫌いだ、あともう少しで革命の計画なんて握りつぶせたのに、と。英雄を馬鹿にしたように笑った狐のスパイは、逃げようとしましたが逃げられませんでした。押さえつけられてなお、憎しみに満ちた目で英雄を睨んだ狐のスパイは、英雄に口汚く罵りました。そして、怒った英雄とその仲間に父親の悪い大臣と一緒に捕まる事になったのです。
その後、悪い王様と大臣は罰を受ける事になり、国には平和が戻りました。獣人たちは英雄に、新しい王様になって欲しいとお願いしました。英雄は快くそれを引きうけ、新しい王様になりました。そうして皆幸せになりましたとさ。めでたし、めでたし。
――――――とある歴史絵本より。
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