まさか転生? 

花菱

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「⦅やったね~、大きなロック鳥が3羽だよ! ぐふふふ、美味し~の食べたいね~♪⦆」

〔〔おいし~の!? たべたい!!〕〕

 あれが食べたい~これが食べたい~と話に花を咲かせながらみんなの下に向かうと、別れた場所から少し進んだ所でオークと戦闘中だった。


 下手に刺激を与えればザックさん達に危険かもしれない……様子を見ていると、オークは2体だが数回攻撃が入っているんだろう所々に傷が見えるが、でもそのせいで興奮状態になっている様だ。

『うぅ~、がんばれ~!!』


「ザック右によけて! 今!」

「おう!」

「ライル、足止めします。その隙を!」

「任せて! ハッ!」


 ドドォォン!

 さすがの連携。ザックさんがしばらく剣で攻撃をした後、アーロンさんの指示で横にそれた瞬間にアーロンさんの風魔法で。
 カイルさんが足元を地魔法で緩めバランスを崩したのを逃がさず、ライルさんが槍で止めを刺す。



「しゅごいしゅご~い! バシュッってシャッって~!!」

 改めて4人の闘う姿を見て昨日からキャ~キャ~言いっぱなし……そのたびに4人に頭をナデナデされています。



 それからも時々魔物と遭遇したり、食材としてほしい物の気配を感知したらビャク達と協力して狩に出向き、サクサクと移動を続けながら、森の中の植物にも目を光らせる事で、新しい薬草や果物の他に自然薯のようなイモも発見することが出来た♪

 その全てを少量ずつではあるけど、別荘に植え付けを行い、以前と同様に地属性魔法を行った。

 前回のスターピーチは毎晩別荘に行って、魔法を発動させた甲斐があり6日目の時点で大きな樹に成長しているので、この調子ならもうすぐ実も生りそうで今から楽しみでしかたがない。




「ここでしゅよ! わたちがいたとこでしゅ♪」 

 この世界に来て目覚めた場所。前回ギン達家族と出会った日にビャクと立ち寄った時にもチラッと思ったけど、この場所はどうやら特殊のようだ。
 森の中なのにキレイに下草は整っていて、開けた場所なのに生き物の通った形跡もない……まるで常にこの場所が守られているのではと思う程。


「ここが……なんか、なんていうかすごい気がする」

「うん……なんだろ? 他と空気が違うって言うか~」

 ? そう?

「……教会みたい」

「ええ、そうですね。神聖な感じがします」

 神聖……神様に送られてきた場所だし、無警戒の時から一切魔物が近付いてこなかった……もしかして本当に神様の手が加わってるの!?



 前の時と同じようにテントと結界石を自動設置させ、今回は地属性魔法を使って土台を作ってからシステムキッチンを取り出す。今回は魔法にも慣れて、手順よく料理をしたいのが優先だからね♪



「え、エア? そんな立派なキッチンどうしたんだ?」

しゃいしょ最初かりゃ、もちぇましゅけりょ?」

「前はかまどを作っていましたよね?」

「⦅あの時は魔法とスキルの練習だったから、便利なのはなるべく使わなかったの♪⦆」

「……なるほど……賢い!」

「えへへ~、かちこい? ビャク、ギン、アサギ、ソラにツキ~、かちこいっちぇ、ほめりゃりぇちゃ~♪」

〔〔かしこ~い! エア、すごい!〕〕

 エアが褒められたことで、エア、ソラ、ツキはヤッターヤッターと身体全体を使って喜びを表現し、ついでに下草の気持ち良さにゴロゴロと転がって遊び始めた。


「あ~あ~、エアちゃんは……泥だらけになるよ~」

「へいちでしゅ~! まほうありゅ~♪」

 どんだけドロドロになろうとも、クリーン魔法を使えば簡単にキレイになるから今は存分に遊ぶんだ~!





「はぁ~、エアちゃんだいじょうぶかな~?」

「ケガしてないかな~? はあ~」

 孤児院の子供達は農場でしっかり手を動かしながらも、その表情は少し寂しそう(心配そう?)出てくる言葉はエアの事。



「エアさん今どのへんでしょうか?」

「黒の森はやっぱり出て来る魔物って強いのでしょうか?」

「エアさんが強いのは聞いてますが……心配です」

 孤児院で働く院長先生をはじめ住宅メンバーも、話す内容はエアの事と黒の森の事ばかり。



 トマス達エアの家で働く者達は……

「「「はあぁぁ~」」」

「いつ帰って来るのかしら……」

「エアさん、怪我や病気してないかしら?」

「出来る事なら付いて行きたかった……」

「「「はぁ~、早く帰ってきてください!」」」

 お店があるので忙しくしているが、家に帰ってみんなが集まると自然とエアの話になり、元冒険者たちは勿論みんな揃って"蒼の剣"が付いているのは分かっていても心配でたまらない。

「あ! でも別荘に新しい果物などが増えていましたよ!?」

「そうだったわ! 農場でも見た事のない物だと思うんだけど」

 突然爆弾発言を落としたのは、別荘で農作業を行ったジル一家。

「「「「!?」」」」

「今までで一番あま~い匂いがしてたね!」

「うん! ぜったいあれおいしいよ!」

「「「「そんなに!?」」」」

「間違いないでしょうね! ただエアさんがいないので、どうしたものか」


 美味しそうな物の話だけ聞かされて、味見も出来ないとは……でも、こんな事もエアに出会う前は無かった事で、それを思うと大人たちは恵まれた今の生活に感謝し、子供達は純粋にエアが早く帰って来る事を願った。






 その頃

「陛下。レザリア領主のグスマン公爵より、書状が届きました。"急ぎではありますが内密に"との事です」

 届いたばかりの書状を持って部屋に入って来た宰相。


「急ぎだが内密とは……何事だ?
 ………………これは!? アドルフは今王都にいるのか!?」

 書類に目を通すようにと手渡しながら確認すると。たちまち顔色を変え……

「はい。
"目を通されたらお呼びがかかるかも"と仰いまして、私の執務室に!!」




「なんて事だ……これが本当なら……だが……」

  コンコン!

「入れ! おお、アドルフ、よく来てくれた。書状に書かれていた内容に間違いは!?」

 アドルフからの報告に間違いなどないのは分かっているが、ほんのかすかな希望に縋ってみるが、

「陛下、とつぜ「アドルフ、そんな挨拶は良い」……分かりました。
 書状に書いたことに間違いはありません、何一つです! 直接ご挨拶させていただく機会をいただきましたので」

 書状に書かれていた内容は2つ。
・ザーリアの街の馬鹿な貴族が数人の役人を使い不正を行っていた事。
 そして何よりも重要なのが、
・神獣様が2体、ザーリアの街であるじと定めた方と暮らすという事。


「馬鹿の事は置いておけ、証拠が揃っている以上結論はすぐ出る事だ。
 それより神獣様方の事だが、この国で生活されるのなら、守護していただけるという事か!?」

「無理です!」 

「「うん?」」

 なんだか随分あっさり返事が返って来たが……なんだって?

「ですから、神獣様方にこの国についての何かを希望する事は出来ませんし、正直言いまして、私がご挨拶させていただくのも大変だったのです。
 神獣様からの言葉ですが《あるじのみが大切なのであり、その他はどうでもいい。もし、あるじやその周りに手を出すことがあれば、国ごと潰す》との事です。
 また《あるじが貴族を嫌っているので、一切の関わりも断る》とも言われました」


 ………………

「無理……貴族が嫌い? 下手をすれば国が潰れる!?」

「はい、間違いなく、一切の容赦もなく!」

「な、なぜだ……そ、その神獣様のあるじという方を王城に招き……」

「お招きしてどうされます?」

「うむ、せめて挨拶を……」

「ご本人が貴族を、権力者を嫌っておられるのにですか? そして国が無くなるのを見るのですね?」

「う、ううむ……だがどうするのだ!? 神獣様をそのままというわけには……」

「陛下。そもそも神獣様は神の使い様です、その神獣様のあるじなのですよ? 失礼を承知でお伝えしますが、その方の立場は陛下よりも上となるのでは?」

「!? そう言われればその通り……だが、このままに!?」

「このままそっとしておくのが一番なのです。1人の馬鹿も出ないように陛下から警告をしていただいて、もしそれでも馬鹿が出た場合は容赦は要りません。
 神獣様とそのあるじ様の希望を叶えていれば、もしかしたらですが直接ご挨拶が出来る時が来るやもしれません」

「ううむ……それしかないか……分かった、早めに謁見の場を設けこのことを宣言しよう。
 ところで、アドルフよ……そちは挨拶をしたと言っていたが、そのあるじ殿にも挨拶をしたのだろう?」

「勿論です! ただ私も馬鹿貴族のせいでなかなか大変でした…が……何とか誤解を解くことが出来まして、ご挨拶が叶った際はホッと致しました」

「どのような方だ!? 貴族嫌いなら平民なのだし、神獣様のあるじなら……強い冒険者か!? 男性か、女性か!?」

 私は神獣様にも、そのあるじ殿にも会えないというのに……アドルフめ~!! 何としても事細かに聞き出してやるぞ!

 もしくは……国王であることを隠し、一貴族として何とか紹介してもらうか!? 大体なんだ、あのドヤ顔は!?



「なに!? 共に食事をしたのか!?」

「ええ、例の馬鹿のせいで誤解を受けましたが……とはいえ、領主としての職務が行き届いていなかったのですから仕方のない事なのですが……何とか誤解を解いた後、他の者があるじ様に食事に誘われていると自慢していたのに我慢が出来ず……。
 ですが駄々をこねて良かったです! あれほどの料理……初めて食べました」

あるじ殿は料理人なのか? それなら私も一度……」

「無理ですね!」

「なぜだ!?」

「お忘れですか? 貴族がお嫌いなのですよ?」

「だ、だが、アドルフは食べたのだろう!?」

「ダダは捏ねましたが、ちゃんと許可をいただきましたので!」

「ううぅぅぅ~、よしわかった! では、私は一貴族、アドルフの友人という事にして紹介してくれ! お前と私の仲ではないか!」

「何を言っているのです? そんなことが出来るはずないでしょう!? 神獣様とあるじ様に嘘を言うのですか!?」

「だが、そうでもせぬと顔を拝見する事も出来んではないか!」

「ですから……時間が掛かっても機会をお待ちくださいと……」

「だが、アドルフはザーリアに戻れば会えるのだろう!?」

「え!? い、いえ、私も貴族である以上は……残念ながら、そうそうお会いできないかと」

「それ程貴族がお嫌いなのか?」

「はい。どうしても貴族というのは権力を使う馬鹿が多いので……」

「はぁ、そうだな。あやつ等はなぜ守るべき民をまるで道具のように考えるのか……理解が出来ん。
 そういえば、今回の馬鹿が行なったのは孤児院相手だったな」

「そうです! 確かに政務に追われていましたが、一番力ない者を!!
 情けなく恥ずべき事ですが、今はその孤児院も見違えるほど明るく元気になりました、私の力ではない事が残念ですが、そんな事より子供達が安全に暮らせることが大切ですからね」

 ほう、アドルフがそこまで言う程の変化……か、気になるな……こうなったら何が何でも理由を付けて視察に行くか?
 そうすれば神獣様にも、あるじ殿にも会う事が出来るかもしれん。


 よし、そうと決まれば早速明日、謁見の準備をして視察の準備にも……♪
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