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5、狙われた王子
しおりを挟む「人間の仕業……か」
狙いは、オスカー様。一度襲われて、壊滅状態のこの町を襲わせる理由なんてない。この町にオスカー様が来ることを知って、魔物を誘導したと考えるのが自然だ。
「ベントン様の仕業かと……」
ダナドア公爵は、悲しそうに目を伏せながらそう口にした。
ベントン王子の……
いくら意見が合わないからといって、兄の命を狙うなんてことがあるのだろうか。私は、家族に捨てられたけれど、命までは狙われていない。私自身も、両親に死んで欲しいとは思っていない。
「ベントンには困ったものだ。
幼い頃は、可愛かったのだがな。今は私の顔を見ようともしない。王子になど、生まれるものではないな……」
オスカー様自身も、弟君の仕業だと思っているようだ。なんて悲しいのだろうか……
オスカー様の顔を見れば分かる。ベントン王子様が、大切なのだということが。そんな相手に、命を狙われていると知ったというのに、心配かけまいと笑顔を作っている。
「申し訳ありません。私がもっと完璧な結界を張ることが出来たら、魔物に襲われる心配なんてしなくていいのに……」
祈り続けて、やっと魔物を追い返せる結界を張れただけ。情けない。
「何を言っているんだ? マディソンのおかげで、私達もこの町の住民もこうして無事なんだ。気にすることはない。ありがとう」
オスカー様は、本当にお優しい……
「いいえ。完璧な結界を張れるように、努力していただきます。この町に結界が張れるまで、帰りません」
ダナドア公爵は、やっぱり鬼だった。
「オスカー様の時間をムダにする事は許しません。すぐに出来るようになってください」
先程のは撤回! 悪魔!! いいえ、大魔王!!!
「しばらくこの町にいるつもりだから、無理はしなくていいよ」
ダナドア公爵に聞こえないように、オスカー様が小声でそう言ってくれた。公爵とは違って、まるで天使のような方だ。
けれど、ダナドア公爵の言った事は正論だ。
報酬を貰っているのに、役に立たないなんて論外。今日は追い返すことが出来たけれど、次は?
今日よりも大群で来られたら、防ぐ事が出来ないかもしれない。
あんな結界じゃダメだ……
もっと集中して、高密度の結界を張る。
私は町の中心に立ち、目を閉じた。そして、魔力で町を包み込むイメージをする。
もっと固く……もっと薄く……結界全体に魔力を張り巡らせるイメージを……
魔力の線が網目状になり、丸いドームのような形を作る。魔の者を遠ざけ、邪悪な者を通さない……二度とこの町が、魔物に襲われないように……
今だ! このまま、魔力を全力で流し込む!!
町全体が、光に包まれて行く。町全体を包み込んだ光は、魔の者を拒絶する完璧な結界となった。
「出来た……」
あれ……? 何か視界が、ボヤけ……て……
魔力を使い切って倒れそうになったマディソンを、ダナドア公爵が抱き止めた。
「あなたはバカですね。ですが、とても素晴らしい聖女です。まさか本当に、すぐにこんな完璧な結界を張ってしまうとは思いませんでした」
意識を失っている腕の中のマディソンを、優しい眼差しで見つめる。
「ディーンのそんな優しい顔、初めて見たな」
オスカー王子の言葉に、眉をひそめるダナドア公爵。
「そのようなことはございません。マディソンを、馬車に運びます」
ダナドア公爵はマディソンを抱き上げ、馬車へと歩いて行った。その様子を見ながら、笑顔になるオスカー王子。
「ディーンが感情を表に出せたのは、マディソンのお陰だな。それにしても、まさかベントンが私の命を狙うとは……はあ……王子なんか辞めたい」
オスカー王子は、ため息をつきながらダナドア公爵の後を追って、馬車が止めてある方へと歩き出した。
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