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二章
王宮へ
しおりを挟むようやく工房に到着すると、マリーちゃんに早く知らせようとおじさんが走り出す。待っているおばさんにも、無事を伝えたいのだろう。
おじさんが工房に入ってすぐに、マリーちゃんが工房から飛び出してきた。
「おじいちゃん!」
マリーちゃんの姿を見て、護衛の背からおりる親方。まだ足は痛むはずなのに、マリーちゃんの方へ向かって歩き出す。これ以上、心配をかけたくないのだろう。
親方の顔を見たマリーちゃんの瞳から、涙がこぼれ落ちる。
「マリー、心配かけて悪かった」
「ううん、いいの。だって、帰ってきてくれたもん」
マリーちゃんは親方に抱きつき、離れようとしない。
本当に、親方が無事でよかった。この二人を、白い狼が救ってくれたんだ。
「ウォオーーーーンッ」
二人が無事に会えたことを喜ぶように、白い狼が吠える。
人間に悪者にされても、恐れられても、白い狼は親方を助けた。こんなに素敵な守り神がいて、この国が羨ましい。
「レイビス様、行きましょう」
ゆっくり二人の再会を見ていたいけれど、時間がない。私たちは馬車に乗り込み、王宮へと出発した。
「お兄ちゃーん! お姉ちゃーん! ありがとー!」
走り出した馬車の後ろから、マリーちゃんの声が聞こえた。馬車を追いかけながら、手を振ってくれている。
「マリーちゃーん! また来るからねー!」
馬車の窓を開けて、手を振りながらそう叫ぶ。
レイビス様が頼んだものはまだ受け取っていないのだから、近いうちにまた来ることになるだろう。
親方は襲われても、手に入れた鉱石を手放さなかった。目当ての物は手に入れたのだから、きっとレイビス様の納得するものを作ってくれるはずだ。
「白狼はどうした?」
レイビス様が窓から外を見ると、白い狼は馬車と並走している。馬車は結構スピードを出しているけれど、ちゃんと着いてきてくれている。
「白い狼さんも、この国を守りたいのですね」
「クゥーン」
胸元から顔を出して、返事をしてくれる赤ちゃん狼。この子も、守りたいと思ってくれているようだ。
「ありがとう、ちび狼ちゃん。あなたのママは、本当にすごいね」
王宮に到着すると、門番が「お帰りなさい」と出迎えてくれた。
「夕方以降、王宮に入ってから出て行った者はいますか?」
あの山に、どちらかの殿下がいたとは考えにくい。殿下の了承を得るために王宮へ入り、命令を伝えるためにまた出て行った者がいるはずだ。
少し考えてから、門番は口を開いく。
「そういえば、殿下に至急お会いしたいと尋ねてきた者がおりました。話が済むと、すぐに帰って行きました」
「それは、どちらの殿下にですか?」
「ルドルフ殿下とカシム殿下のお二人です」
二人とも、会いに来た者がいるようだ。
夕方以降に訪ねて来るのは、珍しい。全部私の妄想で、なにも起こらなければいいと願っていた。けれどやっぱり今日、事を起こそうとしていると確信した。
これで、どちらの殿下が黒幕なのかわかるかもしれないと思ったけれど甘かったようだ。
私たちが戻ったことをあまり他の人に知られないように、門番に口止めをして中に入る。
私兵はきっと、見つからないようにこちらへと向かっているはず。人通りの多い道を通ってはいないだろう。そのおかげで、私たちも私兵に見つかることなく王宮にたどり着くことができた。
さすがに白い狼は王宮に入れてもらうことができず、城門の外で待機してもらう。
「クリフ様の元へ急ぎましょう」
この時間、クリフ様はいつも書斎にいらっしゃる。立派な国王になるために、毎日勉強をしている。
そんなクリフ様に相応しい女性になりたいからと、ミリアナも毎日書斎で勉強している。
書斎の前には、護衛が二人いた。クリフ様に取り次いで欲しいと頼むと、クリフ様とミリアナが出迎えてくれた。
「レイビス、セリーナ、どうしたの? 二人から会いに来てくれるなんて、珍しいね。入って」
「一日に二度もお姉様にお会い出来るなんて、わたくし嬉しいですわ!」
変わらず元気な二人に会えて、ホッと胸を撫で下ろす。けれど、この二人に残酷なことを伝えなければならない。
「クリ……」
「ここでお二人にお会いするのは、二度目ですね。ああ、すみません。一度目は、気付かぬフリをしていました」
『クリフ様』と言いかけたところで、書斎の奥から現れた人物を見て驚く。
「ルドルフ殿下……」
奥から現れたのは、ルドルフ殿下だった。
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