幼馴染の王女様の方が大切な婚約者は要らない。愛してる? もう興味ありません。

藍川みいな

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二章

友好関係継続

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「……なぜ、そのことを?」

 ケリーストは、反論もせずにあっさり認めた。
 今更嘘をついたところで、極刑は免れないとわかっているからだろう。それにしても、罪悪感はないのだろうか。

「あの女、カシムに会わせてやると言ったらすぐに信じて着いてきた。カシムには二度と会えないと知った時のあの女の顔は、今思い出しても笑える。本当に、愚かな女だよ」

 聞いてもいないことをベラベラと話すこの男に、嫌悪感を抱く。彼女はそんな言葉に縋り付いてでも、カシム殿下に会いたかったのだろう。
 その気持ちを利用して殺した挙句、カシム殿下の気持ちまで利用した。許せない気持ちでいっぱいになる。

「愚かなのは、あなたです。だからこうして、あなたは牢の中にいるのです。誰からも必要とされず、誰からも愛されることなく死ぬのを待っていてください」

 冷ややかな目でケリーストを見ながらそう告げる。

「行きましょう」

 そのまま地下牢をあとにする。

「おい! ふざけるな! 俺が愚かだと!? このままで終わってたまるか!」

 ケリーストはずっと叫び続けていたけれど、振り返ることもしなかった。

「今からでも、あのクズの手足を切り落とそう」
「気持ちはわかるけれど、それはダメよ」

 私もカタリーナと同じで、できることならあの男にこの手で報いを受けさせてやりたい。けれど、これはこの国の問題だ。私たちがしていいことではない。

「あとは待つだけだな」
「そうですね。あの様子なら、すぐに動くでしょう」

 レイビス様は、私の目的を察してくれている。

「そういえば、クリフとミリアナから夕食を一緒にと誘われた。どうする?」
「もちろん、ご一緒したいです!」

 食事はいつも部屋に運ばれてくる。
 理由は、クリフ様も部屋で食事をしているからだ。だから、一緒に食事をするのは初めてで嬉しい。

 夕食の時間に食堂に行くと、クリフ様とミリアナがすでに待っていてくれた。

「レイビス! セリーナ! 待っていたよ!」

 私たちの姿を見ると、嬉しそうに笑顔を見せてくれる二人。あんなことがあったから少し心配していたけれど、元気そうでよかった。

「ちゃんとお礼が言えてなくて、ごめんなさい。レイビスとセリーナがいてくれたから、僕たちはこうして生きている。本当にありがとう」

 二人はイスからおりて、私たちに丁寧に頭を下げた。

「頭をあげてください。クリフ様とミリアナが無事で、よかったです。王太后様の具合は、いかがですか?」

 お住まいは離宮だったこともあり、王太后様は無事だったのだけれど、クリフ様が狙われたことを知り、お倒れになってしまった。

「母上は、大丈夫。一晩寝て起きたら、罪人を全員呪い殺してやるって言って張り切ってた。呪いがなんなのかは知らないけど」
「そ、うですか。よかった……?」

 呪い殺すだなんて、王太后様恐ろしい。子供の前で、言ってはいけない言葉だと思う……
 ルドルフ殿下の回復は、順調のようだ。何度かお見舞いに行っているけれど、いつもお休みになっていて、まだ話はできていない。

「セリーナお姉様はお肉がお好きだと聞いたので、美味しいお肉料理を用意させました。たくさん食べてくださいね」
「ミリアナ、ありがとう。それなら、たくさんいただくね」

 料理が次々に運ばれてきて、それを次々に平らげる。私の食欲に、二人は目を丸くしている。

「お姉様はよくお食べになると聞いていましたが、食べたものはどこに入っているのですか?」
「おかしい! セリーナの身体より食べた量の方が多い!」

 二人の疑問の答えは、私にもわからない。お腹に入っている……と思う。

「あはははっ! クリフ、ミリアナ、早く食べないとセリーナに全部食べられてしまうぞ」

 レイビス様は笑いながら、二人にそう言う。

「いくら私でも、ひとの分まで食べませんよ!」

 レイビス様を睨みつけると、「ごめん」と手を合わせた。

「わたくし、お姉様のようにたくさん食べられるように頑張ります!」

 ミリアナはお肉を次々に口に運び、頬がパンパンになっている。ハムスターみたいで可愛いけれど、無理して頑張ることではない。

「僕も!」

 なぜかクリフ様まで、口いっぱいにお肉を詰め込む。二人とも、パンパンなほっぺが可愛すぎて抱きしめたくなってしまう。
 悪いことを教えたと、あとで王太后様に怒られそうだ。

「クリフ、国境に送った兵を呼び戻したらどうだ?」
 
 食事を終えてお茶をいただきながら、レイビス様がクリフ様に提案する。
 クリフ様が国王になったことで、周辺の国々がガレスタ王国に攻め入る準備をしていた。国を守るためにほとんどの兵を東西南北の国境に送っていたことが、今回の戦いで苦戦した理由だ。

「そうしたいけど……」

 クリフ様が心配しているのは、国の防衛。小国が他国からいっせいに攻め入られたら、この国は終わるだろう。
 ガレスタ王国の周辺の国々は、この国の鉱山から採掘される資源を狙っている。

「心配いらない。今朝、父上とガレスタ王国周辺の国々に書状を送った。グランディ王国とガレスタ王国は、これからも友好国だと」
「本当……に?」

 クリフ様は、信じられないという表情でレイビス様を見る。

「本当だ。クリフが国王なら、この国は素晴らしい国になる。友好関係を継続できることを、嬉しく思う」

 レイビス様は、友好関係を継続することを決めたようだ。といっても、おじさんに友好国だと宣言していたのだから、すでに心は決まっていたのだろう。
 私たちがこの国にいる間は、他国は攻めてこない。クリフ様は私たちがこの国に滞在している間に、国境を強化するつもりだった。
 けれど、もうその必要はなくなった。友好関係が継続されることを知れば、攻め入られることはないだろう。ガレスタ王国に攻め入れば、グランディ王国も敵に回すことになるからだ。

「レイビス……立派な国王になれるように、頑張る! もっとお肉食べなきゃ……」

 また口いっぱいにお肉を頬張り、ほっぺをパンパンにしている。
 クリフ様……それは違うと思います。

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