〖完結〗どうやら私は悪役令嬢に転生したようです。破滅したくないだけなのに、なぜか婚約者が溺愛してくるのですが?

藍川みいな

文字サイズ
小 中 大 特大
21 / 57

20、最大のミス



 デイビスに行ってきますと言って別れると、また庭園に歩き出す。
 ウィルソン様のことを思い出したからか、少しだけドキドキする。この世界で、莉音の記憶を取り戻した日のように、彼の後ろ姿が見えて来た。私が来たことに気付き、振り返る。

 「おはよう、ミシェル。体調は、もういいのかい?」

 私が好きになったあの笑顔を向けて来る、ウィルソン様。そういえば、相田さんの笑顔を見たのはあの一度きりだった。部署が違うから、頻繁に会うことはなかったからだと思っていたけど、笑った顔を見ることはあった。だけど、その笑顔はどこか違うように感じていた。

 「ご心配を、おかけしました。送って下さり、ありがとうございました」

 丁寧に頭を下げてお礼を言う。迷惑をかけたのは事実だから、キチンとお礼を言いたかった。

 「本当に、心配した。君がいなくなってしまうんじゃないかと、ずっと不安だった」

 急に真剣な顔をする彼に、少しドキッとした。

 「いなくなるなんて、大袈裟ですよ」

 気を失っただけなのに、そこまで心配してくれたのかと思うと申し訳なくなる。

 「大袈裟……か。今の君は、どっちなんだ?」

 どっち? 彼の言葉に、首を傾げる。だけどすぐに、もしかしたらという思いが頭をよぎった。
 
 私が誰か、ウィルソン様は気付いている?

 もしも私が、ミシェルか佐倉莉音のどっちかを聞いているなら、ウィルソン様は相田さん?
 彼が相田さんだとしても、容姿が全く違うのに佐倉莉音だと気付く? わけが分からずに、私は固まったまま動けずにいた。

 「僕は昔、大切な人を失ってしまった。同じ過ちを、二度と繰り返さないと決めたんだ。今度こそ君を、必ず守る」

 彼は、なんのことを言っているの?
 分からないなら、聞けばいい。

 「相田さん……なんですか?」

 私がそう口にしたら、彼は今にも泣き出してしまいそうなほど悲しそうな顔をした。

 「残念。僕は、相田智哉じゃないよ」

 相田さんじゃ……ない……
 だけど、彼の名前を知っているということは、私と同じ転生者ということ?
 分からないことだらけで、頭がついて行かない。相田さんと同じ顔なのに、相田さんじゃない。相田さんの名前を知っている。それに、私が転生者だということも知っている。この人は、誰?

 「私が、誰なのか知っているのですか?」
 
 ミシェルの容姿でも、私が佐倉莉音だと分かったのなら、前世で凄く近くに居た人だということになる。だけど、そんな人思い浮かばない。

 「佐倉莉音さん……だよね」

 私の名前を口にした彼から、目が離せなくなっていた。彼の笑顔は、私が恋をしたあの笑顔。それなのに、彼は相田さんではないという。

 「あなたは、誰なのですか?」

 やっと口にした言葉。初めてウィルソン様に会ってから、ずっと聞きたかった言葉。

 「僕の名前は、戸ヶ崎琉哉。相田智哉の、双子の弟だよ」

 戸ヶ崎さん……?
 何度か話したことはあった。黒髪の長い前髪と、黒縁の大きな眼鏡で、いつも顔が隠れていた。まさか、相田さんと双子だったなんて全く気付かなかった。話しかけても顔を背けられるから、嫌われているのかと思っていた。

 「私のこと、避けていた戸ヶ崎さん……ですか?」

 「避けたつもりはないよ。君と話すのは緊張してしまって、真っ直ぐ見ることが出来なかったんだ」

 今は真っ直ぐ、私を見つめている。

 待って……

 もしかして、私は、間違っていたの!?

 ウィルソン様の笑顔は、私の恋した時の笑顔そのものだった。相田さんは、一度もそんな笑顔をしたことはない。

 私って、大バカじゃない……
 告白する相手、間違ってた!!

感想 28

あなたにおすすめの小説

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎ 表紙

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
恋愛 完結 長編 R15
文字数 576,733
断罪中、味方が多すぎて王子が孤立している件について 表紙

断罪中、味方が多すぎて王子が孤立している件について

バーンスタイン伯爵家の令嬢ラミリアは、魔力も剣の才能もない「ごく普通」の地味な女性。 ある日のパーティーで、婚約者であるジェラルド第二王子から「地味で無能で嫉妬深い」と罵られ、身に覚えのない罪で婚約破棄を突きつけられてしまう。 しかし、断罪劇は予想外の展開へ。
恋愛 完結 長編 R15
文字数 93,954
前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします 表紙

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。
恋愛 完結 長編
文字数 76,788
【完結】私が悪役令嬢らしいので、攻略対象が困っています 表紙

【完結】私が悪役令嬢らしいので、攻略対象が困っています

「悪役令嬢」と呼ばれているが、本人にはまったく身に覚えがない。 転生者を名乗る少女がゲームの攻略を始めた日から、レティシアの平穏な日常は狂い始めた。邪魔をした覚えもないのに妨害され、悪意を向けた覚えもないのに警戒され、そして——なぜか王太子が離れなくなった。 「あなたは物語の悪役です」と言われるたびに思う。どの口が言うのか、と。 これは、「普通に生きていただけなのに悪役にされた令嬢」が、ゲームの論理をまったく無視して、誰かの書いたシナリオを踏み荒らす話である。
恋愛 完結 短編
文字数 64,734
【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた 表紙

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた

春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。
恋愛 完結 長編
文字数 11,333
【完結】絆されたから付き合ってくださっただけなので、解放してさしあげようと思います。 表紙

【完結】絆されたから付き合ってくださっただけなので、解放してさしあげようと思います。

「──絆されたんだ」 プロポーズの理由を尋ねたラヴィーナに、シリルが返したのは、そのひと言だった。 婚約破棄され、元婚約者には「可愛げがない」と詰られ続けてきたラヴィーナは、その言葉で悟ってしまう。 ああ、やっぱり同情だったのだ、と。 家族にも行き先を告げず、隣国で名を変えて生きることを選んだラヴィーナ。 けれど、「妻に迎えたい」と告げたシリルは、突然姿を消した彼女を諦めてはいなかった――。 逃げる令嬢と、追いかける伯爵。 可愛げがないと思い込む彼女と、彼女を諦めない男の、じれったいすれ違い恋物語。 全11話。
恋愛 完結 長編
文字数 36,239
悪役令嬢はとっくに老婆です。今さら謝りに来ないでください 表紙

悪役令嬢はとっくに老婆です。今さら謝りに来ないでください

断罪されてから数十年。元悪役令嬢レナ・フォン・アシュレイ(転生前の名:松子)は、追放された辺境でいつのまにか老婆になっていた。 農村の人々に「レナばあさん」と呼ばれ、日向ぼっこと昼寝を愛する悠々自適な老後。乙女ゲームの記憶も悪役令嬢の野望もすっかり霞んで、それでも案外、悪くない暮らしだった。 そんなある日、レナが床に伏しているという噂が広まった。すると——かつての断罪に関わった人物たちが、全員老人になって謝りに来た。「死ぬ前に、謝らなければ」と。 レナの本音:「もういいのよ。昔の話でしょ」 だが老人たちは次々と訪れ——そして次々と、レナより先に逝く。見送られるはずだった老婆が、全員を見送ることになった。 ※本作は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
恋愛 完結 長編
文字数 62,976
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。 表紙

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
恋愛 完結 長編 R15
文字数 55,798