魔法少年部のマネージャー!

ぽめ子/七転ぽめお

文字の大きさ
10 / 27

009、マネージャーの決心

しおりを挟む
 部室の扉を開けた瞬間、中からざわついた空気が漏れ出してきた。
 先輩たちの小声のやり取りが聞こえる。――先程のことを、話しているのだろうか。

「有理須、大丈夫だった?」

 私が戻ってきたことに気づくと、部室の中央、累がすぐに立ち上がってこちらに駆け寄ってきた。目には心配の色がにじんでいる。私は彼の顔を見上げて、小さく頷いた。

「少し休んだから……もう平気」

 そう言ったけれど、自分の声がまだどこか頼りないのが分かる。
 累の手がそっと私の肩に触れた。触れた瞬間、体温がじわりと伝わり、今まで自分がどれほど緊張していたかに気づく。

「無理するなよ。オレは……何があっても有理須の味方だから」

 その優しい声に、思わず涙が出そうになるのをこらえた。

「ありがとう、累。でも、本当に大丈夫だから。」

 私は彼に微笑んでみせた。
 累は一瞬、言いたそうに口を開きかけたけれど、何も言わずに頷き、手を離した。

 部室の奥では目々澤部長が腕を組んで立っている。中央の長机では漣白人がスマホをいじるふりをしながらこちらに注意を向けていて、蓮華寺朝緋は文庫本に目を落としながらも会話の気配を探っている様子だった。

 誰もこちらを向いていない。ただ、その視線の重さが、私の心にプレッシャーを与えていた。

 目々澤先輩の口がゆっくりと開き、私に向けられる。

「灰崎」

「は、はい!」

「俺の身に起きたことはみんなに伝えた。魔法少年としての力は、お前のお陰で確実に上がっている。まずはそのことについて礼を言わせてもらう」

「は、はい……」

 真剣な眼差しの目々澤部長を見ると、どうしても先程の行為を思い出してしまう。
 あのときの、部長の声、視線、私に触れる手の、大きさ。

「お前がどう思っているか、まずはそれを聞かせてほしい。」

 その言葉が部室の空気を一段と張り詰めたものに変えた。
 累が私のそばから離れる気配がして、私は深く息を吸った。

 自分の中でまだ整理しきれていない思いを抱えながら、目々澤先輩の言葉に――どう答えるべきなのか。

 時計の秒針が小さく響く音だけが、静かな部室に流れていた。

「私は……その、」

 魔法少年部のマネージャー、性行為を通じて魔法少年たちにパワーを与える。
 昨日は累と、今日は目々澤部長と。このままマネージャーとして活動するなら、いずれ白人先輩や蓮華寺先輩とも。それに、累の気持ちは……。

「えっと、こんな事を言うとおかしいと思われるかもしれないんですが……。
 目々澤部長との、ことも、その……嫌では、なかったです。たぶん、他の人とも、その……嫌じゃないん、です。で、でも、誰とでもとか、そういうのではなくて……」

 混乱しながら言葉を紡ぐ私を、蓮華寺先輩が優しくフォローしてくれる。

「大丈夫だよ、わかってる。おそらく、んじゃないかな。灰崎さんがどうこうというのではなく、マネージャーという役割がおかしいんだ」

「あ……」

 蓮華寺先輩は穏やかな瞳で私を見つめる。

「ただ、嫌悪感を抱かなくても、そうした行為を好きな人以外とすることは……僕はどうかとおもう。だから、マネージャーを辞めると言うなら、止めることは出来ない。青慈もそれでいいよね?」

 目々澤部長は蓮華寺先輩の言葉に、がしがしと頭を掻きむしる。

「あー、それはそうだ。灰崎の力は惜しいがな」

「そうだよ、もし有理須ちゃんがマネージャー辞めるって言うなら。オレが有理須ちゃんとえっちすればよかった~!部長ばっかりパワーアップしてずるい。ね、マネージャーじゃなくなってもオレと今度デートしようよ」

「こらっ、漣くん」

 蓮華寺に叱られ、白人がぺろりと舌を出す。声色で本気じゃないのがわかる。彼なりに気遣ってくれているんだろう。

「有理須……」

 累の視線が、痛いほどに突き刺さる。
 こんなに、優しい人たち。まだこの部活で何が起きているかはほとんどわからないけど、こんなに優しい人たちが、この学校を、街を守っているんだ。
 そう考えると、心が痛い。

「私、マネージャー辞めません。みなさんと一緒に、魔法少年部の一員として、やっていかせてください。
 というか、あの、私なんかで、すいません。これからも、よろしくお願いします!」

 勢いよく頭を下げる。
 しん、と一瞬部室が静まる。

 顔を上げると、みんなこちらを見つめていた。

「お前……『私なんか』とか、二度と言うな。お前はうちの部の大事なマネージャーだ」

 怒ったような目々澤部長の声。

「そうそう、有理須ちゃんでよかった。素朴な可愛さと服の上からでもわかるそのおっぱ……」

「漣くん!!」

「またまた、蓮華寺先輩も好きなくせに」

「漣くん!!! 本気で怒りますよ!!!」

 部室が騒がしくなっていく。そんなやりとりを見ていると、自然と頬がほころんでいく。
 ずっと隣りにいてくれた累が、私の耳元に口を寄せて、他の人に聞こえないような小さな声で囁く。

「マネージャー、続けるのは……正直、微妙な気持ちだけど。
 でも、いつかオレだけで有理須も、この学校も、この街も、全部守れるような強い魔法少年になるからさ……。その時がきたら、ちゃんと気持ちを伝えさせてくれよな」

 真っ赤になった累の顔は、昨日よりもすごくカッコよく見えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

処理中です...