『ヘブン』

篠崎俊樹

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第12話。

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     12
 次に、百合のことを書く。娘は気の毒で、長女を出産する際に、姑からの精神的なストレスで、突発性難聴になってしまって、左耳が聴こえ辛い。かわいそうだ。俺は心底、娘に同情する。百合は、地元の高校を卒業後、短大に入学して、保育士の資格を取って、うちの町の保育園で、保育士を務めて、お給料日になると、香澄の郵便局の口座に、お金を入金していた。実に、関心な子だ。俺は、娘が立派だと思う。たとえ、短大しか出てなくて、低学歴でも、レビー小体型認知症の馬鹿爺さんなんかより、一億倍もマシだ。俺はそう思って、百合を誇りに思っている。我が娘ながら、立派で誇らしい。百合にとって、短大時代は、本意じゃなかったのかもしれないが、俺は、娘が、その後、婿の雅弘と円満に結婚して、五人も子供が生まれ、幸せな生活を送っていることが、何より、誇らしいし、好きだ。お前には、好きな中国や韓国の王朝物のDVDを買ってやる。何十本でも、何百本でも、遠慮なく買ってやる。好きなだけ見なさい。育児の合間にね。それが、俺のやってやれる唯一のことだ。また、百合は、左耳が聴こえ辛くて、保育園の園児たちから、言われなき誤解を受けたことがあったけど、それも含めて、頑張った。俺は本当に誇らしいよ。お前のことが。そう思っててくれ。
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