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第二章 二人の果て
2-12 〈神の奇跡〉、あるいは〈神々の児戯〉③
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「ちょっといいですかね?」
外部から来た商人たちと話し込むマルーン神父にミッコは詰め寄った。
ミッコは問うた──なぜエミリーは意識を取り戻したのか。なぜ二人は生きているのか、と。
「ちょうどいい。君たちへの聞き取りも兼ねて、話したいことは山積みなんだ」
ミッコの問いに対し、マルーン神父は快く答えてくれた。
ミッコや商人たちに対し、マルーン神父の言葉はとても親切丁寧だった。ただ、ミッコの求める回答は何一つないどころか、その内容はやはり何一つ理解できなかった。
その回答があまりにも意味不明なため、ミッコは段々と腹が立ってきた。そのとき、赤いウサギの紋章を付けた青年が間に割って入ってきた。
「なぁあんた、ちょっといいかい」
「……どちらさんで?」
「あんた、赤の親父のアンナリーゼとイズマッシュまで一緒だった人だろ? 俺はグルホフスキー。アンナリーゼ様の部下で、この村の通商担当だ」
ミッコは馴れ馴れしく挨拶する商人を力づくで押しのけようと思ったが、しかしグルホフスキーはそれをさせなかった。グルホフスキーと名乗る青年は風貌こそ痩せてひ弱そうだったが、その眼光は武人にも引けを取らなかった。
「儀式のことを知りたいんだろ? 俺も信仰心があるわけじゃないから詳しくはわからないけど、マルーン神父はまぁあんな感じだから、会話にはならない。だからさ、俺が口添えして、情報を引き出してみるよ」
グルホフスキーは一を話せば十を理解する、そんな男だった。そして他派閥の商人たちを出し抜くべく、ミッコとエミリーを使おうとする強かさも感じられた。
グルホフスキーはエミリーも呼ぶと、マルーン神父、古き犬の紋章を付けた旧主の番人の男、塔の女王を奉る司祭の紋章を付けた神の学徒の一派と思しき男らの会話に割って入った。ミッコは後ろから聞いていたが、やはり神父の言葉は意味不明だった。
「おいグルホフスキー。商売に関係ない話ならあとにしろ」
「関係ないことはないだろ? 儀式については〈教会〉のお偉方も知りたがってる。売り込みに必要ない情報なんてない」
「ふん。くだらん」
古き犬の紋章を付けた旧主の番人の商人は唾を吐き捨てると、おもむろにエミリーに目をくれた。
「おい神父。こっちの女はいくらだ?」
「勘違いするな。彼女は旅の者。たまたま儀式に協力してもらっただけで、お前たち相手の取引材料ではない」
エミリーに値段を付けようとする旧主の番人の商人相手にミッコは思わず殴ろうとしていたが、その前にマルーン神父が釘を刺した。
マルーン神父は狂信者には違いなかった。しかし、敵なのか味方なのか、善人なのか悪人なのかは、相変わらず判断できなかった。
「じゃあ血だけでも採取させてくれよ。この際、女じゃなくて男のでもいい。いくらだ?」
「おい犬野郎。さっきからしつこいんだよ。人を売り物扱いしやがって」
「はぁ? 実際、こっちは売り物の交渉に来てんだよ」
喧嘩腰の旧主の番人の商人にミッコは詰め寄った。エミリーやグルホフスキーには抑えられたが、構わなかった。
「お前みたいな筋肉バカにはわかんねぇだろうが、この村はただの奴隷の供給源じゃねぇんだ。俺たちにとっちゃ、金の卵を生むガチョウなんだよ」
「おい、村の連中の前だぞ」
「知るか。ここの連中は大陸共通語はわかんねぇんだろ?」
グルホフスキーは遮ったが、旧主の番人の商人は構わず話を続けた。
「この村は神父のおかげで格付けに成功したんだ。聖女の格付けをして売り込めば、〈教会〉の高位聖職者どもは一気に財布のひもを緩くしてくれるからな」
「何が格付けだ。売ったあと、この子がどうなるかはわかってんのかよ?」
「そんなもん知るか。〈帝国〉相手の戦争に担ぎ出そうが、〈神の奇跡〉の実験材料に使おうが、司祭どもの娼婦になろうが、用済みになって捨てられようが、そんなの俺たちには関係ない。俺たちは客が求める付加価値を提供してんだ。そうしなきゃ、値段でも数でも、海外植民地の奴隷には対抗できないんだよ」
旧主の番人の商人が続けて言葉を発する前に、ミッコはその顔面をぶん殴っていた。その体が地面に転がると同時に、その口元からは何本かの歯が転がった。
不気味なほど善良なデグチャレフ村にあって、この旧主の番人の商人の醜悪さは、今となっては懐かしささえ覚えるほどに新鮮だった。〈嵐の旅団〉を構成する派閥の一つである旧主の番人は、〈東の覇王〉を厳格に信奉する保守派であるとされるが、少なくともこの商人は、ミッコの知る騎馬民──酒と女と戦いを愛する自由の戦士──には似ても似つかない俗物だった。
「いい加減にしろ若造ども! せっかくの晴れ舞台を台無しにしおって! 今すぐここから立ち去れ!」
旧主の番人の一団とミッコの喧嘩が今まさに始まろうとしたそのとき、マルーン神父の一喝が夏空に響き渡る。それとときを同じくして、夏の陽射しのどこからか、雨粒が落ちてくる。
一粒二粒、晴れているにも関わらずそれは雨となり降り始めた。
「今日の祝賀は終いじゃ」
唐突な雨によって、屋外での昼食会は自然解散となった。マルーン神父がメイジとその家族を連れて去ると、慌ただしく料理が片付けられ、村人たちも家々に去っていった。
「どこの馬の骨とも知れねぇクソが……。覚えてろよ……」
捨て台詞を吐き去っていく旧主の番人の商人たちに、ミッコは唾を吐き捨てた。それから、グルホフスキーらに促され、あとに続いた。
「あんたの相方、すげぇ手が早いな。いつもこんな感じなのか?」
「まぁ、話し合いが得意な方ではないと思う」
「血の気が多いのはいいことだって! おかげでスッキリしたよ!」
呆れ顔で笑うエミリーを横目に、グルホフスキーが破顔する。
「旧主の番人の奴らはみんなあんな感じでね。しかも、奴らは戦狼たちを裏で支援している。昔からの共同管理の契約さえなけりゃ、あのまま俺が殺してやってたよ」
〈嵐の旅団〉の内戦において、旧主の番人は狼王の遺児のフー率いる戦狼たちを裏で支援していると噂されていた。対峙するアンナリーゼら地域社会の有力者たちは、現在、圧倒的強さを誇るフーと戦場で雌雄を決するよりも、旧主の番人への圧力をかけ支援を断ち切ることに注力しているらしかった。
「そういや、アンナリーゼ殿は元気なのか?」
「まぁね。フーの本隊相手に、イズマッシュも何とか守り切ったし。でもアリアンナ様は戦闘中に行方不明になっちまった。赤の親父の三姉妹なんて呼ばれてたのに、今はアンナリーゼ様独りしか残ってないよ」
グルホフスキーの淡々とした言葉が、なぜか胸に重く響いた。
何気なく訊いたことをミッコは後悔した。赤の親父は先ほどぶん殴った男と同じ奴隷商人であり、決して善人ではない。エミリーも反発していたし、そもそも、たまたま旅の道中で一緒になっただけである。それでも、言葉を交わし、共に戦場で命を懸けた。だからこそ、彼女らの事の顛末が気になってしまったのだろうとミッコは思った。
グルホフスキーはデグチャレフ村との中継地を拠点にしているらしく、実際に戦闘に参加したわけではないと付け加えた。そのせいか、フーと戦狼たちの情報は断片的で、曖昧だった。
「儀式についてはやっぱりよくわかんなかったけど、また明日にでも訊けばいいさ。商談はまだ続く。時間をかければ、何かわかるかもしれない」
グルホフスキーは基本的に闊達だった。「また明日」と手を振りながら、グルホフスキーら地域社会の一団は宿営地へと去っていった。
「変な天気……」
夏の太陽を濡らす雨、そして遠く北限の峰の雨雲を眺めながら、エミリーが呟く。
「ねぇ、ちょっと歩かない? 久しぶりに二人で、馬に乗って」
エミリーの提案にミッコは頷いた。
ほんの少しの距離を保ちながら、二人はゲーフェンバウアーとアルバレスを繋いでいる礼拝所へと向かった。
ミッコは前を行くエミリーを見た。その金糸の髪はまだやつれていたが、しかし雨に濡れるその色は、少しだけ出会った頃を思い出させた。
外部から来た商人たちと話し込むマルーン神父にミッコは詰め寄った。
ミッコは問うた──なぜエミリーは意識を取り戻したのか。なぜ二人は生きているのか、と。
「ちょうどいい。君たちへの聞き取りも兼ねて、話したいことは山積みなんだ」
ミッコの問いに対し、マルーン神父は快く答えてくれた。
ミッコや商人たちに対し、マルーン神父の言葉はとても親切丁寧だった。ただ、ミッコの求める回答は何一つないどころか、その内容はやはり何一つ理解できなかった。
その回答があまりにも意味不明なため、ミッコは段々と腹が立ってきた。そのとき、赤いウサギの紋章を付けた青年が間に割って入ってきた。
「なぁあんた、ちょっといいかい」
「……どちらさんで?」
「あんた、赤の親父のアンナリーゼとイズマッシュまで一緒だった人だろ? 俺はグルホフスキー。アンナリーゼ様の部下で、この村の通商担当だ」
ミッコは馴れ馴れしく挨拶する商人を力づくで押しのけようと思ったが、しかしグルホフスキーはそれをさせなかった。グルホフスキーと名乗る青年は風貌こそ痩せてひ弱そうだったが、その眼光は武人にも引けを取らなかった。
「儀式のことを知りたいんだろ? 俺も信仰心があるわけじゃないから詳しくはわからないけど、マルーン神父はまぁあんな感じだから、会話にはならない。だからさ、俺が口添えして、情報を引き出してみるよ」
グルホフスキーは一を話せば十を理解する、そんな男だった。そして他派閥の商人たちを出し抜くべく、ミッコとエミリーを使おうとする強かさも感じられた。
グルホフスキーはエミリーも呼ぶと、マルーン神父、古き犬の紋章を付けた旧主の番人の男、塔の女王を奉る司祭の紋章を付けた神の学徒の一派と思しき男らの会話に割って入った。ミッコは後ろから聞いていたが、やはり神父の言葉は意味不明だった。
「おいグルホフスキー。商売に関係ない話ならあとにしろ」
「関係ないことはないだろ? 儀式については〈教会〉のお偉方も知りたがってる。売り込みに必要ない情報なんてない」
「ふん。くだらん」
古き犬の紋章を付けた旧主の番人の商人は唾を吐き捨てると、おもむろにエミリーに目をくれた。
「おい神父。こっちの女はいくらだ?」
「勘違いするな。彼女は旅の者。たまたま儀式に協力してもらっただけで、お前たち相手の取引材料ではない」
エミリーに値段を付けようとする旧主の番人の商人相手にミッコは思わず殴ろうとしていたが、その前にマルーン神父が釘を刺した。
マルーン神父は狂信者には違いなかった。しかし、敵なのか味方なのか、善人なのか悪人なのかは、相変わらず判断できなかった。
「じゃあ血だけでも採取させてくれよ。この際、女じゃなくて男のでもいい。いくらだ?」
「おい犬野郎。さっきからしつこいんだよ。人を売り物扱いしやがって」
「はぁ? 実際、こっちは売り物の交渉に来てんだよ」
喧嘩腰の旧主の番人の商人にミッコは詰め寄った。エミリーやグルホフスキーには抑えられたが、構わなかった。
「お前みたいな筋肉バカにはわかんねぇだろうが、この村はただの奴隷の供給源じゃねぇんだ。俺たちにとっちゃ、金の卵を生むガチョウなんだよ」
「おい、村の連中の前だぞ」
「知るか。ここの連中は大陸共通語はわかんねぇんだろ?」
グルホフスキーは遮ったが、旧主の番人の商人は構わず話を続けた。
「この村は神父のおかげで格付けに成功したんだ。聖女の格付けをして売り込めば、〈教会〉の高位聖職者どもは一気に財布のひもを緩くしてくれるからな」
「何が格付けだ。売ったあと、この子がどうなるかはわかってんのかよ?」
「そんなもん知るか。〈帝国〉相手の戦争に担ぎ出そうが、〈神の奇跡〉の実験材料に使おうが、司祭どもの娼婦になろうが、用済みになって捨てられようが、そんなの俺たちには関係ない。俺たちは客が求める付加価値を提供してんだ。そうしなきゃ、値段でも数でも、海外植民地の奴隷には対抗できないんだよ」
旧主の番人の商人が続けて言葉を発する前に、ミッコはその顔面をぶん殴っていた。その体が地面に転がると同時に、その口元からは何本かの歯が転がった。
不気味なほど善良なデグチャレフ村にあって、この旧主の番人の商人の醜悪さは、今となっては懐かしささえ覚えるほどに新鮮だった。〈嵐の旅団〉を構成する派閥の一つである旧主の番人は、〈東の覇王〉を厳格に信奉する保守派であるとされるが、少なくともこの商人は、ミッコの知る騎馬民──酒と女と戦いを愛する自由の戦士──には似ても似つかない俗物だった。
「いい加減にしろ若造ども! せっかくの晴れ舞台を台無しにしおって! 今すぐここから立ち去れ!」
旧主の番人の一団とミッコの喧嘩が今まさに始まろうとしたそのとき、マルーン神父の一喝が夏空に響き渡る。それとときを同じくして、夏の陽射しのどこからか、雨粒が落ちてくる。
一粒二粒、晴れているにも関わらずそれは雨となり降り始めた。
「今日の祝賀は終いじゃ」
唐突な雨によって、屋外での昼食会は自然解散となった。マルーン神父がメイジとその家族を連れて去ると、慌ただしく料理が片付けられ、村人たちも家々に去っていった。
「どこの馬の骨とも知れねぇクソが……。覚えてろよ……」
捨て台詞を吐き去っていく旧主の番人の商人たちに、ミッコは唾を吐き捨てた。それから、グルホフスキーらに促され、あとに続いた。
「あんたの相方、すげぇ手が早いな。いつもこんな感じなのか?」
「まぁ、話し合いが得意な方ではないと思う」
「血の気が多いのはいいことだって! おかげでスッキリしたよ!」
呆れ顔で笑うエミリーを横目に、グルホフスキーが破顔する。
「旧主の番人の奴らはみんなあんな感じでね。しかも、奴らは戦狼たちを裏で支援している。昔からの共同管理の契約さえなけりゃ、あのまま俺が殺してやってたよ」
〈嵐の旅団〉の内戦において、旧主の番人は狼王の遺児のフー率いる戦狼たちを裏で支援していると噂されていた。対峙するアンナリーゼら地域社会の有力者たちは、現在、圧倒的強さを誇るフーと戦場で雌雄を決するよりも、旧主の番人への圧力をかけ支援を断ち切ることに注力しているらしかった。
「そういや、アンナリーゼ殿は元気なのか?」
「まぁね。フーの本隊相手に、イズマッシュも何とか守り切ったし。でもアリアンナ様は戦闘中に行方不明になっちまった。赤の親父の三姉妹なんて呼ばれてたのに、今はアンナリーゼ様独りしか残ってないよ」
グルホフスキーの淡々とした言葉が、なぜか胸に重く響いた。
何気なく訊いたことをミッコは後悔した。赤の親父は先ほどぶん殴った男と同じ奴隷商人であり、決して善人ではない。エミリーも反発していたし、そもそも、たまたま旅の道中で一緒になっただけである。それでも、言葉を交わし、共に戦場で命を懸けた。だからこそ、彼女らの事の顛末が気になってしまったのだろうとミッコは思った。
グルホフスキーはデグチャレフ村との中継地を拠点にしているらしく、実際に戦闘に参加したわけではないと付け加えた。そのせいか、フーと戦狼たちの情報は断片的で、曖昧だった。
「儀式についてはやっぱりよくわかんなかったけど、また明日にでも訊けばいいさ。商談はまだ続く。時間をかければ、何かわかるかもしれない」
グルホフスキーは基本的に闊達だった。「また明日」と手を振りながら、グルホフスキーら地域社会の一団は宿営地へと去っていった。
「変な天気……」
夏の太陽を濡らす雨、そして遠く北限の峰の雨雲を眺めながら、エミリーが呟く。
「ねぇ、ちょっと歩かない? 久しぶりに二人で、馬に乗って」
エミリーの提案にミッコは頷いた。
ほんの少しの距離を保ちながら、二人はゲーフェンバウアーとアルバレスを繋いでいる礼拝所へと向かった。
ミッコは前を行くエミリーを見た。その金糸の髪はまだやつれていたが、しかし雨に濡れるその色は、少しだけ出会った頃を思い出させた。
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