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第53話。
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その日、ベッドから起き出して、身支度を整え、部屋を出て、フロントで「今夜も泊まるから」と言った可奈は、ラウンジでモーニングコーヒーを一杯飲んだ。そして、八田の指示通り、シドニー空港からメルボルンへと飛ぶ。飛行機に乗って、だ。
同じ国内だが、幾分距離が長い分、二時間以上は優に掛かる。空港に降り立つと、ターミナル前でタクシーを一台拾った。そして、ドライバーに尋ねる。
「この近くに、山荘の密集したところってある?」
「それなら、西の方にバララットっていう小さな街があるよ。そこは、完全に山荘街だな」
「そこ行って」
「結構、時間掛かるけど、いい?」
「ええ」
可奈が頷き、ドライバーが車を発進させる。
しばらくして、
「女性刑事さん?」
と運転手が訊いてきた。
「ええ、そうだけど」
「どこから来たの?」
「日本から」
「犯人追って?」
「うん」
「最初降りたのは?」
「シドニーだけど」
「そう。……多分ね、犯人は、シドニー近郊にいると思うよ。だってこんな街まで、普通来ないもん」
可奈が黒服のポケットの中で、拳銃と手錠を交互に握り締めながら、
「空港に戻って。時間の無駄だから」
と言い返した。彼女は、八田の命令に背いたことになる。
*
飛行機で、シドニーへと引き返した可奈は、前日泊まったホテルの部屋に戻ると、紙の地図を広げた。志田の見当は、多分ハズレだと思う。
彼女はシドニー郊外で、君島たちが潜伏していそうな場所を捜した。結果として、リスゴーとバサースト、それにオレンジという場所が、潜伏候補地となる。
その日は結局、移動だけで時間が過ぎてしまった。まあ、別に、それはそれでよかったのだが……。
ホテルの部屋で缶ビールを呷る彼女は、八田たちに無断で、独自に捜査を展開することにした。これは、隠密行動、ステルスというやつだ。
その日、ベッドから起き出して、身支度を整え、部屋を出て、フロントで「今夜も泊まるから」と言った可奈は、ラウンジでモーニングコーヒーを一杯飲んだ。そして、八田の指示通り、シドニー空港からメルボルンへと飛ぶ。飛行機に乗って、だ。
同じ国内だが、幾分距離が長い分、二時間以上は優に掛かる。空港に降り立つと、ターミナル前でタクシーを一台拾った。そして、ドライバーに尋ねる。
「この近くに、山荘の密集したところってある?」
「それなら、西の方にバララットっていう小さな街があるよ。そこは、完全に山荘街だな」
「そこ行って」
「結構、時間掛かるけど、いい?」
「ええ」
可奈が頷き、ドライバーが車を発進させる。
しばらくして、
「女性刑事さん?」
と運転手が訊いてきた。
「ええ、そうだけど」
「どこから来たの?」
「日本から」
「犯人追って?」
「うん」
「最初降りたのは?」
「シドニーだけど」
「そう。……多分ね、犯人は、シドニー近郊にいると思うよ。だってこんな街まで、普通来ないもん」
可奈が黒服のポケットの中で、拳銃と手錠を交互に握り締めながら、
「空港に戻って。時間の無駄だから」
と言い返した。彼女は、八田の命令に背いたことになる。
*
飛行機で、シドニーへと引き返した可奈は、前日泊まったホテルの部屋に戻ると、紙の地図を広げた。志田の見当は、多分ハズレだと思う。
彼女はシドニー郊外で、君島たちが潜伏していそうな場所を捜した。結果として、リスゴーとバサースト、それにオレンジという場所が、潜伏候補地となる。
その日は結局、移動だけで時間が過ぎてしまった。まあ、別に、それはそれでよかったのだが……。
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