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番外編:ハラダレミーの友愛
NOCTURNの乙女
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「今、店開けるからちょっと待っててね~」
一音と透に声をかけると、私は鍵を開けて1人で扉の中に入った。
繁華街の片隅にある、雑居ビルに挟まれた小屋みたいなたたずまいの建物。
扉には黒いピアノ型のカンバンがかけてあり、白い文字で「NOCTURN」と書いてある。
ここが私の店、ピアノバー「ノクターン」だ。
とは言っても、私がこのお店のオーナーというわけじゃない。
私はあくまで雇われ店長。
だけど、オーナーからは私の自由にしていいって言われている。
「オーナー、今ごろ何やってんのかなぁ……」
衣装をハンガーから外して着替えていると、ここで働き始めたときのことを思い出す。
高校を卒業した私は、大学には行かずにさっさと家を出ることにした。
高校の頃から遊び歩いていたおかげで、妙な人脈ができていた。
だから伝手をたどって仕事をいくつか紹介してもらったのだ。
紹介してもらったお店の中で、一番気に入ったのが、この「ノクターン」だった。
楽器を買わなくてもピアノが弾ける。
これは私にとって魅力的なことだった。
働きたいとオーナーに言いに行ったとき、彼は私の体を値踏みしながら言った。
「きみ、何歳? まだ中学生とかじゃないの?」
失礼な話だ。
けど、そういわれるのも無理はない。
私の身長は低い。
小学生のころは一音よりも大きかったのに、中学に入ってからはぴたりと成長が止まってしまい、今でも140cmそこそこしかない。
「私はもう18だっつ-の!」
何回も主張して、最後にはピアノの実力(耳コピ歴10年)でオーナーを納得させた。
「18歳なのはわかった。ピアノが弾けるのも分かった。けど、お客さんから見たら、子どもが夜中に働かされているようにしか見えないだろうし……そうだなぁ……」
オーナーは困ったように頭を書きながら、店の奥へと引っ込んだ。
「これを着てみなよ」
戻ってきたオーナーは、なにやら黒い服のようなものを抱えていた。
受け取ってみると、それは胸元の空いた黒のロングドレスだった。
「それから、これとこれも」
そういって、もう一つ渡されたのは、厚底サンダルとロングヘアのウィッグだった。
怪訝そうに、渡されたアイテムを見つめる私に。
「奥の部屋使っていいからさ、それ全部身に着けておいで」
と、オーナーは店の奥を指さした。
「ぜったい覗かないでよ」
憎まれ口をたたきながら、奥の部屋に行くと、荷物に隠れるかのように大きな姿見があった。
言われたとおりに、ドレスを着て、厚底サンダルを履いて、ウィッグを付けて姿見を見てみる。
「あー、これならいけるかも」
いつもの自分とは違う、スラっとした女性の姿がそこにはあった。
あとは化粧を工夫すれば、綺麗なお姉さんの出来上がりだ。
色っぽさとは無縁だと思っていたので、かなりうれしくでドキドキしたのを覚えている。
私はここで働くのが楽しくて楽しくて……。
楽しく働いているうちに、いつの間にか店長を任せられ、いつの間にかオーナーが旅に出てしまった。
「よし、今日も、綺麗な私のできあがり!」
昔のことを思い出しつつも化粧を終えると、私は姿見に向かってほほ笑む。
この2年間で色っぽい表情もたくさん学んだ。
「さ、開店するよ~。入って~」
と、表の2人に声をかけて、今日のお仕事が始まる。
まあ、他の客が来るまでは、一音と透に酒を作ってダベるだけだけどね。
一音と透に声をかけると、私は鍵を開けて1人で扉の中に入った。
繁華街の片隅にある、雑居ビルに挟まれた小屋みたいなたたずまいの建物。
扉には黒いピアノ型のカンバンがかけてあり、白い文字で「NOCTURN」と書いてある。
ここが私の店、ピアノバー「ノクターン」だ。
とは言っても、私がこのお店のオーナーというわけじゃない。
私はあくまで雇われ店長。
だけど、オーナーからは私の自由にしていいって言われている。
「オーナー、今ごろ何やってんのかなぁ……」
衣装をハンガーから外して着替えていると、ここで働き始めたときのことを思い出す。
高校を卒業した私は、大学には行かずにさっさと家を出ることにした。
高校の頃から遊び歩いていたおかげで、妙な人脈ができていた。
だから伝手をたどって仕事をいくつか紹介してもらったのだ。
紹介してもらったお店の中で、一番気に入ったのが、この「ノクターン」だった。
楽器を買わなくてもピアノが弾ける。
これは私にとって魅力的なことだった。
働きたいとオーナーに言いに行ったとき、彼は私の体を値踏みしながら言った。
「きみ、何歳? まだ中学生とかじゃないの?」
失礼な話だ。
けど、そういわれるのも無理はない。
私の身長は低い。
小学生のころは一音よりも大きかったのに、中学に入ってからはぴたりと成長が止まってしまい、今でも140cmそこそこしかない。
「私はもう18だっつ-の!」
何回も主張して、最後にはピアノの実力(耳コピ歴10年)でオーナーを納得させた。
「18歳なのはわかった。ピアノが弾けるのも分かった。けど、お客さんから見たら、子どもが夜中に働かされているようにしか見えないだろうし……そうだなぁ……」
オーナーは困ったように頭を書きながら、店の奥へと引っ込んだ。
「これを着てみなよ」
戻ってきたオーナーは、なにやら黒い服のようなものを抱えていた。
受け取ってみると、それは胸元の空いた黒のロングドレスだった。
「それから、これとこれも」
そういって、もう一つ渡されたのは、厚底サンダルとロングヘアのウィッグだった。
怪訝そうに、渡されたアイテムを見つめる私に。
「奥の部屋使っていいからさ、それ全部身に着けておいで」
と、オーナーは店の奥を指さした。
「ぜったい覗かないでよ」
憎まれ口をたたきながら、奥の部屋に行くと、荷物に隠れるかのように大きな姿見があった。
言われたとおりに、ドレスを着て、厚底サンダルを履いて、ウィッグを付けて姿見を見てみる。
「あー、これならいけるかも」
いつもの自分とは違う、スラっとした女性の姿がそこにはあった。
あとは化粧を工夫すれば、綺麗なお姉さんの出来上がりだ。
色っぽさとは無縁だと思っていたので、かなりうれしくでドキドキしたのを覚えている。
私はここで働くのが楽しくて楽しくて……。
楽しく働いているうちに、いつの間にか店長を任せられ、いつの間にかオーナーが旅に出てしまった。
「よし、今日も、綺麗な私のできあがり!」
昔のことを思い出しつつも化粧を終えると、私は姿見に向かってほほ笑む。
この2年間で色っぽい表情もたくさん学んだ。
「さ、開店するよ~。入って~」
と、表の2人に声をかけて、今日のお仕事が始まる。
まあ、他の客が来るまでは、一音と透に酒を作ってダベるだけだけどね。
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