高校生のころから付き合っているらしい大学生がいちゃついているなんて・・・

壁山ゆかこ

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映画館とポップコーン

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 ぽつり、ぽつりと人が座っている、少し狭い映画館。
美少女コンテストで上位に残った新人女優の映画予告。スクリーンを見る視界には誰もいない。まるで、貸し切り。また、一段階暗くなり本編が始まる。
B級ホラー映画だ。

 暗闇の中、一つのカップに入った山盛りのポップコーンを、二人でわけあう。ハーフを頼んでいたので、それぞれ好きな味を食べていた。登場人物の悲鳴と、グロテスクなゾンビ。予測できそうで、裏切ってくるストーリーの展開。低予算のセットが、逆に不気味さを感じさせる。
スタンダードな塩味のポップコーンを食べていたハルトは、味に飽きてそろそろ甘いものが食べたくなった。ちょうどチアキはキャラメルポップコーンを選んでいたので、ちょっと一口いただこうと、仕切りを挟んだもう半分に手を伸ばす。

 手が触れる。チアキはさっと手を自分の膝元にもっていく。スクリーンの光。今はおぞましいシーンでもないのにチアキは下を見ている。完全に、ハルトを意識しているのだ。
ハルトは、そんなチアキをじっと見つめていた。

 様子をうかがいながら、ポップコーンを食べようとする二人は目が合った。お互いに、目を背けるべくスクリーンを見る。
 映画はキスシーン。ゾンビを倒したヒーローと、助けられたヒロインの熱いキス。ヒロインの声。心拍数があがる。チアキは両手で顔を隠していた。キスシーンが終わるまで。
チアキはポップコーンに手を伸ばす。ハルトは狙ってチアキの手を捕まえた。
 お互いの体温を感じ合う。
 映画が終わるまで、ポップコーンは食べられなかった。
 エンドロールが流れ終わって、明るくなった館内。
「全部食べられなかったね。」
「ハルトのせいだからな。」
チアキはハルトを指さして言った。ハルトはその手を掴む。
「甘いね」
ペロリと、ハルトはチアキの人差し指を舐める。
「ごまかしてもだめだから。」
ハルトから目をそらすチアキの耳は心なしか赤くなっているようだった。
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