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後悔
しおりを挟む「俺は……なんて事を……」
今更後悔しても、失ったものは戻らない。
なぜ今まで気付かなかったのか、今まで何度もシュリルは言っていたはずだ。シュリルの気持ちが離れた事にも気付いていたはず。
それでも愛するシュリルが側にいれば、レナードは幸せだった。シュリルがどんな気持ちでいるかなんて、考えもしなかった。
言われないと出来ない。それで良いのだと思い込んだら、自分を曲げない。
まるで子供のようだ。
「シュリル……いかないでくれ……頼むから、目を開けてくれ……
今度こそ、君の望むようにするから……」
冷たくなったシュリルの頬に触れる。
「お姉様!!」
そこにダリアがやって来た。
使用人の誰かが知らせたのだろう。
「お姉様……どうしてこんな事に……」
悲しそうに泣くフリをしているが、涙など全く出ていない。シュリルがいなくなり、ダリアは喜んでいたのだ。
ダリアがシュリルの手を握ろうとすると……
「触るな!!」
レナードが怒鳴りつけた。
ダリアはなぜ怒鳴られたのか、理解していなかった。
「お義兄様……お姉様が、亡くなってしまって悲しいです。辛すぎて耐えられそうもありません……今日は一緒にいてください。」
空気の読めないダリア。
「お前はなぜここにいる? ここはシュリルの部屋だ。雌豚ごときが、入っていい場所ではない!! こいつをつまみ出せ!!」
雌豚……レナードは愛人を、人だとは思っていない。そんな愛人が、愛するシュリルに触れる事など許さない。自分から誘って来た下品なダリアをシュリルの妹だとも思っていなかった。
「レナード様!? 私です! ダリアです!!レナード様の子が、お腹にいるんですよ!?」
「黙れ。お前など、もういらない。シュリルだけがいてくれればいい。」
レナードはシュリルの亡骸を、きつく抱きしめた。
「レナード様、しっかりしてください! お姉様はもう、死んだんですよ!」
「黙れ黙れ黙れッ!! 早くこいつをつまみ出せ! 離れにいる愛人全員、追い出すんだ!!」
ダリアは使用人達に両腕を乱暴に掴まれ、邸の外へと連れて行かれる。
「離しなさいよ! お腹の子はレナード様の子なのよ!? ドリスト侯爵家を継ぐのは、この子なのよ!!」
必死の抵抗も虚しく、ダリアは邸の外に追い出された。
「離してよ!!」
「レナード様ーッ! これはどういう事ですかー!?」
ダリアだけでなく、他の愛人達も次々に邸の外へと追い出されて行く。子がいる愛人も例外ではない。
「愛人は所詮愛人だな。亡くなった奥様にも勝てないなんてな。とっとと散れ!」
使用人達は鼻で笑いながら、愛人達をバカにし、邸へと戻って行った。
「私達……これから、どうしたらいいの?」
「私には子供がいるのよ……お金も家もない……」
「あのクソ男! 私達をなんだと思っているの!?」
愛人達には行く宛てなどない。お金もなければ家もないし、家族もいない。
人の夫に手を出していたのだから、自業自得だ。追い出された所で、文句を言える立場ではない。
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