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第二章 十月の修羅場
ママ友候補2
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でも。
引っ越してきたばかりで、しかもお腹にベビーを抱えて。
不安なことも多いんだろうな。
ちょっと女性が気の毒になってきた。
あまりにも綺麗すぎると、周りは気後れして声をかけにくいのかもしれない。
美人すぎるのも大変だ。
私から見れば贅沢な悩みだけど。
「わ、私なんかで良かったら……」
そして。そんな吸い込まれそうな瞳で懇願されたら、誰も断れないのである。
私の答えに、女性の顔がパァッと輝いた。
「嬉しい! 一人じゃ気が滅入ってしまって。
子どものことでお聞きしたいことも、たくさんあるんです」
女性は、頬を染めて笑った。
ああ。そんなに嬉しそうにされると複雑。
「こちらの公園には、よく来られるんですか?」
女性が思い出したように言った。
「え? ええ……」
「私、雨じゃなければ大体ここを散歩してるんです。
良かったら、ここでまたお話しません?」
「ぜ、ぜひ」
いいえ、来ませんよ。今日は、たまたま。
とは言えない雰囲気であった。
「わあ、嬉しいです! えーっと」
女性はひとしきり喜んだ後、うかがうように私の顔を見た。
「ああ、私のことは絵美でいいわ」
冴子さんの真似をして、お姉さんぶってみる。
変なプライドが湧いた。
「ユイカです」
ユイカさんね。
取り敢えず、いきなり連絡先交換とかにならなくて良かった。
近くまで送ろうかと申し出たが、ユイカさんは「大丈夫ですから」と丁寧にお辞儀をして帰って行った。
私が来たのとは反対側の門。
そちらの門は、ゾウの鼻がアーチをつくっている。
びっくりした。でも、ユイカさん良い人だなぁ。
「ねぇ、ルナ。お友達ができちゃった」
新しい出会い。
最近イヤなことばかりだったから、運気が上がるといいな。
乳母車を覗くと、ルナは口を尖らせた。
「ねぇ、絵美ぃ。大丈夫なの?」
ルナは、アレルギーのことを心配しているのだろうか。
そのことについては、たった今思いついたことがある。
「敢えてよ、敢えて。来月にはベビーが生まれるわけでしょ?
訓練には、またとない機会だわ」
ルナ以外のベビー。
意思疎通のできない普通のベビー。
お目にかかる機会なんて滅多に無い。
ユイカさんの出産予定日は来月半ば。
トレーニングの成果を確かめるには良いタイミングではないか。
十月の初め。ママ友ができ……
「そうじゃなくて!
あの女の人は、絵美とあたしが本当の母娘だと思ってるんでしょ?」
確かに。行き当たりばったり過ぎただろうか。
ルナは続ける。
「あのね。あたしは、ずっと絵美と一緒にいるとは限らないんだよ。
マズいんじゃない?」
「だからって、あの状況でどうやって断るのよ」
ユイカさんが、子どもを通しての関わりを求めていることは分かっていた。
でもルナは預かった子で、三ヶ月後にはいなくなる。
変なプライドが邪魔して、ユイカさんに嘘をついてしまった。
「どうして先に本当のことを言わなかったの?」
ルナは、短い腕を振り回して抗議する。
人から求められて、ありがたがられて。
調子に乗った。
「もう、あの人に会わない方がいいよ」
ルナが言った。
眉間にしわを寄せ、小さな手をぐっと握っている。
「え? 何もそこまでしなくても」
「やめた方がいい。ここに来るのも」
ルナは、難しい顔のまま続けた。
「なんか、すごくイヤな予感がする」
引っ越してきたばかりで、しかもお腹にベビーを抱えて。
不安なことも多いんだろうな。
ちょっと女性が気の毒になってきた。
あまりにも綺麗すぎると、周りは気後れして声をかけにくいのかもしれない。
美人すぎるのも大変だ。
私から見れば贅沢な悩みだけど。
「わ、私なんかで良かったら……」
そして。そんな吸い込まれそうな瞳で懇願されたら、誰も断れないのである。
私の答えに、女性の顔がパァッと輝いた。
「嬉しい! 一人じゃ気が滅入ってしまって。
子どものことでお聞きしたいことも、たくさんあるんです」
女性は、頬を染めて笑った。
ああ。そんなに嬉しそうにされると複雑。
「こちらの公園には、よく来られるんですか?」
女性が思い出したように言った。
「え? ええ……」
「私、雨じゃなければ大体ここを散歩してるんです。
良かったら、ここでまたお話しません?」
「ぜ、ぜひ」
いいえ、来ませんよ。今日は、たまたま。
とは言えない雰囲気であった。
「わあ、嬉しいです! えーっと」
女性はひとしきり喜んだ後、うかがうように私の顔を見た。
「ああ、私のことは絵美でいいわ」
冴子さんの真似をして、お姉さんぶってみる。
変なプライドが湧いた。
「ユイカです」
ユイカさんね。
取り敢えず、いきなり連絡先交換とかにならなくて良かった。
近くまで送ろうかと申し出たが、ユイカさんは「大丈夫ですから」と丁寧にお辞儀をして帰って行った。
私が来たのとは反対側の門。
そちらの門は、ゾウの鼻がアーチをつくっている。
びっくりした。でも、ユイカさん良い人だなぁ。
「ねぇ、ルナ。お友達ができちゃった」
新しい出会い。
最近イヤなことばかりだったから、運気が上がるといいな。
乳母車を覗くと、ルナは口を尖らせた。
「ねぇ、絵美ぃ。大丈夫なの?」
ルナは、アレルギーのことを心配しているのだろうか。
そのことについては、たった今思いついたことがある。
「敢えてよ、敢えて。来月にはベビーが生まれるわけでしょ?
訓練には、またとない機会だわ」
ルナ以外のベビー。
意思疎通のできない普通のベビー。
お目にかかる機会なんて滅多に無い。
ユイカさんの出産予定日は来月半ば。
トレーニングの成果を確かめるには良いタイミングではないか。
十月の初め。ママ友ができ……
「そうじゃなくて!
あの女の人は、絵美とあたしが本当の母娘だと思ってるんでしょ?」
確かに。行き当たりばったり過ぎただろうか。
ルナは続ける。
「あのね。あたしは、ずっと絵美と一緒にいるとは限らないんだよ。
マズいんじゃない?」
「だからって、あの状況でどうやって断るのよ」
ユイカさんが、子どもを通しての関わりを求めていることは分かっていた。
でもルナは預かった子で、三ヶ月後にはいなくなる。
変なプライドが邪魔して、ユイカさんに嘘をついてしまった。
「どうして先に本当のことを言わなかったの?」
ルナは、短い腕を振り回して抗議する。
人から求められて、ありがたがられて。
調子に乗った。
「もう、あの人に会わない方がいいよ」
ルナが言った。
眉間にしわを寄せ、小さな手をぐっと握っている。
「え? 何もそこまでしなくても」
「やめた方がいい。ここに来るのも」
ルナは、難しい顔のまま続けた。
「なんか、すごくイヤな予感がする」
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