8 / 11
第8話 メグちゃんとふたり旅行!
しおりを挟む
AV女優・〇〇マイとしての最後の撮影は、いつもより静かに始まり、いつもより静かに終わった。
引退はごく一部にしか伝えていない。この作品も元々決まっていたスケジュールで、事実上の引退作であることを知る人は少ない。
「マイちゃん、今日もよろしくね!」
カメラマンの声に、私は微笑んでペコリと頭を下げた。
今日は女優ふたり、男優ひとりの痴女3Pものの撮影。共演女優はメグちゃんだった。
「マイちゃん。最後、最高の作品にしよう……!」
バスルームのセット横。こっそり耳打ちするメグちゃんは、いつも以上に気持ちが入っていた。
言うまでもなく、私が尊敬していた先輩。引退することを直接打ち明けた親友。昔、彼氏の部屋で見たAVの出演者のひとりで、AV女優になるきっかけを作った、あの人。
だけど今日は——いや、今日くらいは、ただの共演者だった。
撮影が始まる。
メグちゃんはいつも通りだった。細やかな気遣い、目線、声のトーン。すべてが私との共演作品のために整えられていた。
衣装を脱いで裸になったとき、なぜか、最初に見たあの人の作品を思い出した。
カメラに映るその姿は、たどたどしくも、自分の何かをぶつけるような、そんな強さがあった。
だけど私は、ずっと上の空だった。
(最後、カナちゃんもこんな感じだったのかな……?)
段取り通りに絡み、演出通りに喘ぎ、規定時間内に終わらせる。決してサボっていたわけじゃない──けれど心は、もうここにはなかった。
(はぁ~……。終わったぁ~)
撮影後の楽屋。終わったという事実だけが胸の奥に残った。
3年の時間はあっけなく終わった。こうして私は、26歳でAV女優を引退した。
***
「マイちゃん。撮影、お疲れ様」
撮影後、一緒にシャワーを浴びながらメグちゃんが言った。
「ありがとう」
私が微笑むと、メグちゃんも笑った。でも、その顔は、どこか疲れていた。
「メグちゃん。今度、旅行行こうよ」
何気なく、私はメグちゃんを誘った。
これまでも、ふたりでよく遊んだ。旅行に行くのも初めてじゃない。でもAV女優を辞めたら、マイとメグミの関係ではなくなる。そんな気がした。
「いいね! 行こう!」
泡まみれのメグちゃんは、まるで子供みたいに喜んでいた。それを見て、私はちょっぴり嬉しくなった。
シャワー中も、そのあとも、私たちは旅行について話しながらスタジオから帰った。
***
東京からかなり離れた温泉宿。山の中の川沿い、露天風呂つきの広い部屋には、ふたり分の浴衣が並べてある。
湯けむりに包まれて、肌がほんのり赤く染まっていく。
「ふぅ……」
「あぁ~。極楽ぅ~」
「ふふ……。マイちゃん、おじさんみたい」
湯船の中でおっぱいを浮かしながら、「おっぱい潜水艦~」とか「乳首潜望鏡~」とかふざける私を見て、メグちゃんが笑う。
肩と肩が触れるくらいの近さ。これまで、たくさん見てきて、触れてきた裸。だけど、もう「撮影」じゃない。ただの友達。女同士の時間。
AV女優を引退して1ヶ月。私の身体は明らかにたるみ始めていた。対して、メグちゃんのプロポーションはさらに引き締まり、女性らしさを増していた。
本人は胸も尻もそこそこと言うけれど、湯けむりに包まれ、ほんのりと赤らむその肌は、女の私から見てもドキッとしてしまうほどである。
「メグちゃん、メンテのお店変えた?」
「いつもの場所だよ? どうかしたの?」
「いや、なんか前より身体つきよくなったなぁって」
「あぁ。ちょっと前からジム行ってるんだ」
「すごーい。運動してるの?」
「うん。元々運動は得意じゃないから、体力付けなきゃって思って。それにやってみてわかったけど、意外とストレス発散にもなるしね」
感心する私の前で、メグちゃんは胸や腰を強調するポーズを取った。
(AV長く続けるのって、大変なんだなぁ……)
湯船から夜空を見上げながら、私はそんなことを思った。
お湯のぬくもり、火照っていく肌、湯気と混ざった髪の香り。ふとした仕草に、どこかエッチな意識がにじむ。
だけど今は、それもただの日常の延長である。
「メグちゃん。お酒、飲も~」
のぼせる前に、私たちはお湯を上がった。濡れる足が、ピチャピチャと石畳に音を立てた。
***
「あぁ~~っ……! しあわせぇ~……」
「マイちゃん、おじさんなの? ふふふ……」
机の上には地酒の瓶と、おつまみの皿。浴衣の襟元は緩く、ふたりともほろ酔いである。
気持ちよくなり、私はごろんと畳に寝転んだ。
ふと、浴衣の隙間から、メグちゃんのパンツが見えた。撮影のときのようなエロ下着ではなく、ちょっとくたびれた水色の綿のパンツである。
「ねぇ、メグちゃん」
「うん?」
「……昔ね、彼氏とAV見ながらエッチしてたとき、彼氏が、AVやってみたら? って言ったんだよねぇ」
この話をするのは初めてかなぁ……──酔いの勢いもあって、私の口は少し軽くなっていた。
「え、何それ? 最悪じゃん……」
「でもね。言われてさ、別に嫌じゃなかった。元々、都合よく抱かれてただけだし。身体もそれなりだと思ってたし。それにね……」
マイは天井を見つめた。
「そのときに彼氏と見たAVの中に、メグちゃんがいたんだぁ」
私は寝転がったまま視線を上げた。メグちゃんは咄嗟に目を逸らした。そして、それを誤魔化すように、お酒をちびちびと飲んだ。
「私ね、メグちゃんを見て、AV女優になろうって思ったの」
これまで、誰にも言わなかった思い。それを、私は初めて打ち明けた。
「そうなんだ……」
「全部が全部、メグちゃんが理由だったわけじゃないけどさ……。でも、なんかね、メグちゃんって他の女優さんと違って見えたんだよねぇ」
「……それ、何の作品だったか、覚えてる?」
「うん。大乱交スプラッシュギャルトーナメントみたいな名前だったかな?」
「えっ!? もしかしてスプギャルSEXのこと!? あれ20人くらい出てたやつだよ!? よく私なんか見つけたね……」
驚いたメグちゃんは、でもちょっとだけ嬉しそうな顔もしていた。
「そのくらいメグちゃんは特別だったんだよ。私にとっては……」
私が呟くと、メグちゃんは頬を赤らめながら、静かに俯いた。グラスを持つ手はちょっと震えていた。
しばらくの間、言葉が途切れた。
どこからか夜風が吹き込む。外の虫の声だけが、すうっと夜に溶けていく。
時計の針が静かに時を刻む中、寝転んだまま、私はまたぽつりと呟いた。
「ねぇ、メグちゃん」
「……なに」
「毛、パンツからはみ出てる」
「……えっ! ちょ、やめてよ! なんで今それ言うの!? さっきまで雰囲気、台無しじゃん……!」
「あぁ~……だって、ずっと気になってたから、なんか言いたくなっちゃって……」
「もー! 今さらだけど、マイちゃんこそ、おっぱい丸出しでよくあんな空気にできたよね!」
私たちは笑っていた。
メグちゃんの笑顔は、どこかで見たあの映像の中の表情よりも、ずっと近くて、ずっと柔らかだった。
引退はごく一部にしか伝えていない。この作品も元々決まっていたスケジュールで、事実上の引退作であることを知る人は少ない。
「マイちゃん、今日もよろしくね!」
カメラマンの声に、私は微笑んでペコリと頭を下げた。
今日は女優ふたり、男優ひとりの痴女3Pものの撮影。共演女優はメグちゃんだった。
「マイちゃん。最後、最高の作品にしよう……!」
バスルームのセット横。こっそり耳打ちするメグちゃんは、いつも以上に気持ちが入っていた。
言うまでもなく、私が尊敬していた先輩。引退することを直接打ち明けた親友。昔、彼氏の部屋で見たAVの出演者のひとりで、AV女優になるきっかけを作った、あの人。
だけど今日は——いや、今日くらいは、ただの共演者だった。
撮影が始まる。
メグちゃんはいつも通りだった。細やかな気遣い、目線、声のトーン。すべてが私との共演作品のために整えられていた。
衣装を脱いで裸になったとき、なぜか、最初に見たあの人の作品を思い出した。
カメラに映るその姿は、たどたどしくも、自分の何かをぶつけるような、そんな強さがあった。
だけど私は、ずっと上の空だった。
(最後、カナちゃんもこんな感じだったのかな……?)
段取り通りに絡み、演出通りに喘ぎ、規定時間内に終わらせる。決してサボっていたわけじゃない──けれど心は、もうここにはなかった。
(はぁ~……。終わったぁ~)
撮影後の楽屋。終わったという事実だけが胸の奥に残った。
3年の時間はあっけなく終わった。こうして私は、26歳でAV女優を引退した。
***
「マイちゃん。撮影、お疲れ様」
撮影後、一緒にシャワーを浴びながらメグちゃんが言った。
「ありがとう」
私が微笑むと、メグちゃんも笑った。でも、その顔は、どこか疲れていた。
「メグちゃん。今度、旅行行こうよ」
何気なく、私はメグちゃんを誘った。
これまでも、ふたりでよく遊んだ。旅行に行くのも初めてじゃない。でもAV女優を辞めたら、マイとメグミの関係ではなくなる。そんな気がした。
「いいね! 行こう!」
泡まみれのメグちゃんは、まるで子供みたいに喜んでいた。それを見て、私はちょっぴり嬉しくなった。
シャワー中も、そのあとも、私たちは旅行について話しながらスタジオから帰った。
***
東京からかなり離れた温泉宿。山の中の川沿い、露天風呂つきの広い部屋には、ふたり分の浴衣が並べてある。
湯けむりに包まれて、肌がほんのり赤く染まっていく。
「ふぅ……」
「あぁ~。極楽ぅ~」
「ふふ……。マイちゃん、おじさんみたい」
湯船の中でおっぱいを浮かしながら、「おっぱい潜水艦~」とか「乳首潜望鏡~」とかふざける私を見て、メグちゃんが笑う。
肩と肩が触れるくらいの近さ。これまで、たくさん見てきて、触れてきた裸。だけど、もう「撮影」じゃない。ただの友達。女同士の時間。
AV女優を引退して1ヶ月。私の身体は明らかにたるみ始めていた。対して、メグちゃんのプロポーションはさらに引き締まり、女性らしさを増していた。
本人は胸も尻もそこそこと言うけれど、湯けむりに包まれ、ほんのりと赤らむその肌は、女の私から見てもドキッとしてしまうほどである。
「メグちゃん、メンテのお店変えた?」
「いつもの場所だよ? どうかしたの?」
「いや、なんか前より身体つきよくなったなぁって」
「あぁ。ちょっと前からジム行ってるんだ」
「すごーい。運動してるの?」
「うん。元々運動は得意じゃないから、体力付けなきゃって思って。それにやってみてわかったけど、意外とストレス発散にもなるしね」
感心する私の前で、メグちゃんは胸や腰を強調するポーズを取った。
(AV長く続けるのって、大変なんだなぁ……)
湯船から夜空を見上げながら、私はそんなことを思った。
お湯のぬくもり、火照っていく肌、湯気と混ざった髪の香り。ふとした仕草に、どこかエッチな意識がにじむ。
だけど今は、それもただの日常の延長である。
「メグちゃん。お酒、飲も~」
のぼせる前に、私たちはお湯を上がった。濡れる足が、ピチャピチャと石畳に音を立てた。
***
「あぁ~~っ……! しあわせぇ~……」
「マイちゃん、おじさんなの? ふふふ……」
机の上には地酒の瓶と、おつまみの皿。浴衣の襟元は緩く、ふたりともほろ酔いである。
気持ちよくなり、私はごろんと畳に寝転んだ。
ふと、浴衣の隙間から、メグちゃんのパンツが見えた。撮影のときのようなエロ下着ではなく、ちょっとくたびれた水色の綿のパンツである。
「ねぇ、メグちゃん」
「うん?」
「……昔ね、彼氏とAV見ながらエッチしてたとき、彼氏が、AVやってみたら? って言ったんだよねぇ」
この話をするのは初めてかなぁ……──酔いの勢いもあって、私の口は少し軽くなっていた。
「え、何それ? 最悪じゃん……」
「でもね。言われてさ、別に嫌じゃなかった。元々、都合よく抱かれてただけだし。身体もそれなりだと思ってたし。それにね……」
マイは天井を見つめた。
「そのときに彼氏と見たAVの中に、メグちゃんがいたんだぁ」
私は寝転がったまま視線を上げた。メグちゃんは咄嗟に目を逸らした。そして、それを誤魔化すように、お酒をちびちびと飲んだ。
「私ね、メグちゃんを見て、AV女優になろうって思ったの」
これまで、誰にも言わなかった思い。それを、私は初めて打ち明けた。
「そうなんだ……」
「全部が全部、メグちゃんが理由だったわけじゃないけどさ……。でも、なんかね、メグちゃんって他の女優さんと違って見えたんだよねぇ」
「……それ、何の作品だったか、覚えてる?」
「うん。大乱交スプラッシュギャルトーナメントみたいな名前だったかな?」
「えっ!? もしかしてスプギャルSEXのこと!? あれ20人くらい出てたやつだよ!? よく私なんか見つけたね……」
驚いたメグちゃんは、でもちょっとだけ嬉しそうな顔もしていた。
「そのくらいメグちゃんは特別だったんだよ。私にとっては……」
私が呟くと、メグちゃんは頬を赤らめながら、静かに俯いた。グラスを持つ手はちょっと震えていた。
しばらくの間、言葉が途切れた。
どこからか夜風が吹き込む。外の虫の声だけが、すうっと夜に溶けていく。
時計の針が静かに時を刻む中、寝転んだまま、私はまたぽつりと呟いた。
「ねぇ、メグちゃん」
「……なに」
「毛、パンツからはみ出てる」
「……えっ! ちょ、やめてよ! なんで今それ言うの!? さっきまで雰囲気、台無しじゃん……!」
「あぁ~……だって、ずっと気になってたから、なんか言いたくなっちゃって……」
「もー! 今さらだけど、マイちゃんこそ、おっぱい丸出しでよくあんな空気にできたよね!」
私たちは笑っていた。
メグちゃんの笑顔は、どこかで見たあの映像の中の表情よりも、ずっと近くて、ずっと柔らかだった。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
M性に目覚めた若かりしころの思い出 その2
kazu106
青春
わたし自身が生涯の性癖として持ち合わせるM性について、終活的に少しづつ綴らせていただいてます。
荒れていた地域での、高校時代の体験になります。このような、古き良き(?)時代があったことを、理解いただけましたらうれしいです。
一部、フィクションも交えながら、述べさせていただいてます。フィクション/ノンフィクションの境界は、読んでくださった方の想像におまかせいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる