マイのまねごと 〜AVやったきっかけ、やってみた感想、それで今ここ〜

寸陳ハウスのオカア・ハン

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第4話 マイ、メグミさんと一緒にがんばります!

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「マイちゃん。今度、うちの事務所のメグミさんとの共演作、よろしくね」

 マネージャーのムライさんの言葉に、私はメグミさんが同じ事務所の先輩だったことを思い出した。

 AV女優となってから半年。初めての複数人共演作への出演が決まった。作品は私やメグミさんを含めた女優4人の痴女ハーレムものらしい。

 正直、断りたかった。何本か作品は撮った。ただ、事務所やメーカーの期待ほどヒットはしていない。自分自身も、いまいち実感を掴めていない。
 おっぱいという武器はある。でも、うまくいかない──単独撮影でそんな状況なのに、複数人プレイなんてどうすればいいんだろうと思った。

「メグミさんって単体だと地味になりがちだけど、複数人プレイは得意だから、いろいろ聞いてみたら?」

「いっぱいいる方が得意だなんて、メグミさんって、そんなにエッチ上手なんですか?」

「いや、エッチが上手というか、他の女の子を魅力的に見せるのがうまいんだよ。個性の強い女優や暴れがちな現場でも、きちんと仕切って全体をまとめられるし。猛獣使いなんて評価もあるくらい。男優複数にメグミさんひとりの場合は、頑張ってるように見えるところがファンに刺さるみたいだね」

 メグミさんのことはよく知らないが、マネージャーさんの評価に、私は妙に納得していた。

 〇〇メグミ──私がAV女優になるきっかけを作った人……。

 最初は、なぜか身近に感じた。でも、この業界で出演を重ねれば重ねるほど、その存在は遠くなっていった。
 そんな人と共演するなんて……──嬉しいような、怖いような、言葉にできない不安を抱えたまま、撮影日はやってきた。


***


 その日、都内のスタジオは少し肌寒かった。
 私は共演する女優さんたちに挨拶をした。みんな気さくで優しそうだったが、どこかよそよそしかった。

「マイさん。今日はよろしくお願いします」
「あ、こちらこそ……」
 そんな中、メグミさんはわざわざ挨拶に来てくれた。それが、ほんの少しだけ緊張をほぐしてくれた。

 メイクルーム。地味なはずのメグミさんが、なぜか目を引いて離れなかった。
 どこにでもいそうな顔立ちで、雰囲気は華やかでも派手でもない。でも、今日集まった女優の中では、馴染んでいるのに際立っていた。

 撮影の準備中、私は何気なく、渡された撮影衣装を見た。下着なのだろうが、謎のひもにしか見えなかった。そして、着方が全然わからなかった。

 困っていても仕方なかった。現場の中で一番声をかけやすかったのは、メグミさんだった。

「……あの、メグミさん。ちょっといいですか?」
 マネージャーさんの言葉を思い出し、私は恐る恐るメグミさんに声をかけた。

 メグミさんは笑顔で返事をしてくれた。
 私が質問すると、メグミさんはスタッフの目も気にせずバスローブを脱ぎ、謎のひもの着方を丁寧に実演してくれた。

「うわ……、どエロいですね」

 メグミさんの教えてくれるテクニックや情報に、私は素直に驚いた。ただ裸を見せればいい、そう思っていた自分が恥ずかしくなるほど、メグミさんはセックスという表現に真剣に向き合っていた。

「マイさんは私より全然スタイルいいから、それを活かせるようにやってみよう。まずは胸をアピールしてみて。それから、もし撮影中にどう動けばいいか困ったら、ツンツンって私のこと触って。一緒に頑張ろう!」

「……はい!」

 この業界に入ってから、たくさんの優しい言葉をかけてもらった。でも今、メグミさんの明るくて力強い言葉に、私は本当の勇気をもらった気がした。


***


 『変態痴女ハーレム』の撮影が始まる。
 最初のカットは、4人の女優で、ひとりの男優を責める。カメラの前で、次々に身体を重ね、絡み合い、エロいを見せる。

(胸をアピールして……、困ったらツンツン……)

 メグミさんの言葉を思い出しながら、私は男優の身体にそっと近づいた。
 けれど、やっぱり難しかった。女優が4人もいる中で、自分がどこに立てばいいのか、どのタイミングで動けばいいのか、わからない。腰はぎこちなく揺れて、手の動きも固い。目線も泳いでしまって、演じてるというより、ただそこにいるだけになってしまう。

「……マイちゃん、ちょっといい?」

 そう囁いて、メグミさんが私の隣にやってくる。
 手に持ったローションのボトルから、透明な液体をすくい取る。そして、その手で、私のおっぱいを包み込むように触れてきた。

「こうすると、光がきれいに入るんだよ」

 メグミさんの指が、ゆっくりと胸の谷間に沿って動く。優しくて、丁寧で、どこか包まれるような手付きに、私は思わず小さく息を漏らした。

 ローションをなじませたあとの胸元に、メグミさんが顔を寄せる。

「ちょっとだけ、ごめんね」

 そう言って、私の乳首にメグミさんの唇が触れた。
「ひゃん……!」
 思わず身体がビクッと震える。ぴちゃ、という控えめな音とともに、温かく柔らかな感触が乳首に吸いつく。
 同じタイミングで、男優の指が忍び寄って、私の股間アソコを撫でてくる。クリトリスのすぐそば、ローションでヌルついた膣口マンコの上を、指先がゆっくりと這う。

「んっ……ぁ……っ」

 カメラが真横にいるのに、声を堪えることができなかった。
 でも、それを見たメグミさんは、にっこりと微笑んで、「いいよ、その感じ」と囁いてくれた。

 流れの中で、男優が私のおっぱいの前に移動してくる。
 私は躊躇いながらも、胸の谷間に男優のものを挟み込んだ。
 ゆっくりと、上下に動かす。
 パイズリ……まだ慣れてはいないけど……ぬるりとした熱が伝わり、少しずつ感覚が掴めてくる。

「うん、マイちゃん、すごくいいよ。ちゃんと見えてる」

 メグミさんが私の肩越しに教えてくれる。
 ちらっと男優の顔を見る。彼もわずかに目線を下げて、私のパイズリを見ながら、頷いていた。

 ローションでぬるぬる滑る感触と、タパタパというリズム音が、段々とクセになっていた。
 快感とまでは言えない。でも、今の私はちゃんと映ってる──そう思えた瞬間だった。

 プレイは順番に進み、挿入の番が回ってくる。
 背中から抱え込まれるようにして、男優のものがゆっくりと入ってくる。ローションで滑りやすくなった膣内 なかに、ずるっと音を立てて肉の棒が入ってくる。

「んっ……くうぅ……」

 奥まで入った感覚に、思わず首をのけ反らせる。
 動き始める。膣内なかが押し広げられ、ローションと愛液が混ざり合って、ずぶずぶと音を立てる。

 そのとき、誰かの手が、そっと私の股に触れた。

「マイちゃん、ここも、ちょっと……いじってみるね?」

 メグミさんの指が、私のクリトリスを撫でる。
 中からの刺激と、外からの刺激が同時に重なる。身体の熱が跳ね上がり、頭の中を沸騰させる。

「あっ、やっ、だめっ……!」

 それは、「マイのはじめて」だった。

 エッチで、イッた。

 全身が跳ねて、頭の奥が真っ白になった。

 気がつけば、メグミさんが私の髪をそっと撫でていた。
 優しくて、あたたかくて、気持ちよくて……。撮影中だってことを忘れそうだった。

 撮影は驚くほどスムーズに進んだ。
 それからも私は、メグミさんのさりげないフォローに助けられながら、与えられた役割をひとつずつこなしていった。


***


 撮影が終わると、メグミさんがまた話しかけてくれた。

「マイさん、お疲れ様。すごくよくできてたと思うよ。私も動きやすかったし、カメラさんもきれいに撮れてたって言ってたよ」

「……メグミさん、あの、ありがとうございました。なんて言うか、すごく、安心できました」

「ほんと? ならよかった」

 そう言って、メグミさんは嬉しそうに笑った。
 撮影後の火照った笑顔は誰よりもきれいで、私は心の底から羨ましさを感じた。

 それから、現場で求められる言葉が少しずつ変わっていった。

 女優が複数人共演する作品にも呼ばれることが増えた。気付いたらキャッチコピーも、『期待のむっちりおっぱい』から、『おっとりデカパイ痴女』になっていた。
 『エッチに貪欲な清楚系ギャルお姉さん』というキャッチコピーで活動していたメグミさんも、複数人共演作のオファーが多いようで、自然と絡む機会も多くなった。

 連絡先を交換し、現場や事務所で会うたびに挨拶を交わし、自然と冗談を言い合う仲になった。
 仕事でもいろいろと相談に乗ってくれた。
 キスの仕方、腰の動き、目線の使い方……──メグミさんはやっぱりプロだった。
 プレイの教え方も上手で、私よりも1歳年上だったので、メグミさんは本当にキャラ通りの『エッチに貪欲なお姉さん』だった。


***


「おはよう、メグちゃん」
「おはよう、マイちゃん」

 その日、私はメグちゃんと初めての、ダブル主演作を撮った。

 撮影の帰り、電車の窓に映る夜景はきれいだった。ガラスの暗闇に映る自分の顔は、疲れているけど、ちょっとだけ充実感も滲んでいた。

(こんなにたくさん話せる人ができるなんて、思ってなかった……)

 電車に揺られながら、私はぼんやりと思った。

 今、メグちゃんは、マイが生まれるきっかけを作った人から、大切な友達になっていた。
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