ガミジ童話

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ケーキ姫

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あるところに、パパとママがおりました。

パパは電車に乗って、お仕事に。

ママは車に乗って、ケーキ屋のパートに向かいました。

ママがケーキ屋で、ケーキを並べていると、大きな大きなホールケーキが出てきました。

「なんて大きなケーキでしょう」

ママはケーキが大好きだったので、ホールケーキをそのまま食べてしまいました。

すると、

「おぎゃあ! おぎゃあ!」

なんと、ケーキの中からとっても元気な女の子の赤ちゃんが出てきました。

「なんて可愛らしい赤ちゃん。うちの子にしましょう」

ママはそのまま赤ちゃんを家に連れて帰ると、ケーキ姫と名付けて育てることにしました。

ケーキ姫はケーキが大好き。

ケーキをいっぱい食べて、ぷくぷくと育っていきました。



ある日のこと、ケーキ姫はテレビを見ながらぼんやりしていました。

なかなかパパがお仕事から帰ってこないのです。

「パパが遊んでくれないとつまらない」

そう言いながらテレビを見ていると、パパが映りました。

「あ、パパだ!」

ケーキ姫はパパを見てうれしくなりました。

でもよく見ると、赤い顔をした鬼がパパといっしょに映っています。

鬼はパパに向かって腕を振り回しておそろしい声を出していました。

「ママ! たいへん! パパが鬼にいじめられてる! ケーキ姫、鬼退治してくる!」

ママは驚いて、ケーキ姫を止めました。

「危ないからダメ! 鬼退治に行く子はご飯抜きだからね!」

しかしケーキ姫はママがクッキーを隠している場所を知っていたのです。

こっそりクッキーの袋を持ち出すと、パパのいる街に行くために一人で駅に向かって走り出しました。

そんな走っているケーキ姫を見て、近くの野良犬がすごい勢いで追いかけてきました。

「ワンワンワンワン」

と、激しく吠えています。

ケーキ姫は犬が大嫌いだったので、

「これあげるから、あっち行って!」

と叫んで、野良犬に向かってクッキーを投げました。

野良犬は尻尾を振って、クッキーを追いかけていきました。

ケーキ姫はそのあいだに駅にたどり着くことができました。

でも駅員さんたちが通せんぼしていて、電車に乗ることができません。

ケーキ姫は困ってしまいました。

考えているとおなかがすいてきたので、クッキーを食べ始めました。

すると、食べこぼしたクッキーのかけらを食べようと、

「くるっぽっぽーくるっぽっぽー」

たくさんのハトが集まってきました。

駅の中はハトでいっぱい。

駅員さんたちがハトに驚いているすきに、ケーキ姫は電車に乗り込むことができました。

プルルルル~という音を鳴らして、電車が出発します。

ケーキ姫は、滅多に乗ることのない電車に乗って、どきどきわくわくしました。

電車はあっというまにパパがいる街に着きましたが、降りるのがもったいないくらいでした。

しかし、ケーキ姫はパパを助けに来たのです。もう電車から降りないといけません。

ケーキ姫は電車から降りると、パパの働いている会社に走りました。

そのとき、

「きゃっきゃっきゃっきゃ!」

なんと突然、サルがやってきて、ケーキ姫が持っていたクッキーの袋を丸ごと取り上げてしまったのです。

「かえして! パパにあげるクッキーなの!」

だけど、サルは袋を持ったまま、どこかに行ってしまいました。

ケーキ姫は悲しい気持ちになって、とぼとぼとパパの会社に入るのでした。

すると、

「こらーーーーー!!」

と、どなり声が聞こえてきました。

ケーキ姫は自分がどなられたのかと思って、ドキドキしました。

でも違ったみたいです。

会社の中でどなられているのは、パパでした。

真っ赤な顔をした鬼が、パパの前でどなり散らしていました。

パパは青ざめた顔をして震えています。

「パパをいじめないで!」

ケーキ姫は鬼の前に立ちました。

「なんだこのチビスケは!」

鬼が怖い声で叫びます。

ケーキ姫は泣きたくなる気持ちをぐっとこらえて、

「パパはケーキ姫とおうちに帰るんだから!」

と、叫びました。

鬼は、ますます赤い顔になって、ケーキ姫につかみかかろうとしました。

そのときです。

「きゃっきゃっきゃっきゃ」

どこからともなく、サルがやってきて、鬼に飛びつきました。

「うわあ、なんだこのサルは!」

それは、さっきケーキ姫からクッキーを取っていったサルでした。

サルは鬼にしがみついたまま離れようとしません。

いまのうちにと、ケーキ姫はパパの手を引いて駆けだしました。

「サルさんありがとう!」

ケーキ姫はパパと一緒に駅に向かいます。

そして、ちょうど発車するところだった電車にとびのりました。

「ここまでくれば大丈夫だね!」

ケーキ姫がパパに言ったときです。

「まてー、にがすものかー」

と、声が聞こえました。

なんと、鬼が電車にしがみついていました。

窓からケーキ姫たちを除いています。

鬼が窓を割ろうとしたそのとき、

「くるっぽっぽーくるっぽっぽー」

たくさんのハトたちが飛んできて、鬼に向かってとびかかりました。

「うわあ、なにをする!」

たくさんのハトたちにかこまれて、鬼は電車から落ちていきました。

「これでもう大丈夫だね」

ケーキ姫はほっとしました。

電車がすぐにケーキ姫の町の駅に着きました。

パパと一緒にニコニコ顔で駅を出たとき、

「さっきはよくもやってくれたな、もう許さないぞ」

鬼がケーキ姫の前に現れました。

いつの間にか先回りしていたのです。

「このチビスケめ。お前も一緒に会社に連れ帰ってやる!」

鬼がケーキ姫につかみかかろうとしたそのときです。

「ワンワンワンワン」

野良犬が、ものすごい速さで走ってきました。

これには鬼もびっくり。必死になって野良犬から逃げ回ります。

「た、たすけてくれ! 俺は犬が大嫌いなんだ!」

ケーキ姫たちに、泣きながら頼むのでした。

だけどケーキ姫も犬が大嫌いです。どうすることもできません。

すると、

「もう、これ以上ひどいことはしませんか」

と、パパが言いました。

「しない! もうしない!」

鬼がそう言うのを聞くと、パパは野良犬に近寄って、よしよししました。

すると、野良犬はしっぽをパタパタふっておとなしくなりました。

「おとなしく帰りなさい」

パパは鬼が電車に乗るの見届けると、ケーキ姫を抱っこして家に帰りました。

家に帰ると、ママがケーキ姫をぎゅっと抱きしめました。

「心配してたのよ。無事でよかった」

そう言ってママは、パパとケーキ姫のためにとっても大きなケーキを作ってくれました。

家族みんなで食べるケーキは、とても幸せな味がしたそうです。

めでたし、めでたし。
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