ゲームコインをザクザク現金化。還暦オジ、田舎で世界を攻略中

あ、まん。

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#03 野良サル、畑を耕す

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「おじいちゃん、あのね、お腹が……」
「んあ? ああっ、歩茶ちゃん、おはよう。ちょっと待っててね」

7歳の女の子、歩茶が申し訳なさそうに寝ていた豆丸に声を掛けた。

熟睡してたのか。
いつもなら2回はトイレで目が覚めるので、こんなに熟睡できたのは久しぶり。

それにしても「おじいちゃん」か。
まあ、もし結婚していたら、下手をすれば20歳くらいの孫がいてもおかしくない年齢。それより、おじいちゃんと呼んでくれるのが、なんだか独り身の豆丸としては嬉しくなってきた。

んー。
ん?

肩が軽い。
腕をぐるぐる回しても、ひっかかるところがない。
五十肩も症状がなくなっている。

その場で軽くスクワットしてみたが、膝も痛みがない。
40代の頃の筋力に戻った感じがする。

気分よく、少女、歩茶のために目玉焼きを作ってみた。

卵アレルギーがないか心配だったが、問題なさそうだった。

朝食を済ませ、慎重に外に出る。

手には、昨夜、【交換〈オブジェクト〉】で入手した熊スプレーを握っている。

まあ、熊によく似た化け物なので熊スプレーが効果があるかなと思った次第。

特に異変はなく、荒らされた形跡もない。

敷地内を見て回ったところ、敷地内の外れにある切通の岩場あたりに昨夜、オブジェクト化したモリモリのキャラ3体が、見張りに立つように居座っていた。

えーと、どれどれ。

──────────────
ジャン犬(種類:パー)
レベル:5/5〝強化可能〟
スキル:1/6
ステータス:115
頭が投網になっているモリ。
・投網による捕獲
──────────────

レベルとステータスが上がっていて、レベルの後ろに「強化可能」と書かれている。

斬リッ株とニャースもだいたい似たようなものだった。

強化可能について、説明が書かれている部分を読んでみる。

同じジャン犬をオブジェクト化して、2体をかけ合わせたら、強化できると書いてある。強化後、2体が1体になることで、レベルの上限が5上がる仕組み。
この辺はゲームの仕様そのままになっているらしい。

試しにジャン犬をオブジェクト化したが、グー・チョキ・パーのどのタイプが出るかはランダム。そのため、グータイプが1体、チョキタイプが2体増える形になった。

ジャン犬は3タイプとも戦闘タイプなので、引き続き林道周辺を見張ってもらい、化け物がきたら、やっつけるよう指示を出した。

ニャースと斬リッ株も同様に強化したところ、キャラのアイコンの右上に小さな赤い丸がついていたので開いてみた。

──────────────
野良サル
レベル:1/5
スキル:1/6
ステータス:15
主に農作業をするモリ。
・手伝い
──────────────

新しくオブジェクト化できるモリが増えていた。
麦わら帽に首に手拭いを巻いた野良サルという名のモリ。
顔以外は有名なスナック菓子の某おじさんに激似なのは、くすっと笑える。

手伝いを頼んでみた。
荒れた畑の石の除去を黙々と始めた。

だけどあまり知能は高くないらしい。
この辺に落ちている石を拾ってと頼めば動くが、ここだけではなく他の畑の石も全部取り除いてとお願いしてみたが、理解できていないようだった。

でもすごく助かる。
敷地内は段々畑になっている箇所も多く、大きな機械が入らない。
なので、人手(猿手?)を確保できるのは申し分ない。

野良サルを追加で2体オブジェクト化し、計3体に細かく指示して荒れた畑の整備を始めた。

「ん?」

なにやら、敷地の入り口が騒がしい。
クラクションをしきりに鳴らして、モリ達をどかせようとしている白い高級車。

モリ達には、人間が来たら攻撃しないように伝えてあったので言いつけを守っているが、通していいとは話してなかったため、通せんぼしているようだ。

「こいつらはお前のペットか何かか?」
「──はい」

運転席の窓が開き、窓の外にだらりと腕を出した豆丸と同年代と思われる男。

「じゃあ、そこをどけと命令しろ! 目ざわりだ」
「あのー、すみません。ここは私有地ですが?」
「だったら何だ? 今は非常時だ。私有地もくそもあるか!」
「ちょっと、あなた! ──すみません。うちの主人が」

助手席から女性が降りてきた。
50代後半くらいの女性。男とは対照的に申し訳なさそうな顔をしている。

「いえ、ところでここに何かご用ですか?」
「はい、実は……」

順序立てた話しぶりから、賢そうな女性だと感じた。

夫婦は近くの村に住んでいて、昨日の緊急通知が起きて以来、家の地下室に潜んでいたそうだ。

家には自家用発電があり、監視カメラもあるので、化け物の様子や村から走り去る軽トラをモニター上で見ていたという。

「その……大変、申し訳ないのですが、ここに避難させてもらえないかと」

化け物は、日中は動きが鈍く夜になると、活発に動くらしい。
また、人が集まっているところを嗅ぎつけて優先的に攻撃してくるそうだ。

昨日は、村の多くの人が、公民館に避難したらしいが、公民館が真っ先に襲われたのをカメラ越しに目撃していたそうだ。

地下室から出たら、家の中が化け物に荒らされていたので、自宅から軽トラが走り去った方向をたどってきたという。

「でしたら、お二人がここに避難されたら余計に狙われるリスクが高くなんじゃ」
「おい、儂を知らんのか?」
「はぁ、すみません。どちら様ですか?」
「ここの村議だ。議長をしている」
「はぁ……」
「こういう時は助け合うべきだろ。まったく!」

女性の方だけなら喜んで匿いたいところだが、ご主人の方がちょっと……。

──だけど、もしここで追い返して、あの化け物に二人が襲われでもしたら寝覚めが悪くなる。

「わかりました。お前達、道を開けてあげなさい」
「キリッ」「パーッ」「ニャー」「グゥー」「チョキ!」「チョキ!」

モリ達が、いっせいに道を譲ると、村議がアクセルを踏んだ。
豆丸を置き去りにして敷地の奥、自宅の方まで勝手に行ってしまった。

あれ?
歩茶と何か話してる。

村議夫妻が車から降りると、家の中で休んでいた歩茶が出てきて、奥さんの方と話し始めた。

何を話しているのか、気になり、急いで家まで戻った。

「歩茶、知り合いなのかい?」
「──うん」

話を聞くと、ご婦人の方は歩茶の小中学校の校長だった。

「滝川のところの孫か、お前の爺さんと親父、お袋はどうした?」
「──っ⁉」
「ちょっと、あなた。怖がってるでしょ、子どもには優しくしてください」
「そんなことは知らん、まったく最近のガキは……まあいい」

それより、と。村議が豆丸を見た。

「客が来たんだ。ボケっと突っ立っていないで、茶くらい用意したらどうだ!」

うーん、なんだろ?
──なんだか無性に腹が立ってきた。



























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