39 / 83
12.愛しい時間
2
しおりを挟む
夜、一行はケインズフォードに到着した。
リックとハリー、それにフィリップも一緒に、ケインズフォードのタヴァンの食堂で、遅い夕食を取っていた。
「明日が勝負だな」
ハリーが、言った。
明日の夕刻、フォレストバーグに、伯爵が来ているかどうか。
それが、明暗を左右する。
レティシアは、タヴァンの自炊場の隅の小さなテーブルに座って、質素な夕飯を食べていた。
時間が遅いせいか、自炊場には、もう誰もいなかった。
今夜のように、着くのが遅くなる時は、自炊ができず、食堂の料理をアンヌの部屋に持って上がり、給仕をした。
そして、アンヌの食事が終わってから、自分の夕飯になるのだったが、リックやハリーが一緒ならともかく、女が食堂でひとり食べると言うのは、やはり目立った。
それに、アンヌやフィリップは、レティシアが食堂の料理を注文して、自分の部屋に持ち帰り、食べていたとしても、何も言わないことはよくわかっていたが、レティシアの方に遠慮があった。
さほど、金銭的に余裕があるとは思えない、旅の途中だった。
少しでも、切り詰めた方がいいだろうと、レティシアは思った。
それで、仕舞いがけの調理場で、残り物を安くゆずってもらって、自炊場の片隅で、簡単に済ませてしまうことが多かった。
今夜も、残り物のパンとスープをもらい、自炊場の片隅で、急いで口に運んでいた。
仕事は、まだたくさんあった。
荷物の整理、衣類の手入れ、アンヌの就寝の手伝い・・・。
けれども、忙しい方が、アンジェラのことを忘れられてよかった。
目一杯疲れて、ベッドに入れば、アンジェラを思い出す前に、眠れた。
昨夜も、ほとんど眠れなかったし・・・。
そこまで考えて、レティシアは頬を抑えた。
頬が赤くなっていくのが、わかった。
今日一日中、昨夜の出来事が、ことあるごとに甦って、レティシアを慌てさせた。
リックが、何気なく手綱を取る姿を見ただけで、昨夜、この腕に素肌を抱かれたのだと、名前を呼ばれて振り返れば、この唇が、自分の身体のあらゆる場所に口づけたのだと甦って、鼓動が速くなった。
そして、レティシアを見つめるリックの瞳が、これまでにないほど優しく、レティシアは嬉しいよりも、戸惑いを覚えた。
あんな風に、見つめられると、どうしたらいいのか、わからなくなる。
微笑み返せばいいのだろうけれど、恥かしくて、俯いてしまった。
きっと、またリックに不愉快な思いをさせた・・・。
困ったわ。
どうしてしまったのかしら、私。
レティシアは、ぎゅうっと、自分の頬を抑えた。
「こんなところにいたのか」
そんなことを考えていたものだから、当の相手が、突然姿を現わして、レティシアは飛び上がりそうなほど、驚いた。
「何か、御用でしょうか?」
実際、弾かれたように椅子から立ち上がった。
「何か御用、だと」
リックは、心外だ、という面持ちで、レティシアに近づいてくる。
「俺たちには、親密さが足りない。そう思わないか?」
リックが、すぐ傍まで来て、触れてきそうだったので、それを避けるかのように、今度は思わず、すとんと、椅子に座り落ちた。
今朝、アンヌの荷物を取りにタヴァンに戻った際、強引に部屋に引き込まれて、抱き寄せられて、口づけを交わした。
時間が無いから急がないと、というレティシアの主張は、唇を塞がれて、無視された。
今朝の口づけは、これまでに比べると、随分と濃厚で、口づけながらリックの手が、服の上から、レティシアの身体のいたるところに触れて来た。
そして、リックの左腕は、レティシアをリックの腰に強く引き寄せた。
最初は、リックを押し戻そうとしたものの、段々抵抗したいのか、抵抗したくないのかわからなくなって、そうなるともう、されるがままになった。
リックに、翻弄されているとは思うものの、どうしようもなかった。
その後、落ち着きを取り戻すのに、誰にも気取られないようにするのに、レティシアはどれほど気を使ったことだろう。
けれども、少し遅れて、タヴァンを出たレティシアを見て、ハリーが、ふっ、と、あきれた様なため息をついたので、昨夜から今しがたの出来事まで、みんな知られているのではないかと、慌てた。
今も、今朝と同じようなことをされるのではないかと思って、とっさに、リックを避けた。
素直に、リックの胸に飛び込むということなど、思いつきもしなかった。
そのレティシアの前に、リックは、皿を差し出し、テーブルに置いた。
「この時間だと、残り物だけどな」
皿の上には、シードケーキがのっていた。
シードケーキは、甘さの中に、ほろ苦い独特の風味がある、焼き菓子だった。
食堂から、持ってきたもののようだった。
そういったお菓子を見るのは、久しぶりだった。
「随分、貧しいものを食っているんだな。太れないはずだ。今度から、俺たちと一緒に食えよ」
テーブルの上の、レティシアの夕食を見て、リックがそう言った。
「いいえ、私は、これくらいで、ちょうどいいの。お気遣い、ありがとう、嬉しいわ」
レティシアは、夕飯を終えて、シードケーキにフォークを入れた。
程良い甘さが、疲れを忘れさせてくれるようだった。
「ビールは、気に入らなかったみたいだからな。お前は、こっちの方がいいんだろう」
気付かれていた・・・。
ラッセルで、二人で食事に出た時、注文したビールがあまり進まなかったことを、見られていたのだと、思った。
「うまいか?」
「ええ、とても」
「今度、ブリストンのバッカスで、アダムのシードケーキを食べるといい。アダムの作る料理は、完璧だ。きっとお前も気に入る」
「ブリストンで・・・」
「ああ。どうかしたか?」
「いいえ・・・。そうですね。いつか、ぜひ」
そう言いつつ、レティシアはそっと視線を落した。
皿が空いて、レティシアは、フォークを置いた。
「リック、本当にありがとう。とても、おいしかったわ」
「礼は・・・、こっちで」
そういうと、次の瞬間には、レティシアの唇は、塞がれていた。
リックは、口づけしながら、レティシアを椅子から立たせると、入れ替わる様に自分が座って、太腿の上にレティシアを座らせた。
レティシアに抵抗する暇など、なかった。
リックの手が、服の上からレティシアの身体に触れる。
誰かが来たら、一体どうするの。
開いたままの、自炊場のドアが眼に入って、レティシアはそう思った。
けれども、リックの唇が、ゆっくりと首筋を這い、レティシアの思考は急降下した。
服の上から優しく乳房に触れられて、昨夜の痺れるような陶酔が甦って来て、気付けば、小さな声を上げていた。
どうしたらいいのかわからなくなって、思わずリックに寄りかかって、広い胸に頬を寄せていた。
「部屋に行こう」
さすがに、リックもこれ以上はまずいと思って、唇を離した。
「それは・・・、無理ですわ。私、まだ仕事が残っていますもの」
「仕事?仕事って、何の仕事だ?」
「アンヌ様の、お休みの支度がありますの」
「だったら、どんな手を使ってでも、早く寝かせろ」
「そんなこと・・・」
「大体、寝る支度くらい自分でしろよ。病人じゃあるまいし」
「あなたは、アンヌ様を少し悪く言いすぎですわ」
実際、レティシアにとって、アンヌは手のかからない女主人だった。
毎日、レティシアがアンヌにするべきことは決まっていて、夕食が済み、着替えの手伝いをし、艶のある、美しい髪を丁寧にとかして、就寝の支度をすると、後は、取り立てて用を言いつけられることはなかった。
レティシアが、こうして夕食を食べている時も、気を使ってくれているのか、呼び出されることは、まずなかった。
公爵家の夕食とは比べ物にならない食事にも、アンヌが苦情を言うことはなかった。
夕飯に何が出てきても、黙って、口に運んだ。
レティシアにしてみれば、公爵家の令嬢という立場のアンヌが、わがままひとつを言うわけでなく、アンジェラが具合の悪い時は、ほとんどそちらにかかりきりで、特段何の世話もできなかったのに、叱られるわけでもなく、本当に思いやりの深い、心優しい淑女に思えた。
そのアンヌとリックが、表面上、目立った諍いはないものの、内心では反発しあっているのが、レティシアは、とても残念だった。
「あの女は気に入らない」
「それは、あなたが、アンヌ様のことをよく知らないからですわ」
「あの女の話はもういい。とにかくあの女を寝かしつけたら、俺の部屋へ来い。いいな」
リックは言い聞かせるように、レティシアの手を取った。
「お約束はできません」
「レティシア、俺を困らせるなよ」
「困らせてなど、おりません。困らされているのは、私の方ですわ」
「困らされている?へえ、どんな風に?」
「それは・・・」
レティシアは、答えようがなくて、顔を伏せた。
リックは、からかうような笑みを浮かべて、レティシアの瞳を覗きこみ、また強引に唇を寄せてくる。
「レティシア」
その声に、レティシアは、リックの太腿の上から跳ね起きた。
慌てて、唇をぬぐって、自炊場の入口を見た。
アンヌが、立っていた。
「何か御用でしょうか?」
顔が赤くなって、動揺で、早口になった。
見られてしまった、アンヌ様に。
知られてしまった、アンヌ様に。
叱られるのではないかと、レティシアは身を固くした。
けれども、アンヌはいつものように、表情を変えることはなかった。
「わたくしの聖書が、見当たりません」
「すぐまいります」
レティシアは、急いで、自炊場を後にした。
レティシアの後から行くアンヌは、ちらりと、リックを横目で見て、立ち去った。
それは、まるで、小馬鹿にするような目つきだった。
「ふん、洟垂れ娘のくせして」
アンヌが立ち去った方を見つめたまま、険しい顔でリックは呟いた。
リックとハリー、それにフィリップも一緒に、ケインズフォードのタヴァンの食堂で、遅い夕食を取っていた。
「明日が勝負だな」
ハリーが、言った。
明日の夕刻、フォレストバーグに、伯爵が来ているかどうか。
それが、明暗を左右する。
レティシアは、タヴァンの自炊場の隅の小さなテーブルに座って、質素な夕飯を食べていた。
時間が遅いせいか、自炊場には、もう誰もいなかった。
今夜のように、着くのが遅くなる時は、自炊ができず、食堂の料理をアンヌの部屋に持って上がり、給仕をした。
そして、アンヌの食事が終わってから、自分の夕飯になるのだったが、リックやハリーが一緒ならともかく、女が食堂でひとり食べると言うのは、やはり目立った。
それに、アンヌやフィリップは、レティシアが食堂の料理を注文して、自分の部屋に持ち帰り、食べていたとしても、何も言わないことはよくわかっていたが、レティシアの方に遠慮があった。
さほど、金銭的に余裕があるとは思えない、旅の途中だった。
少しでも、切り詰めた方がいいだろうと、レティシアは思った。
それで、仕舞いがけの調理場で、残り物を安くゆずってもらって、自炊場の片隅で、簡単に済ませてしまうことが多かった。
今夜も、残り物のパンとスープをもらい、自炊場の片隅で、急いで口に運んでいた。
仕事は、まだたくさんあった。
荷物の整理、衣類の手入れ、アンヌの就寝の手伝い・・・。
けれども、忙しい方が、アンジェラのことを忘れられてよかった。
目一杯疲れて、ベッドに入れば、アンジェラを思い出す前に、眠れた。
昨夜も、ほとんど眠れなかったし・・・。
そこまで考えて、レティシアは頬を抑えた。
頬が赤くなっていくのが、わかった。
今日一日中、昨夜の出来事が、ことあるごとに甦って、レティシアを慌てさせた。
リックが、何気なく手綱を取る姿を見ただけで、昨夜、この腕に素肌を抱かれたのだと、名前を呼ばれて振り返れば、この唇が、自分の身体のあらゆる場所に口づけたのだと甦って、鼓動が速くなった。
そして、レティシアを見つめるリックの瞳が、これまでにないほど優しく、レティシアは嬉しいよりも、戸惑いを覚えた。
あんな風に、見つめられると、どうしたらいいのか、わからなくなる。
微笑み返せばいいのだろうけれど、恥かしくて、俯いてしまった。
きっと、またリックに不愉快な思いをさせた・・・。
困ったわ。
どうしてしまったのかしら、私。
レティシアは、ぎゅうっと、自分の頬を抑えた。
「こんなところにいたのか」
そんなことを考えていたものだから、当の相手が、突然姿を現わして、レティシアは飛び上がりそうなほど、驚いた。
「何か、御用でしょうか?」
実際、弾かれたように椅子から立ち上がった。
「何か御用、だと」
リックは、心外だ、という面持ちで、レティシアに近づいてくる。
「俺たちには、親密さが足りない。そう思わないか?」
リックが、すぐ傍まで来て、触れてきそうだったので、それを避けるかのように、今度は思わず、すとんと、椅子に座り落ちた。
今朝、アンヌの荷物を取りにタヴァンに戻った際、強引に部屋に引き込まれて、抱き寄せられて、口づけを交わした。
時間が無いから急がないと、というレティシアの主張は、唇を塞がれて、無視された。
今朝の口づけは、これまでに比べると、随分と濃厚で、口づけながらリックの手が、服の上から、レティシアの身体のいたるところに触れて来た。
そして、リックの左腕は、レティシアをリックの腰に強く引き寄せた。
最初は、リックを押し戻そうとしたものの、段々抵抗したいのか、抵抗したくないのかわからなくなって、そうなるともう、されるがままになった。
リックに、翻弄されているとは思うものの、どうしようもなかった。
その後、落ち着きを取り戻すのに、誰にも気取られないようにするのに、レティシアはどれほど気を使ったことだろう。
けれども、少し遅れて、タヴァンを出たレティシアを見て、ハリーが、ふっ、と、あきれた様なため息をついたので、昨夜から今しがたの出来事まで、みんな知られているのではないかと、慌てた。
今も、今朝と同じようなことをされるのではないかと思って、とっさに、リックを避けた。
素直に、リックの胸に飛び込むということなど、思いつきもしなかった。
そのレティシアの前に、リックは、皿を差し出し、テーブルに置いた。
「この時間だと、残り物だけどな」
皿の上には、シードケーキがのっていた。
シードケーキは、甘さの中に、ほろ苦い独特の風味がある、焼き菓子だった。
食堂から、持ってきたもののようだった。
そういったお菓子を見るのは、久しぶりだった。
「随分、貧しいものを食っているんだな。太れないはずだ。今度から、俺たちと一緒に食えよ」
テーブルの上の、レティシアの夕食を見て、リックがそう言った。
「いいえ、私は、これくらいで、ちょうどいいの。お気遣い、ありがとう、嬉しいわ」
レティシアは、夕飯を終えて、シードケーキにフォークを入れた。
程良い甘さが、疲れを忘れさせてくれるようだった。
「ビールは、気に入らなかったみたいだからな。お前は、こっちの方がいいんだろう」
気付かれていた・・・。
ラッセルで、二人で食事に出た時、注文したビールがあまり進まなかったことを、見られていたのだと、思った。
「うまいか?」
「ええ、とても」
「今度、ブリストンのバッカスで、アダムのシードケーキを食べるといい。アダムの作る料理は、完璧だ。きっとお前も気に入る」
「ブリストンで・・・」
「ああ。どうかしたか?」
「いいえ・・・。そうですね。いつか、ぜひ」
そう言いつつ、レティシアはそっと視線を落した。
皿が空いて、レティシアは、フォークを置いた。
「リック、本当にありがとう。とても、おいしかったわ」
「礼は・・・、こっちで」
そういうと、次の瞬間には、レティシアの唇は、塞がれていた。
リックは、口づけしながら、レティシアを椅子から立たせると、入れ替わる様に自分が座って、太腿の上にレティシアを座らせた。
レティシアに抵抗する暇など、なかった。
リックの手が、服の上からレティシアの身体に触れる。
誰かが来たら、一体どうするの。
開いたままの、自炊場のドアが眼に入って、レティシアはそう思った。
けれども、リックの唇が、ゆっくりと首筋を這い、レティシアの思考は急降下した。
服の上から優しく乳房に触れられて、昨夜の痺れるような陶酔が甦って来て、気付けば、小さな声を上げていた。
どうしたらいいのかわからなくなって、思わずリックに寄りかかって、広い胸に頬を寄せていた。
「部屋に行こう」
さすがに、リックもこれ以上はまずいと思って、唇を離した。
「それは・・・、無理ですわ。私、まだ仕事が残っていますもの」
「仕事?仕事って、何の仕事だ?」
「アンヌ様の、お休みの支度がありますの」
「だったら、どんな手を使ってでも、早く寝かせろ」
「そんなこと・・・」
「大体、寝る支度くらい自分でしろよ。病人じゃあるまいし」
「あなたは、アンヌ様を少し悪く言いすぎですわ」
実際、レティシアにとって、アンヌは手のかからない女主人だった。
毎日、レティシアがアンヌにするべきことは決まっていて、夕食が済み、着替えの手伝いをし、艶のある、美しい髪を丁寧にとかして、就寝の支度をすると、後は、取り立てて用を言いつけられることはなかった。
レティシアが、こうして夕食を食べている時も、気を使ってくれているのか、呼び出されることは、まずなかった。
公爵家の夕食とは比べ物にならない食事にも、アンヌが苦情を言うことはなかった。
夕飯に何が出てきても、黙って、口に運んだ。
レティシアにしてみれば、公爵家の令嬢という立場のアンヌが、わがままひとつを言うわけでなく、アンジェラが具合の悪い時は、ほとんどそちらにかかりきりで、特段何の世話もできなかったのに、叱られるわけでもなく、本当に思いやりの深い、心優しい淑女に思えた。
そのアンヌとリックが、表面上、目立った諍いはないものの、内心では反発しあっているのが、レティシアは、とても残念だった。
「あの女は気に入らない」
「それは、あなたが、アンヌ様のことをよく知らないからですわ」
「あの女の話はもういい。とにかくあの女を寝かしつけたら、俺の部屋へ来い。いいな」
リックは言い聞かせるように、レティシアの手を取った。
「お約束はできません」
「レティシア、俺を困らせるなよ」
「困らせてなど、おりません。困らされているのは、私の方ですわ」
「困らされている?へえ、どんな風に?」
「それは・・・」
レティシアは、答えようがなくて、顔を伏せた。
リックは、からかうような笑みを浮かべて、レティシアの瞳を覗きこみ、また強引に唇を寄せてくる。
「レティシア」
その声に、レティシアは、リックの太腿の上から跳ね起きた。
慌てて、唇をぬぐって、自炊場の入口を見た。
アンヌが、立っていた。
「何か御用でしょうか?」
顔が赤くなって、動揺で、早口になった。
見られてしまった、アンヌ様に。
知られてしまった、アンヌ様に。
叱られるのではないかと、レティシアは身を固くした。
けれども、アンヌはいつものように、表情を変えることはなかった。
「わたくしの聖書が、見当たりません」
「すぐまいります」
レティシアは、急いで、自炊場を後にした。
レティシアの後から行くアンヌは、ちらりと、リックを横目で見て、立ち去った。
それは、まるで、小馬鹿にするような目つきだった。
「ふん、洟垂れ娘のくせして」
アンヌが立ち去った方を見つめたまま、険しい顔でリックは呟いた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
捨てられた王妃は情熱王子に攫われて
きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。
貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?
猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。
疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り――
ざまあ系の物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる