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第5話。
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君島重三殺害事件で、管轄外にもかかわらず、応援を頼まれていた代々木南署の会議室で捜査会議が開かれ、意見聴取が行われたのは、事件から三日後の昼過ぎのことだった。午後一の会議は、ピリピリしてはいるものの、事実関係の報告や照合程度の代物に過ぎない。大した会議じゃなかった。
二十七歳の矢島智彦刑事課長が、その場を取り仕切る。矢島は、東大法学部卒で、国家公務員Ⅰ種試験に現役合格を果たした、絵に描いたようなエリートだった。いわゆるキャリア組の先鞭だ。
「捜査は極めて難航してる。物証という物証が全て持ち去られ、指紋はおろか、部屋の中の毛髪の類まで、全て取り除かれている状況だ」
同じくキャリア組で、矢島の東大の後輩である、係長の宮澤孝之がメモを見ながら、現在の捜査状況に著しい遅滞が出ていることを、強く指摘した。はっきり言って、警察のキャリア官僚をもってしても、事態は収拾がつかない。それぐらい、深刻だった。
その時、警部補の八田が、発言のため、挙手した。決して、出過ぎた真似ではない。むしろ、自然な方だ。
「現場の物証等が、全て持ち去られ、捜査そのものに決定打を欠く状況ですが、聞き込みで有力な証拠を得ました。この手持ちのICレコーダーに録音されているので、今から披露いたします」
そう言った八田が、会議場隅の大きな機材へと歩いていき、機器をセットして、再生ボタンを押した。この機器は、警察の商売道具だ。ないと、仕事にならない。
幾分、くぐもったような音声が流れ出す。それが機器を通じて、ダイレクトに録音された人の話し声と分かるまでに、寸分の時も要しなかった。別に、それはそれで、構わないと思っている。そこにいる警察官たちも、特に気にしてないようだった。普通に、事件捜査は、淡々と進むだろう。八田もその点は安心だった。
ICレコーダーから、トーンの高い声が聞こえ出す。ひときわ、微妙で、抵抗があるが、これはこれで、気に掛けていることじゃない。また、そこにいる刑事たちも、そう気に掛けてないようだった。
声は途切れることなく、聴こえ続ける。皆、不審に思うだろう。こんな中年主婦たちの変なやり取りを。また、別に、刑事たちにとって、この手の物証を掻き集めるのは、わけもないことだった。誰にとっても、そう思える。
「そう言えばね、あそこのお家、君島さんのお宅、親子仲がすごく悪かったわよ。確か……そう、息子さん、次郎君だっけ?殺されたお父さんの重三さんとしょっちゅう喧嘩してたわ」
中年主婦の一人の声が、カンカン響く。これは、相当、事実関係に関しても、勘付いている証拠だろう。実際、勘付かない方がおかしかった。これは、紛れもなく事実だ。また、勘付くはずでもある。
「それは、口論の声が聞こえたとか、そういうことですか?」
捜査員の絶妙な合いの手に、声からして中年らしいその主婦が返した。この合いの手は、実際、絶妙である。それに、辺りにいた警察官たちも、幾分、引いていた。それは、引くだろう。警察の捜査の手はすぐそこまで伸びていて、刑事たちが動くだけで、容疑者たちは、容易に挙げられるのだから……。
中年主婦が続ける。
「そうね、それもあったわね。ただ、重三さん、若いときに離婚されて、奥さんおられなかったし、次郎君も大学、確か中退してたし……」
「それは息子にも、殺人の確たる動機があるということですね?」
捜査員が問い返すと、中年主婦が渋々答えた。実際、事実関係は、その通りだ。紛れもなく、事実そのものだ。ウソなど、一つとしてない。
続けて、中年主婦が続ける。幾分、言葉を濁しながら、だ。
「まあ、そういうことになるかしら?考えたくもないけど……親殺しなんて」
実際、恐ろしい事実である。レビー小体型認知症の親を惨殺して、死体を損壊するなど、この世の人間のやることとは思えない。また、ジミーは、統合失調症の頭脳で、理性を失ったようなことを仕出かす。毒親殺しと言うのも、実際、その一端だ。事実、統合失調症は、恐ろしい。無感情で、無反応。それが、あの病気の特徴だ。
「どうです?これは有力な捜査資料になるでしょう?」
八田が、自信満々に言った。これは、事実、その通りだ。また、当たり前に、刑事たちは、ここ代々木近辺でも、動いて回る。刑事にとって、足で稼ぐことが大事なのだ。
喉が渇いてたまらんな、といった風な矢島が、手元のペットボトルの水を呷りながら、軽く息をつく。その吐息は、実に絶妙だ。辺りにいる捜査員たちは、全員がそう思う。また、それが自然だろう。
「八田君、そのICレコーダー、音源はどこだ?」
矢島が訊いた。不審に思ったのだろう。まあ、当たり前と言えば、当たり前なのだが……。訊かれた八田が、すかさず答えた。
「入手先は、事件のあった渋谷の住宅街近辺で、入手元は商店街を歩いていた主婦です」
その言葉は、信憑性に欠けている。実際そうだ。
「そうか。……しかしだ、そんなもので人を疑うのはちょっと酷だな。疑われた息子だってかわいそうだし」
だが、矢島のその言葉に、八田は執拗に食い下がって、言った。彼にも警官としての意地があるのだ。矜持と言ってもよかった。また、刑事全般に、警官としての意気込みがある。それは紛れもなかった。実際、その通りだ。これは、否めない事実である。
「私は、これを正式に捜査資料として提出し、害者の息子の次郎をも含めた、容疑者の絞込みを要請いたします」
八田が言葉を強めて言う。実際、その言葉には、核心に迫ったものがあった。また、警察官共通の理念でもある。デカと呼ばれる人種は、皆そうだ。誰にでも分かる。だが、次の矢島の言葉はつれない。いや、わざとつれなくしていた。
「誰に要請するんだい?ここの責任者は僕だよ」
「お前、本気でぶん殴ってやろうか?」と、最初、八田は思った。その後、「これ以上、生意気言ったら、本気で怒るぞ」と、心中で苛立った。
そして、激昂の後、続けた。もはや、言葉にはならないといった感じだ。振り絞るように言った。
「もし、課長がお取り上げにならないなら、直接署長に提出いたします」
署長の上野公孝は、その日、定時に署長室に出勤しているはずだった。当てには、ならないのだが……。
直訴しかない、という思いを固めた八田が、ICレコーダーを持っていたカバンへと仕舞い込み、自席へと戻る。半ば、諦めたといった感じだ。投げかけている。果たして、頭の固い上層部が、俺の意見を聞くか?しかも上野は何と言うだろうか?一警部補が署長に直訴となると、とんだお笑い種になるかもしれない。
一方で、涼しい顔の矢島はタバコに火を点けて、ゆっくりと燻らしながら、内心、八田のことを苦々しく思っていた。実際、部下に楯突かれるほど、心苦しいことはない。また、矢島は東大法学部卒ということで、キャリア組らしく、プライドが高かった。ヒラの刑事とは、まるで違う。八田のやり方を、思い上がりだと思っていた。それに、実際、キャリアに物申すヒラ警察官など、切り捨てていいものと思っている。それが、持論だ。八田を心底、侮蔑している。また、捜査から外すことぐらい、方針違反のレッテルを貼れば、朝飯前だ。臨席している刑事たちは、誰もが、この捜査会議を、典型的な八百長だと思っていたし、実際、八百長というものを超えている。
矢島は、燃え尽きた一本目のタバコを灰皿に擦り付けて、揉み消し、すぐさま二本目のタバコに火を点けて、燻らしながら、会議場の端にいた婦警に、コーヒーを一杯淹れてくるよう、命じた。これが、キャリアのやり口だ。皆が、暗黙裡に嫌う類の。
命じられた婦警の若桜香織は、三十代前半で若く、魅力的なルックスと、絶妙なプロポーションを兼ね備えた女性だった。実際、刑事として働くよりは、キャバクラか何かで働いた方が、金になりそうな女だ。やる気も、全くない。やることは、お茶汲みぐらいなものだ。
香織は、男社会である警察に対して、だいぶ不満を感じていた。実際、分かる気がする。彼女にとって、警察というものの理想形は、二時間ドラマのサスペンスなどに出てくる刑事なのだ。そういった警察官は、実際、ほとんどいない。また、いるわけもない。
給湯室に移動して、ため息をついていると、同期入庁の平田由紀が、背後から声を掛けてきた。その声は、明るい。また、若い女性らしく、はきはきとしている。「香織、何してんの?」と切り込んでくるところが、香織にも違和感があったが、別にいいと思った。互いに、若い女性同士だ。気にしていても、すぐに忘れてしまう。
香織は、初夏という季節に相応しくない、熱いコーヒーを淹れて、持っていった。別にいいと思った。自分が飲むんじゃないのだから……。こういった行為は、実際、嫌がらせのようなものなのだ。でも、別に歯牙にも掛けてないようだった。警察署内は、慌ただしい。ただでさえ、物騒な場所なのだから……。
君島重三殺害事件で、管轄外にもかかわらず、応援を頼まれていた代々木南署の会議室で捜査会議が開かれ、意見聴取が行われたのは、事件から三日後の昼過ぎのことだった。午後一の会議は、ピリピリしてはいるものの、事実関係の報告や照合程度の代物に過ぎない。大した会議じゃなかった。
二十七歳の矢島智彦刑事課長が、その場を取り仕切る。矢島は、東大法学部卒で、国家公務員Ⅰ種試験に現役合格を果たした、絵に描いたようなエリートだった。いわゆるキャリア組の先鞭だ。
「捜査は極めて難航してる。物証という物証が全て持ち去られ、指紋はおろか、部屋の中の毛髪の類まで、全て取り除かれている状況だ」
同じくキャリア組で、矢島の東大の後輩である、係長の宮澤孝之がメモを見ながら、現在の捜査状況に著しい遅滞が出ていることを、強く指摘した。はっきり言って、警察のキャリア官僚をもってしても、事態は収拾がつかない。それぐらい、深刻だった。
その時、警部補の八田が、発言のため、挙手した。決して、出過ぎた真似ではない。むしろ、自然な方だ。
「現場の物証等が、全て持ち去られ、捜査そのものに決定打を欠く状況ですが、聞き込みで有力な証拠を得ました。この手持ちのICレコーダーに録音されているので、今から披露いたします」
そう言った八田が、会議場隅の大きな機材へと歩いていき、機器をセットして、再生ボタンを押した。この機器は、警察の商売道具だ。ないと、仕事にならない。
幾分、くぐもったような音声が流れ出す。それが機器を通じて、ダイレクトに録音された人の話し声と分かるまでに、寸分の時も要しなかった。別に、それはそれで、構わないと思っている。そこにいる警察官たちも、特に気にしてないようだった。普通に、事件捜査は、淡々と進むだろう。八田もその点は安心だった。
ICレコーダーから、トーンの高い声が聞こえ出す。ひときわ、微妙で、抵抗があるが、これはこれで、気に掛けていることじゃない。また、そこにいる刑事たちも、そう気に掛けてないようだった。
声は途切れることなく、聴こえ続ける。皆、不審に思うだろう。こんな中年主婦たちの変なやり取りを。また、別に、刑事たちにとって、この手の物証を掻き集めるのは、わけもないことだった。誰にとっても、そう思える。
「そう言えばね、あそこのお家、君島さんのお宅、親子仲がすごく悪かったわよ。確か……そう、息子さん、次郎君だっけ?殺されたお父さんの重三さんとしょっちゅう喧嘩してたわ」
中年主婦の一人の声が、カンカン響く。これは、相当、事実関係に関しても、勘付いている証拠だろう。実際、勘付かない方がおかしかった。これは、紛れもなく事実だ。また、勘付くはずでもある。
「それは、口論の声が聞こえたとか、そういうことですか?」
捜査員の絶妙な合いの手に、声からして中年らしいその主婦が返した。この合いの手は、実際、絶妙である。それに、辺りにいた警察官たちも、幾分、引いていた。それは、引くだろう。警察の捜査の手はすぐそこまで伸びていて、刑事たちが動くだけで、容疑者たちは、容易に挙げられるのだから……。
中年主婦が続ける。
「そうね、それもあったわね。ただ、重三さん、若いときに離婚されて、奥さんおられなかったし、次郎君も大学、確か中退してたし……」
「それは息子にも、殺人の確たる動機があるということですね?」
捜査員が問い返すと、中年主婦が渋々答えた。実際、事実関係は、その通りだ。紛れもなく、事実そのものだ。ウソなど、一つとしてない。
続けて、中年主婦が続ける。幾分、言葉を濁しながら、だ。
「まあ、そういうことになるかしら?考えたくもないけど……親殺しなんて」
実際、恐ろしい事実である。レビー小体型認知症の親を惨殺して、死体を損壊するなど、この世の人間のやることとは思えない。また、ジミーは、統合失調症の頭脳で、理性を失ったようなことを仕出かす。毒親殺しと言うのも、実際、その一端だ。事実、統合失調症は、恐ろしい。無感情で、無反応。それが、あの病気の特徴だ。
「どうです?これは有力な捜査資料になるでしょう?」
八田が、自信満々に言った。これは、事実、その通りだ。また、当たり前に、刑事たちは、ここ代々木近辺でも、動いて回る。刑事にとって、足で稼ぐことが大事なのだ。
喉が渇いてたまらんな、といった風な矢島が、手元のペットボトルの水を呷りながら、軽く息をつく。その吐息は、実に絶妙だ。辺りにいる捜査員たちは、全員がそう思う。また、それが自然だろう。
「八田君、そのICレコーダー、音源はどこだ?」
矢島が訊いた。不審に思ったのだろう。まあ、当たり前と言えば、当たり前なのだが……。訊かれた八田が、すかさず答えた。
「入手先は、事件のあった渋谷の住宅街近辺で、入手元は商店街を歩いていた主婦です」
その言葉は、信憑性に欠けている。実際そうだ。
「そうか。……しかしだ、そんなもので人を疑うのはちょっと酷だな。疑われた息子だってかわいそうだし」
だが、矢島のその言葉に、八田は執拗に食い下がって、言った。彼にも警官としての意地があるのだ。矜持と言ってもよかった。また、刑事全般に、警官としての意気込みがある。それは紛れもなかった。実際、その通りだ。これは、否めない事実である。
「私は、これを正式に捜査資料として提出し、害者の息子の次郎をも含めた、容疑者の絞込みを要請いたします」
八田が言葉を強めて言う。実際、その言葉には、核心に迫ったものがあった。また、警察官共通の理念でもある。デカと呼ばれる人種は、皆そうだ。誰にでも分かる。だが、次の矢島の言葉はつれない。いや、わざとつれなくしていた。
「誰に要請するんだい?ここの責任者は僕だよ」
「お前、本気でぶん殴ってやろうか?」と、最初、八田は思った。その後、「これ以上、生意気言ったら、本気で怒るぞ」と、心中で苛立った。
そして、激昂の後、続けた。もはや、言葉にはならないといった感じだ。振り絞るように言った。
「もし、課長がお取り上げにならないなら、直接署長に提出いたします」
署長の上野公孝は、その日、定時に署長室に出勤しているはずだった。当てには、ならないのだが……。
直訴しかない、という思いを固めた八田が、ICレコーダーを持っていたカバンへと仕舞い込み、自席へと戻る。半ば、諦めたといった感じだ。投げかけている。果たして、頭の固い上層部が、俺の意見を聞くか?しかも上野は何と言うだろうか?一警部補が署長に直訴となると、とんだお笑い種になるかもしれない。
一方で、涼しい顔の矢島はタバコに火を点けて、ゆっくりと燻らしながら、内心、八田のことを苦々しく思っていた。実際、部下に楯突かれるほど、心苦しいことはない。また、矢島は東大法学部卒ということで、キャリア組らしく、プライドが高かった。ヒラの刑事とは、まるで違う。八田のやり方を、思い上がりだと思っていた。それに、実際、キャリアに物申すヒラ警察官など、切り捨てていいものと思っている。それが、持論だ。八田を心底、侮蔑している。また、捜査から外すことぐらい、方針違反のレッテルを貼れば、朝飯前だ。臨席している刑事たちは、誰もが、この捜査会議を、典型的な八百長だと思っていたし、実際、八百長というものを超えている。
矢島は、燃え尽きた一本目のタバコを灰皿に擦り付けて、揉み消し、すぐさま二本目のタバコに火を点けて、燻らしながら、会議場の端にいた婦警に、コーヒーを一杯淹れてくるよう、命じた。これが、キャリアのやり口だ。皆が、暗黙裡に嫌う類の。
命じられた婦警の若桜香織は、三十代前半で若く、魅力的なルックスと、絶妙なプロポーションを兼ね備えた女性だった。実際、刑事として働くよりは、キャバクラか何かで働いた方が、金になりそうな女だ。やる気も、全くない。やることは、お茶汲みぐらいなものだ。
香織は、男社会である警察に対して、だいぶ不満を感じていた。実際、分かる気がする。彼女にとって、警察というものの理想形は、二時間ドラマのサスペンスなどに出てくる刑事なのだ。そういった警察官は、実際、ほとんどいない。また、いるわけもない。
給湯室に移動して、ため息をついていると、同期入庁の平田由紀が、背後から声を掛けてきた。その声は、明るい。また、若い女性らしく、はきはきとしている。「香織、何してんの?」と切り込んでくるところが、香織にも違和感があったが、別にいいと思った。互いに、若い女性同士だ。気にしていても、すぐに忘れてしまう。
香織は、初夏という季節に相応しくない、熱いコーヒーを淹れて、持っていった。別にいいと思った。自分が飲むんじゃないのだから……。こういった行為は、実際、嫌がらせのようなものなのだ。でも、別に歯牙にも掛けてないようだった。警察署内は、慌ただしい。ただでさえ、物騒な場所なのだから……。
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