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二章
やっぱりシェリルはすごい
しおりを挟むレイビス様と合流して王宮へと戻ってみると、王宮内が慌ただしい。なにかあったのかと、出迎えてくれたメイドに聞いてみる。
「それが……」
「今お戻りになったのですね。皆慌ただしくて、申し訳ない。陛下がわがままをおっしゃってまして、いつものことなのでお気になさらず」
メイドの話を遮り、話し出したのは宰相。まるで、私たちが帰るのを待っていたかのようなタイミングで現れた。
クリフ様がわがまま? なにかおかしい。そのような方には、思えなかった。
「いつものことなら、心配はいらないな。少し疲れた。私たちは部屋で休むことにする」
レイビス様もおかしいことに気づいている。けれど宰相になにを聞いても、はぐらかされるだけだと判断したのだろう。
「お疲れのところ、騒がしくして申し訳ありません。ゆっくりお休みください」
王宮に戻ったらレイビス様に剣を贈りたかったのだけれど、それどころではなくなってしまった。
「いったい、なにがあったのでしょう?」
「ライト、話せ」
ライトは護衛の一人なのだけれど、外出中姿が見えなかった。彼はレイビス様の命令で、私たちがいない間に王宮内のことを探っていたようだ。
「ルドルフ殿下の食事に、毒が盛られていたようです」
「毒……!? それで、殿下はご無事なのか!?」
「幸い、食される前に発覚しました。今はショックからか、お部屋でお休みになっておられます」
皆いっせいに、安心して胸を撫でおろす。
誰かが、ルドルフ殿下を殺そうとした。でも、いったいなぜ? 疑問ばかりが増えてくる。
ルドルフ殿下は国政に関わることができないのが現状だ。会議にも参加していない。領地も持たず、爵位だけでなんの力も持たない。そんな殿下の命を狙う意味が、本当にあるのだろうか。
「考えられるのは、気に入らない者の排除」
「レイビス様……それは、ありえません!」
「わかっている。クリフが、そんなことを望むはずはない」
「それはつまり、クリフ様に冷たいルドルフ殿下を、宰相と王太后様が亡き者にしようとしたということですか?」
「ああ」
私たちが知っている情報だけで考えると、その理由しか考えられない。けれど、違和感がある。
「レイビス様、王太后様にお会いできませんか?」
「……頼んでみるよ」
レイビス様は、何も聞かずに了承してくれた。正直、今はうまく説明することができない。だから、なにも聞かないでくれるのはとてもありがたかった。
レイビス様が宰相に頼んでくれて、翌日、王太后様にお会いできることになった。
王太后様にお会いすれば、なにかが変わる……とはいいきれない。これは、私の違和感でしかないのだから。
「緊張してきた……」
緊張を和らげようと、シェリルからの手紙を読み返す。ここにいなくても、シェリルという存在は私に力を与えてけれる。
「……あれ?」
何度も読み返していると、手紙が三枚あることに気づく。急いで三枚目を読んでみる。
シェリル……前置きが長すぎて、三枚目に気づかなかったよ。
三枚目の手紙の内容は、ガレスタ王国のことが書かれていた。
先王様を中心に、王太后様、クリフ様、ルドルフ様、カシム様、宰相のことまで書かれている。
「シェリル、ありがとう……」
シェリルの手紙には、私たちが調べた以上のことがこと細かに書かれていた。ガレスタ王国には来たことがないはずなのに、さすがシェリルだ。彼女の情報網には、どんな諜報部員でも勝てない気がする。
ガレスタ王国はグランディ王国と友好関係にある。シェリルはグランディのことを思い、調べていたのだろう。
シェリルのおかげで、自分の考えに自信を持つことができた。緊張も和らぎ、午後の王太后様との謁見を待つ。
時間になり、メイドが王太后様の待つ会議室へと私たちを案内してくれる。
会議室に入ると、王太后様の他に、宰相とクリフ様も同席していた。
「私に話があると聞きました」
「お時間いただき、ありがとうございます。話は、私の婚約者であるセリーナからさせていただきます」
皆の視線が、いっせいに私に集まる。
「王太后陛下、もうやめにいたしましょう」
「……なにをやめろと?」
私を睨みつけるように見る陛下の顔を、真っ直ぐに見つめる。陛下はきっと、期待しているのだろう。私が、宰相と陛下を断罪することを。
申し訳ないけれど、期待には応えられない。
「このような茶番をです」
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