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009、マネージャーの決心
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部室の扉を開けた瞬間、中からざわついた空気が漏れ出してきた。
先輩たちの小声のやり取りが聞こえる。――先程のことを、話しているのだろうか。
「有理須、大丈夫だった?」
私が戻ってきたことに気づくと、部室の中央、累がすぐに立ち上がってこちらに駆け寄ってきた。目には心配の色がにじんでいる。私は彼の顔を見上げて、小さく頷いた。
「少し休んだから……もう平気」
そう言ったけれど、自分の声がまだどこか頼りないのが分かる。
累の手がそっと私の肩に触れた。触れた瞬間、体温がじわりと伝わり、今まで自分がどれほど緊張していたかに気づく。
「無理するなよ。オレは……何があっても有理須の味方だから」
その優しい声に、思わず涙が出そうになるのをこらえた。
「ありがとう、累。でも、本当に大丈夫だから。」
私は彼に微笑んでみせた。
累は一瞬、言いたそうに口を開きかけたけれど、何も言わずに頷き、手を離した。
部室の奥では目々澤部長が腕を組んで立っている。中央の長机では漣白人がスマホをいじるふりをしながらこちらに注意を向けていて、蓮華寺朝緋は文庫本に目を落としながらも会話の気配を探っている様子だった。
誰もこちらを向いていない。ただ、その視線の重さが、私の心にプレッシャーを与えていた。
目々澤先輩の口がゆっくりと開き、私に向けられる。
「灰崎」
「は、はい!」
「俺の身に起きたことはみんなに伝えた。魔法少年としての力は、お前のお陰で確実に上がっている。まずはそのことについて礼を言わせてもらう」
「は、はい……」
真剣な眼差しの目々澤部長を見ると、どうしても先程の行為を思い出してしまう。
あのときの、部長の声、視線、私に触れる手の、大きさ。
「お前がどう思っているか、まずはそれを聞かせてほしい。」
その言葉が部室の空気を一段と張り詰めたものに変えた。
累が私のそばから離れる気配がして、私は深く息を吸った。
自分の中でまだ整理しきれていない思いを抱えながら、目々澤先輩の言葉に――どう答えるべきなのか。
時計の秒針が小さく響く音だけが、静かな部室に流れていた。
「私は……その、」
魔法少年部のマネージャー、性行為を通じて魔法少年たちにパワーを与える。
昨日は累と、今日は目々澤部長と。このままマネージャーとして活動するなら、いずれ白人先輩や蓮華寺先輩とも。それに、累の気持ちは……。
「えっと、こんな事を言うとおかしいと思われるかもしれないんですが……。
目々澤部長との、ことも、その……嫌では、なかったです。たぶん、他の人とも、その……嫌じゃないん、です。で、でも、誰とでもとか、そういうのではなくて……」
混乱しながら言葉を紡ぐ私を、蓮華寺先輩が優しくフォローしてくれる。
「大丈夫だよ、わかってる。おそらく、魔法少年部のマネージャーとして目覚めると、魔法少年との行為に嫌悪感を抱かないようになるんじゃないかな。灰崎さんがどうこうというのではなく、マネージャーという役割がおかしいんだ」
「あ……」
蓮華寺先輩は穏やかな瞳で私を見つめる。
「ただ、嫌悪感を抱かなくても、そうした行為を好きな人以外とすることは……僕はどうかとおもう。だから、マネージャーを辞めると言うなら、止めることは出来ない。青慈もそれでいいよね?」
目々澤部長は蓮華寺先輩の言葉に、がしがしと頭を掻きむしる。
「あー、それはそうだ。灰崎の力は惜しいがな」
「そうだよ、もし有理須ちゃんがマネージャー辞めるって言うなら。オレが有理須ちゃんとえっちすればよかった~!部長ばっかりパワーアップしてずるい。ね、マネージャーじゃなくなってもオレと今度デートしようよ」
「こらっ、漣くん」
蓮華寺に叱られ、白人がぺろりと舌を出す。声色で本気じゃないのがわかる。彼なりに気遣ってくれているんだろう。
「有理須……」
累の視線が、痛いほどに突き刺さる。
こんなに、優しい人たち。まだこの部活で何が起きているかはほとんどわからないけど、こんなに優しい人たちが、この学校を、街を守っているんだ。
そう考えると、心が痛い。
「私、マネージャー辞めません。みなさんと一緒に、魔法少年部の一員として、やっていかせてください。
というか、あの、私なんかで、すいません。これからも、よろしくお願いします!」
勢いよく頭を下げる。
しん、と一瞬部室が静まる。
顔を上げると、みんなこちらを見つめていた。
「お前……『私なんか』とか、二度と言うな。お前はうちの部の大事なマネージャーだ」
怒ったような目々澤部長の声。
「そうそう、有理須ちゃんでよかった。素朴な可愛さと服の上からでもわかるそのおっぱ……」
「漣くん!!」
「またまた、蓮華寺先輩も好きなくせに」
「漣くん!!! 本気で怒りますよ!!!」
部室が騒がしくなっていく。そんなやりとりを見ていると、自然と頬がほころんでいく。
ずっと隣りにいてくれた累が、私の耳元に口を寄せて、他の人に聞こえないような小さな声で囁く。
「マネージャー、続けるのは……正直、微妙な気持ちだけど。
でも、いつかオレだけで有理須も、この学校も、この街も、全部守れるような強い魔法少年になるからさ……。その時がきたら、ちゃんと気持ちを伝えさせてくれよな」
真っ赤になった累の顔は、昨日よりもすごくカッコよく見えた。
先輩たちの小声のやり取りが聞こえる。――先程のことを、話しているのだろうか。
「有理須、大丈夫だった?」
私が戻ってきたことに気づくと、部室の中央、累がすぐに立ち上がってこちらに駆け寄ってきた。目には心配の色がにじんでいる。私は彼の顔を見上げて、小さく頷いた。
「少し休んだから……もう平気」
そう言ったけれど、自分の声がまだどこか頼りないのが分かる。
累の手がそっと私の肩に触れた。触れた瞬間、体温がじわりと伝わり、今まで自分がどれほど緊張していたかに気づく。
「無理するなよ。オレは……何があっても有理須の味方だから」
その優しい声に、思わず涙が出そうになるのをこらえた。
「ありがとう、累。でも、本当に大丈夫だから。」
私は彼に微笑んでみせた。
累は一瞬、言いたそうに口を開きかけたけれど、何も言わずに頷き、手を離した。
部室の奥では目々澤部長が腕を組んで立っている。中央の長机では漣白人がスマホをいじるふりをしながらこちらに注意を向けていて、蓮華寺朝緋は文庫本に目を落としながらも会話の気配を探っている様子だった。
誰もこちらを向いていない。ただ、その視線の重さが、私の心にプレッシャーを与えていた。
目々澤先輩の口がゆっくりと開き、私に向けられる。
「灰崎」
「は、はい!」
「俺の身に起きたことはみんなに伝えた。魔法少年としての力は、お前のお陰で確実に上がっている。まずはそのことについて礼を言わせてもらう」
「は、はい……」
真剣な眼差しの目々澤部長を見ると、どうしても先程の行為を思い出してしまう。
あのときの、部長の声、視線、私に触れる手の、大きさ。
「お前がどう思っているか、まずはそれを聞かせてほしい。」
その言葉が部室の空気を一段と張り詰めたものに変えた。
累が私のそばから離れる気配がして、私は深く息を吸った。
自分の中でまだ整理しきれていない思いを抱えながら、目々澤先輩の言葉に――どう答えるべきなのか。
時計の秒針が小さく響く音だけが、静かな部室に流れていた。
「私は……その、」
魔法少年部のマネージャー、性行為を通じて魔法少年たちにパワーを与える。
昨日は累と、今日は目々澤部長と。このままマネージャーとして活動するなら、いずれ白人先輩や蓮華寺先輩とも。それに、累の気持ちは……。
「えっと、こんな事を言うとおかしいと思われるかもしれないんですが……。
目々澤部長との、ことも、その……嫌では、なかったです。たぶん、他の人とも、その……嫌じゃないん、です。で、でも、誰とでもとか、そういうのではなくて……」
混乱しながら言葉を紡ぐ私を、蓮華寺先輩が優しくフォローしてくれる。
「大丈夫だよ、わかってる。おそらく、魔法少年部のマネージャーとして目覚めると、魔法少年との行為に嫌悪感を抱かないようになるんじゃないかな。灰崎さんがどうこうというのではなく、マネージャーという役割がおかしいんだ」
「あ……」
蓮華寺先輩は穏やかな瞳で私を見つめる。
「ただ、嫌悪感を抱かなくても、そうした行為を好きな人以外とすることは……僕はどうかとおもう。だから、マネージャーを辞めると言うなら、止めることは出来ない。青慈もそれでいいよね?」
目々澤部長は蓮華寺先輩の言葉に、がしがしと頭を掻きむしる。
「あー、それはそうだ。灰崎の力は惜しいがな」
「そうだよ、もし有理須ちゃんがマネージャー辞めるって言うなら。オレが有理須ちゃんとえっちすればよかった~!部長ばっかりパワーアップしてずるい。ね、マネージャーじゃなくなってもオレと今度デートしようよ」
「こらっ、漣くん」
蓮華寺に叱られ、白人がぺろりと舌を出す。声色で本気じゃないのがわかる。彼なりに気遣ってくれているんだろう。
「有理須……」
累の視線が、痛いほどに突き刺さる。
こんなに、優しい人たち。まだこの部活で何が起きているかはほとんどわからないけど、こんなに優しい人たちが、この学校を、街を守っているんだ。
そう考えると、心が痛い。
「私、マネージャー辞めません。みなさんと一緒に、魔法少年部の一員として、やっていかせてください。
というか、あの、私なんかで、すいません。これからも、よろしくお願いします!」
勢いよく頭を下げる。
しん、と一瞬部室が静まる。
顔を上げると、みんなこちらを見つめていた。
「お前……『私なんか』とか、二度と言うな。お前はうちの部の大事なマネージャーだ」
怒ったような目々澤部長の声。
「そうそう、有理須ちゃんでよかった。素朴な可愛さと服の上からでもわかるそのおっぱ……」
「漣くん!!」
「またまた、蓮華寺先輩も好きなくせに」
「漣くん!!! 本気で怒りますよ!!!」
部室が騒がしくなっていく。そんなやりとりを見ていると、自然と頬がほころんでいく。
ずっと隣りにいてくれた累が、私の耳元に口を寄せて、他の人に聞こえないような小さな声で囁く。
「マネージャー、続けるのは……正直、微妙な気持ちだけど。
でも、いつかオレだけで有理須も、この学校も、この街も、全部守れるような強い魔法少年になるからさ……。その時がきたら、ちゃんと気持ちを伝えさせてくれよな」
真っ赤になった累の顔は、昨日よりもすごくカッコよく見えた。
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