圏ガク!!

はなッぱち

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蜜月

もはや自室の反省室

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「なんでだよッ! 先輩が必死で頑張った成果を不正だなんて言わせねぇ! 離せよッ絶対に認めさせてやる!」

 オレが先輩に抗議していると、近づいてきた野村に顎を掴まれ汚い手で口を塞がれた。

「この五月蠅いの、とっとと連れてけ金城。でないと、お前の貴重な単位全部没収すんぞ」

 言うに事欠いて、まだ先輩を貶めるつもりか! カッとなったオレは拘束されていない足で、目の前のクソ教師の土手っ腹に全力の蹴りを見舞っていた。ぶっ飛ぶ野村が派手に机の上に倒れる。

「セイシュン! お前……」

 先輩を思わず絶句させてしまったが、泣き寝入りはしない。

「また派手にやったなぁ、夷川」

 騒ぎを聞きつけて、他の教師や野次馬が集まって来た。その中に目的の人物を見つけて、オレは声をかける。

「守峰先生。確認したい事があります」

 守峰が姿を見せたおかげか、蹴りのダメージか、野村がオレに飛びかかってくる様子はなかった。オレの口調が変わった事で冷静になったと判断してくれたのか、先輩も拘束を解いてくれる。

「事前に同じ参考書を利用したせいで、野村先生は金城先輩がカンニングしたと主張しています。金城先輩がやった試験対策はカンニングになるのですか?」

「いいや、カンニングだ。試験が参考書の丸写しな訳ないだろが! そもそも問題を知ってなかったら、金城が満点なんぞ取れるはずがない。試験問題を盗み見たんじゃないのか、えぇ?」

 オレの言葉に野村がかぶせてくる。先輩がオレの腕をぎゅっと掴んできた。教師を蹴り飛ばした後では信用がないのは仕方ない……冷静な振りを頑張る。

「金城、答案はあるのか? あるなら見せろ」

 守峰は野村もオレも視界に入れず、先輩に手を差し出した。オレは先輩の手から逃れ、野村を蹴り飛ばした時に床に落ちてしまったらしい答案を拾い、先輩に手渡した。

 戸惑いながらも先輩は受け取った答案を守峰に渡す。「ほう、満点か」と守峰はオレに視線を向けた。

「なるほど……金城、ラッキーだったな。これはお前が自習で使ってた問題集の抜粋だ」

 野村が何か言いかけたが、守峰の視線がそれを許さなかった。

「夷川、こいつが事前にやってたノートか何か持ってこい」

 守峰は名指しでオレを先輩の部屋まで走らせた。印刷ミスした裏紙をノート代わりに使っていたので、一教科だけでも結構な量だ。これは全部先輩が頑張った証拠でもある。オレはそれらを持って、旧館食堂へ戻った。

 食堂は野次馬が一掃されており、中に居る奴らも誰一人喋らず、お通夜のような雰囲気に一瞬気圧される。

「全部持って来たか?」

「はい」

 先輩の頑張りを手渡す。守峰には全て事前に確認して貰っているが、こうして先輩が解いた問題を見せるのは始めてだった。

「ほー、頑張ったな。山は張らなかったんだな」

「……はい。それで満点取っても意味ありませんから」

 野村の出題傾向から、山を張るのは簡単だった。だから一度でも満点を取らせてやりたくて正直迷ったが、真面目に取り組む先輩を見ていたら結局出来なかったのだ。

 守峰は野村にプリントの束を手渡す。

「これで誤解は解けましたかね、野村先生」

「あ、あぁ、まあ……そうですな」

 不承不承に頷く野村は、先輩には何のリアクションもせず、オレを睨み付けてきた。

「金城はいい。だが、お前だ夷川。教師を蹴り飛ばすなんざ許される事じゃねぇぞ。分かってんのか!」

 やっと言語を使用出来るようになったようだが、オレに対する怒りは健在のようだった。

「そりゃそうだな。金城、お前は自室へ戻れ。夷川は反省室へ連れて行け。谷垣」

「はい。夷川、来い!」

 守峰の後ろに控えていた担任が、見事にご指名を受けてしまった。担任はこうなる事が分かっていたように、誰かが反論する前に厳しい口調でオレを引っ立てた。

 先輩が止めようとしてくれたが、守峰に制止され、それでも心配そうな顔で見送ってくれる。野村が生ぬるいと、廊下にまで聞こえる文句を言ったが、一緒に酒を飲んでいた誰かが宥めているようだった。

 テメェはその前に言う事あんだろ! と叫びそうになったが、オレの気配を察してか担任に「黙ってろ」と釘を刺された。

「頭ん中、何十年も前から止まったまんまのセンコーが面倒なのはお前も分かるだろ。適当に流せ」

「でも、先輩はすげぇ頑張ったのに……あんまりです」

「心配しなくても、金城なら守峰先輩がちゃんと評価してくれる。いらん心配するな」

 担任の言葉にオレは少しだけ安心して、通い慣れた反省室へと歩いていく。途中、事務室に寄り、紙束と鉛筆を手渡される。反省文を書かされるだろうと思い、頭の中で反省文を下書きしていると、両腕に色々と抱えた狭間が追いかけてきた。

「谷垣先生、夜は冷えますので反省室に差し入れをしたいんですが、いいでしょうか?」

 狭間は担任にありがたい申し出をしてくれるが、普通に考えたらちょっと過保護すぎて却下されそうだなと思った。

「おお、すまんが俺の分も頼む」

 まさかの追加注文が出た。狭間はチラリとオレの方を見て「よかったね」と視線で伝えてくる。定期的に掃除に入っている狭間から、十二月の……いや真冬の反省室の寒さはヤバいと忠告されていたのだ。
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