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祝福
しおりを挟む「この二人は、私の婚約者メリッサを散々虐げて来ました。」
「ラ、ラウル様!これは一体!?」
「お姉様がどうしてここにいるのよ!」
全く反省していない二人を、貴族達は冷めた目で見つめ、
「なんて奴らだ!」
「姉の婚約者を奪おうとしたの!?」
「あんなに美しい女性を醜いなどと……あの顔でよく言えたな。」
そこへ……
「よくも私を欺いたな!」
今まで黙っていた王が口を開いた。
パーティーが始まり国王が挨拶を終えた後、国王はラウルから全てを聞いていた。王子の婚約者を侮辱し、姉の婚約者を奪おうとした事に激怒したが、ラウルにパーティーをこのまま続けて欲しいと頼まれ、今まで黙っていたのだ。
「お前達の処分は後程言い渡す。今は、ラウルの婚約者に盛大な拍手を!」
わあああぁぁぁぁぁぁ!!!!
割れんばかりの歓声と拍手が、会場内に響き渡った!
美しい婚約者メリッサと、ラウル王子を皆が祝福し、喜びに包まれた。
壇上を下りると、メリッサの父テイラー侯爵が待っていた。
「メリッサ……本当にすまなかった!」
深く深く頭を下げるテイラー侯爵……
テイラー侯爵は、メリッサをまっすぐ見ることがずっと出来なかった。
11年前ルーズにしつこく迫られ、一度だけ関係を持ってしまったテイラー侯爵だったが、妻のサシャを心から愛していた。裏切った事を後悔し、サシャに全てを話して許しを乞おうと思った矢先に、サシャは病にかかり逝ってしまった。
サシャが亡くなるとすぐ、ルーズがサマーを連れてテイラー侯爵に会いに来た。そして、『あなたの子だから、結婚してください。』そう言われ、サシャを失い自暴自棄になっていたテイラー侯爵はそれを受け入れた。
罪悪感から、日に日にサシャに似てくるメリッサの顔を見るのが辛くなり、目を合わせることも、声をかけることもなくなり、邸にいる事も少なくなって行った。
「ルーズとサマーが、お前にしていた事を知りつつ、私は何もしなかった。私の過ちのせいなのに、お前の顔を見ることが辛くて逃げていたんだ。最低な父親だ……本当に、すまなかった!」
「私の顔を見るのが辛かったのは理解出来ました……ですが、お母様を裏切った事をすぐには許すことは出来ません。」
でも、お母様は知っていたと思います。そして、お父様を許していました。
『メリッサ……何があっても、お父様を恨まないで……。たとえ裏切られても……お父様と出会えて……幸せだった……』
お母様の最後の言葉です。ですが、まだお父様には伝えてあげません。
パーティー後、テイラー侯爵は自ら爵位を返上し、地方に移り住んだ。
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