〖完結〗王女殿下の最愛の人は、私の婚約者のようです。

藍川みいな

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20、疑惑を植え付ける

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 殿下から、母が動き出したと報告を受けた。あとをつけた兵が、ガードナーさんの居場所を突き止めたようだ。
 ガードナーさんは国境近くの小さな村で、贅沢な暮らしをしていた。村の人達の話によると、母からの援助で頻繁に商人が村を出入りし、必要な物を何年もの間、置いて行っていたそうだ。
 二人はすぐに荷造りをして家から出ると、馬車に乗り込み別の場所へと移動を開始した。兵は、気付かれないようにそのあとを尾行。村から数十キロ程離れた森の中にある小さな小屋に、二人は入って行ったそうだ。そこで見た二人の姿は、どう見ても恋人同士だったと聞いた。やっぱり、オリビア様はガードナーさんの子なのだろう。
 その後すぐに母は邸へと戻って行き、ガードナーさんは一人になった。
 ダニエル殿下はすぐに捕まえることも考えたけれど、少し様子を見ることにしたそうだ。母は商人を使っていた。その商人も捕らえ、母がガードナーさんに支援していた証拠をつかもうと考えたのだ。
 
 父は、どこまで知っているのだろうか。私とオリビア様を、入れ替えたことは知っているのだとケリーから聞いた。でも、オリビア様が自分の子ではないと知っているとは思えない。母の浮気を知っていて、許すような人ではないからだ。だとしたら、ガードナーさんへの援助も知らないだろう。私達が流した噂は、入れ替えの件とガードナーさんの居場所を知っているというもの。父は母に、ガードナーさんのことをどう聞いているのだろうか。

 「殿下、私に父と話をさせていただけませんか?」

 父に、疑惑を植え付けようと思った。

 「また危険なことを……」

 殿下が心配してくれる気持ちは、本当にありがたいし嬉しい。けれど殿下に任せきりで、私は何もしていない。
 少し前までは、家族に虐げられている伯爵令嬢だった。もちろん、復讐なんて考えてもいなかった。でも今本当の家族を知り、その家族と引き離した母と父が許せなくなっていた。

 「母が外出する日を、選んで行きます。それにディアム様にも来ていただくので、危険は少ないかと。もちろん、ディアム様に了承していただけたらの話ですが……」

 私はズルい。ディアム様が断ったりしないことを分かっていて、すがるような目で彼を見る。

 「一緒に行く。殿下、俺が必ずレイチェルを守るから許可してくれ」

 「……仕方がないな。レイチェルは、母上に本当に良く似ている。言い出したら、きかないところまでな」

 王妃様に性格まで似てると言われて、嬉しくなった。

 母は昔から、派手好きだ。新しい宝石を手に入れると、必ず見せびらかしたくなる。宝石を手に入れる度に、直近で行われるお茶会に出かけて行っていた。一番近いのは、二週間後にパーカー様のお邸で開かれるお茶会だ。パーカー様からお茶会の話を聞いて、この作戦を思い付いた。
 デイジーには商人を紹介してもらい、その商人に隣国で流行りの宝石を用意して欲しいとお願いする。そして、格安で母に売りに行ってもらう。差額は、殿下に支払ってもらおう。そうすれば、その宝石を見せびらかしたい母は、パーカー様のお邸で開かれるお茶会に出かけると考えた。そのお茶会は、水曜日に行われる。毎週水曜日は、父が邸で仕事をする日だ。

 「母が出かけた後、私とディアム様は父に会いに行きます。それでなのですが、ディアム様には私の婚約者として父に会って欲しいのです……」

 ディアム様をただ連れて行っても、警戒されるだけだろう。ただでさえ、私が入れ替えを知っているという噂を使用人達がしていたのだから。けれど、婚約者を連れて来たなら話は別だ。きっと父は、噂は噂だと考え、公爵家と親戚になれると大喜びするだろう。

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