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第5話 彼女(モンスター)を救うために
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森が生い茂るこの場所でオレはアラクネに抱きしめられていた。女性からの積極的な抱擁などこれまでの人生で1度もなかったオレにとってはまさに至福の時だ。アラクネの柔らかい双丘がオレの漢心を捕らえてはなさない。
…なんて、オレの妄想みたいなことはなかった。本当に現実は辛すぎる。いや、もう辛すぎるだろ。だって、圧死するのではないかと思うほどに強い力で抱きしめられるんだぞ。キスで喜んでいたオレも流石にそんな状況だとヤバイ。キスの後にこの状況って本当にまいったな。
「…苦しい」
酸素を肺に送り込まないとマズイかもしれない。女性に抱きしめられても苦しいだけだと思っていたけどさ。人生ではじめて母親以外の女性に積極的に抱きしめられたオレとしては…
こんなことを考えても仕方ないよな。このまま、死ぬならよ。思うままに人生最後の願望でも呟いてから死のうってさ。
━━━━━━だって、興奮が抑えられないからよ!
「キス、キスして!! そう、死ぬ前にもう一度だけ」
「あら? まだ喋れるの?」
そう言った後にアラクネは一瞬だけ怪訝な表情をした。その後、短い沈黙から、顔に笑みを浮かべる。
「それで、死ぬ前にもう1度だけ? 何かしら?」
こちらを面白そうにしながら伺う魔性の美女。
「君のような美しい女性と口づけをしてから死にたい!!」
オレの肺に酸素がない? そんなこと知るかよ。オレはこの美女とキスをしたいんだ。
「な、何を言っているの? あなたはこの私に絞め殺されるところなのよ?」
動揺しているのか。オレを締め付ける力が少しだけ弱くなったようだ。オレはできる限り、酸素を肺に取り込み、大声で叫ぶ。まさに魂の慟哭だ。
「生涯を終える前に君のような美人とキスをしたい! キスしたいな!!」
童貞が30歳で魔法使いになれるなら、前世から童貞を貫くオレは大賢者。そんなオレの願いを聞いてくれよ。
「何を言っているの!?」
顔を朱に染めた後、恥じらうように顔を背けるアラクネ。オレは彼女の言葉を無視する。そして、さらに繰り返す。
「キスが欲しいな。熱い接吻したい。オレは君のような美女と!!」
「うるさい。うるさいわ!」
顔をそらしながら、早口で捲し立てるアラクネ。そして、オレをつかんでいた脚を放そうとしてきた。オレから逃げたいのか。だが、絶対に放すかよ。オレはどれだけキツく締め上げられても、決して手を離さなかった自らが持つ最大の命綱である鋼鉄の棒を手放し、
「死んでいくオレに最後の慈悲が欲しい。キス、キス、キスが欲しいよ。ギブミーキッス!!」
と言って、オレは彼女の上半身を蟹バサミのように抱きしめる。絶対にキスされないと放れないとの決意をして…
「ええ? なんで抱きしめて来てるの? 魔物の私に!?」
しどろもどろになりながらも顔を真っ赤にしてそう言う彼女。ますます、興奮してきた。オレは彼女の上半身をさらに強く抱きしめる。
「…もう、仕方ないわね」
オレを睨みつけた後に苦笑するようにそう言う。
「でも、今回は特別。そう特別なのよ! それくらいやってあげるわ!!」
「フフフ、死ぬ前に願いを叶えてくれるとは優しいね」
オレの言葉を聞いて俯く彼女。照れたのかな? でも、彼女は脚を使って再びオレを抱きしめ返してくれた。先程までの殺意のあるキツい抱きしめではない。まるで、愛する人を包み込むような抱擁だ。
「まったく…」
そう言って、静かに目を瞑るアラクネ。フフフ、アラクネの奴め。顔が赤くなって照れているぞ。可愛い奴だ。ここからはチューの時間だよ。
キス、キス、キス!! オレは口を蛸のように窄めて口を伸ばす。
「うん、変な虫がオレの顔に止まっている!? これはやばいくらいにデカイ! 虫め、離れろ!!」
オレはそう言って、虫を叩き潰すように頭をそのまま真っ直ぐ振った。すると、当然の事だが、目を瞑ってオレのキスを待っていたアラクネの顔にクリーンヒット!!
キスするつもりだったのにヘッドバッドになってしまった。なんてことだ。人生ではじめてのキスの相手にヘッドバット決めてしまうとは…
もうこんなチャンスは2度とないかもしれないのに! そう心でオレが血涙をしていると不意打ちを受けたアラクネはオレを放り投げる。流石に魔物の力の前に人の力は無力だ。オレは彼女からいともたやすく離されて大地との口づけをすることになった。ちくしょう!!
「イタタタ、もう、これだから人間は信じられないのよ!!」
彼女は痛みを受けた自らの頭をおさえている。そして、怒り心頭と言わんばかりに鬼のような形相でこっちを見てきた。うん、でもアラクネだとそんな表情も可愛いぜ! ああ、彼女の誤解を解かないともう2度と彼女とキスができなくなってしまうかもしれない。それはやめてほしい!!
「いや、ワザとじゃないんだ!! この虫がオレの顔について」
オレの話を聞いてくれと焦りながら、潰れて死んだ虫を拾って彼女に見せる。
「私は虫扱いなの!? 酷い!!」
オレの虫という言葉に反応して彼女は顔を引きつらせる。どうやら、さらなる誤解が生じたようだ。ヤバイ、どうしよう。
「いや、君はとても美しい女性で…」
オレは素直に自分の気持ちを打ち明けようと試みたが、
「もう、信じられない。ありえない。ありえない。一瞬でもトキめいた私が馬鹿だったわ。殺す! 絶対に殺す!!」
と話を遮って聞く耳を持たない。アラクネはオレにトキめいていたのか。つまり、オレは彼女の攻略フラグを自ら叩き折ってしまったのか。ナンってこったい。オレのバカ野郎!!
「隙だらけだな!」
オレとアラクネがそんなやり取りをしていると、どこからか男の声が聞こえてきた。そう思っていたら、彼女が足から崩れ落ちるように倒れた。
「痛い、痛い!!」
「ハハハ、こんなチャンスを逃すかよ。感謝するぜ? そこの見知らぬ冒険者さんよ」
そう言っているイケメン男を見ると腰にあった長剣を持って構えている。コイツがアラクネを切ったのか!!
「お前は毒牙に噛まれて動けなくなっていたんじゃないのか? それで、さっきまで這いずり廻って逃げ回っていたんじゃなかったのかよ!!」
奴に疑問を投げかけた。するとそのイケメンはオレを見て呆れたような表情を一瞬だけ浮かべたあとに
「これだけ長い時間があれば持ってきた毒消しを使う時間くらいあるわ。その時間を確保してくれたことに関しては感謝するぞ。だが、その獲物は俺。いや、俺たちのものだ!!」
と言って転がる元仲間たちの成れの果てを見ながらそう叫んできた。最初の金はあるから助けろって言っていた顔だけの残念イケメンじゃないのかよ。なんか、言うことまでイケメンになってやがる。オレがそんなくだらないことを考えていたら、
「人間なんて、信じても裏切られるだけ。もういや…」
とアラクネがそう弱々しい声でオレを見ながら呟く。
「アラクネ!? おまえは今までそんな風に思っていたのか! オレはなんてことを…」
「よかったじゃないか? もう、生きるのに疲れたんだろう? 殺してやるよ。感謝しな!!」
オレの言葉に上から被せるように大きな声で、騎士風のイケメン男はそう言う。そして、再びアラクネに斬りかかろうとしているのだろう。倒れている彼女のもとに駆け出す。
「クソ野郎がさせるか!!」
オレは怒りにまかせて大地に転がるオレの鋼鉄の棒を急いで拾い、叩きつける。
「え!? あれ? なんでおまえがオレを攻撃してくるんだ? アラクネ討伐のためにきたんだろ?」
鋼鉄の棒で打撃を喰らわせたことで、大地に叩きつけられたのにまったく堪えたように見えない。思ったよりも頑丈な奴だ。いや、今はこんなクズ男よりもアラクネにこのことを伝えないと。
「アラクネ。人間にも信じられる奴がいることを教えてやるよ!」
オレはアラクネを見てそう言った。だって、彼女がこのままでは余りにもかわいそうだから…
…なんて、オレの妄想みたいなことはなかった。本当に現実は辛すぎる。いや、もう辛すぎるだろ。だって、圧死するのではないかと思うほどに強い力で抱きしめられるんだぞ。キスで喜んでいたオレも流石にそんな状況だとヤバイ。キスの後にこの状況って本当にまいったな。
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━━━━━━だって、興奮が抑えられないからよ!
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「あら? まだ喋れるの?」
そう言った後にアラクネは一瞬だけ怪訝な表情をした。その後、短い沈黙から、顔に笑みを浮かべる。
「それで、死ぬ前にもう1度だけ? 何かしら?」
こちらを面白そうにしながら伺う魔性の美女。
「君のような美しい女性と口づけをしてから死にたい!!」
オレの肺に酸素がない? そんなこと知るかよ。オレはこの美女とキスをしたいんだ。
「な、何を言っているの? あなたはこの私に絞め殺されるところなのよ?」
動揺しているのか。オレを締め付ける力が少しだけ弱くなったようだ。オレはできる限り、酸素を肺に取り込み、大声で叫ぶ。まさに魂の慟哭だ。
「生涯を終える前に君のような美人とキスをしたい! キスしたいな!!」
童貞が30歳で魔法使いになれるなら、前世から童貞を貫くオレは大賢者。そんなオレの願いを聞いてくれよ。
「何を言っているの!?」
顔を朱に染めた後、恥じらうように顔を背けるアラクネ。オレは彼女の言葉を無視する。そして、さらに繰り返す。
「キスが欲しいな。熱い接吻したい。オレは君のような美女と!!」
「うるさい。うるさいわ!」
顔をそらしながら、早口で捲し立てるアラクネ。そして、オレをつかんでいた脚を放そうとしてきた。オレから逃げたいのか。だが、絶対に放すかよ。オレはどれだけキツく締め上げられても、決して手を離さなかった自らが持つ最大の命綱である鋼鉄の棒を手放し、
「死んでいくオレに最後の慈悲が欲しい。キス、キス、キスが欲しいよ。ギブミーキッス!!」
と言って、オレは彼女の上半身を蟹バサミのように抱きしめる。絶対にキスされないと放れないとの決意をして…
「ええ? なんで抱きしめて来てるの? 魔物の私に!?」
しどろもどろになりながらも顔を真っ赤にしてそう言う彼女。ますます、興奮してきた。オレは彼女の上半身をさらに強く抱きしめる。
「…もう、仕方ないわね」
オレを睨みつけた後に苦笑するようにそう言う。
「でも、今回は特別。そう特別なのよ! それくらいやってあげるわ!!」
「フフフ、死ぬ前に願いを叶えてくれるとは優しいね」
オレの言葉を聞いて俯く彼女。照れたのかな? でも、彼女は脚を使って再びオレを抱きしめ返してくれた。先程までの殺意のあるキツい抱きしめではない。まるで、愛する人を包み込むような抱擁だ。
「まったく…」
そう言って、静かに目を瞑るアラクネ。フフフ、アラクネの奴め。顔が赤くなって照れているぞ。可愛い奴だ。ここからはチューの時間だよ。
キス、キス、キス!! オレは口を蛸のように窄めて口を伸ばす。
「うん、変な虫がオレの顔に止まっている!? これはやばいくらいにデカイ! 虫め、離れろ!!」
オレはそう言って、虫を叩き潰すように頭をそのまま真っ直ぐ振った。すると、当然の事だが、目を瞑ってオレのキスを待っていたアラクネの顔にクリーンヒット!!
キスするつもりだったのにヘッドバッドになってしまった。なんてことだ。人生ではじめてのキスの相手にヘッドバット決めてしまうとは…
もうこんなチャンスは2度とないかもしれないのに! そう心でオレが血涙をしていると不意打ちを受けたアラクネはオレを放り投げる。流石に魔物の力の前に人の力は無力だ。オレは彼女からいともたやすく離されて大地との口づけをすることになった。ちくしょう!!
「イタタタ、もう、これだから人間は信じられないのよ!!」
彼女は痛みを受けた自らの頭をおさえている。そして、怒り心頭と言わんばかりに鬼のような形相でこっちを見てきた。うん、でもアラクネだとそんな表情も可愛いぜ! ああ、彼女の誤解を解かないともう2度と彼女とキスができなくなってしまうかもしれない。それはやめてほしい!!
「いや、ワザとじゃないんだ!! この虫がオレの顔について」
オレの話を聞いてくれと焦りながら、潰れて死んだ虫を拾って彼女に見せる。
「私は虫扱いなの!? 酷い!!」
オレの虫という言葉に反応して彼女は顔を引きつらせる。どうやら、さらなる誤解が生じたようだ。ヤバイ、どうしよう。
「いや、君はとても美しい女性で…」
オレは素直に自分の気持ちを打ち明けようと試みたが、
「もう、信じられない。ありえない。ありえない。一瞬でもトキめいた私が馬鹿だったわ。殺す! 絶対に殺す!!」
と話を遮って聞く耳を持たない。アラクネはオレにトキめいていたのか。つまり、オレは彼女の攻略フラグを自ら叩き折ってしまったのか。ナンってこったい。オレのバカ野郎!!
「隙だらけだな!」
オレとアラクネがそんなやり取りをしていると、どこからか男の声が聞こえてきた。そう思っていたら、彼女が足から崩れ落ちるように倒れた。
「痛い、痛い!!」
「ハハハ、こんなチャンスを逃すかよ。感謝するぜ? そこの見知らぬ冒険者さんよ」
そう言っているイケメン男を見ると腰にあった長剣を持って構えている。コイツがアラクネを切ったのか!!
「お前は毒牙に噛まれて動けなくなっていたんじゃないのか? それで、さっきまで這いずり廻って逃げ回っていたんじゃなかったのかよ!!」
奴に疑問を投げかけた。するとそのイケメンはオレを見て呆れたような表情を一瞬だけ浮かべたあとに
「これだけ長い時間があれば持ってきた毒消しを使う時間くらいあるわ。その時間を確保してくれたことに関しては感謝するぞ。だが、その獲物は俺。いや、俺たちのものだ!!」
と言って転がる元仲間たちの成れの果てを見ながらそう叫んできた。最初の金はあるから助けろって言っていた顔だけの残念イケメンじゃないのかよ。なんか、言うことまでイケメンになってやがる。オレがそんなくだらないことを考えていたら、
「人間なんて、信じても裏切られるだけ。もういや…」
とアラクネがそう弱々しい声でオレを見ながら呟く。
「アラクネ!? おまえは今までそんな風に思っていたのか! オレはなんてことを…」
「よかったじゃないか? もう、生きるのに疲れたんだろう? 殺してやるよ。感謝しな!!」
オレの言葉に上から被せるように大きな声で、騎士風のイケメン男はそう言う。そして、再びアラクネに斬りかかろうとしているのだろう。倒れている彼女のもとに駆け出す。
「クソ野郎がさせるか!!」
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「え!? あれ? なんでおまえがオレを攻撃してくるんだ? アラクネ討伐のためにきたんだろ?」
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