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第14話 驚愕の事実
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日が落ちていくと共に徐々に暗闇が深さを増していく。オレたちのようにお天道様の下を闊歩する人間にとってはまさに夜は闇を好む魔物達の活動の時間で大変に危険な刻だ。
現在、ゾンビに囲まれているオレが言うことだから間違いはないはずだ。
「どこにこれだけの数のゾンビが隠れていたんだ? おかしいだろ!!」
廃屋から出るとゾンビ系の魔物がまるで地下から湧く水のように次から次へと出てきやがる。
「本当におかしい!! こんな異常事態あるか!? ありえないだろう?」
大量のゾンビに囲まれるという異様な状況にオレは戸惑いを隠せない。だって、本当にありえないんだ。
「大小様々なゾンビがこんなにたくさんいるのに! なんで、ここには男のゾンビしかいないんだ! どこに女のゾンビはいるんだ。おかしい。こんなの絶対に間違っている!!」
ゾンビが次から次へと現れてくる。そんな光景を見ていたオレは憤った後にそう言う。これが逆に全部女のゾンビだったらハーレムだったのに!
「現実は無情だ。野郎のハーレムって誰の得なんだよ」
オレは深いため息と共にそんな独り言を呟く。こんな風に馬鹿なことを言っていられるのは、筋肉が腐って力がないゾンビのような弱い魔物を相手にしている時ぐらいだよな。
正直に言って、雑魚のゾンビ相手なら、これくらいの数は問題ない。例えば、今みたいに取り囲まれた状態であっても簡単に脱出できる。
「女がいない所に用はない!!」
オレはそう言うとゾンビの群れから脱出することを決意し、そして実行に移した。
「どけどけ、サイゾウが通るぞ!! 腐った腕や足が吹き飛ばされたくなければどけや!!」
オレは気合と共に杖を振り回して、ゾンビを次々と薙ぎ倒しながら魔物の群れから脱出をはかる。
もちろん、脱出した後の行き先など決めていない。なんて、バカで無謀なことを歴戦のハンターであるオレは絶対にしない。
奴らから逃げながらゾンビ系の魔物が侵入できない聖域である教会を目指しているのだ。この国では教会はほとんどの町に必ず1つはある。
「さてと、確かここら辺にあったよな?」
オレはこの町に来る前に見たマップを思い出しながら、女神アスタルトを祀っている教会に向かって足を進める。
「ようやく着いたか。思ったよりも大きいな」
明らかに他の建物より、高く聳える教会。
「随分と田舎の教会にしては立派だな」
教会の敷地に入るとゾンビが追ってこなくなった。いや、奴らは魔物。だから、教会の結界内に入れないのだ。
「結界がきちんと効いているみたいだな」
教会の結界は正常に機能しているようだ。これならばゾンビは教会に易々と侵入できないはずだ。
「ようやく、めんどくさい奴らから離れたぜ!」
オレは安堵のため息を吐いた後にそう呟いた。そして、教会を改めて見る。やけに綺麗だな。ここには戦火が及ばなかったのだろうか。
「そんなくだらないことを考えている場合じゃないな。さてと、こんな所で立ってないで中に入るとするか」
オレは教会の扉を開けて、建物の中に足を進めた。教会の中は整然と並んだ長椅子(ながいす)。さらにその先に祭壇があった。
「さてと、調査を開始しますかね」
初めての場所では、ハンターの習わしとして調査するのが鉄則だ。この部屋に罠がないとは断言できないからな。オレは辺りを入念にチェックするために歩き回る。
「よし、この窓は鍵がかかっている。さてと、次だ。うん? 月の明かりか?」
ステンドグラスから入る月明かりが聖堂の祭壇前を照らしていた。実に美しい。
「あれ? 今、動かなかったか? うん? よく見ると祭壇前に人?」
遠目で分かりにくかったが、照らし出す明かりの中に人の形をしたモノが見えなかったか? まさか、既に教会にゾンビが侵入していたなんてことはないだろうな。オレは人影がなんなのかを調べるために祭壇まで足を進める。
「祈っているのか?」
ある程度、祭壇に近づいたことで、その人影の正体を知ることができた。その正体は白いローブを身にまとった少女であった。
「まぁ、実際はローブで顔は見えないけどさ。でも、あの華奢な体型だから少女だろうな」
オレはさらに歩いて、彼女のすぐ後ろまで行った。しかし、どうやら彼女は一心不乱に祭壇前で祈りを捧げているため、オレの存在に全く気が付かない。
おい、おい、どんだけ、一生懸命に祈ればこんなに近づいているのに気が付かないんだ? どれだけ、集中しているんだよ。
でも、こんな危険な町にいる時点で頭がおかしい奴なのは間違いないか。
さてと、いったい、この変人はどんなツラをしているんだ? オレはそんな好奇心からローブに付いているフードをそっと取ってやった。するとフードに収まっていた銀の長髪がさらさらと零れ落ちる。
「……綺麗だ。まるで、映画のワンシーンみたいだな」
思わず漏れる言葉。彼女はこちらの行動でオレに気が付いたのだろう。祈りをやめてこちらを振り向く。
ステンドグラスから入る月明かりが祭壇前にいる彼女を照らす。その光景が余りにも現実離れをしているため、まるで彼女がこの世の者とは思えない程であった。
「なぜ、あなたはここにいるのですか?」
少女は綺麗な緑色の瞳に疑問の色を滲ませて質問をしてきた。
「それはオレの質問だ。生存者がいないと報告を受けている。この町は既に魔物によって滅ぼされている。だから、すごく危険な状況なんだぞ。朝になったらオレと一緒に隣町まで行こう!」
彼女の美しさに呆然とした状態から正気に戻ったオレは思わず、ここに来た目的を忘れてそう言ってしまう。ああ、オレはまだ彼女の美しさに魅了されているのか。良い歳して落ち着けよ。
「ご忠告、痛み入ります。でも、私はここにいても問題ありません。むしろ、あなた様の方がこの町にいるのは危険です。早くこの町から出て行った方がよろしいですわ」
ゆっくりと話す彼女の鈴がなったような美しい声がオレの心をまた魅了する。だが、オレはサイゾウ。並の男ではない。まずは心を落ち着かせるために深呼吸。よし、落ち着いた。次に彼女にお近づきになるために名乗らねばなるまい!!
「オレの名前はサイゾウ。伝説のハンターだ!! 所で、君は誰なんだい? そして、なぜこんな所にいるんだ?」
本当はオレも既に彼女が何者かわかっていた。だが、そのあまりの美しさに正体を知っていても訪ねたくなってしまったのだ。そう、彼女の声がもっと聞きたい。彼女と会話をしたいと言う己の願望を満たすためにあえて質問をしたのだ。
「私の名前はシルメリア・シーリス」
そう言って、慈愛に満ちた微笑みをたたえる。やはり、高貴な出の人は違うな。笑みを見せられただけで、蕩(とろ)けそうだ。
「聖女シルメリア?」
「…そう、呼ばれていたこともあるわ」
俯いたその表情も可愛い。これが憂いを帯びた顔ってヤツか。ああ、彼女は聖女か。なら、きっと飛びついてもいいよね。なんったて、すべてを慈しむ聖女様だ。どんなことしても、笑って許してくれるはずだよね。
「そうですか。あなたが聖女シルメリア…」
「はい? はい、そうですね。俯いて、どうかしましたか?」
オレが彼女に飛び込む前に屈んだ姿を見て、聖女シルメリアはこんなバカを心配してくれているようだ。嬉しいね。でも、さらに嬉しいことに彼女は心配げに下から上目遣いで見てきたんだ。もう、たまらん!!
「その胸にダイビング!! シルメリアちゃん、可愛いよ!!」
鼻息荒く彼女に飛びかかるオレこと彼女いない歴イコール年齢の独身男サイゾウ。
「キャー!!」
オレに飛び掛かられたシルメリアは尻餅をついて床にへたり込む。一方、飛び掛かったオレの方は彼女の体に当たって跳ね返り、転びそうになったがなんとか着地。さすが、オレどんな時も冷静沈着で転ばないぜ。
「ふぅ、危ない、危ない。うん? 何かを咄嗟にキャッチしてしまったけど。なんだろう? って、嘘!?」
オレの手には恐ろしいことにとあるモノが握られていた。
「あなたは先ほど私がこんな所になぜいるのかと質問しましたね?」
それは彼女の顔である。その顔は先ほどまで、オレと会話していたシルメリアのモノだった。尻餅をついて床に座り込んでいる彼女を見ると細い首から上がない。
「そういうわけですよ」
オレが手で抱えている頭だけのシルメリアは悲しげにそう言うのであった。
現在、ゾンビに囲まれているオレが言うことだから間違いはないはずだ。
「どこにこれだけの数のゾンビが隠れていたんだ? おかしいだろ!!」
廃屋から出るとゾンビ系の魔物がまるで地下から湧く水のように次から次へと出てきやがる。
「本当におかしい!! こんな異常事態あるか!? ありえないだろう?」
大量のゾンビに囲まれるという異様な状況にオレは戸惑いを隠せない。だって、本当にありえないんだ。
「大小様々なゾンビがこんなにたくさんいるのに! なんで、ここには男のゾンビしかいないんだ! どこに女のゾンビはいるんだ。おかしい。こんなの絶対に間違っている!!」
ゾンビが次から次へと現れてくる。そんな光景を見ていたオレは憤った後にそう言う。これが逆に全部女のゾンビだったらハーレムだったのに!
「現実は無情だ。野郎のハーレムって誰の得なんだよ」
オレは深いため息と共にそんな独り言を呟く。こんな風に馬鹿なことを言っていられるのは、筋肉が腐って力がないゾンビのような弱い魔物を相手にしている時ぐらいだよな。
正直に言って、雑魚のゾンビ相手なら、これくらいの数は問題ない。例えば、今みたいに取り囲まれた状態であっても簡単に脱出できる。
「女がいない所に用はない!!」
オレはそう言うとゾンビの群れから脱出することを決意し、そして実行に移した。
「どけどけ、サイゾウが通るぞ!! 腐った腕や足が吹き飛ばされたくなければどけや!!」
オレは気合と共に杖を振り回して、ゾンビを次々と薙ぎ倒しながら魔物の群れから脱出をはかる。
もちろん、脱出した後の行き先など決めていない。なんて、バカで無謀なことを歴戦のハンターであるオレは絶対にしない。
奴らから逃げながらゾンビ系の魔物が侵入できない聖域である教会を目指しているのだ。この国では教会はほとんどの町に必ず1つはある。
「さてと、確かここら辺にあったよな?」
オレはこの町に来る前に見たマップを思い出しながら、女神アスタルトを祀っている教会に向かって足を進める。
「ようやく着いたか。思ったよりも大きいな」
明らかに他の建物より、高く聳える教会。
「随分と田舎の教会にしては立派だな」
教会の敷地に入るとゾンビが追ってこなくなった。いや、奴らは魔物。だから、教会の結界内に入れないのだ。
「結界がきちんと効いているみたいだな」
教会の結界は正常に機能しているようだ。これならばゾンビは教会に易々と侵入できないはずだ。
「ようやく、めんどくさい奴らから離れたぜ!」
オレは安堵のため息を吐いた後にそう呟いた。そして、教会を改めて見る。やけに綺麗だな。ここには戦火が及ばなかったのだろうか。
「そんなくだらないことを考えている場合じゃないな。さてと、こんな所で立ってないで中に入るとするか」
オレは教会の扉を開けて、建物の中に足を進めた。教会の中は整然と並んだ長椅子(ながいす)。さらにその先に祭壇があった。
「さてと、調査を開始しますかね」
初めての場所では、ハンターの習わしとして調査するのが鉄則だ。この部屋に罠がないとは断言できないからな。オレは辺りを入念にチェックするために歩き回る。
「よし、この窓は鍵がかかっている。さてと、次だ。うん? 月の明かりか?」
ステンドグラスから入る月明かりが聖堂の祭壇前を照らしていた。実に美しい。
「あれ? 今、動かなかったか? うん? よく見ると祭壇前に人?」
遠目で分かりにくかったが、照らし出す明かりの中に人の形をしたモノが見えなかったか? まさか、既に教会にゾンビが侵入していたなんてことはないだろうな。オレは人影がなんなのかを調べるために祭壇まで足を進める。
「祈っているのか?」
ある程度、祭壇に近づいたことで、その人影の正体を知ることができた。その正体は白いローブを身にまとった少女であった。
「まぁ、実際はローブで顔は見えないけどさ。でも、あの華奢な体型だから少女だろうな」
オレはさらに歩いて、彼女のすぐ後ろまで行った。しかし、どうやら彼女は一心不乱に祭壇前で祈りを捧げているため、オレの存在に全く気が付かない。
おい、おい、どんだけ、一生懸命に祈ればこんなに近づいているのに気が付かないんだ? どれだけ、集中しているんだよ。
でも、こんな危険な町にいる時点で頭がおかしい奴なのは間違いないか。
さてと、いったい、この変人はどんなツラをしているんだ? オレはそんな好奇心からローブに付いているフードをそっと取ってやった。するとフードに収まっていた銀の長髪がさらさらと零れ落ちる。
「……綺麗だ。まるで、映画のワンシーンみたいだな」
思わず漏れる言葉。彼女はこちらの行動でオレに気が付いたのだろう。祈りをやめてこちらを振り向く。
ステンドグラスから入る月明かりが祭壇前にいる彼女を照らす。その光景が余りにも現実離れをしているため、まるで彼女がこの世の者とは思えない程であった。
「なぜ、あなたはここにいるのですか?」
少女は綺麗な緑色の瞳に疑問の色を滲ませて質問をしてきた。
「それはオレの質問だ。生存者がいないと報告を受けている。この町は既に魔物によって滅ぼされている。だから、すごく危険な状況なんだぞ。朝になったらオレと一緒に隣町まで行こう!」
彼女の美しさに呆然とした状態から正気に戻ったオレは思わず、ここに来た目的を忘れてそう言ってしまう。ああ、オレはまだ彼女の美しさに魅了されているのか。良い歳して落ち着けよ。
「ご忠告、痛み入ります。でも、私はここにいても問題ありません。むしろ、あなた様の方がこの町にいるのは危険です。早くこの町から出て行った方がよろしいですわ」
ゆっくりと話す彼女の鈴がなったような美しい声がオレの心をまた魅了する。だが、オレはサイゾウ。並の男ではない。まずは心を落ち着かせるために深呼吸。よし、落ち着いた。次に彼女にお近づきになるために名乗らねばなるまい!!
「オレの名前はサイゾウ。伝説のハンターだ!! 所で、君は誰なんだい? そして、なぜこんな所にいるんだ?」
本当はオレも既に彼女が何者かわかっていた。だが、そのあまりの美しさに正体を知っていても訪ねたくなってしまったのだ。そう、彼女の声がもっと聞きたい。彼女と会話をしたいと言う己の願望を満たすためにあえて質問をしたのだ。
「私の名前はシルメリア・シーリス」
そう言って、慈愛に満ちた微笑みをたたえる。やはり、高貴な出の人は違うな。笑みを見せられただけで、蕩(とろ)けそうだ。
「聖女シルメリア?」
「…そう、呼ばれていたこともあるわ」
俯いたその表情も可愛い。これが憂いを帯びた顔ってヤツか。ああ、彼女は聖女か。なら、きっと飛びついてもいいよね。なんったて、すべてを慈しむ聖女様だ。どんなことしても、笑って許してくれるはずだよね。
「そうですか。あなたが聖女シルメリア…」
「はい? はい、そうですね。俯いて、どうかしましたか?」
オレが彼女に飛び込む前に屈んだ姿を見て、聖女シルメリアはこんなバカを心配してくれているようだ。嬉しいね。でも、さらに嬉しいことに彼女は心配げに下から上目遣いで見てきたんだ。もう、たまらん!!
「その胸にダイビング!! シルメリアちゃん、可愛いよ!!」
鼻息荒く彼女に飛びかかるオレこと彼女いない歴イコール年齢の独身男サイゾウ。
「キャー!!」
オレに飛び掛かられたシルメリアは尻餅をついて床にへたり込む。一方、飛び掛かったオレの方は彼女の体に当たって跳ね返り、転びそうになったがなんとか着地。さすが、オレどんな時も冷静沈着で転ばないぜ。
「ふぅ、危ない、危ない。うん? 何かを咄嗟にキャッチしてしまったけど。なんだろう? って、嘘!?」
オレの手には恐ろしいことにとあるモノが握られていた。
「あなたは先ほど私がこんな所になぜいるのかと質問しましたね?」
それは彼女の顔である。その顔は先ほどまで、オレと会話していたシルメリアのモノだった。尻餅をついて床に座り込んでいる彼女を見ると細い首から上がない。
「そういうわけですよ」
オレが手で抱えている頭だけのシルメリアは悲しげにそう言うのであった。
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