マイのまねごと 〜AVやったきっかけ、やってみた感想、それで今ここ〜

寸陳ハウスのオカア・ハン

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第10話 デリヘル嬢・モモカ

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「ねぇ、モモカちゃんって元AV女優の〇〇マイちゃんでしょ?」

「え? はい、そうですけど……。よくわかりましたね?」

 田舎の街のラブホテル。お客さんに昔の名前で呼ばれ、私はちょっとだけドキッとした。
「パネルだと顔隠してるけど、AVのころと雰囲気変わってないから、すぐにわかったよ」
 そう言って、お客さんはスマホを見せてきた。画面には裸の〇〇マイが映っていた。

(意外と覚えられてたんだぁ)

 人気があったのかなかったのか、当時はいまいち実感できなかった感覚に、思わず笑みがこぼれた。

「あ、ファンなら、もちろん買って応援してくれてましたよね?」
 私が試すように訊くと、お客さんは「もちろん」と言ってスマホをタップし、また動画サイトを見せてきた。ズラリと並ぶAVリストには、〇〇マイの裸がいくつも映っていた。

(多っ! AV買い過ぎでしょ、この人……。怖っ……)

 裸のサムネイルの多さに、私は正直引いていた。でも、それを顔には出さないように、笑顔を作った。
「わぁ、ほんとにファンだったんだね! 嬉しい! ありがと~」
 言葉は乾いていた。
 私はお客さんの横に座り、手を握った。ビクッと身体を震わすお客さんは、照れくさそうに笑っていた。

 なぜか心がざわついた。自分に向けられる感情は、ほんの少しだけは嬉しかったけど、でもその何倍も苦かった。

 あの世界から離れて、1年が過ぎていた。

 26歳でAV女優を引退し、地元に戻って、事務職に就いた。
 まっとうな道。まっとうな自分。それでも、心のどこかで「これもまねごとだ」という思いは拭えなかった。

 結局、スーツもオフィスも肌に馴染まなかった。
 27歳の春、私はまた服を脱いだ──今度は、デリヘル嬢・モモカとして。

 昼職との掛け持ち。完全に夜だけは怖いので、昼は派遣として週3だけ出ている。残りの2日か3日を、デリヘル嬢として過ごす。最低1日は必ず休む。そんな生活をここ半年続けている。


***


 雑談もそこそこに、時計のタイマーをセットし、ベッドサイドに置く。120分の時間が、少しずつ減っていく。

「マイちゃんは何でAV辞めちゃったの?」
「いやぁ、だって大変でしたもん。体力仕事だし、撮影中は周りのみんなに気を使わなきゃいけないし。もうついていけないかなぁって」
「そうなんだ。で、今は何でデリヘル?」
「……そこは、まぁ、ほら。……いろいろあるんですよねぇ」
「へぇ。じゃあさ、AV女優だったころの話してよ」
 話している間、お客さんは笑顔だった。でも、楽しそうなその目は、目の前のモモカではなく、どこか遠くのマイを見ているような気がした。

 マイはAV女優だったころの名前だ。今はもう違う名前なのに……。デリヘル嬢のモモカなのに……──私は、昔の名前で呼ばれることに、ちょっとだけうんざりし始めていた。

「嬉しいなぁ。予約取れたのも超ラッキーだよ。夢みたい、こうやってマイちゃんと話せて」

「……マイのこと、ほんとに好きなんだね、お客さん」

 私はベッドから立ち上がり、ゆっくりとジャケットを脱いだ。
 ニットのワンピースをたくし上げる。少しだけ気に入っているピンクのランジェリー。
「ほら、ここにいるよ。モザイクもないし、全部見えるよ」
 ブラを外し、胸をはだけ、ちょっとだけパンツをずらして下を見せる。
 普段なら何も感じない。でも今は、身体が火照っている。汗もかいている。アソコも、濡れている。

「見て。昔のじゃなくて、今の私」

 それは挑発ではなく、お願いだった。

 身体に残る下着の線。垂れ始めた胸。張りがなくなりつつある肌……。

 壊したかった。壊してほしかった。きれいに撮られていたあのころと、少しくたびれてしまった今の間にある全てを……。

 ゴクリと、お客さんが唾を呑み込む音が聞こえた。私はお客さんの前で膝をつき、背中に手を回した。
「触って。目の前にいるんだから」
「……あの、シャワーは」
「あとでいいよ」
 目が合った。他には何も見えなかった。
 私は相手の手を胸に抱き寄せた。そしてそのまま身体を傾け、ベッドに倒れ込んだ。

 おっぱいを揉むお客さんの触り方は優しかった。まるで初めてみたいな、恐る恐る探るような手つき。

 優しい人……──だからこそ、めちゃくちゃにしたいと思った。

 自分も、相手も。今も、昔も、思い出も。全部、何もかも……──ギンギンに勃起したパンツを撫でながら、私はこの瞬間を、ちょっとだけ楽しんでいた。

「今日は私で好きなだけイッていいんだよ」
 お客さんの耳元でそっと囁く。そして目を閉じて、唇を重ねた。

 唇と舌先に唾液が絡まり、お互いの体温が混じり合う。

 キスだけで、お客さんのパンツにはお漏らしみたいな染みができていた。
 寝転がるお客さんのパンツを脱がせる。元気なおちんちんが勢いよく飛び出す。
 つーんとしたにおいが鼻を衝く。おしっこと我慢汁と汗のにおい。臭い。でも私は、亀頭にチュッとキスをし、くわえた。

「むちゅ……おひんひん、をっきぃ(おちんちん、おっきぃ)」

 ペロペロと舌を這わせ、よだれで濡らす。我慢汁とよだれを口の中で混ぜ、グチュグチュと音を鳴らす。

「んぶっ……ぬっちゅ、むっちゅ……」

 お客さんの呼吸が荒くなり、おちんちんが熱くなるのがわかる。

「くひでだふゅ(口で出す)?」

「う、うん……も、モモカちゃ……あ、あっ、ま、マイちゃん、あっ……イッくっ!」

 お客さんは私の口の中で射精した。
 私はガクガクと震える腰を抱きながら、口をすぼめ、吸った。そしてゴックンした。

(まずい……)

 生まれて初めて精液を飲んだ。
 射精してくれたことは素直に嬉しかった。ただし、マイの名前でイッたことは、ちょっと癪だった。

「いっぱい出たね。ありがとう♡」

 フェラで射精後は、ふたりでシャワーへ。

 射精してぼーっとしている表情のお客さんの身体を、泡立てたボディソープで洗う。ソープもののAVでしたように、自分のおっぱいにも泡を塗り、むにゅんと押しつける。
 固くなる乳首。ドクドクと鳴る鼓動が伝わる。
 アンダーヘアにも泡を塗り、ゆっくりと腰を動かす。お客さんの太ももに泡立った毛が擦れ、ショリショリといやらしい音を立てる。
 そして、ものを泡で包み、手でキレイするにする。
 おちんちんはすぐに復活し、またピクピクし始めた。金たまはパンパンだ。

「2発目。またする?」

 目を血走らせ、お客さんが頷く。
 私は笑顔を作ると、おっぱいでおちんちんを挟んだ。
 ローションとは違うけど、ふわふわの泡がにゅるにゅる擦れる感じが気持ちいい。
 狭いシャワールームに篭る熱と湿り気。おちんちんとおっぱいで感じる、ふたりの体温。やがて、いやらしい音だけが加速し、熱が高まっていき──再びの射精。

(また、たくさん……。エロマンガみたいに出すなぁ)

 おっぱいでにゅるんと精子をすくい、胸の狭間で混ぜ合わせる。そして、亀頭にチュッとして、今度はさっとシャワーで流す。

 シャワールームから出て、バスローブを巻く。手を繋いでベッドへ。

 時間を見る。まだ半分は残っている。
 ただ、お客さんはもう満足した表情で、私の太ももをさすりながらピロートークタイム。

 ──でも、私はもっとしたかった。

 まだ全然足りなかった。だって、今日はなんだか楽しいから。

 他愛のないトークに飽き、私はお客さんの手を握った。
「寒くない? ここ、触って?」
 そう言って、私はお客さんの指をひと舐めし、股間アソコの割れ目へ。
「身体、冷えないように、あっためてあげる♡」
 目を見ながら、ぬぷりと指を受け入れる。「ひゃっ……♡」って、思わず声が漏れる。

 またキスする。絡み合う上の口と下の口から、ぷちゅぷちゅとぬめった音が鳴る。

「……ねぇ、一緒にしよ?」

 私はお客さんに寝てもらうと、ガバッと股を開き、身体の上に乗った。
 69の体勢。きゅっとおしりに力を入れ、むわっとマンコを開く。
 ぬるりとした舌先が割れ目を這う。
「ひゃん……そこ、気持ちいいよぉ……」
 むしゃぶりつく唇、膣奥おくを探る舌、アンダーヘアに蒸れる呼吸が、妙に愛おしい。アナルに当たる鼻先と鼻息も、なんか変態みたいでかわいい。

 舐められながら、舐める。愛液やよだれでぬるぬるになる感覚がクセになる。3回目なのに、おちんちんは元気だ。

「あと30分。がんばろ?」

 私は時計を見ながら、ゴムを口にくわえ、にゅるう~とおちんちんに被せた。

「……あの、本番オプション、付けてない……」
「サービス♡」

 私はぼさぼさのアンダーヘアをかき上げ、マンコを見せつけると、割れ目を開いておちんちんを挿入れた。

「……んんっ、あ、はぁ……、膣奥おく……チュッてなってるぅ」

 思わず、身体が震えた。ぬるりと繋がっている感触に身を任せ、私はゆっくりと腰を振った。

 膣内マンコが、あったかくて、気持ちよかった。

 プライベートでも、AVでも、デリヘルでも、セックスはたくさんしてきた。でも、こんなに素直に「気持ちいい」と思えるのは初めてだった。

 騎乗位。私は夢中で腰を振っていた。パンパンとリズムを刻みながら、お客さんの身体を抱きしめ、キスを絡め、乳首を吸った。

「あっ、あん、あぁん! あ、あっ゛あっん、っぬぅん……!」

「ま、マイちゃん……また、出そう……」

「いいよぉ♡ 変態モモカのどすけべマイちゃんおマンコにぃ、お客さんの精子、全部ピュッピュしてぇ♡」
 
 射精──ゴム越しでも、熱量がわかった。

 中出しとは違う、ゴムの中で暴れながら膣壁なかに当たる感覚は、なんだかいじらしくて、焦れったくて、面白かった。

 射精後、お客さんはぜぇぜぇと息切れしていた。残り時間も10分を切っている。

 でも私は、マンコからおちんちんを離さなかった。

 もっとしたかった。

「延長、どうする?」

「……延長……します……」

「嬉しい♡ ありがとう♡」

 私は笑顔で、お客さんの頬にキスをした。

(でも、ちょっとだけ、ごめんね……)

 時計の針がちょっと戻る。そうして、私たちはまた、生ぬるい部屋の空気に沈んでいった。
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