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番外編:ハラダレミーの友愛
幼い日々とドレミの鍵盤
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小さい頃の思い出は、ママとのケンカで彩られている。
私は子どもの頃から落ち着きがなかったようで、母親をよく怒らせていたらしい。
勝手にものを散らかす私にママが怒り、それにムッとした私がやつ当たりで物を壊す。
そしてまたママが怒り……と、そんな繰り返しだった。
家にいると、すぐにケンカになってしまうから、家よりも幼稚園にいるほうが好きだった。
私の住んでいた団地から子どもの足で、歩いて5分のところにある「あさがお幼稚園」。
家のように狭くないし、広い園庭もあった。
久しぶりに見に行くと、狭い庭だと思うんだけど、その当時の私には広々とした高原のように感じられた。
園庭を走り回る私から逃げる子も多かった気がする。
よく走った勢いで体当たりしてたからかな?
その時は気にしてなかったけど。
そんな中、一音は、
「レミちゃん、いい子にしなきゃだめだよ」
と言いながら、いつも私のそばにいた。
一音はそのころから、いい子で、オーラがあって、かわいかった。
やることに邪気がないっていうのかな。
なにをやってもかわいく見えて、みんなから可愛がられてたように思う。
みんなは一音を可愛がりたいのに、一音は私を追いかける。
私を先頭に、みんなで追いかけっこみたいになっていた。
なんだかんだで、幼稚園に通っていた三年間は楽しかったと思う。
ひょっとして、人生で一番あの頃が楽しかったかも?
なにしろ、いまだに覚えているくらいなのだから。
追いかけっこにつかれて休憩しているときに、一音に聞いてみたことがある。
「かずねちゃんは、なんでいつもついてくるの?」
ついてこられるのが嫌なわけじゃなかった。
ふと不思議に思って、聞いてみただけだった。
「レミちゃんはすぐに、どこかにいっちゃうから」
もじもじしながら一音は言った。
「まいごにならないように、ずっとかずねが見てるの」
そう言う一音の、なんてかわいいこと。
幼いながらもキュンとしてしまった。
こうして一緒にいる間に、私と一音の絆はどんどん強くなっていった。
幼稚園を卒園しても、私たちは同じ小学校の同じクラスで、いつも一緒にいた。
いっぽうで、私とママの仲の悪さは小学校になっても変わらなかった。
いや、もっともっと悪化してたっけ?
大きくなるにつれて、知恵をつけて生意気になっていく私が、ママは気に食わないようだった。
「もう帰ってきたの……」
学校から帰るたびに、疲れた声でママから言われるのが私の日常。
だからやっぱり、家にいるよりも学校にいるほうが好きだった。
勉強は嫌いだったけど、音楽の授業だけは大好きだった。
はずむような、わくわくするような気持にさせてくれる音楽が、私は大好きだった。
音楽の教科書をめくっては、手当たり次第に鍵盤ハーモニカでひいて、
「うるさい!」
と、隣のクラスから文句を言われるくらいだった。
ところが一音は、名前に似合わず音楽がまったく分からないようだった。
鍵盤と音の関係がまったく頭に入らないし、音楽を奏でるという感覚が理解できないようだった。
「かずねはダメねー。レミが教えてあげるんだから」
ほかの勉強ではかなわないのに、音楽では優位に立てるのがうれしかった。
「これがドの音。音楽はドから始まってドで終わるんだよ」
それでも、どこがドの音かすぐにわからなくなるようなので、ドのキーに赤いシールを張ってあげたりもした。
「ドは一番目の音だから、かずねの音。となりがレで、そのとなりがミ。だからレ・ミで私の音だよ」
あんまりにもドレミの覚えが悪いので、最後にはそうやって教えた。
そしたら、
「そっか。一音はドで、となりがレミなんだね。私たち音楽でもいっしょなんだね」
と、一音が嬉しそうにほほ笑んだ。
それから私は一音のことをドーちゃんと呼ぶようになった。
一音は私のことをレミーと呼ぶようになった。
そして、中学校になっても、高校になっても。
ドレミの鍵盤のように、私たちは隣にいつづけたのであった。
私は子どもの頃から落ち着きがなかったようで、母親をよく怒らせていたらしい。
勝手にものを散らかす私にママが怒り、それにムッとした私がやつ当たりで物を壊す。
そしてまたママが怒り……と、そんな繰り返しだった。
家にいると、すぐにケンカになってしまうから、家よりも幼稚園にいるほうが好きだった。
私の住んでいた団地から子どもの足で、歩いて5分のところにある「あさがお幼稚園」。
家のように狭くないし、広い園庭もあった。
久しぶりに見に行くと、狭い庭だと思うんだけど、その当時の私には広々とした高原のように感じられた。
園庭を走り回る私から逃げる子も多かった気がする。
よく走った勢いで体当たりしてたからかな?
その時は気にしてなかったけど。
そんな中、一音は、
「レミちゃん、いい子にしなきゃだめだよ」
と言いながら、いつも私のそばにいた。
一音はそのころから、いい子で、オーラがあって、かわいかった。
やることに邪気がないっていうのかな。
なにをやってもかわいく見えて、みんなから可愛がられてたように思う。
みんなは一音を可愛がりたいのに、一音は私を追いかける。
私を先頭に、みんなで追いかけっこみたいになっていた。
なんだかんだで、幼稚園に通っていた三年間は楽しかったと思う。
ひょっとして、人生で一番あの頃が楽しかったかも?
なにしろ、いまだに覚えているくらいなのだから。
追いかけっこにつかれて休憩しているときに、一音に聞いてみたことがある。
「かずねちゃんは、なんでいつもついてくるの?」
ついてこられるのが嫌なわけじゃなかった。
ふと不思議に思って、聞いてみただけだった。
「レミちゃんはすぐに、どこかにいっちゃうから」
もじもじしながら一音は言った。
「まいごにならないように、ずっとかずねが見てるの」
そう言う一音の、なんてかわいいこと。
幼いながらもキュンとしてしまった。
こうして一緒にいる間に、私と一音の絆はどんどん強くなっていった。
幼稚園を卒園しても、私たちは同じ小学校の同じクラスで、いつも一緒にいた。
いっぽうで、私とママの仲の悪さは小学校になっても変わらなかった。
いや、もっともっと悪化してたっけ?
大きくなるにつれて、知恵をつけて生意気になっていく私が、ママは気に食わないようだった。
「もう帰ってきたの……」
学校から帰るたびに、疲れた声でママから言われるのが私の日常。
だからやっぱり、家にいるよりも学校にいるほうが好きだった。
勉強は嫌いだったけど、音楽の授業だけは大好きだった。
はずむような、わくわくするような気持にさせてくれる音楽が、私は大好きだった。
音楽の教科書をめくっては、手当たり次第に鍵盤ハーモニカでひいて、
「うるさい!」
と、隣のクラスから文句を言われるくらいだった。
ところが一音は、名前に似合わず音楽がまったく分からないようだった。
鍵盤と音の関係がまったく頭に入らないし、音楽を奏でるという感覚が理解できないようだった。
「かずねはダメねー。レミが教えてあげるんだから」
ほかの勉強ではかなわないのに、音楽では優位に立てるのがうれしかった。
「これがドの音。音楽はドから始まってドで終わるんだよ」
それでも、どこがドの音かすぐにわからなくなるようなので、ドのキーに赤いシールを張ってあげたりもした。
「ドは一番目の音だから、かずねの音。となりがレで、そのとなりがミ。だからレ・ミで私の音だよ」
あんまりにもドレミの覚えが悪いので、最後にはそうやって教えた。
そしたら、
「そっか。一音はドで、となりがレミなんだね。私たち音楽でもいっしょなんだね」
と、一音が嬉しそうにほほ笑んだ。
それから私は一音のことをドーちゃんと呼ぶようになった。
一音は私のことをレミーと呼ぶようになった。
そして、中学校になっても、高校になっても。
ドレミの鍵盤のように、私たちは隣にいつづけたのであった。
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