ゲームコインをザクザク現金化。還暦オジ、田舎で世界を攻略中

あ、まん。

文字の大きさ
9 / 45

# 09 人型

しおりを挟む
「あのー、生き残りの方ですかー? 私は……むぐっ」

雨に口を塞がれた。

「そちらは何人▪▪いるの?」

向こうの質問には答えず、視線の先、埃で霞む廊下の奥へ雨が声を掛けた。

「ここにいるのは、俺たち看護師2名だ。あんた達、救助に来てくれたのか?」
「いいえ、子どもの治療に来ただけ」
「んなっ! ふざけんな。そんな理由でドアを壊したっていうのか?」
「どこが悪いの? それより今の状況を理解してもらえるかしら?」
「──うっ、すまん、悪かった」

ようやく視界が晴れ、雨が銃を構えているのが見えた。男たちは慌てて両手を上げる。

「そう。お利口さんね。では、この子を診てちょうだい」

3階は化け物に荒らされていない。
医療器具も揃っていて、治療にはうってつけだった。

「いや、医師がいないから、原因がわからない以上、勝手に治療するわけには……」
「死にたいなら、そう言ってちょうだい!」
「わかった。頼む撃つな!」

カチャ、と銃身がスライドする音に、男たちは顔を引きつらせた。

歩茶を治療台に運ぶと、看護師たちが診察を始める。

「これは食中毒の症状に近い。なにか心当たりは?」
「歩茶ちゃん、答えられる?」

銃はずっと男性看護師に向けたまま、雨が歩茶に聞いた。

「ハァハァ、怖いおじいちゃんが、歩茶は川の水を飲めって……」

震える声。
村議が飲料水を節約するため、子どもは喉が渇いたら川の水を飲むよう強要してきたそうだ。

あの男。
どこまで自分勝手なんだ。

いくらなんでもこれはひどい。
帰ったら、必ず追い出す。
たとえ力づくでも。

「さっさと治療して。おかしな真似をしたら、どちらか三途の川を渡ると思って結構よ」

雨はなぜか彼らにどこまでも冷たい。
本当はこういう女性なのだろうか?
一連の雨の行動に、彼女のことがよく分からなくなってきた。

本当は看護師の人たちに強要なんてしたくないが、雨の鬼気迫る雰囲気に飲まれて何も言えなかった。

「これで大丈夫。あとは点滴で良くなっていくはず」
「まあ、ご親切にありがとうございます」
「──っ⁉ オバ様、その男から離れて」
「えっ? あうっ⁉」

歩茶の処置を終え、点滴をセットした直後、看護師が豹変した。

看護師の手が奥方の腕をねじり、首筋にメスを突きつけた。もう一人も、歩茶にハサミを当てている。

「その銃をよこせ。くそ女! さもないとババァとガキを殺す!」
「嫌よ。銃を渡したら、私達全員を殺すつもりでしょ?」

心臓が跳ね、足がすくんだ。
信じていた人間が、急に牙を剥いた。

なにが起きているのか、さっぱりわからず混乱していると雨が教えてくれた。

「3階は手術室のあるフロア。医療関係者がもっといていいはず。でも、いたのはこの二人だけ──つまり、他を見捨てたか、殺したってこと」
「へへっ、勘がいいな。くそアマ。ああ、殺して窓から捨てたよ。外の化け物がきれいに片付けてくれて助かったぜ」

──歪んだ顔。テレビでしか見たことのない悪党の顔が、目の前にあった。

「あら、想像通りのクズね」
「ここはもう安全じゃねえ。とっとと銃をよこせ!」
「私達のせい? それは違うと思うけど……だってほら?」

──なっ。

看護師たちの背後、3階の窓枠に、外から人の手がかかった。

それからはあっという間だった。
夕方、遭遇した人間のような生き物。
それが3階の窓を破り、侵入すると一瞬で看護師二人の胸に穴を開けた。

両腕がドリルのような形になった⁉ 
すぐにドリルのような形状から人の腕に戻る。
看護師二人が崩れ落ちたのを気にも留めずにその視線がベッドに寝ている歩茶に注がれた。

「ひどい事なんてさせない!」
「オバ様、早く離れて!」
「だめよ、歩茶ちゃんを早く避難させ……ぶふっ‼」

村議の奥方が、窓から侵入した人型の化け物に体当たりして、押し返し、窓の外へと突き落とした。だが、直後、口から血を吐いて崩れ落ちた。

奥方に近づくと、腹に穴が開いていた。
貫通はしていないものの、両手で押さえているのに手の隙間からどんどん血があふれ出してきている。

「奥さん! ──早く血を止めなきゃ!」
「豆丸さん! ……お願い、私の話を聞いて」

頭が真っ白になった豆丸が、部屋にタオルがないか探していると、一瞬、子供を叱るように強く豆丸の名を呼んだ。

「主人が迷惑を掛けて申し訳ありませんでした」

涙と血が混じる顔で、微笑んだ。

「あの人の……ことは、どうぞ見捨……ててください」

だけど、と言葉を続けようとしたが、口からさらに血が出て大きく咳き込んだ。

「歩……茶ちゃんの……ことをどうか……お、願い……し……」
「くっ──!」

横向きに寝そべっていた奥方の瞳が、焦点を失い、虚空を見つめている。

奥方が亡くなった。
人の死に直面したのは、長い人生でも初めてだった。

彼女の手を握る。
その手はまだ温かく、まるで今にも握り返してくれそうだった。

「オジ様、ごめんなさい」

雨……。
なぜか、まだ声が険しく感じる。

アレ▪▪、もう一度、這い上がってくるわよ」

















しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。 そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。 しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。 過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

処理中です...