【完結】人間にモテないオレはモンスターを嫁に迎えることにしました

湯原伊織

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第4話 初キスは鉄の味?

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 小高い丘で美しい顔をした女が小柄な男に接吻をしているように重なっている。いや、注意深く見るとその丘は屍に埋め尽くされた。そう人間の死骸による丘だったのだ。

「イヤだ! 死にたくない!!」

 他のパーティーメンバーは彼を助けるために果敢に挑んでいるものの、その魔物の複数ある歩脚によって全く近づけないようだ。魔物に捕まっている男の顔を見ると死の恐怖だろうか。鼻から垂れ流される汁や恐怖で歪んだ顔が見える。そして、その小柄な男の抵抗も虚しく、頭が砕かれていく。

「コーク!? よくも、コークを! この蜘蛛女!!」

 コークと言われた男は悲鳴が止まったと思ったら、泡を吐いて動かなくなった。コークとい言うだけあって口から泡を吐いて死んでいくのね。差し詰め、泡が抜けた某社の飲料水みたいに炭酸のように魂が抜けて死んでしまった所か。不謹慎なことを考えてしまったな。成仏してくれよ。南無!!

「離せ、離せ…」

 コークと言われた男の死に怒っていた大男が、いつの間にかアラクネに捕まり、彼女の頑丈な顎の力によって頭を粉砕されていった。

 先ほどまで、元気よく叫んでいた彼もここの死体たちのお仲間になってしまったか。

「それにしても、この屍の丘にある骨の数はすごい。本当にあのモンスターが人間を喰って出来たのだろうか。信じられないくらい膨大だ」

 森に隠れていたオレの呟きを聞きつけたのかパーティーの生き残りであろう男と女が駆け寄ってきた。

「貴殿はいつ来たんだ! 私を助けれたならばいくらでも金をやる! 早く!?」

 怒鳴っている癖に男は恐怖に顔を歪ませている。なんだコイツは偉そうにとオレが思っていたら急にイケメン男は目の前で尻餅をついた。そして、そのイケメンに駆け寄る女。

「このイケメン、こんな時になに尻餅ついてるんだよ。 死にたいの? バカなの!?」

 魔物の前で尻餅をつくって誰がどう考えても自殺行為だろ。女に肩を貸されて立ち上がる男。奴らはオレが潜んでいる方向に歩いてきた。

「こいつらを餌にして隙を伺っていたが、もうダメだな。魔物もオレの存在に気が付いただろうな」

 そう呟いた後、オレは草木をかき分けて男の前に歩いていった。オレの視線に気がついたイケメンは、

「ああ、私のこの格好か。無様だろう? 私は奴に噛まれて思うように下半身に力が入らないんだ」

 そういって力なく微笑んだ後に、

「奴は人間を麻痺させて生きたまま食べることを好んでいるようだ。くそう、あの牙に噛まれなければ!」

 と嘆きながら、顎に指を持ってきてポージングをとっている。うん、女に肩を貸されて悲壮そうにしているイケメン。どんなに決まるポーズをイケメン男が取っても、さっきの尻餅を思い出したら滑稽に感じてしまうわ。本当にもう笑うしかない。

「あら? 新しいご馳走がまたきたのね」

 そう言って、男に肩を貸している女を素早く捕また。そして、鎌のような鋭い手を使い、彼女の頭を切り落とした。肩を貸していた女がいなくなり、その場にケツから崩れるイケメン男。

「さてと、オカズを美味しく頂こうかしら?」

 とそう言って微笑む姿を見るとその女神のようだ。切り落とされた女の頭が転がり、オレの足にぶつかり、止まる。そんなことが些細に感じるようにとても美しい魔物。だが、下半身を見なければと多くの人は言うだろう。漆黒の複数の歩脚と昆虫のような甲殻類の下半身が全てを台無しにしていると…

「涎が出そうだわ」

 小さくて可愛らしい真っ赤な唇がある口から紡がれる琴のような声。堪りません。それだけじゃない。全てを吸い込みそうな漆のように黒い瞳。そして、黒い光沢のある髪。さらに彼女はとても魅力的なパーフェクトダイナマイトバディ。トップブレストクイーンと言っても過言ではない。素敵な双丘。

「フフフ、どちらかといえば、君がオレにとってのオカズさ。いや、妻になってくれると嬉しいほどの美貌の持ち主だね」

 女性を攻略するにはまずは初対面の挨拶が肝心だ。どうだ! オレの掴みはバッチリだろう。そう我ながら素晴らしいと自画自賛していると、

「嬉しいことを言ってくれるのね。でも、この状況をあなたは分かっていて? あなたは食べられる側なの。そして、私はこの牙であなたを死へ誘う魔物!!」

 素敵な双丘を揺らしながらこちらに近づいてきた。

 なるほど、なんという。鋭い牙だ。数々の男たちがあの牙に涙を飲んだに違いない。伝説の魔物と言われた蜘蛛の怪物。その名前はアラクネ。

「…アラクネは毒の牙があって男とキスができないのだ。なんという悲劇。さぞ、いままで辛かっただろう」

 オレの言葉に怪訝な表情を浮かべる魔性の美女。でも、大丈夫だ。オレならそんな障害くらい乗り越えてやれるぞ。アラクネの初キスはオレのモノだ!!

「…つまり、君のファーストキスはオレのモノと言うわけか」

「あなたは先ほどの話を全く聞いてないのね。いいわ、すぐにわからせてアゲル!」

 フフフ、そんなにオレとキスがしたいとは中々に情熱的だな。それにしてもあんな美女と接吻を交わせるなんて光栄だぜ! やる気が出てきた!! 騎士風のイケメン男がなんか言ってるけど無視だ。

「そんなに私の口元を見つめないでいいわよ? あなたもそこらに並ぶ死体と同じですぐに私の毒牙の前にその儚い命を散らすことになるわ」

 唇を舌で艶めかしく舐めた後にそう言って微笑む。淫靡、実に淫靡だ。さすが魔性のモンスター

「牙など砕けば良いのだ!! 乙女の夢を叶えるのがジェントルメン・サイゾウの真骨頂よ!!」

「いつまで、そんな減らず口が叩けるかしら?」

 アラクネは2本の足で立脚した後に残りの6本の足を器用に使ってオレを掴もうと各脚を伸ばしてきた。

「何をする!? 貴様! まさか!?」

「秘儀、人肉の盾!!」

 オレは大地に転がるイケメンを持ち上げ、アラクネに向かってぶん投げた。

「助けてくれぇぇぇ!!」

「あれれ? 死んでなかったの? ごめん。ドンマイ、来世があるよ」

 アラクネの牙を受けて立ち上がれない状態になっていたら、生き残れると思うか? 戦場においては誰がどう考えても、助かるとは思わないだろ。つまり、実際はイケメンはもう死んでるのと同義なんだ。決して、イケメンを滅ぼしたくてこの選択をした訳ではない。そうだ。そうだ。

 ………全てのイケメンは死すべきだ!! 

「まぁ、良いわ。先にこの男を殺すとしましょうか。順番が少し変わっただけですものね」

 騎士風の男を華麗にキャッチしたアラクネはそう言って微笑む。さらにその後にアラクネは騎士風の男に噛みつこうと口を大きく広げ、牙をのぞかせる。

「この時を待っていたんだ!!」

 オレはそう言って、腰にぶら下げている鋼鉄の棒を取り、アラクネの顔めがけて叩きつける。金属同士が当たったような高い音が響いた後に砕け散るアラクネの大きな牙。

「痛い!? う、嘘よ。私の牙が砕けたの」

 口元を手で拭い、砕けた牙の破片を見て、驚愕の顔をするアラクネ。

「しめた。逃げれるぞ!! 折角、魔物の手から出れたんだ。だめだ、腕を動かすので精一杯だ!! 這ってでも逃げないと!!」

 そう言ってアラクネから解放されたイケメンは地べたを這いずっている。ああ、不快、実に不快だ。この芋虫のような気持ち悪い男は無視だ。まずは、アラクネ!! オレはアラクネに視線を戻すと、美しい顔を痛みの所為だろうか歪ませていた。

「うん、その表情も実に艶かしいものだ。興奮するね!」

「よくも、私の牙を! 折れちゃったじゃないの!!」

 憤怒の形相でも美しいアラクネ。ああ、折角の美貌がもったいない。

「ごめんよ。これもキスをするためなんだ。どうしても治療したいなら、こっちにおいでよ」

 妻を治療するのも夫の勤めだ。ようこそ、オレの太ももに。オレはそう言って大地の上で正座して自らの太ももを叩く。

「バカにしないでよ!! そんな策に私が嵌るとは思わないで!!」

 地べたに座ったまま手招きするオレを見て、激怒したのかアラクネは絶叫しながら脚を伸ばしてきた。予想よりもかなり早い!! 

「フフフ、捕まえた。もう逃げれないわよ?」

 オレはアラクネの複数の腕に捕まってしまった。そう、言うなればこの状態はハグ。愛する獲物(オレ)を離さないようにぎゅっと抱きしめる彼女。こんなに熱く抱きしめられたのは2度あった人生でも初めてだ!!

「だれが逃げるか! オレも漢だ!! 絶対に逃げない。こんなに熱く抱きしめてくれる女の前からは絶対にな!!」

 オレはそう言って彼女に自ら顔を近づけてキスをした。言ってなかったけど、これがはじめてのキスだ。女性とのな…
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