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第二部
第28話 無神論の悪魔
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「ふむ。その様子だと、前に会った時よりは成長しているみたいだな」
目深に被ったフードの奥、濡れ羽色の髪の隙間から覗く金色の瞳を輝かせながらローブの男はゆっくりとした足取りでタマキに近づく。
どのような力を使ったのか解らないが、ダアトくんを吸収したことでローブの男に対する俺たちの警戒心は上がっている。皆がタマキを庇うように立ち、武器を構えていた。
「ダアトくんをどうしたんですか!」
タマキが叫ぶと同時に攻撃を仕掛けようとしていた俺たちを止める声が響く。声の主であるアナベル隊長が皆の間を縫って前に出てきた。
「ここはいったん私に預けて貰えるかしら?」
武器も構えないままアナベル隊長はずんずんと進み出てローブの男の目の前に立つ。次の瞬間、隊長は相手のフードを鷲掴みにすると勢いよく引きはがす。そこから現れた素顔は竜族の特徴を強く持った青年であった。
「やっぱりダアトだったのね」
「まったくお前は乱暴な奴だな。以前にお前が切りかかってきた時にも話しただろう?」
「あんなのは話をしたうちに入らないわ。十侯会議にも現身しか出て来ないから、病気にでもなったんじゃないかと心配してたのよ」
「む。それはすまなかったな」
ダアトと呼ばれた竜族は慣れた様子でアナベル隊長の頭を撫でる。その眼差しはまるで親のように優しい色をしていた。隊長も相手のそういった態度には慣れているのか、子ども扱いするなと言いつつも適当に流している様子だ。
「知らぬもののほうが多いであろうから、改めて名乗るとしよう。我が名はダアト。お前たちのことは使い魔を通してずっと見ていた」
名乗ると同時に真っ黒だった髪は透けるような美しい銀髪へと変化した。おそらくはこれが彼の持つ本来の色彩なのだろう。ダアトは今までに何度か人づてに存在を伝え聞いていた『セフィロトの光竜』の正体で、ダアトくんは彼がこの邪悪の樹に潜り込む際に正体を偽装するために切り離した力の末端らしい。
セフィロトの光竜はその名の通りセフィロトの地に住まう光竜族だ。神格は有していないそうだが、それに近い強い力を持っている竜族らしい。本人の話しぶりやアナベル隊長の様子からしてダアトは味方で間違いないだろう。
「納得がいかぬと言いたい気持ちは判る。だが今は一刻たりとも無駄には出来ぬ。武器を収めよ」
個人的に殴りたいだけのような雰囲気のものも数名混ざっているが、皆が警戒するのも判る。先ほどまで俺たちが戦っていた菫青の勇者やアイオライト卿のように呪印を受けていないとも限らないのだ。『軍師の眼』を持たない俺たちには判別が出来ない部分なのでスキル所有者たちに説明を任せるしかない。
「こちらの姿であれば全身を確認できるだろう。存分に検分するがいい」
竜の姿となったダアトは俺が今までに対峙したことのあるどの竜族よりも小さかった。ふわふわと浮遊する身体は中型犬くらいの大きさで、くるりと身を翻したり転がったりなどして全身を見せてくる。さすがにここまでされれば皆も納得したようだ。
満足げに鼻を鳴らすとダアトは何故か俺の腕に飛び込んできて撫でろと言わんばかりに擦り寄ってくる。いつものウサギのような狐のような姿とは手触りなんかも違うので、いまいち撫で方が判らないのだが俺の手を前足で顎に誘導してくるので喉ゴロゴロが良いのだろう。
「きみは竜族のようだが、ニドヘグやファブニルのような邪悪さを感じない。行動の真意を教えて貰えるか?」
「ふむ。さすがはテミスが選び、アストレアに加護を受けしもの。私の潔白をなお証明してくれるか。我が行動の真意、その答えは簡単だ。私はずっと邪悪の樹の力が弱まる時を待っていた」
素性を隠し単身で敵地へと潜入していた間の緊張は余程のものだったのだろう。撫でられながらうっとりとした表情のダアトは多少だが緊張が解れたようだ。
ひと通り撫でられて満足したのか、ダアトは俺の腕から降りると人間の姿へを戻る。
「我らが王――光竜王アインソフオウルの力の一端である光剣アインも本来の力を取り戻した。今こそアティエルを倒すまたとない機会だ」
ドルフの前に立つとダアトは鞘に収まったままの光剣に手を当てる。ガードの中央に填め込まれた石が明滅しているのが見えた。そう言えば光剣が進化したときの状況はすべてダアトが登場していたので、この二つの間には何か特別な繋がりが存在しているのだろう。
「そこの墓守の家には、この階層の最終地点へと続く門がある。ここのエリアを支配している無神論の悪魔を倒せば開かれるはずだ」
「このエリアに悪魔が居るんですか?」
「うん。あっ、違う。うむ、そうだ。ぼく、あっ違う違う。私も共に戦うから――」
タマキにこのエリアの説明をしながらダアトの口調が徐々に崩れていくのが判る。甘えるのが好きで、尚且つ先ほどの大きさなどからしてダアトは幼い竜族なのかもしれない。
「ダアト、無理して威厳のありそうな話し方をしなくていいのよ」
付き合いがそこそこあるらしいアナベル隊長にはダアトの言動はおかしく見えるようで、優しく肩を叩く。これではどちらが年上なのか判らない状態だ。
「ぼくだって母様とかおじさんたちみたいに敬われたいんだもん!」
うわあああんっ! と、わざとらしい鳴き声を上げながらダアトは手近な女の子に抱き着こうとしているが、隊長が首根っこを掴むほうが早かった。見た目こそ青年だがダアトの年齢は竜族の中でも低いほうなのだろう。子供っぽい言動に毒気を抜かれていると、またもダアトが俺に寄ってくる。
「ああ、そうだ。勇者よ、お前にいいことを教えてやるぞ」
「なんだ?」
「あの日は薄ピンクに白のレースだった」
いったい何の話だろうか。そもそも『あの日』ってどの日だ。おそらく『ダアトくん』だったころに俺と彼が一緒にいた時の話をしているのだろうが、ダアトくんのことは日常的に撫でていたし、悪戯をしないように捕まえていたことも一度や二度じゃない。
俺が首を傾げているとミシェルがダアトに勢いよくビンタをする。続くようにしてアナベル隊長の拳が飛んできて数メートル吹き飛ぶ。
「ダアトは女好きの変態だから気を付けなさい」
隊長はダアトの襟首を掴み捻りあげるとドルフと話し込んでいるタマキのほうへと去っていった。
「えっと。何の日の話だったんだ?」
「聞かないでくださいまし!」
頬を赤らめたミシェルはそのままぷいとそっぽを向いてしまう。なにやら小声でもにょもにょ言っているが、うまく聞き取ることは出来なかった。
*
「あそこの自由騎士は菫青の勇者と同じく呪印を受けていたはずだ。それと向こうの黒いの、えっと星槍騎士も呪印を受けていたはずだから、余裕があれば助けてやると良い」
指し示しながらダアトが名を挙げたのはそれぞれオニキス系の騎士だ。前者は遠巻きで見ると、どう見てもオニキスなのだが目を凝らしてみると仮面をつけているので、おそらくはユニット名がアゲートにでもなっているのだろう。もう一人の星槍騎士というのは天空のレギンレイヴに登場した聖騎士だ。
「オニ……アゲートさんは普通の武器を持ってるんですね」
「うむ。武器の名前は専用装備にみえるが、性能は銀の剣と同じだ。彼ら以外は虚構だな。バチカルは先ほどのエリアでお前たちを倒し切る予定だったようだから、計算が外れて相当焦っているだろう」
聖騎士のスキル『護衛の心得』の発動を防ぐためにも二騎を倒すのは必須だろう。闘志系スキルも持っているそうなので強敵だろうが、自軍側にダアトが加わったことにより軍師のスキルが二重になる部分も出てくるのだ。アイテムも全投入もしている今、先ほどまでのアイオライト卿との戦いに比べると順調に進めそうだ。
「アゲートさんの個人スキルが軍師メタ系なので、反撃を受けないように戦ってください。ペルセウスさんのほうは回復役とペアで持久戦に持ち込めば勝てるはずです!」
あくまでオニキスとは別人扱いらしいアゲートは個人スキルが『黒い爪』から『撃攘する瑪瑙』というものに変更されているらしい。スキル内容は自身が受けているデバフの合計を攻撃力に加算なので、敵のステータスにマイナスを付ける軍師殺しともいえるスキルだ。攻撃力と奥義に追加ダメージを付与する『黒の闘志』と、相手の防御を半減してダメージロールする奥義『冥闇』の効果を考えると近接戦闘なんてしたら結構な確率でHPが吹き飛ぶ。
しかし相手側には回復系ユニットが居ない。こちらも支援やスキルを駆使して戦えば倒せるはずだ。だがそれでも敵が強いことに変わりはないのだ。
奥にいる虚構のほうはそれぞれ光魔法と闇魔法を使用するキャラクターだが、移動のタイミングさえ合えば騎馬ユニットで一気に畳みかけらえる相手だ。アナベル隊長の魔法反射スキルが輝く場所でもある。
「あの。そういえばダアトさんは竜族ユニットの扱いになるんですか? それとも今まで通り光魔扱いになるんですか?」
「ぼくは半分竜で半分人間だから他の竜族みたいに近くに人間がいると変身できないっていう制約に縛られない。竜の姿のほうが力になれるだろうから、この杖はお前に貸してやろう」
ここから先の戦闘では友軍として参加してくれるらしいダアトがタマキに渡したのは、彼が敵として登場していた時に装備していた光魔法の杖だ。攻撃の威力こそ控えめだが、三回攻撃の効果がある。
「これで私も夢の三回攻撃が……ってこれ武器名は杖ってついてても、光魔法の扱いだから私装備できないです!」
「はっはっはっ! そうだったそうだった。でも何かの役に立つだろうから持っているがいい」
これまでの緊張も解けた様子のタマキは笑顔すら浮かべていた。先ほどまでは警戒し険悪だったダアトとも打ち解けたようで、いつの間にか友人のようにじゃれ合う関係になっている。
広い墓地の中心に聳え立つ巨大な碑。その頂点の近くを飛竜に跨り飛んでいるのがこの階層の悪魔だ。先ほどの戦闘で消耗しただろうという理由で俺たちは控えに回り、いざというときに備えて体力の回復に勤めることとなる。
最終エリアでは悪属性特攻が多く必要になるというダアトからの情報に対応する為にも、コンディションは整えておきたい。
タマキとダアトの指揮のもとで無神論の悪魔バチカルとの戦いは順調に進んでいる。呪印を受けていた二人は戦闘不能となり、念の為に縛り上げられているが呪いの解除を待つだけの状態だ。
虚構には多少苦戦したようだが、自軍の離脱者も少ない状態で最後の一体である悪魔をドルフの光剣アインが貫く。
この階層の悪魔を倒し呪印を受けていた二人の呪いを解除し終えると、俺たちは最終エリアへと繋がるとされる門を潜るために墓守の家に足を踏み入れた。
その室内は外観から想像しうる広さを遙かに超えた作りをしていた。しかし、ここにあるとされていた門は見えない。
「えっと、確かこのあたりに……」
壁をペタペタと触りダアトは何かを探し回っている。隠し扉か、門を開くための細工でも存在するのだろう。暫く探し回ったところで壁が少しへこみ、床の一部が引っ込んだと思うと入れ替わるようにして棺が出てくる。
幾重にも鎖で巻かれているそれを解くとダアトは蓋を開ける。そこには一人の騎士が簀巻きにされ閉じ込められていた。
目深に被ったフードの奥、濡れ羽色の髪の隙間から覗く金色の瞳を輝かせながらローブの男はゆっくりとした足取りでタマキに近づく。
どのような力を使ったのか解らないが、ダアトくんを吸収したことでローブの男に対する俺たちの警戒心は上がっている。皆がタマキを庇うように立ち、武器を構えていた。
「ダアトくんをどうしたんですか!」
タマキが叫ぶと同時に攻撃を仕掛けようとしていた俺たちを止める声が響く。声の主であるアナベル隊長が皆の間を縫って前に出てきた。
「ここはいったん私に預けて貰えるかしら?」
武器も構えないままアナベル隊長はずんずんと進み出てローブの男の目の前に立つ。次の瞬間、隊長は相手のフードを鷲掴みにすると勢いよく引きはがす。そこから現れた素顔は竜族の特徴を強く持った青年であった。
「やっぱりダアトだったのね」
「まったくお前は乱暴な奴だな。以前にお前が切りかかってきた時にも話しただろう?」
「あんなのは話をしたうちに入らないわ。十侯会議にも現身しか出て来ないから、病気にでもなったんじゃないかと心配してたのよ」
「む。それはすまなかったな」
ダアトと呼ばれた竜族は慣れた様子でアナベル隊長の頭を撫でる。その眼差しはまるで親のように優しい色をしていた。隊長も相手のそういった態度には慣れているのか、子ども扱いするなと言いつつも適当に流している様子だ。
「知らぬもののほうが多いであろうから、改めて名乗るとしよう。我が名はダアト。お前たちのことは使い魔を通してずっと見ていた」
名乗ると同時に真っ黒だった髪は透けるような美しい銀髪へと変化した。おそらくはこれが彼の持つ本来の色彩なのだろう。ダアトは今までに何度か人づてに存在を伝え聞いていた『セフィロトの光竜』の正体で、ダアトくんは彼がこの邪悪の樹に潜り込む際に正体を偽装するために切り離した力の末端らしい。
セフィロトの光竜はその名の通りセフィロトの地に住まう光竜族だ。神格は有していないそうだが、それに近い強い力を持っている竜族らしい。本人の話しぶりやアナベル隊長の様子からしてダアトは味方で間違いないだろう。
「納得がいかぬと言いたい気持ちは判る。だが今は一刻たりとも無駄には出来ぬ。武器を収めよ」
個人的に殴りたいだけのような雰囲気のものも数名混ざっているが、皆が警戒するのも判る。先ほどまで俺たちが戦っていた菫青の勇者やアイオライト卿のように呪印を受けていないとも限らないのだ。『軍師の眼』を持たない俺たちには判別が出来ない部分なのでスキル所有者たちに説明を任せるしかない。
「こちらの姿であれば全身を確認できるだろう。存分に検分するがいい」
竜の姿となったダアトは俺が今までに対峙したことのあるどの竜族よりも小さかった。ふわふわと浮遊する身体は中型犬くらいの大きさで、くるりと身を翻したり転がったりなどして全身を見せてくる。さすがにここまでされれば皆も納得したようだ。
満足げに鼻を鳴らすとダアトは何故か俺の腕に飛び込んできて撫でろと言わんばかりに擦り寄ってくる。いつものウサギのような狐のような姿とは手触りなんかも違うので、いまいち撫で方が判らないのだが俺の手を前足で顎に誘導してくるので喉ゴロゴロが良いのだろう。
「きみは竜族のようだが、ニドヘグやファブニルのような邪悪さを感じない。行動の真意を教えて貰えるか?」
「ふむ。さすがはテミスが選び、アストレアに加護を受けしもの。私の潔白をなお証明してくれるか。我が行動の真意、その答えは簡単だ。私はずっと邪悪の樹の力が弱まる時を待っていた」
素性を隠し単身で敵地へと潜入していた間の緊張は余程のものだったのだろう。撫でられながらうっとりとした表情のダアトは多少だが緊張が解れたようだ。
ひと通り撫でられて満足したのか、ダアトは俺の腕から降りると人間の姿へを戻る。
「我らが王――光竜王アインソフオウルの力の一端である光剣アインも本来の力を取り戻した。今こそアティエルを倒すまたとない機会だ」
ドルフの前に立つとダアトは鞘に収まったままの光剣に手を当てる。ガードの中央に填め込まれた石が明滅しているのが見えた。そう言えば光剣が進化したときの状況はすべてダアトが登場していたので、この二つの間には何か特別な繋がりが存在しているのだろう。
「そこの墓守の家には、この階層の最終地点へと続く門がある。ここのエリアを支配している無神論の悪魔を倒せば開かれるはずだ」
「このエリアに悪魔が居るんですか?」
「うん。あっ、違う。うむ、そうだ。ぼく、あっ違う違う。私も共に戦うから――」
タマキにこのエリアの説明をしながらダアトの口調が徐々に崩れていくのが判る。甘えるのが好きで、尚且つ先ほどの大きさなどからしてダアトは幼い竜族なのかもしれない。
「ダアト、無理して威厳のありそうな話し方をしなくていいのよ」
付き合いがそこそこあるらしいアナベル隊長にはダアトの言動はおかしく見えるようで、優しく肩を叩く。これではどちらが年上なのか判らない状態だ。
「ぼくだって母様とかおじさんたちみたいに敬われたいんだもん!」
うわあああんっ! と、わざとらしい鳴き声を上げながらダアトは手近な女の子に抱き着こうとしているが、隊長が首根っこを掴むほうが早かった。見た目こそ青年だがダアトの年齢は竜族の中でも低いほうなのだろう。子供っぽい言動に毒気を抜かれていると、またもダアトが俺に寄ってくる。
「ああ、そうだ。勇者よ、お前にいいことを教えてやるぞ」
「なんだ?」
「あの日は薄ピンクに白のレースだった」
いったい何の話だろうか。そもそも『あの日』ってどの日だ。おそらく『ダアトくん』だったころに俺と彼が一緒にいた時の話をしているのだろうが、ダアトくんのことは日常的に撫でていたし、悪戯をしないように捕まえていたことも一度や二度じゃない。
俺が首を傾げているとミシェルがダアトに勢いよくビンタをする。続くようにしてアナベル隊長の拳が飛んできて数メートル吹き飛ぶ。
「ダアトは女好きの変態だから気を付けなさい」
隊長はダアトの襟首を掴み捻りあげるとドルフと話し込んでいるタマキのほうへと去っていった。
「えっと。何の日の話だったんだ?」
「聞かないでくださいまし!」
頬を赤らめたミシェルはそのままぷいとそっぽを向いてしまう。なにやら小声でもにょもにょ言っているが、うまく聞き取ることは出来なかった。
*
「あそこの自由騎士は菫青の勇者と同じく呪印を受けていたはずだ。それと向こうの黒いの、えっと星槍騎士も呪印を受けていたはずだから、余裕があれば助けてやると良い」
指し示しながらダアトが名を挙げたのはそれぞれオニキス系の騎士だ。前者は遠巻きで見ると、どう見てもオニキスなのだが目を凝らしてみると仮面をつけているので、おそらくはユニット名がアゲートにでもなっているのだろう。もう一人の星槍騎士というのは天空のレギンレイヴに登場した聖騎士だ。
「オニ……アゲートさんは普通の武器を持ってるんですね」
「うむ。武器の名前は専用装備にみえるが、性能は銀の剣と同じだ。彼ら以外は虚構だな。バチカルは先ほどのエリアでお前たちを倒し切る予定だったようだから、計算が外れて相当焦っているだろう」
聖騎士のスキル『護衛の心得』の発動を防ぐためにも二騎を倒すのは必須だろう。闘志系スキルも持っているそうなので強敵だろうが、自軍側にダアトが加わったことにより軍師のスキルが二重になる部分も出てくるのだ。アイテムも全投入もしている今、先ほどまでのアイオライト卿との戦いに比べると順調に進めそうだ。
「アゲートさんの個人スキルが軍師メタ系なので、反撃を受けないように戦ってください。ペルセウスさんのほうは回復役とペアで持久戦に持ち込めば勝てるはずです!」
あくまでオニキスとは別人扱いらしいアゲートは個人スキルが『黒い爪』から『撃攘する瑪瑙』というものに変更されているらしい。スキル内容は自身が受けているデバフの合計を攻撃力に加算なので、敵のステータスにマイナスを付ける軍師殺しともいえるスキルだ。攻撃力と奥義に追加ダメージを付与する『黒の闘志』と、相手の防御を半減してダメージロールする奥義『冥闇』の効果を考えると近接戦闘なんてしたら結構な確率でHPが吹き飛ぶ。
しかし相手側には回復系ユニットが居ない。こちらも支援やスキルを駆使して戦えば倒せるはずだ。だがそれでも敵が強いことに変わりはないのだ。
奥にいる虚構のほうはそれぞれ光魔法と闇魔法を使用するキャラクターだが、移動のタイミングさえ合えば騎馬ユニットで一気に畳みかけらえる相手だ。アナベル隊長の魔法反射スキルが輝く場所でもある。
「あの。そういえばダアトさんは竜族ユニットの扱いになるんですか? それとも今まで通り光魔扱いになるんですか?」
「ぼくは半分竜で半分人間だから他の竜族みたいに近くに人間がいると変身できないっていう制約に縛られない。竜の姿のほうが力になれるだろうから、この杖はお前に貸してやろう」
ここから先の戦闘では友軍として参加してくれるらしいダアトがタマキに渡したのは、彼が敵として登場していた時に装備していた光魔法の杖だ。攻撃の威力こそ控えめだが、三回攻撃の効果がある。
「これで私も夢の三回攻撃が……ってこれ武器名は杖ってついてても、光魔法の扱いだから私装備できないです!」
「はっはっはっ! そうだったそうだった。でも何かの役に立つだろうから持っているがいい」
これまでの緊張も解けた様子のタマキは笑顔すら浮かべていた。先ほどまでは警戒し険悪だったダアトとも打ち解けたようで、いつの間にか友人のようにじゃれ合う関係になっている。
広い墓地の中心に聳え立つ巨大な碑。その頂点の近くを飛竜に跨り飛んでいるのがこの階層の悪魔だ。先ほどの戦闘で消耗しただろうという理由で俺たちは控えに回り、いざというときに備えて体力の回復に勤めることとなる。
最終エリアでは悪属性特攻が多く必要になるというダアトからの情報に対応する為にも、コンディションは整えておきたい。
タマキとダアトの指揮のもとで無神論の悪魔バチカルとの戦いは順調に進んでいる。呪印を受けていた二人は戦闘不能となり、念の為に縛り上げられているが呪いの解除を待つだけの状態だ。
虚構には多少苦戦したようだが、自軍の離脱者も少ない状態で最後の一体である悪魔をドルフの光剣アインが貫く。
この階層の悪魔を倒し呪印を受けていた二人の呪いを解除し終えると、俺たちは最終エリアへと繋がるとされる門を潜るために墓守の家に足を踏み入れた。
その室内は外観から想像しうる広さを遙かに超えた作りをしていた。しかし、ここにあるとされていた門は見えない。
「えっと、確かこのあたりに……」
壁をペタペタと触りダアトは何かを探し回っている。隠し扉か、門を開くための細工でも存在するのだろう。暫く探し回ったところで壁が少しへこみ、床の一部が引っ込んだと思うと入れ替わるようにして棺が出てくる。
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