〖完結〗王女殿下の最愛の人は、私の婚約者のようです。

藍川みいな

文字の大きさ
41 / 42

41、貪欲



 ガルコス王国の国民は、私達を歓迎してくれた。前に来た時より国は豊かになり、国民に生気が戻っていた。両国の交易も盛んになり、とてもいい関係を続けていけそうだ。

 「皆さん、幸せそうですね」

 国民の笑顔が見られて、ホッとする。
 この国を攻めることにならなくて、本当に良かったと思う。 

 「この国に笑顔が戻ったのは、レイチェルのおかげだ。俺は、何も出来なかった」

 「何を仰っているのですか? 元は、ディアム様がガルコスに行こうと仰ったのですよ?」

 ディアム様がいなかったら、戦争になっていた。
 戦争なんてしなくて済むのなら、その方がいいに決まってる。憎しみが憎しみを呼び、誰かの幸せの為に誰かが悲しむなんて間違っている。そんな考え方は、王女としては不正解だろう。それでも構わない。私は私の信じる道を行く。

 「それを言うなら、レイチェルがガルコスとの争いを何とかしたいと言い出したんだぞ?」

 「では、私達二人のおかげですね!」

 私達は、顔を見合わせて笑った。
 ディアム様が嬉しそうで、私も嬉しい。前回ここに来た時の様子とは、まるで違っていた。


 「良く来てくれた! 待っていたぞ!」

 私達を歓迎してくれたのは、国民だけではなかった。陛下だけでなく、貴族達も歓迎してくれている。

 「ディアム殿下、お会い出来て光栄です! ロレイン様に、とても良く似ていらっしゃる!」
 「レイチェル様も、良くおいでくださいました! お二人のおかげでこの国は変わりました。本当に感謝しています!」

 貴族の方々は歓迎してくれたけれど、王族はやっぱり違っていた。

 「ディアム殿下は、この国で生まれ育ったわけではないので、何かとお困りになることがあるでしょう。お力になれることでしたら、何でも仰ってくださいね。それにしても、フィルエッタの国民としてお育ちになったのに、、この国によく戻って来られましたね」

 いい意味と付ければ、何でも許されると思っているのだろうか。
 ベンジャミン様が亡くなったことで、次は自分が王太子になれるはずだったのだから、嫌味のひとつでも言いたくなるだろう。

 「ありがとうございます。頼りにさせてもらいますね」

 笑顔で受け流すディアム様は、大人だ。

 「あ、ああ、そうしてください。そちらの方は、フィルエッタの王女だとか……。長年敵対していた敵国の王女を、妻に選ぶとは驚きです。やはり、この国で暮らしていなかったからでしょうな。フィルエッタのような豊かな国で、温室育ちの王女が、果たしてこの国でやって行けるのかが不安です」

 温室育ち……入れ替えられなかったら、そういう人生もあったのかもしれない。

 「温室育ちだなんて、そのように見えますか? 実は私、十七年間伯爵令嬢として生きて来たのです。父や母だと思っていた人達は偽物で、彼らの子と入れ替えられて育ちました。冷遇されて育って来たので、貴族としても王女としても、ディアム様の妻としても至らない点があると思いますが、逆境には強くなりました。ちょっとしたことでは挫けたりはしないので、精一杯この国にお仕えしていく所存です」

 クライド伯爵夫妻やキャロルに鍛えられた私が、こんな嫌味に動じるはずがなかった。

 「な……!?」

 王族の方々は、私の話を聞いて、何も言えなくなっていた。

 「レイチェル……それは、本当なのか!? 辛い目にあってきたのだな……」

 陛下は、私に同情してくれている。

 「確かに、辛いことがたくさんありました。ですが今は、私を思ってくれる家族がいて、ディアム様もいらっしゃるので幸せです」

 私は、幸せに貪欲だ。そうさせたのは、ディアム様だ。ディアム様と出会ってから、幸せというものがどんなものか知った。そして本当の家族にあって、私はさらに欲張りになった。

感想 135

あなたにおすすめの小説

幼馴染しか見えない婚約者と白い結婚したので、夜明け前にさよならしました

ゆぷしろん
恋愛
公爵令嬢レティシアは、家同士の都合で伯爵アルフレッドに嫁ぐ。 けれど夫は結婚後もずっと幼馴染のシルヴィばかりを優先し、婚礼の夜から夫婦として触れ合おうともしなかった。名ばかりの妻として伯爵家を支え、領地経営まで立て直しても、彼にとってレティシアは“都合のいい伯爵夫人”でしかない。 やがて結婚一周年の夜、アルフレッドが自分を手放す気はない一方で、幼馴染を屋敷に迎え入れようとしている会話を聞いてしまったレティシアは、ついに決意する。 ――もう、この結婚には見切りをつけよう。 夜明け前、彼女は離縁の準備を整え、伯爵邸を出奔。 身を寄せた北の港町で薬舗を手伝いながら、自分の力で生きる穏やかな日々を手に入れていく。そこで出会ったのは、身分ではなく一人の女性として彼女を尊重してくれる青年医師ノアだった。 一方、都合よく尽くしてくれる妻を失ったアルフレッドは、ようやく自分が何を失ったのかを思い知ることになる。 幼馴染ばかりを優先する婚約者との白い結婚に終止符を打ち、傷ついた公爵令嬢が新天地で本当の幸せを掴む、離縁から始まる逆転ラブストーリー。

八年間の恋を捨てて結婚します

abang
恋愛
八年間愛した婚約者との婚約解消の書類を紛れ込ませた。 無関心な彼はサインしたことにも気づかなかった。 そして、アルベルトはずっと婚約者だった筈のルージュの婚約パーティーの記事で気付く。 彼女がアルベルトの元を去ったことをーー。 八年もの間ずっと自分だけを盲目的に愛していたはずのルージュ。 なのに彼女はもうすぐ別の男と婚約する。 正式な結婚の日取りまで記された記事にアルベルトは憤る。 「今度はそうやって気を引くつもりか!?」

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。 婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。 それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。 何故、そんな事に。 優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。 婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。 リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。 悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi(がっち)
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。

ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。 ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。 対面した婚約者は、 「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」 ……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。 「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」 今の私はあなたを愛していません。 気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。 ☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。 ☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)

貴方といると、お茶が不味い

わらびもち
恋愛
貴方の婚約者は私。 なのに貴方は私との逢瀬に別の女性を同伴する。 王太子殿下の婚約者である令嬢を―――。

【完結】ご安心を、2度とその手を求める事はありません

ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・ それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望