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20、最大のミス
デイビスに行ってきますと言って別れると、また庭園に歩き出す。
ウィルソン様のことを思い出したからか、少しだけドキドキする。この世界で、莉音の記憶を取り戻した日のように、彼の後ろ姿が見えて来た。私が来たことに気付き、振り返る。
「おはよう、ミシェル。体調は、もういいのかい?」
私が好きになったあの笑顔を向けて来る、ウィルソン様。そういえば、相田さんの笑顔を見たのはあの一度きりだった。部署が違うから、頻繁に会うことはなかったからだと思っていたけど、笑った顔を見ることはあった。だけど、その笑顔はどこか違うように感じていた。
「ご心配を、おかけしました。送って下さり、ありがとうございました」
丁寧に頭を下げてお礼を言う。迷惑をかけたのは事実だから、キチンとお礼を言いたかった。
「本当に、心配した。君がいなくなってしまうんじゃないかと、ずっと不安だった」
急に真剣な顔をする彼に、少しドキッとした。
「いなくなるなんて、大袈裟ですよ」
気を失っただけなのに、そこまで心配してくれたのかと思うと申し訳なくなる。
「大袈裟……か。今の君は、どっちなんだ?」
どっち? 彼の言葉に、首を傾げる。だけどすぐに、もしかしたらという思いが頭をよぎった。
私が誰か、ウィルソン様は気付いている?
もしも私が、ミシェルか佐倉莉音のどっちかを聞いているなら、ウィルソン様は相田さん?
彼が相田さんだとしても、容姿が全く違うのに佐倉莉音だと気付く? わけが分からずに、私は固まったまま動けずにいた。
「僕は昔、大切な人を失ってしまった。同じ過ちを、二度と繰り返さないと決めたんだ。今度こそ君を、必ず守る」
彼は、なんのことを言っているの?
分からないなら、聞けばいい。
「相田さん……なんですか?」
私がそう口にしたら、彼は今にも泣き出してしまいそうなほど悲しそうな顔をした。
「残念。僕は、相田智哉じゃないよ」
相田さんじゃ……ない……
だけど、彼の名前を知っているということは、私と同じ転生者ということ?
分からないことだらけで、頭がついて行かない。相田さんと同じ顔なのに、相田さんじゃない。相田さんの名前を知っている。それに、私が転生者だということも知っている。この人は、誰?
「私が、誰なのか知っているのですか?」
ミシェルの容姿でも、私が佐倉莉音だと分かったのなら、前世で凄く近くに居た人だということになる。だけど、そんな人思い浮かばない。
「佐倉莉音さん……だよね」
私の名前を口にした彼から、目が離せなくなっていた。彼の笑顔は、私が恋をしたあの笑顔。それなのに、彼は相田さんではないという。
「あなたは、誰なのですか?」
やっと口にした言葉。初めてウィルソン様に会ってから、ずっと聞きたかった言葉。
「僕の名前は、戸ヶ崎琉哉。相田智哉の、双子の弟だよ」
戸ヶ崎さん……?
何度か話したことはあった。黒髪の長い前髪と、黒縁の大きな眼鏡で、いつも顔が隠れていた。まさか、相田さんと双子だったなんて全く気付かなかった。話しかけても顔を背けられるから、嫌われているのかと思っていた。
「私のこと、避けていた戸ヶ崎さん……ですか?」
「避けたつもりはないよ。君と話すのは緊張してしまって、真っ直ぐ見ることが出来なかったんだ」
今は真っ直ぐ、私を見つめている。
待って……
もしかして、私は、間違っていたの!?
ウィルソン様の笑顔は、私の恋した時の笑顔そのものだった。相田さんは、一度もそんな笑顔をしたことはない。
私って、大バカじゃない……
告白する相手、間違ってた!!
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