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第13話 屍体たちの饗宴

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 戦禍によって焼け崩れた建物が並ぶ廃墟。 今、聖女討伐の依頼を受けたオレは反乱軍の本拠地となったフォニックスの町。そこで、オレは聖女の足取りを調査していた。

 廃屋はいおくの中を探ろうと入り口の扉に手をかける。だが、扉が歪んでいるのかびくともしない。オレは軽く舌打ちをした後、朽ち果てた家の玄関の扉を蹴破り、中に入った。

「……当然、誰も住んでないよな」

 部屋に入って直ぐに目に入ったのはテーブルに並べられた食器類だった。綺麗に皿が並んでいる所を見ると食事の準備をしていたのだろう。そして、椅子の近くに子供が遊んでいたと思われるようなオモチャがあった。

「ぬいぐるみが沢山ある。きっと、子供はまだ小さかったんだろうな」

 オレは床に置いてあるクマのぬいぐるみを掴み。やるせない気持ちになる。人がここで生活していたのだ。本当につい最近まで…

「なんだ!? 今、向こうの方から足音がしたよな?」

 オレが感傷に浸っていると隣の部屋から何者かがこちらに歩み寄ってくる足音が聞こえてきた。生存者が居たのか? 

 いや、落ち着け。冷静に考えろ。この廃墟を見れば生存者がいる可能性など限りなく低いはずだ。

「ゴブリンが人間の死肉を漁りに来たのかもしれない」

 今回の依頼は魔物の討伐ではないので無駄な争いは避けたい。こんな所で体力を消費して、本来の依頼をこなせないなんてなったら馬鹿らしいからな。

「さっさとこの家から出よう」

 オレは家の外へ出ようと玄関に向かうため、部屋から出る扉を開ける。

「アァ!? アー、アー!!」

 部屋の扉を開けるといきなり、呻き声をあげながら顔面が崩れ目玉が飛び出している怪物がオレに飛びかかってきた。

「魔物か!?」

 オレは腰にある杖を素早く手に取り、魔物の顔面めがけて叩きつける。

 魔物の頭はオレの杖によって千切れて吹っ飛ばされたが残った胴体がこちらに歩み寄ってくる。くそ、ゴブリンなんて比でもないくらいに厄介な奴がいたぞ。腐った屍体。もしくはゾンビと言われている魔物。今、目の前にいるのは体格から多分この家の元主人といった所か。実に救われない。

「胴体だけ動きまわるとは気持ち悪い。待てよ。もし、これが女だったらいけるか? いや、当然だよな。オレなら飛びつくよな。だが、あれは残念ながら男だ」

 見つけた奴が女ゾンビという獲物ではなかった以上、ここに長居は無用だ。オレはゾンビを無視して廃屋から出る。

 朽ち果てた家から出ると日が落ちてきており、暗闇が徐々に支配してきていた。やばいな。ゾンビ系の魔物は光が嫌いで主な活動時間は夜だ。隠れていた奴が出てくるかもしれない。

「案の定だぜ! 家の外にも日がくれた事でゾロゾロと出てきやがったか!!」

 思った通り、オレが周辺を見るとそこには腐乱したまま歩き続ける意志のない人間の成れの果てであるゾンビ。奴らがゾロゾロと足を引き摺りながら闊歩している。くそ、この数はさすがにやばい。万事休すか!?
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