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第22話 刺客
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オレは走った。一心不乱で森を駆け抜けていた。そのため、オレは自分でもわかるくらいに呼吸が荒れていた。
そんなオレを追いかける黄色と黒の縞模様をした大量の蜂娘たち。蜂娘たちはとても可愛らしい容姿をしているが襲われたとなるとそんなことは関係ない。捕まれば次から次へと針で刺されて、食べられる。まさに絶体絶命だ。
「それでも、かわいこちゃん達に追いかけられて嬉しくない男がいるだろうか? いや、それは否だ!!」
それだけは神でないオレでも断言できる。そう自信満々に胸を張ってバカなことを言っていたら、
「それで逃げきれなくて、ヘビモスの糞の中に隠れるのはどうなの?」
と上半身は美しい人間、下半身は蜘蛛のアラクネから心ない一言が飛んできた。
現在、オレは今回の顛末を忘れないうちに報告書を作成していた。報告書にはハンターギルドからの依頼であったハニービーの巣の特定を完遂した旨をきちんと書き、オレがどれだけ苦労したのかを嫌味なほどに丁寧な文章で表現してやった。
「それを言うのかよ。思い出したくないぜ」
オレは帰宅してすぐに報告書を作成している。だから、もちろん、風呂で身を綺麗にしていない。この報告書もいつも使っているソファに座らずに立って書いているのだ。
「この臭いでイヤでも思い出すでしょうに…」
呆れたわと言わんばかりにため息を吐きやがってアラクネめ。
「うるさいですわね。この凄まじい臭いはなんですか!?」
オレたちの会話が聞こえたことで元聖女のゾンビ男であるシルメリアがリビングから出てきた。こいつに家の借用書を買い取られているから住み着きやがったんだよ。ここはオレとアラクネの愛の巣だというのに…
そして、奴はオレを見るなり、
「その姿はどうしました? それにしても本当に臭いです。家が汚れるのでお帰り願えませんか?」
そう言って微笑むシルメリア。
「ここはオレの家だ! 帰るのはお前だ!!」
「ああ、手が滑ってしまいました。これはいったいなんでしたかしら?」
そう言って、懐から我が家の借用書をこれみよがしに見せびらかしてきた。
「く、くそ~!!」
オレは地団駄を踏んだ。だって、ローンで買ったから、仕方ないよ。オレのような若造が家を購入するにはローンしかないんだよ!!
「報告書はもう書けたでしょ? 川で粗方は落としたけど。まだ、あなたにこびりついているから、早く風呂に入ってきなさい。その間に私が夕食を用意しておくから」
流石、アラクネさん。オレは感涙必至。だって、だってさ。魔物がオレのために料理をしてくれるんだぞ! これにまさる幸せがあるだろうか? いや、多分ない!
「まじで? アラクネ、愛してる! 手料理バンザイ!!」
「もう馬鹿なこと言ってないで早く行きなさい」
アラクネは恥ずかしそうにそう言ったと思ったら、すぐにキッチンの方に歩いて行った。オレは彼女がキッチンで鼻歌を奏で出したのを確認した後に風呂場に向かったのであった。
★☆☆
「さっぱりしたぜ!!」
風呂場から出るなり、自らの臭いを嗅ぐ。うーん、フローラルな香り。オレの身体から漂うステキ臭。身体を石鹸でキレイに隅々まで風呂場で洗ったからな。もう、さよなら、悪臭。こんにちはフローラル!
オレは意気揚々とリビングまで行くと、
「おお、いい匂いだ。って、うん? な、なんて美味しそうなんだ…」
と見たこともないようなネズミが皿の上に所狭しに並んでいる。って、動いてない? この赤茶色のネズミ、ピクピクしているような気がするんですけど!? 本当に人間の食べ物なんでしょうか。
「そ、そんなことはないから!!」
オレの引きつった顔で言った褒め言葉を聞いて照れるアラクネの姿は可愛いけどさ。どうすれば良いんだろうか。
オレは助けを求めるようにシルメリアがいる方向に視線を向ける。
「フフフ。とても美味しそうね。私が作った料理よりも良いかもね」
「な、なら、分けてやるぜ!!」
「お生憎様。私はゾンビで食事を必要としないわ。それに元々、宗教上の理由で菜食主義でしたから。まぁ、どちらにしても、アラクネさんの料理はサイゾウ様がすべておいしく頂くと思うから問題ないはずよね?」
なに、そのイヤらしい言い方! まるで、アラクネがオレのために愛情を込めて作ってくれた料理だから食べなさいみたいな。
「い、頂きます」
そ、そんな期待を込めた眼差しで見ないでアラクネ! っと、オレがそんな感じで追い詰められていたら、急にリビングの窓ガラスが割れて、ガラス片が飛び散ってきた。
「って、なんだ!?」
オレは音に反応してそちらを振り向くと割れた窓から素早く漆黒の鎧を着た長身の男が入ってきた。そして奴はアラクネを見るなり、
「本当にアラクネがここに居たんだな」
と重低音の声にどこか喜びが含んでいる様に感じられる。
「おい、おまえ、オレの家の窓を」
「窓? 今から死ぬ貴様がそんなことを気にする必要はあるまい」
そう言うと割れた窓から次々と人が入ってきた。そして、奴はオレなど眼中にないのかアラクネを見ている。最初に入ってきたリーダーの様な奴が口元の端を上げ、獲物を前にした時のようなイヤらしい笑みを向けた後、
「皆の者、我らが主人の野望のためにアラクネを捕獲せよ!!」
と言って漆黒の鎧を身に纏った男たちがアラクネに向かって飛びかかってきたのだった。
そんなオレを追いかける黄色と黒の縞模様をした大量の蜂娘たち。蜂娘たちはとても可愛らしい容姿をしているが襲われたとなるとそんなことは関係ない。捕まれば次から次へと針で刺されて、食べられる。まさに絶体絶命だ。
「それでも、かわいこちゃん達に追いかけられて嬉しくない男がいるだろうか? いや、それは否だ!!」
それだけは神でないオレでも断言できる。そう自信満々に胸を張ってバカなことを言っていたら、
「それで逃げきれなくて、ヘビモスの糞の中に隠れるのはどうなの?」
と上半身は美しい人間、下半身は蜘蛛のアラクネから心ない一言が飛んできた。
現在、オレは今回の顛末を忘れないうちに報告書を作成していた。報告書にはハンターギルドからの依頼であったハニービーの巣の特定を完遂した旨をきちんと書き、オレがどれだけ苦労したのかを嫌味なほどに丁寧な文章で表現してやった。
「それを言うのかよ。思い出したくないぜ」
オレは帰宅してすぐに報告書を作成している。だから、もちろん、風呂で身を綺麗にしていない。この報告書もいつも使っているソファに座らずに立って書いているのだ。
「この臭いでイヤでも思い出すでしょうに…」
呆れたわと言わんばかりにため息を吐きやがってアラクネめ。
「うるさいですわね。この凄まじい臭いはなんですか!?」
オレたちの会話が聞こえたことで元聖女のゾンビ男であるシルメリアがリビングから出てきた。こいつに家の借用書を買い取られているから住み着きやがったんだよ。ここはオレとアラクネの愛の巣だというのに…
そして、奴はオレを見るなり、
「その姿はどうしました? それにしても本当に臭いです。家が汚れるのでお帰り願えませんか?」
そう言って微笑むシルメリア。
「ここはオレの家だ! 帰るのはお前だ!!」
「ああ、手が滑ってしまいました。これはいったいなんでしたかしら?」
そう言って、懐から我が家の借用書をこれみよがしに見せびらかしてきた。
「く、くそ~!!」
オレは地団駄を踏んだ。だって、ローンで買ったから、仕方ないよ。オレのような若造が家を購入するにはローンしかないんだよ!!
「報告書はもう書けたでしょ? 川で粗方は落としたけど。まだ、あなたにこびりついているから、早く風呂に入ってきなさい。その間に私が夕食を用意しておくから」
流石、アラクネさん。オレは感涙必至。だって、だってさ。魔物がオレのために料理をしてくれるんだぞ! これにまさる幸せがあるだろうか? いや、多分ない!
「まじで? アラクネ、愛してる! 手料理バンザイ!!」
「もう馬鹿なこと言ってないで早く行きなさい」
アラクネは恥ずかしそうにそう言ったと思ったら、すぐにキッチンの方に歩いて行った。オレは彼女がキッチンで鼻歌を奏で出したのを確認した後に風呂場に向かったのであった。
★☆☆
「さっぱりしたぜ!!」
風呂場から出るなり、自らの臭いを嗅ぐ。うーん、フローラルな香り。オレの身体から漂うステキ臭。身体を石鹸でキレイに隅々まで風呂場で洗ったからな。もう、さよなら、悪臭。こんにちはフローラル!
オレは意気揚々とリビングまで行くと、
「おお、いい匂いだ。って、うん? な、なんて美味しそうなんだ…」
と見たこともないようなネズミが皿の上に所狭しに並んでいる。って、動いてない? この赤茶色のネズミ、ピクピクしているような気がするんですけど!? 本当に人間の食べ物なんでしょうか。
「そ、そんなことはないから!!」
オレの引きつった顔で言った褒め言葉を聞いて照れるアラクネの姿は可愛いけどさ。どうすれば良いんだろうか。
オレは助けを求めるようにシルメリアがいる方向に視線を向ける。
「フフフ。とても美味しそうね。私が作った料理よりも良いかもね」
「な、なら、分けてやるぜ!!」
「お生憎様。私はゾンビで食事を必要としないわ。それに元々、宗教上の理由で菜食主義でしたから。まぁ、どちらにしても、アラクネさんの料理はサイゾウ様がすべておいしく頂くと思うから問題ないはずよね?」
なに、そのイヤらしい言い方! まるで、アラクネがオレのために愛情を込めて作ってくれた料理だから食べなさいみたいな。
「い、頂きます」
そ、そんな期待を込めた眼差しで見ないでアラクネ! っと、オレがそんな感じで追い詰められていたら、急にリビングの窓ガラスが割れて、ガラス片が飛び散ってきた。
「って、なんだ!?」
オレは音に反応してそちらを振り向くと割れた窓から素早く漆黒の鎧を着た長身の男が入ってきた。そして奴はアラクネを見るなり、
「本当にアラクネがここに居たんだな」
と重低音の声にどこか喜びが含んでいる様に感じられる。
「おい、おまえ、オレの家の窓を」
「窓? 今から死ぬ貴様がそんなことを気にする必要はあるまい」
そう言うと割れた窓から次々と人が入ってきた。そして、奴はオレなど眼中にないのかアラクネを見ている。最初に入ってきたリーダーの様な奴が口元の端を上げ、獲物を前にした時のようなイヤらしい笑みを向けた後、
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と言って漆黒の鎧を身に纏った男たちがアラクネに向かって飛びかかってきたのだった。
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